論文
第68巻第3号 2021年3月 地域在住高齢者における軽度尿失禁に関する相談意向小島 みさお(コジマ ミサオ) 東畠 弘子(ヒガシハタ ヒロコ) |
目的 本研究の目的は,不意に少量漏れてしまう軽度尿失禁を有する地域在住高齢者の実態,対応および相談意向について明らかにすることである。
方法 2018年6月~2019年3月に全国9都道府県33会場の健康づくりと排尿に関する地域の健康講座等に参加した地域在住高齢者のうち,要介護認定を受けていない60歳以上を対象とした。解析対象は482人(男性98人,女性384人)とした。調査方法は,自記式質問紙法により,基本属性,尿失禁経験の有無,現在の尿失禁の対応方法,今後の相談意向,尿失禁専用パッドの認知および使用経験,尿失禁用商品を販売するドラッグストアの利用頻度等について回答を得た。
結果 尿失禁経験率は全体で69.9%,男性58.3%,女性73.0%であった。尿失禁専用パッドの認知率は全体で87.4%,男性76.0%,女性90.3%で,尿失禁の対応は「特に何もしていない」が最多であった。男女で対応に差がみられ,男性は「特に何もしていない」割合が女性より多かった。女性は「尿失禁専用パッドを使用」「生理用ナプキンを使用」が男性よりも多かった。尿失禁についての相談意向ありは65.1%であった。尿失禁経験なしの者にも60.6%の相談意向がみられた。尿失禁経験者における尿失禁についての相談意向の影響要因についてロジスティック回帰分析を行った結果,性別に有意差は認めず,「ドラッグストア利用頻度」(オッズ比2.10,95%信頼区間:1.11-3.97)のみに有意差が認められた。
結論 地域在住高齢者自身が,状態像に合わせた尿失禁の具体的な対応方法や用品の選択と使用について知識を豊かにすることが必要であることが示唆された。地域生活の持続可能性を高めるために,尿失禁用商品を販売するドラッグストアも含め,地域で状態像に合わせた,個別の相談対応先の体制整備が重要である。併せて相談意向がない尿失禁経験者のスクリーニング体制の整備も重要と考える。
キーワード 尿失禁,地域在住高齢者,相談,意向,尿失禁専用パッド,個別支援