論文
第68巻第6号 2021年6月 発達障害児の避難時における
中井 寿雄(ナカイ ヒサオ) 加賀野井 聖二(カガノイ セイジ) |
目的 発達障害児の障害特性および災害時の支援の必要性と,避難時における固有空間の必要性との関連を明らかにすることである。
方法 小児リハビリテーションを実施しているA病院に通院し,機能訓練を受けている(2018年1月)発達障害児の養護者56人を対象とした。調査方法は,訓練を担当している理学療法士2人に,聞き取り調査を依頼した。調査内容は,発達障害児の属性,主病名,必要な医療処置,投薬の有無,障害特性,避難時の支援の必要性等だった。分析は,避難時の固有空間の必要性と各項目との関連について,χ2検定もしくはFisher直接確率検定を実施した。避難時の固有空間の必要性を従属変数とし,大声をあげるへの支援,聴覚過敏への支援,共変量に年代,性別,主病名を強制投入し二項ロジスティック回帰分析を実施した。
結果 障害特性は,目が離せない32人(57.1%),大声をあげる26人(46.4%),偏食25人(44.6%),聴覚過敏20人(35.7%)等で,避難時に支援を必要としていたのは,目が離せないへの支援27人(48.2%),大声をあげる24人(42.9%),偏食21人(37.5%),聴覚過敏19人(33.9%)等だった。避難時の固有空間が必要であることに対して,大声をあげるへの支援が必要であることが関連している傾向(オッズ比(OR):4.32,95%信頼区間(CI):0.96-19.44)があり,聴覚過敏への支援が必要であることが有意に関連(OR 7.61,95%CI:1.23-47.11)していた。
結論 養護者は,固有空間であれば刺激を軽減し大声を防止できる可能性があること,聴覚過敏からの混乱による他者への迷惑を養護者が危惧している可能性が示唆された。
キーワード 発達障害児,災害,避難時の固有空間,聴覚過敏