論文
第68巻第8号 2021年8月 女子高校生の親準備性の
山田 晴奈(ヤマダ ハルナ) 斉藤 恵美子(サイトウ エミコ) |
目的 本研究は,女子高校生の親準備性と過去の乳幼児とのふれあい体験(以下,ふれあい体験)の実態を明らかにし,ふれあい体験の有無別に親準備性等を比較することを目的とした。
方法 都内の一女子高等学校に在籍している高校生1~3年生245人を対象として,無記名自記式質問紙調査を留置法で2016年10月に実施した。親準備性として「子ども・子育てに関する意識」7項目,「対子ども社会的自己効力感」10項目を設定した。また,学童期から現在までのふれあい体験を尋ね,体験の有無別に,親準備性,将来の育児支援についての考え,乳幼児および妊婦とかかわった際の対応等の項目を比較した。
結果 有効回答者234人(95.5%)を分析した結果,ふれあい体験ありは187人(79.9%)であった。時期では,小学生162人(86.6%),中学生123人(65.8%),高校生91人(48.7%)の順に多かった。ふれあい体験ありと回答した187名のうち,ふれあった乳幼児の年齢は1~3歳(111人,59.4%),きっかけは親戚(86人,46.0%)が最も多かった。親準備性の項目では,「子ども・子育てに関する意識」の平均得点は2.4点,「対子ども社会的自己効力感」の平均得点は2.8点であった。また,ふれあい体験あり群と体験なし群の比較として,ふれあい体験あり群は,「弟妹」(p=0.036),「年下の親戚」(p<0.001)がいると回答した割合が統計的に有意に高かった。また,ふれあい体験あり群は,「子ども・子育てに関する意識」の平均得点(p<0.001),「対子ども社会的自己効力感」の平均得点(p=0.006)が有意に高かった。さらに,ふれあい体験あり群は「赤ちゃんとふれあう教室に参加したい」(p=0.026)と回答した割合が有意に高かった。
結論 乳幼児とのふれあい体験があった女子高校生は,親準備性が高いことが示唆された。少子化に伴い,学童期から青年期の対象が,乳幼児の弟妹等の世話をする機会が減少傾向にあることから,青少年が乳幼児とふれあう機会を地域や学校で意図的に設定することは,地域で子育てを支える社会環境を醸成するだけでなく,青少年自身のその後の妊娠・出産・育児への支援にもつながると考える。
キーワード 女子高校生,親準備性,乳幼児ふれあい体験,少子化,地域