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論文記事:高齢者介護施設のケア従事者における外国人介護職の受け入れへの期待と不安の実態 202110-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第68巻第12号 2021年10月

高齢者介護施設のケア従事者における
外国人介護職の受け入れへの期待と不安の実態

富永 真己(トミナガ マキ) 田中 真佐恵(タナカ マサエ)
矢吹 知之(ヤブキ トモユキ) 中西 三春(ナカニシ ミハル)

目的 本研究は,高齢者介護施設のケア従事者を対象に,現状の組織の受け入れの準備体制と,外国人介護職の受け入れへの期待と不安の実態について,仕事のストレスと人間関係に関わる職場環境の側面から明らかにすることを目的とした。

方法 倫理委員会の承認後,10府県の高齢者介護施設(N=30)のすべての介護士・看護師(N=1,060)を対象に,2019年9~10月に無記名の自記式質問調査票による量的調査を実施した(回収率71%)。調査項目は,基本属性,雇用・労働特性,施設と職場での外国人介護職の受け入れ状況,受け入れへの期待と不安の程度,仕事のストレス,「職場のソーシャル・キャピタルと倫理的風土」の3下位尺度を含めた。欠損のない583票を解析に用いた。外国人介護職の受け入れの有無の2群による期待と不安の回答割合および施設の受け入れの準備体制の有無の回答割合はχ2検定にて,受け入れへの低い期待と強い不安の有無の2群による仕事のストレスと「職場のソーシャル・キャピタルと倫理的風土」の3下位尺度の平均値の差はt検定にて検討した。

結果 対象者の平均年齢は42.6(±12.2)歳,女性が67%で,対象者の36%が現在の施設で,22%が職場で外国人を受け入れていた。施設の受け入れの準備体制について全7項目で「わからない」の回答が最も多かった。受け入れへの期待については対象者全体の8割が「多少・全くない」と回答し,受け入れの不安については3割が「非常に・かなり不安」と回答した。一方,外国人介護職が働く施設の者はそれ以外の者に比べ,施設と自分の職場での受け入れに対し,期待が「全くない」「非常に不安」との回答割合が有意に低かった。受け入れに対し期待が「全くない」者は,それ以外の者に比べ職場のソーシャル・キャピタルと倫理的リーダーシップの平均値が有意に低かった(p<0.05)。受け入れに非常に不安な者はそれ以外の者に比べ,仕事のストレスの平均値が有意に高く(p<0.01),職場のソーシャル・キャピタルの平均値は有意に低かった(p<0.05)。

結論 日本人という同質のケア従事者が異質の外国人を排斥するような職場風土より,むしろ現存する仕事のストレスや人間関係に関わる職場環境の課題が,外国人介護職の受け入れに対する低い期待度や強い不安を抱くケア従事者に認められた。課題の解決の取り組みとともに取り組みの周知の必要性が示唆された。外国人材の長期定着化に向け,受け入れ後の日本語や資格合格を目指した教育・訓練とともに,やりがいのある職場環境の構築がより一層,望まれる。

キーワード 高齢者介護施設,外国人,介護職,職場環境,不安,期待

 

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