論文
第68巻第13号 2021年11月 不登校発生に関連する家族要因の検討-子育て世帯全国調査データを用いて-白片 匠(シラカタ タクミ) 平 和也(タイラ カズヤ)長尾 青空(ナガオ セイキ) 伊藤 美樹子(イトウ ミキコ) |
目的 児童生徒の不登校は,犯罪行為や様々な疾患との関連が報告されており,公衆衛生上も重要な課題である。しかし,成育環境の中心を担う家族要因と不登校との関連に関する研究はほとんどされていない。本研究では,不登校発生と家族要因との関連を明らかにすることを目的とした。
方法 労働政策研究・研修機構が行った「第1回(2011年),第2回(2012年)子育て世帯全国調査」を二次利用し,子どもの人数が3人以下の世帯で,子ども全員が小学生から高校生に含まれ,不登校に関する質問に回答のあった1,884世帯を分析対象とした。ひとり親世帯とふたり親世帯を層化サンプリングしていることから,ひとり親・ふたり親の世帯別に分析を行い,不登校発生の有無を従属変数とし,独立変数には家族要因として子どもの人数や性別,世帯年収,しつけの厳しさ,子どもと過ごす時間を投入した多変量二項ロジスティック回帰分析を行った。
結果 ひとり親世帯は789世帯で,うち不登校ありの世帯は99世帯(12.5%)であった。また,ふたり親世帯は,1,095世帯で,うち不登校ありの世帯は55世帯(5.0%)であった。多変量二項ロジスティック回帰分析の結果,不登校のリスクは,ひとり親世帯では,600万以上800万円未満(参照基準:世帯年収200万円未満に対するオッズ比(OR)=0.12,95%信頼区間(95%CI):0.02-0.98)が低く,しつけをやや甘やかしている(参照基準:とても厳しいに対するOR=8.19,95%CI:1.04-64.39)が高かった。一方,ふたり親世帯では600万以上800万円未満(OR=0.07,95%CI:0.01-0.43)と1000万円以上(OR=0.14,95%CI:0.03-0.75)が不登校のリスクが低かった(いずれも参照基準,200万円未満)。
結論 不登校発生に関連する家族要因として,全国平均の世帯年収よりも低いことやしつけの厳しさで甘やかしている家庭では,不登校発生のリスクが高いことが示唆された。
キーワード 不登校,家族要因,子ども,世帯年収,しつけ