論文
第69巻第6号 2022年6月 COVID-19の感染拡大における地域活動の参加数
池田 晋平(イケダ シンペイ) 長谷川 裕司(ハセガワ ユウジ) 関本 繁樹(セキモト シゲキ) |
目的 地域在住高齢者を対象に,新型コロナウイルス(以下,COVID-19)の感染拡大における地域活動の参加数の変化が幸福感にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることである。
方法 神奈川県綾瀬市の要介護度1~5の判定を受けていない地域在住高齢者を対象とした。調査Ⅰ(初期調査)は2019年12月に郵送法で実施した「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」をもとにした。調査Ⅰは970名(無作為抽出)を対象に673名から回答を得た。第1回目の緊急事態宣言(2020年4月7日~5月6日)と第1波のピーク時期(同年5月初旬)を経て,調査Ⅱ(追跡調査)は同年7月に郵送法で実施した。調査Ⅱは,転出等を除く663名が対象で471名から回答を得た。調査内容は,基本属性,幸福感(0~10点のVAS),地域活動(ボランティア,スポーツ,趣味,学習・教養,老人クラブ,町内会・自治会の6項目)の参加数とした。分析は,2時点の地域活動の参加数から「増加群」「維持群」「減少群」「なし群」の4群に分類し,各群の2時点の幸福感の差を対応のあるt検定で確認した。また「なし群」を対照に各群の幸福感の変化の違いを一般線形モデルの反復測定を用いて,時間と群の交互作用の評価を行った。分析は欠損値を除いた計370名とした。
結果 対象者の平均年齢は74.4歳で,女性50.8%であった。2時点の地域活動の参加数の平均は1.52,1.13で,幸福感の平均は7.3,7.0であった。地域活動の参加数の変化は「増加群」11.6%,「維持群」24.9%,「減少群」35.1%,「なし群」28.4%であった。「増加群」の幸福感は2時点それぞれ7.5と7.6で有意差は認められず,「なし群」の幸福感は調査Ⅰ時点で6.8と4群で最も低く,さらに調査Ⅱ時点で6.3と低下し有意差が認められた。時間と群との交互作用が有意であったのは「なし群」と「増加群」,「なし群」と「減少群」で,いずれも「なし群」に有意な主効果が認められた。
結論 「なし群」つまり2時点において地域活動に不参加であることは,幸福感に負の影響を及ぼすことが示され,高齢者が地域活動に参加し社会的な交流を維持することは重要といえる。「増加群」は幸福感が上昇していることが示され,高齢者施策として,COVID-19の感染対策と地域活動の実践の推進を取り上げることは意義がある。
キーワード 新型コロナウイルス,COVID-19,幸福感,地域活動,地域在住高齢者,追跡調査