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論文記事:A市における一般介護予防事業としてのボランティアポイント事業の効果 202207-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第69巻第7号 2022年7月

A市における一般介護予防事業としての
ボランティアポイント事業の効果

-高齢者の地域活動への参加と介護予防の観点から-
伊藤 大介(イトウ ダイスケ) 斉藤 雅茂(サイトウ マサシゲ)

目的 地域の支え合いを広げ,介護予防や生活支援を図るための手法であるボランティアポイント事業(以下,VP事業)を活用した取り組みが各地にあるものの,効果検証は十分でない。本研究はA市のVP事業に着目し対照群を設けたデータを用いて,A市のVP事業参加者の特性を確認し,事業参加に伴う効果を地域活動への参加と介護予防の観点から検証した。A市では2016年10月から一般介護予防事業としてVP事業を開始し,開始から約1年後の時点で要支援・介護認定を受けていない高齢者の約17%が参加している。

方法 使用したのは,Japan Gerontological Evaluation Study(JAGES)の一環で実施された郵送自記式質問紙調査2時点分の縦断データである。A市は,全国39市町の要支援・介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象に2016年9月~2017年1月に行われた「健康とくらしの調査2016」に参加している。これをベースラインに,約1年後の時点のVP事業参加者750人,非参加者750人をそれぞれ無作為抽出し,追跡調査を実施した。分析対象は,2時点のデータを結合できた1,185人である。町内会・自治会活動への参加など地域活動に関する4変数と声を出して笑う機会など介護予防に関する3変数を目的変数,VP事業への参加を説明変数に用い,Inverse Probability Weighting推計モデルでVP事業の参加に伴う効果を検証した。

結果 A市のVP事業参加者の特性は,女性,70歳以上,非就労などであり,これらは先行研究で地域活動に参加しやすい高齢者の特性として示されているものと一致した。一方,先行研究で関係が示されている世帯類型,教育年数,主観的健康感などの要因はA市のVP事業への参加とは関連がなかった。VP事業の非参加者に比べ参加者は,町内会・自治会活動(出現割合比:PR=1.24)や地域活動における運営係としての活動(PR=1.25)に参加するようになるほか,週1回以上は声を出して笑う機会を持つ(PR=1.06),月1回以上は友人と会うようになる(PR=1.09)など,地域活動への参加の促進や介護予防に関する効果が示された。

結論 A市のVP事業参加者の特性からすると同事業は比較的参加しやすく,1年後の状態でみる限り,地域活動への参加の促進や介護予防とって有効である可能性が示された。

キーワード インセンティブ,ボランティア,地域活動,介護予防,効果,ポイント

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