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論文記事:医師の負担軽減に伴う病院機能の集約化・重点化と患者アクセスの変化の量的な概算 202210-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第69巻第12号 2022年10月

医師の負担軽減に伴う病院機能の集約化・重点化と
患者アクセスの変化の量的な概算

江原 朗(エハラ アキラ)

目的 医師の働き方改革に伴って特定の病院機能が集約化・重点化される可能性が高く,住民の病院へのアクセスの変化を概観するモデルを作成する。

方法 特定の病院機能に関する診療圏を,「国土面積を特定の病院機能がある市町村数で割った面積を有する円である」と仮定した単純化モデルを作成し,病院の集約化・重点化によりその半径がどう変化かするかを計算した。なお,計算の仮定は,a)住民の医療需要が集約化・重点化の前後で変わらない,b)病院の規模やその分布に大きな差がない,c)診療圏の人口とその分布も大差はないとした。そして,全国の小児科病棟のある市町村が531から288に集約化・重点化された場合に円形の診療圏の半径(モデル値)と居住する市町村から最寄りの小児科病棟がある市町村までの距離(実測値)がどう変化するかを比較して近似の精度を評価した。

結果 小児科病棟が所在する市町村が531から288に減少した場合,円形と仮定した診療圏の半径(モデル値)は1.35倍(20.4㎞/15.1㎞),居住する市町村から最寄りの小児科病棟がある市町村までの距離(実測値)は1.63倍(22.7㎞/13.9㎞)となった。このモデルと実測値との間の相対誤差は|1.63倍-1.35倍|/1.63倍=0.17であり,その差は2割弱に過ぎなかった。

結論 特定の病院機能が集約化・重点化される際の地理的なアクセスの変化を市町村単位で概算する際に,診療圏を「国土面積を特定の病院機能がある市町村数で割った面積を有する円である」と仮定したこの粗い近似のモデルを用いても実測値と大きな差異は生じなかった。モデルが簡単であるため,集約化・重点化の際のアクセスの変化を示す簡便なツールとして有用であると考えられる。

キーワード 集約化,重点化,医師の働き方改革,診療圏,アクセス,小児科病棟

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