論文
第69巻第13号 2022年11月 保健活動の評価指標の検討-市町村保健師による保健活動(母子保健・健康づくり・高齢者保健福祉)の評価指標を統計項目とすることに焦点をあて-平野 かよ子(ヒラノ カヨコ) 河野 朋美(カワノ トモミ) 森本 典子(モリモト ノリコ)藤井 広美(フジイ ヒロミ) 石川 貴美子(イシカワ キミコ) |
目的 これまでに筆者らが開発してきた市町村保健師による保健活動の評価指標を統計学的に解析し,評価指標を統計項目として活用することの検討を行った。
方法 開発してきた3領域の保健活動(母子保健,健康づくり,高齢者保健福祉)の評価指標を用いて5段階尺度の自記式調査票を作成し,調査期間は平成31年1~3月に全国から無作為抽出した市町村(各領域270)の母子保健,健康づくり,高齢者保健福祉の各事業の主担当保健師に,現状の保健活動を評価することを依頼した。当初の各領域の評価指標項目数は母子保健28,健康づくり29,高齢者保健福祉25であった。項目分析と項目間相関係数の分析で評価指標の信頼性の検討を行った。また,因子分析により各領域の評価指標の構造を把握し,3領域の全体と因子ごとの評価指標項目のCronbachのα係数を用いて内的整合性を確認した。
結果 調査票の回収状況(回収率)は母子保健90(33.3%),健康づくり80(29.6%),高齢者保健福祉77(28.5%)であった。各項目の回答状況はほぼ5段階に分散し,未回答の項目は少なかった。項目分析は記述統計の平均値と標準偏差と項目間相関係数で行い,全項目間のSpearmanの相関係数に0.60以上は認められなかった。因子分析では母子保健に3因子,健康づくりに4因子,高齢者保健福祉に3因子が抽出された。健康づくりでは因子負荷量の小さい2項目は削除した。3領域の全体と因子ごとのCronbachのα係数はすべて0.72以上であった。
結論 今回の分析で母子保健の評価項目の28項目,健康づくり27項目,高齢者保健福祉の25項目に一定の信頼性およびそれぞれの領域の構成要素を明らかにすることができた。因子分析により母子保健3因子,健康づくり4因子,高齢者保健福祉3因子が抽出され,これらの因子ごとの項目群を統計項目群とすることの可能性が示唆された。市町村は評価指標項目の全体を,あるいは目的に応じて因子群を統計項目として保健活動を評価することが可能と考えられた。この統計から市町村の保健活動の取り組みの特徴と変化を可視化させる研究の必要性が示唆された。
キーワード 市町村保健活動,保健師,評価指標,質評価,統計項目