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論文記事:高校生における親への援助希求行動の関連要因 202211-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第69巻第13号 2022年11月

高校生における親への援助希求行動の関連要因

立瀬 剛志(タツセ タカシ) 赤﨑 有紀子(アカサキ ユキコ)
関根 道和(セキネ ミチカズ) 山田 正明(ヤマダ マサアキ) 鈴木 道雄(スズキ ミチオ) 

目的 若者の自殺対策として援助希求行動が重要であるといわれており,若者のSOS教育が推進されている。一方,教育現場では,若者の成長課題として自己肯定要素の欠如が問題とされているが,自己肯定感情に伴う自己解決能力の高さは援助要請行動の阻害因子としても位置づけられる。そこで今回,高校生における親への相談行動を説明する因子を自己肯定感情との関連を踏まえ分析し,援助希求行動の促進の因子とその経路を検証した。

方法 2005年富山県の高校1年生に実施した第5回富山スタディのデータ5,874名を分析に用いた(男性2,846名,女性3,028名)。パス解析を用い,4つの健康指標と5つの社会指標の説明変数から親への相談因子と自己肯定感情因子へパスを想定し,関連を認めた因子を抽出した。また親への相談へのパス経路を直接的,かつ自己肯定感情を経由した効果を算出した。分析はパス解析を行い,パス図の適合度を検証した後,男女別に多母集団分析を実施し違いを比較した。

結果 親に相談しない者は1,050名(17.9%)であり,自分を嫌いと回答した者は2,346名(39.9%)であった。パス解析による適合度は十分な値を示し,関連パスは各因子から直接親への相談に関連したものと自己肯定感情を経由して寄与したものに分かれた。親への相談との直接的関連では,良いところを認めてくれる人がいるほど(標準化推定値β=0.154),自己肯定感情が高いほど(β=0.151)親へ相談していた。,またイライラの頻度が高いほど(β=0.074),一方かんしゃくの頻度が少ないほど(β=-0.062)親へ相談していた。自己肯定感情を経由しして関連したものは,得意なことや楽しいことが関連し,良いところを認めてくれる人の存在も自己肯定感情を通して親への相談に関連した。男女別の分析でも全体での分析と同様の関連パスが有意差を示した。

結論 今回の結果は,自己肯定感情は援助希求行動を促進する重要な役割を示すことに加え,信頼できる友人や大人の存在が親への援助希求の促進に重要な役割を果たすことが示唆された。悩みを抱える若者がSOSを発するためには,自分を受け入れ肯定することに加え,認めてくれる他者の存在が重要となる。

キーワード 援助希求行動,自己肯定感情,相談相手,認めてくれる人,パス解析

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