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論文記事:地域の事例検討会記録による在宅困難事例の問題点 202212-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第69巻第15号 2022年12月

地域の事例検討会記録による在宅困難事例の問題点

-類型化の試みと解決可否の検討-
中野 寛也(ナカノ ヒロヤ) 松井 邦彦(マツイ クニヒコ) 室生 勝(ムロウ マサル)
松田 智行(マツダ トモユキ) 成島 淨(ナルシマ キヨシ)
日比野 敏子(ヒビノ トシコ) 田宮 菜奈子(タミヤ ナナコ)

目的 専門職が抱える現場の困難事例の問題点に対して解決策を提供するための多職種による地域の医療福祉事例検討会で,多職種が提示した困難事例の問題点に着目し包括的な類型化を試みた。また問題点の一部について,類型ごとにそれらの問題点が解決されたか否かを検討した。

方法 8年間の事例検討会で討議された89事例から,分析対象は76事例であった。事例から抽出された問題点について,先行研究を参考に問題点の類型化を行った。本人と周辺の関係性において生じる問題点については独立させる形で「問題点の所在」を分類し,その下位分類として「問題点の内容」を類型化した。さらに,問題点の一部について,問題が解決したか否かを検討するため,判定を2名の評価者が独立して行い,判定が2名の間で不一致だった問題点は評価者間で互いの判定の根拠を共有しながら協議し,すべての問題点の最終的な判定を決定した(初回判定一致率56.3%,Cohenのkappa係数0.48)。

結果 76事例で挙げられた問題点は194個あった。「問題点の所在」としては,本人(52個),サービス提供者(48個),介護者(36個),世帯全体(経済的問題を除く)(14個),環境(制度・システム的)(13個),介護者とサービス提供者の関係性(11個),世帯全体(経済的問題)(10個),サービス提供者間の関係性(6個),環境(物理的)(6個)の9項目を設定した。「問題点の内容」については40項目の分類を設定した。194個の問題点のうち判定対象の問題点は,96個となった。解決したと判定された問題点の割合は「問題点の所在」が「介護者」だった問題で69%と最も高く,次いで「世帯全体の問題(経済的問題)」「サービス提供者」等の順だった。「問題点の内容」別に解決された問題点が多かったのは「経済的問題によるサービス利用困難」「病状・不穏状態によるサービス利用困難」等の順だった。解決しやすい問題は多職種で知識を共有することで解決しやすくなったと考えられたが,解決しにくい問題は制度自体の問題,物理的環境の問題等,個別に介入することが難しい問題点が多く,地域ケア会議での検討や解決に向けた制度設計,政策策定が図られるべき問題点だと考えられた。

結論 今後は事例の集積により,類型の標準化が進み,困難事例に関する多職種間の共通理解が構築されること,また問題点ごとの解決策が政策に反映され,地域でその人らしく暮らせる支援の仕組みが必要である。

キーワード 在宅医療,居宅療養,困難事例,事例検討会,問題点の類型化,問題点解決の可否

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