論文
第70巻第2号 2023年2月 看護系女子大学生および母親における
佐藤 那海(サトウ ナミ) 髙橋 愛弥香(タカハシ アヤカ) 小島 結衣(コジマ ユイ) |
目的 日本は諸外国と比較すると子宮頸がん予防行動が低く,ヒトパピローマウイルス(以下,HPV)ワクチン接種率および子宮頸がん検診受診率が低い。HPVワクチン接種にはヘルスリテラシーが重要であると考えられている。研究目的は,看護系女子大学生および母親に対して,HPVワクチン接種の有無とヘルスリテラシーの関連を明らかにすることである。
方法 量的横断的研究デザインであり,2021年5月~6月に自記式質問紙法またはオンライン調査を実施した。調査内容は,属性,子宮頸がん予防行動の現状,ヘルスリテラシーであった。因子分析,信頼性分析を実施の上,ヘルスリテラシーが属性または子宮頸がん予防行動の現状と関連しているかをt検定,χ2検定を用いて分析した。
結果 対象者のうち学生414名,母親398名,合計812名に調査依頼を行い,有効回答329部(学生248部,母親81部)を分析データとした。有効回答率は学生59.9%,母親20.4%であった。HPVワクチン接種者は86名(26.1%)であり,接種理由は「母親の意向」「自治体の接種案内」,未接種理由は「副反応の不安」「存在を知らない」であった。子宮頸がん検診対象者である20歳以上の対象者人数は245名であり,子宮頸がん検診受診者は104名(42.4%)であった。検診理由は「自治体の案内」「罹患の怖さ」,未検診理由は「内診に抵抗」であった。ヘルスリテラシーはHPVワクチン接種の有無および子宮頸がん検診の有無において群間の有意差はなかった。意思決定の記憶がある人はない人より有意にヘルスリテラシー得点が高かった(p<0.05)。学生群において生殖器疾患のある人はない人よりヘルスリテラシー得点が有意に高かった(p<0.05)。HPVワクチン接種は意思決定が母親以外より母親の方が有意に多く(p<0.001),情報入手先のある人はない人より有意に多かった(p<0.001)。
結論 ヘルスリテラシーとHPVワクチン接種は関連がなかった。学生群で生殖器疾患のある人はヘルスリテラシーが高かった。HPVワクチン接種の意思決定者は母親が多かった。
キーワード 子宮頸がん,検診,パピローマウイルスワクチン,ヘルスリテラシー