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論文記事:障害福祉サービスにおけるピアサポーターの雇用に関する課題 202403-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第71巻第3号 2024年3月

障害福祉サービスにおけるピアサポーターの雇用に関する課題

-ピアサポーターを雇用した経験がない事業所を対象とした質問紙調査の内容分析-

横山 和樹(ヨコヤマ カズキ) 小川 賢一(オガワ ケンイチ) 小笠原 啓人(オガサワラ ヒロト)

小笠原 那奈(オガサワラ ナナ) 窪田 優美菜(クボタ ユミナ) 木村 智之(キムラ トモユキ)

中島 邦宏(ナカジマ クニヒロ) 稲垣 麻里子(イナガキ マリコ) 矢部 滋也(ヤベ シゲヤ)

目的 令和3年度の障害福祉サービス等の報酬改定において,ピアサポート体制加算・ピアサポート実施加算が新設され,今後は自身の障害の経験を生かして同様の障害を持つ人をサポートするピアサポーターの活躍が期待される。本研究では,これらの加算の対象である障害福祉サービス事業所のうち,ピアサポーターを雇用した経験がない事業所におけるピアサポーターの雇用に関する課題を明らかにすることを目的とした。

方法 2022年2月から9月に郵送法による質問紙調査を実施した。対象施設は,北海道内のピアサポート体制加算・ピアサポート実施加算の対象のうち,ピアサポーターを雇用した経験がない事業所とし,20歳以上の代表者に調査を依頼した。調査項目は,事業所の基本属性(選択形式),ピアサポーターの雇用に関する課題(自由記述)で構成した。データ分析は内容分析を用いて,ピアサポーターの雇用に関する課題についての同一記録単位および類似する同一記録単位をまとめたカテゴリーを作成し,ピアサポート体制加算対象施設およびピアサポート実施加算対象施設ごとに全体に対する割合を求めた。

結果 返答があった343事業所のうち,ピアサポーターを雇用した経験がない事業所は308事業所(89.8%)であった。ピアサポーターの雇用に関する課題についての7つのカテゴリーが得られ,多い順に[ピアサポーターの理解と必要性の不足][事業所の人員や業務内容から生じる問題][ピアサポーターに出会えていない状況][ピアサポーターの雇用に関わる費用負担の大きさ][地域の実情に基づく制約][ピアサポーターの就業と生活のスキルに対する不安][雇用以外の手段でのピアサポートの活用]であった。

結論 ピアサポーターを雇用した経験がない事業所は全回答数の9割程度であり,雇用が定着しているとは言い難い現状が明らかになった。事業所の多くは,ピアサポ―ターそのものや雇用に向けた制度等の知識が不足していた。また,事業所の人員不足や業務内容の問題により,ピアサポーターの雇用まで手が回らず,ピアサポーターとの協働を負担と捉える場合もあった。一方で,ピアサポーターに出会えていない等の回答もあり,地域の関連機関が連携することによって,ピアサポーターの雇用が実現する可能性もあった。以上より,ピアサポーターに関する正しい知識と実践の普及啓発,ピアサポーターの雇用に向けた組織間の連携などが課題となることが示唆された。

キーワード ピアサポーター,ピアスタッフ,ピアサポート体制加算,ピアサポート実施加算,就労支援,障害者雇用

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