論文
第71巻第6号 2024年6月 市民と保健医療専門職におけるPeople-Centered Care
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目的 日本では看護系大学が2003年より医療者主導型ケアから市民・患者主導型ケアに向けて,市民が主体的に自身の健康を創り守る社会を目指したPeople-Centered Care(以下,PCC)モデルの構築に取り組んできた。本研究の目的は,超高齢社会の現在,市民と保健医療専門職(以下,専門職)とのPCCの取り組みを推進する示唆を得るために,PCCパートナーシップの関連要因を探索することである。
方法 研究デザインは横断的記述研究であり,2017年12月~2018年4月に自記式質問紙法を実施した。対象者は医療系大学で運営しているPCC事業の活動メンバーおよび地域で市民と専門職が協同活動する健康支援活動グループのメンバーであった。調査内容は属性,PCC活動状況,PCCパートナーシップ尺度であった。分析は因子分析,信頼性分析を実施の上,t検定,一元配置分散分析,強制投入法による重回帰分析を行った。
結果 対象者への質問紙配布655部に対して回答は340部であり,有効回答は329部(有効回答率50.2%)であった。PCCパートナーシップ尺度得点は責任者以外より責任者が有意に高く(p<0.001),60歳代以上より50歳代以下が有意に高く(p=0.01),医療施設勤務者より教育研究機関勤務者が有意に高かった(p=0.003)。PCCパートナーシップ尺度得点を従属変数とする重回帰分析では,責任者の標準回帰係数(β)=0.19(p=0.001)で有意に関連があった。サブグループ分析において,専門職(n=92)を対象とした解析では,性別女性がβ=0.20(p=0.045),責任者がβ=0.39(p<0.001)と有意に正の関連があった。
結論 市民と専門職におけるPCCパートナーシップの関連要因は,責任者であった。PCCは関連要因として明らかになったメンバーのリーダーシップと協力を得て活動促進を図ることが有用であると示唆された。
キーワード People-Centered Care,横断的研究,重回帰分析,市民主導型ケア