論文
第72巻第4号 2025年4月 超高齢社会に最適な介護システムとは産賀 崇由(ウブカ タカヨシ) 牧 陽子(マキ ヨウコ) 湯山 和子(ユヤマ カズコ) |
目的 わが国においては,少子高齢化の進展により高齢化率が一貫して上昇しており,高齢者介護の質の向上と共にその効率化が求められている。そこで,今後の要支援・要介護認定者の増加に対して現在の介護サービスが十分に対応できるのか未来予測を行い,質の高い介護を効率的に提供するために最適な介護システムを検討した。
方法 介護保険事業状況報告の平成12(2000)年度末から令和3(2021)年度末までの要支援・要介護認定者数のデータについて,指数平滑法による時系列分析を行い,2045年度末までの要支援・要介護認定者数を予測した。また,介護給付費等実態調査および介護給付費等実態統計の平成13(2001)年度から令和4(2022)年度までのサービス種類別受給者数のデータについて,指数平滑法による時系列分析を行い,2045年度までのサービス種類別の年間受給者数を予測した。
結果 要支援・要介護認定者数は,2045年度末には1163万人になることが予測されたが,要介護認定者数に限れば776万人にとどまることが予測された。訪問介護,通所介護,訪問看護を含む居宅サービスの年間受給者数は2045年度に653万人になることが予測された一方,施設サービスの年間受給者数は176万人にとどまることが予測された。また,地域密着型サービスの2045年度における年間受給者数は307万人になることが予測された。居宅サービスのうち,訪問介護,通所介護,訪問看護の受給者数が著しく増加することが予測された。地域密着型サービスにおいては,地域密着型通所介護の2045年度の年間受給者数が63万人になると予測されたのに対し,認知症対応型共同生活介護は35万人,その他はそれぞれ20万人以下であることが予測された。
結論 2045年度における要支援・要介護者が受給する主な介護サービスは,居宅サービスと地域密着型サービスであることが予測された。居宅サービスと地域密着型サービスでは通所介護,訪問介護,訪問看護が主な介護サービスになり,これらは受給者1人当たりの費用額も安価であることから経済合理性もある。しかし,訪問介護は介護職員の不足等の問題があることから,デイサービスのハブ化により通所介護,訪問介護,生活支援などを一体的に提供することにより在宅サービスの質の向上と経済合理性とを同時に実現できる地域福祉拠点を構築する必要があると考えられた。
キーワード 居宅サービス,通所介護,訪問介護,生活支援,地域福祉拠点,未来予測