論文
第72巻第4号 2025年4月 日本の地域別将来推計人口と患者調査を用いた
|
目的 新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)による人口動態変化や受療行動変化がもたらす医科患者数推移を明確にすることを目的に,COVID-19流行前,流行中,流行後に発表された公的データを用い,都道府県別,年齢階級別,入院外来別に患者数を推計した。
方法 患者の受療行動を表す受療率として,COVID-19流行前(2017年)と流行中(2020年)に実施された「患者調査」(厚生労働省)を用いた。推計人口は,COVID-19流行前(2018年)と流行後(2023年)に実施された「日本の地域別将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)を使用した。これらのデータを基に,①2023年推計人口に基づく患者数推計,②推計人口変化による患者数変化,③COVID-19による患者数変化の3つを推計した。
結果 ①では,全国入院患者数のピークは2030年,全国外来患者数のピークは2025年であった。都道府県別では,患者数が最大値に達する時期は都道府県により異なる結果となった。入院患者数は2030年に最多の29県が,外来患者数は2020年に最多の31県が最大値に達する結果となった。②では,全国入院患者総数は2018年推計人口・2023年推計人口とも2030年まで増加,全国外来患者総数は2018年推計人口・2023年推計人口とも2025年まで増加し,その後いずれも減少に転じた。年齢階級別では,入院・外来患者数とも,0~4歳および75歳以上は2023年推計人口の方が少なくなった。③では,2020年患者調査を用いた入院患者数は,全ての都道府県で2017年患者調査を用いた入院患者数を下回っていた。外来患者数は,2020年患者調査が2017年患者調査を上回ったのが15県,下回ったのが32県であった。
結論 本研究では最新の推計人口と患者調査の受療率を用いて患者数推計を実施した。引き続きより簡便で精度の高い統計調査方法を模索し,継続的に患者数推計を実施していく。
キーワード COVID-19,人口動態,外国人入国超過,推計人口,患者調査