論文
第72巻第5号 2025年5月 中学1年生の1学期における登校回避感情の関連要因鈴川 清美(スズカワ キヨミ) 土田 ももこ(ツチダ モモコ) 朴峠 周子(ホウトウゲ シュウコ) |
目的 中学1年生の1学期における登校回避感情の関連要因を明らかにする。
方法 東京都内の公立中学校3校に通う中学1年生449名を対象に,2022年6~7月に,属性,学校生活に関する意識(4因子),学校適応感(4因子),ストレス反応(4因子),登校回避感情に関する無記名自記式質問紙調査を実施した。調査への回答が完全であった354名を分析対象とした。各変数間の下位尺度との関連についてSpearmanの順位相関分析を行った後,有意な関係を認めた変数について仮説モデルにもとづき共分散構造分析を行った。
結果 学校生活に関する意識の「教師との関係」「友人関係」「クラスへの意識」「学業への意識」が学校適応感の「課題・目的の存在」に,また「友人関係」「クラスへの意識」「学業への意識」が学校適応感の「劣等感の無さ」に,それぞれ関係していた。そして,学校適応感の「課題・目的の存在」はストレス反応の「身体的症状」を介して,また直接的に登校回避感情に関係しており,「劣等感の無さ」はストレス反応の「身体的症状」を介して登校回避感情に関係していた。
結論 中学1年生の1学期においては,教師や友人との関係,クラスや学業への意識が,学校における課題や目的および劣等感に影響し,身体的症状を介して,または直接的に登校回避感情につながることが明らかとなった。したがって,教師や友人との良好な関係構築,クラスの雰囲気,授業内容の理解に配慮し,生徒が学校生活に意義や目的を見いだし,劣等感を持つことのないよう援助することが重要であり,身体的症状を呈する者には,登校回避感情のサインである可能性を踏まえて早期の対応が必要と考えられた。
キーワード 中学1年生,登校回避感情,身体的症状,学校適応感,学校生活に関する意識