論文
第72巻第6号 2025年6月 独居高齢者におけるフレイルのリスクに関連する要因山田 裕加(ヤマダ ユカ) 三上 章允(ミカミ アキチカ) 奥村 茂夫(オクムラ シゲオ) |
目的 地域で生活する独居高齢者の生活状況とフレイルのリスクに関連する要因を明らかにする。
方法 東海地方のA県B市高齢福祉課と民生委員児童委員連絡協議会の協力を得て,独居高齢者1,580名に対して,2022年8月から10月に無記名自記式質問紙を用いた悉皆調査を実施した。対象者は,B市民生委員児童委員(以下,民生委員)が要援護者として定期訪問している独居高齢者で,除外基準はB市以外に在住,65歳未満,要介護1以上の認定を受けている者とした。対象者への質問紙の配付は民生委員が行い,返信用封筒にて研究者宛てに返信してもらった。調査内容は,年齢,性別,要介護認定,現在の体調,イレブンチェック(フレイルのリスク),GDS5(うつのリスク),健康維持行動の類型等について回答を得た。イレブンチェックとGDS5は合計得点を算出し,カットオフ値でフレイルのリスク高群/低群,うつのリスク低群/高群に分類した。すべての質問項目において,記述統計量を算出した。フレイルのリスクを従属変数とし,健康維持行動,うつのリスク,生活状況を独立変数として,属性を調整した多重ロジスティック回帰分析を行った。
結果 1,184名(回収率:74.9%)より返信があり,B市以外に在住,65歳未満,要介護認定が不明もしくは要介護1以上,イレブンチェックに欠損ありを除いた835名(有効回答率:70.5%)を分析対象とした。フレイルについては,男女ともに約6割がリスク高群であった。健康維持行動の類型は,男性は資料・視聴型を希望する人が多く,女性は参加型を希望する人が多かった。フレイルのリスク高群になる健康維持行動は,参加型に対して資料・視聴型のオッズ比(OR)=1.55,95%信頼区間(CI)=1.04-2.29,訪問型(OR=1.88,95%CI=1.13-3.12),健康維持行動の類型以外の要因では,現在の体調(OR=2.65,95%CI=1.52-4.62),人との交流(OR=1.52,95%CI=1.03-2.24),うつのリスク(OR=5.00,95%CI=3.34-7.47)で正の関連が示された。
結論 地域で生活する独居高齢者がフレイルにならないためには,健康維持に関する教室等に参加する,人との交流を行う,うつのリスクが低い,体調がよいことが影響すると示唆された。そのためには,地域全体で独居高齢者を支えていくことの重要性が確認された。
キーワード 悉皆調査,イレブンチェック,健康維持行動,独居高齢者,フレイル