論文
第72巻第6号 2025年6月 高齢化の進む秋田県内の慢性期入院と
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目的 地域医療構想における慢性期機能は,療養病床,在宅医療(居宅),介護施設の3要素で構成されるが,各地域で3要素の整備状況は大きく異なっている。本研究では,人口減少および高齢化が加速する秋田県をモデルに,データに基づく慢性期3要素の地域特性分析手法を確立し,どのようなバランスで3要素が提供されているのかを明らかにすることで,医療資源の乏しい地域における今後の慢性期機能の在り方の検討を行うことを目的としている。
方法 独立変数として,総人口,高齢化率,療養病棟入院基本料の性・年齢調整標準化レセプト出現比(Standardized Claim-data Ratio:以下,SCR)(以下,療養SCR),在宅患者訪問診療料等SCR(以下,在宅SCR),施設介護サービス給付件数,療養病床数,長期入院に関連する病床数(療養病床を除く,以下同じ),在宅療養支援診療所に勤務する医師数,介護保険施設定員の9つを用いて,秋田県の市町村を対象にクラスター分析を行った。さらに,クラスターごとに各変数の中央値を三段階で評価することで,各クラスターの客観的な特性付けを行った。
結果 秋田県内の20市町村は5つのクラスターに分類できた。クラスターごとに各変数の中央値を評価したところ,クラスター1では療養SCRと在宅SCRの評価が高値,クラスター2では長期入院に関連する病床数の評価が高値,クラスター3では施設介護サービス給付件数の評価が平均,クラスター4では在宅SCRの評価が高値および施設介護サービス給付件数の評価が平均,クラスター5では施設介護サービス給付件数の評価が高値という結果が得られた。また,総人口の中央値はクラスター1,2,4,3,5の順で大きく,65歳以上人口に占める要介護3以上認定者数の割合(以下,要介護3以上認定者数の割合)の中央値は,クラスター1,2,4,3,5の順で小さかった。
結論 秋田県内の慢性期機能は,人口規模の縮小や要介護3以上認定者数の割合の増加に伴い,医療型の慢性期機能から,医療・介護型の慢性期機能を経て,最終的に介護型の慢性期機能へと形を変化させていく現状が明らかになった。国および自治体は,療養病床や在宅医療に関する資源の有効活用に加え,介護施設等を活用した医療と介護をシームレスに提供する仕組みづくりにより,医療・介護のいずれかだけではなく,地域の特性に即して双方がバランス良く存在する慢性期機能の確立に取り組んでいく必要があると考えられる。
キーワード 慢性期医療,療養病床,在宅医療,介護施設