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論文記事:介護保険における財源確保策についての調査研究 20250701 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第72巻第7号 2025年7月

介護保険における財源確保策についての調査研究

-「加入開始年齢の早期化」と「利用時の自己負担率の引き上げ」を中心に-

塚原 康博(ツカハラ ヤスヒロ)

目的 本論文の目的は,介護保険の財源確保策として国民が望ましいと考えている施策とは何か,そして施策のうち加入開始年齢の早期化と自己負担率の引き上げに注目し,それらの施策を支持する人の属性とは何かを検証することであり,併せて近年注目されているシルバー民主主義の議論に対して本研究の結果がどのような示唆を与えるのかを示すことである。

方法 本論文では,筆者が独自に実施した全国調査から得られたデータを使用し,統計解析を行った。まず,四者択一による望ましい財源確保策についての回答の分布を示し,加入開始年齢の早期化と自己負担率の引き上げ,それぞれについて,どのような属性をもっている回答者がそれらの施策を支持しているかを調べるために二項ロジスティック回帰分析を行った。次に,望ましい加入開始年齢についての回答の分布を示し,年齢によって望ましい加入開始年齢に違いがあるかを調べるために分散分析を行った。そして,財源確保策として利用時の自己負担増に限定した場合に,自己負担率の一律引き上げか,高所得者の自己負担率の引き上げかのどちらが望ましいかの回答の分布を示し,この選択で回答者の属性が影響しているかを調べるために二項ロジスティック回帰分析を行った。

結果 主な結果として,望ましい財源確保策についての回答の内訳は,「加入開始年齢の早期化」が29.9%,「利用時の自己負担率の引き上げ」が23.3%,「介護保険料の引き上げ」が7.3%,「公費投入の増加」が39.6%であり,「加入開始年齢の早期化」と「利用時の自己負担率の引き上げ」,それぞれを支持する回答者の属性については,前者において,中高年層がそれを支持し,後者において,高齢層がそれを支持し,男性がそれを支持しない傾向がみられた。望ましい加入開始年齢については,回答者の4割弱が早期化を支持しており,若年層と比べ中高年層で加入開始年齢を早めるべきという傾向がみられた。

結論 財源確保策への政策的な含意については,さまざまな施策を組み合わせた漸進的な改革が望ましく,加入開始年齢の早期化については,国民,とりわけ若年層に対する説明と説得が必要である。そして,自己負担率の引き上げについては,若年層との比較で高齢層のほうがそれを容認する傾向があるので,シルバー民主主義で主張される高齢者を優遇する施策において,それが過大にならないように注視する必要があるだろう。

キーワード 介護保険,財源確保策,加入開始年齢の早期化,自己負担率の引き上げ,シルバー民主主義

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