論文
第72巻第7号 2025年7月 住民主体の通いの場である
|
目的 住民主体の通いの場への参加は地域在住高齢者の健康に寄与することが知られているが,その効果について医療経済的視点から検証した報告は少ない。そこで本研究では通いの場への参加とその後3年間の医療費との関連について明らかにすることを目的とした。
方法 北海道恵庭市に居住する要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1,000名を対象に自記式質問紙を用いて,生活習慣や健康状態,通いの場への参加状況を調査し,703名から回答を得た。医療費データが得られた415名のうち,データ欠損者や追跡不能者を除外した334名を解析対象とした。通いの場への参加評価はいきいき百歳体操(以下,百歳体操)への参加とした。2019~2022年の入院費,入院外医療費,調剤費,歯科医療費について,2019年を基準としたその後3年間の各年医療費差額の合計を算出した。百歳体操への参加の有無を独立変数,各年医療費差額の合計を従属変数とし,年齢,性別,生活習慣,社会的要因,健康状態を調整変数とした重回帰分析を実施した。
結果 百歳体操に1年以上参加している者は全体の9.9%であり,参加者は女性が多く,独居者の割合が多かった。百歳体操への参加と2019年を基準とした各年医療費差額合計との関連を検討した結果,歯科医療費において百歳体操非参加者と比較して参加者は負の値を示した(β=-8.6,95%信頼区間:-15.3--1.9)。
結論 高齢者の医療費抑制に寄与する介護予防施策の設計において,地域住民主体の通いの場という包括的なアプローチが有効な手段となり得る可能性が示唆された。今後,介護費用を含む生涯医療費への影響や,プログラムの持続性などについて長期的な検討が必要である。
キーワード 地域在住高齢者,通いの場,介護予防,医療費