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論文記事:地域高齢者の血清アルブミンの改善が「知的能動性」の低下リスクに及ぼす影響 20250801 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

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第72巻第8号 2025年8月

地域高齢者の血清アルブミンの改善が
「知的能動性」の低下リスクに及ぼす影響

-秋田県大仙市介護予防のための栄養改善活動-

熊谷 修(クマガイ シュウ)

目的 高齢者の介護予防のための栄養状態の改善そのものが,老化に伴う高次生活機能の変化に及ぼす影響は明らかにされていない。本研究の目的は,地域高齢者集団を対象とした栄養改善活動による血清アルブミンの変化が,その後の高次生活機能「知的能動性」の自立度の低下リスクに及ぼす影響を明らかにすることにある。

方法 対象は秋田県大仙市において行われた2年間(2012年4月~2014年3月)の栄養改善活動による血清アルブミンの変化が評価できた2,954名(男性1,480名,女性1,474名,平均年齢74.5歳)である。高次生活機能「知的能動性」の自立度は老研式活動能力指標を用い栄養改善活動終了時の2014年と2年後の2016年に測定された。分析は目的変数を2年間の知的能動性得点の1点以上の低下,説明変数を栄養改善活動期間における血清アルブミン変化量の3分位カテゴリー変数(第一3分位:低下・不変グループ(0.0g/dL以下),第二3分位:やや改善グループ(0.1~0.2g/dL増加),第三3分位:改善グループ(0.3g/dL以上増加))および主要な交絡要因とするポアソン回帰分析によった。

結果 栄養改善活動前後において対象の血清アルブミン平均値は4.27g/dLから4.38g/dLへ有意に増加し,39.3%の者が0.3g/dL以上増加し改善グループに属した。対象のベースライン時の知的能動性得点の平均値は3.67点であり,13.5%の者が2年間に1点以上低下した。ポアソン回帰分析の結果,血清アルブミン変化量の低下・不変グループを基準としたとき,やや改善グループおよび改善グループの知的能動性の得点低下のリスク比(95%信頼区間)はそれぞれ0.95(0.74-1.23),0.74(0.58-0.94)となり,改善グループのリスク比の低下は有意であった。この関係は主要な交絡要因の影響を調整して得られたものであり独立的であった。

結論 自立した地域高齢者において,臨床医学的には基準範囲の血清アルブミン値の栄養状態であっても,より良好に改善することは認知機能レベルが反映された知的能動性の自立度の低下を予防するのに有効なのかもしれない。

キーワード 地域在宅高齢者,血清アルブミン,栄養改善活動,知的能動性,認知機能,介護予防活動

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