論文
第72巻第8号 2025年8月 地域DOTS支援に関する外国出生結核患者の特徴上野 和沙(ウエノ ナギサ) 吉川 実里(ヨシカワ ミノリ) 村上 浩美(ムラカミ ヒロミ) |
目的 外国出生結核患者は結核治療脱落中断率が高い。栃木県県南保健所および安足保健所管内では外国出生結核患者の割合が多いことから,管内の新登録結核患者のうち,日本出生患者と比較した外国出生患者の特徴を明らかにすることを目的とした。
方法 2020~2022年に栃木県県南保健所または安足保健所において新規登録された結核患者を対象に,外国出生者と日本出生者との間で服薬中断リスクの保有割合を比較した。服薬中断リスクには県が定める服薬支援のためのリスクアセスメント票を用いた。比較には粗オッズ比および年齢調整オッズ比を用い,統計学的有意水準を0.05とした。
結果 分析対象は155人(外国出生39人,日本出生116人)であった。日本出生結核患者と比較し,外国出生結核患者は若年者が多く,勤労者が多かった(外国出生69.2%vs日本出生35.3%)。疾患の特性では薬剤耐性が多かった(外国出生10.3%vs日本出生1.7%)。患者の情報では身体の障害が少なく(外国出生0.0%vs日本出生11.2%),精神障害・認知症も少なく(外国出生0.0%vs日本出生12.1%),喫煙の習慣も少なく(外国出生2.6%vs日本出生15.5%),意思疎通(日本語の理解等)不足が多かった(外国出生92.3%vs日本出生1.7%)。社会背景では介護の必要が少なく(外国出生0.0%vs日本出生17.2%),生活・就労・居住不安定が多かった(外国出生12.8%vs日本出生3.4%)。さらに,服薬支援方法について訪問DOTSが選択されることが多かった(外国出生79.5%vs日本出生50.9%)。年齢の影響を考慮すると,喫煙の習慣(年齢調整オッズ比0.3(95%信頼区間0.1-0.8)),意思疎通(日本語の理解等)不足(年齢調整オッズ比108(95%信頼区間34-347)),訪問DOTS(年齢調整オッズ比2.8(95%信頼区間1.1-7.1))と関連があった。
結論 外国出生結核患者は,日本語の理解等の意思疎通不足が多く,直接対面する訪問DOTSによる支援を受けやすい傾向がある。
キーワード 結核,地域DOTS,外国人