論文
第72巻第8号 2025年8月 介護支援専門員の地域の社会資源との
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目的 地域包括ケアシステムの構築のためには高齢者の在宅生活を支えることが重要とされている。そして,介護保険制度運営の要とされる介護支援専門員には,医療介護連携やインフォーマルな資源等の多様な社会資源を活用するための質の高いケアマネジメントが求められている。本研究の目的は,介護支援専門員の地域の社会資源との連携における現状と課題を検討することである。
方法 調査対象は熊本県の居宅介護支援事業所680カ所の管理者であり,質問紙を用いた郵送調査を実施した。調査内容は,①管理者(回答者)の基本属性,②居宅介護支援事業所の特性,③地域の社会資源との連携の実行度と困難度,④地域の社会資源とのつながりの状況,⑤地域の社会資源との連携の促進要因・阻害要因とし,本研究では①③のデータを用いた。調査は2023年10月から11月末までの間に実施した。地域の社会資源に関する24項目との連携について,実行度と困難度の指数を求めて相関係数を推定し,散布図により両者の関係を考察した。
結果 送付数680件のうち,有効回答数は282件(回収率41.5%)であった。介護支援専門員の連携において高い実行度を示したのは,訪問介護や通所介護等の介護保険サービスの他,地域包括支援センター,病院の地域医療連携室,かかりつけ医,民生委員,近隣住民等であった。そして,これらの中でかかりつけ医,民生委員,近隣住民との連携に困難さを感じていることが示唆された。
結論 介護支援専門員による地域の社会資源との連携において,①医療機関との連携を促進させるためには,病院の地域医療連携室との連携が重要となること,②高齢者世帯を支援するインフォーマルサポートとの連携のあり方やその体制を検討する必要があることが示唆された。そのため,医療と介護の連携,インフォーマルサポートとの連携のあり方を検討し,高齢者が医療・介護・生活面においてシームレスな支援を受けることができる体制を構築する必要がある。
キーワード 介護支援専門員,居宅介護支援事業所,地域,社会資源との連携,実行度,困難度