論文
第72巻第8号 2025年8月 一般市民における社会的課題に対する
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目的 社会的課題に対する社会解決志向性に個人の生活満足度,社会的連帯感,世帯収入が関連することを質問紙調査により実証的に検証することを目的とした。
方法 日本国内に在住する15~90歳の男女4,000人を研究対象とし,2023年9月28日~10月2日に,(株)クロス・マーケティング社のプラットフォームを利用したインターネット調査を実施した。調査内容は,属性,ヤングケアラーや子どもの貧困,ダブルケア等の社会的課題の事象に対する意識,社会的連帯感,生活満足度等であった。
結果 4,000人のうち,「世帯年収」「同居人の有無」「主に介助している人」「生活満足度」について,「答えたくない」または「わからない」と回答した人を除去した2,849人を有効回答として分析対象にした。多重コレスポンデンス分析およびクラスター分析の結果,社会解決への志向性が低い人は,世帯年収が500万円未満であり,29歳以下,生活満足度は不満足,社会的連帯感も低い人達であることが認められた。逆に,社会解決への志向性が高い人は,50歳代以上で,生活満足度は満足,社会的連帯感が高い人達であることが認められた。
結論 ヤングケアラー,子どもの貧困,ダブルケア,8050問題,老老介護,知的障害者の生涯学習といった課題に対して,回答者は社会で解決する問題と捉えており,社会的課題に対する社会解決志向性が高かったが,そこには特に収入格差が認められた。収入格差は社会格差となり,ソーシャル・インクルージョンの推進の阻害要因になることから,社会格差に配慮した方略の検討が必要であると考える。
キーワード 社会的課題,生活満足度,社会的連帯感,収入格差,ソーシャル・インクルージョン