論文
第72巻第11号 2025年9月 認知症対応型共同生活介護事業所における
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目的 認知症対応型共同生活介護事業所(以下,認知症GH)の介護リーダーのワーク・エンゲイジメントが,リーダー業務の遂行困難度を部分媒介し,事業所全体でのケアの実施に良好な影響を与えることの検証を目的とした。
方法 2022年9月に層化無作為抽出法にて全国の認知症GH3,000カ所を抽出し,同意が得られた775カ所に在籍する介護リーダー775名から得られたデータを解析した。調査項目は,基本属性に加えて,ワーク・エンゲイジメント,仕事の負担および仕事の資源,リーダー業務遂行困難度,事業所全体のケア実施状況であった。
結果 構造方程式モデリングの結果,仕事の資源から影響を受けた介護リーダーのワーク・エンゲイジメントは,“利用者本位のケア環境づくり”“地域連携”に関するリーダー業務遂行困難を部分媒介し,事業所で実施されるケアに良好な影響を与えていた。ワーク・エンゲイジメントは“職員の指導とサポート”“家族との連携・調整”“会議運営”に関するリーダー業務が困難なく遂行されることにも関連していたものの,これらの因子は事業所の組織的ケアに影響を及ぼしていなかった。
結論 認知症GHの介護リーダーのワーク・エンゲイジメントはリーダー業務遂行の容易さにつながり,かつ事業所全体のケアに対して良好な影響を及ぼしていることが示唆された。介護リーダーのワーク・エンゲイジメントそのものを支援することおよび介護リーダーが利用者本位のケア環境をつくることができるよう支援することが,認知症GHでの組織的なケアを実施するにあたり重要であるものと考えられる。
キーワード ワーク・エンゲイジメント,介護リーダー,認知症対応型共同生活介護事業所,認知症ケア