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論文記事:出生前検査に関する一般市民の意識 20250905 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第72巻第11号 2025年9月

出生前検査に関する一般市民の意識

-男女差に注目して-

田中 慶子(タナカ ケイコ) 菅野 摂子(スガノ セツコ) 柘植 あづみ(ツゲ アヅミ)

目的 日本における出生前検査の受検割合の相対的な低さは倫理社会的な要因が影響していると指摘されてきたが,検査技術の進展によってその様相は変化しつつある。本稿では出生前検査の受検に関する一般市民の認識や受検に関する意向を把握するため,出生前検査に関連する態度を問う4つの意識項目(①胎児のうちに知りたい情報,②(胎児の)病気や障害を気にするか,③出生前検査を受検したい/パートナーに受検して欲しいか,④妊娠・出産に関する規範)について,男女差に注目して分析した。

方法 2020年12月にボランティアパネルを用い,20~59歳の男女を対象としたインターネット調査「出生前検査に対する一般市民調査」を実施し,男性1,090人,女性1,086人,合計2,176人から回答を得た。これを用い,上記の4つの意識項目について男女差を確認し,社会経済的な属性(年齢,居住地域,配偶状態など)との関連を検討する。またクラスター分析により,男女別の各認識の連関の特徴を明らかにする。

結果 男性の方が従来的な妊娠・出産規範に賛成し,胎児のことを知りたいと思わず,病気・障害を気にしていない傾向があるが,出生前検査の受検意向は男女差がなく5割ほどが希望している。社会経済的な属性について,男性では出生前検査に関する知識の違いが,女性では実子の有無が4つの意識項目いずれとも関連していた。この出生前検査に関する知識と実子の有無を統制してクラスター分析を行ったところ,男性では2つ,女性では3つのグループに分かれた。男女ともに出生前検査を希望する層が多数派であったが,男性が「希望しない」と「わからない」が同一のクラスターに分類されたのに対し,女性は「希望しない」と「わからない」が識別された。

結論 出生前検査を受検する当事者となる女性と,そうではない当事者性の低い男性とでは,胎児のことや病気や障害など,検査で知れることに対する心構えが異なっていた。クラスター分析で女性にのみ識別された出生前検査を受けるかどうかわからないグループは,希望しないグループと同様に(胎児の)病気や障害は気にしないが,希望するグループと同じく胎児について知りたいと思っており,複雑な態度がみて取れた。また女性では,実際に出産・子育てを経験することで態度に変化がみられる可能性も示唆された。

キーワード 出生前検査,受検意向,一般市民,男女比較,妊娠・出産に関する規範

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