論文
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第73巻第1号 2026年1月 山村に住む高齢女性の主観的幸福感-岡山県高梁市宇治町と松原町の事例-野邊 政雄(ノベ マサオ) |
目的 本稿では,山村に暮らす高齢女性における主観的幸福感(モラールおよび生活満足度)の規定要因を解明する。また,多くの高齢者が農作業に従事している山村において,農作業が幸福感の向上に寄与するかについても考察する。
方法 岡山県高梁市内の吉備高原上に位置する2町で調査を実施した。対象者は,そこに居住する65歳以上80歳未満の高齢女性であり,2016年から2017年にかけて面接による悉皆調査を行った。有効回答数は139名であった。モラールおよび生活満足度を従属変数とし,階層的重回帰分析により,主観的幸福感に影響を与える要因を検討した。
結果 モラールを従属変数とした重回帰分析の結果,健康度,活動能力,就労の有無が有意な影響を及ぼしていた。健康であるほど,活動能力が高いほど,就労していないと,モラールは高かった。一方,生活満足度を従属変数とした分析では,健康度,活動能力,自家用の農作業の有無,友人関係数が有意な影響を示した。健康であるほど,活動能力が高いほど,自家用に農業をしていると,友人関係が多いほど,高齢女性の生活満足度は高かった。
結論 第1に,多くの高齢女性は食料を自給できるから,社会経済的地位(学歴や収入)は主観的幸福感に有意な影響を及ぼしていなかった。第2に,山村には医療機関や商店といった生活関連施設がほとんどなく,通院や買い物は高齢女性にとって大きな負担である。こうした環境のもとでは,ある程度健康で活動能力が高くないと山村では暮らしていくことができない。そこで,健康状態(健康度および活動能力)は主観的幸福感に対して圧倒的に強い影響力を持っていた。第3に,近年では山村においても多くの高齢女性が自動車を運転するようになり,40キロ圏内に多くの友人関係を築けるようになった。友人関係の重要性が増したこともあって,友人関係数が幸福感に影響を及ぼしていた。第4に,就労は主観的幸福感を低下させる傾向がみられた一方で,自家用程度の気軽な農作業は幸福感を高める要因となっていた。
キーワード 山村,高齢女性,主観的幸福感,モラール,生活満足度,自家用農業






