論文
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第73巻第2号 2026年2月 高齢者における訪問看護事業の認知と死亡の関連-全国高齢者パネル調査を用いて-髙橋 実鈴(タカハシ ミレイ) 廣岡 佳代(ヒロオカ カヨ) |
目的 わが国では,高齢化が進展しており,訪問看護をはじめとする保健福祉サービスの重要性はより一層高まると考えられる。本研究では,訪問看護事業の認知と死亡の関連を明らかにし,それらに関する要因を探索することを目的とした。
方法 本研究では,東京都老人総合研究所,ミシガン大学,東京大学が実施し,東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター(SSJDA)にて公開されている全国高齢者パネル調査のうち,Wave4(1996年調査),Wave8(2012年調査)のデータを用いた。分析対象は,Wave8におけるWave4からの継続回答者2,341名とした。Wave4で収集した「訪問看護事業」の「認知(はい,いいえ)」について,Wave8の死亡をイベントとして,Kaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成し,Log-rank検定を実施した。さらに,死亡のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定するために,多変量Cox比例ハザードモデルを用いた。
結果 Cox回帰分析の結果,訪問看護事業の認知は,死亡リスクの低下と有意な関連があった(ハザード比(HR)=0.79,95%信頼区間(95%CI)=0.69-0.92)。死亡と有意な関連があった項目は,70歳以上(HR=2.21,95%CI=1.82-2.68),女性(HR=0.43,95%CI=0.36-0.50),既婚(HR=0.79,95%CI=0.68-0.93),就学年数7年以上(HR=0.38,95%CI=0.22-0.68),現職あり(HR=0.82,95%CI=0.70-0.96),定期通院あり(HR=1.16,95%CI=1.01-1.33),IADLの制限あり(HR=2.23,95%CI=1.80-2.77)であった。
結論 本研究の結果,訪問看護事業の認知は死亡リスクの低下と有意な関連がみられた。訪問看護事業をはじめとする保健福祉サービスの認知とヘルスリテラシーには関連があると考えられ,ヘルスリテラシーの高さは健康行動を促進し,寿命の延伸に関連する可能性がある。今後は,高齢者のヘルスリテラシーに焦点をあて訪問看護事業をはじめとする保健福祉サービスを普及啓発していくことの重要性が示唆された。
キーワード 高齢者,訪問看護,保健福祉サービス,ヘルスリテラシー






