論文
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第73巻第2号 2026年2月 二次医療圏の医療資源と医療圏間の患者移動に関する研究関本 美穂(セキモト ミホ) 吉井 健悟(ヨシイ ケンゴ) 満武 巨裕(ミツタケ ナオヒロ) |
目的 医療計画における二次医療圏は一般的な入院医療の提供単位として設定されているが,特定の医療圏で患者の流出入がみられる。本研究は,入院患者の医療圏間の移動の実態を明らかにし,入院先選択に関連する要因を定量的に評価し,二次医療圏の見直しに関する知見を得ることを目的とする。
方法 厚生労働省の「令和2年患者調査」個票に,地理情報システムを活用して患者住所地から入院先病院所在地までの移動距離・時間を結合した。また令和2年度施設概要票を利用し,患者住所地・入院先病院所在地二次医療圏を5つのグループ(医療圏内最大の病院の一般病床数が①200床未満,②200~299床,③300~399床,④400~499床,⑤500床以上)に分類した。一般病床入院患者を対象に,入院先病院・医療圏の病床規模が,患者住所地二次医療圏(以下,居住医療圏)の病床規模により異なるか検討した。他医療圏へ移動した患者を属性,救急受診や手術の有無,居住医療圏一般病床規模,500床規模医療圏への距離・時間に基づきグループ分けし,500床規模医療圏への移動割合(流出割合)を比較した。さらにロジスティック回帰分析を実施し,500床規模医療圏受診の関連要因を検討した。
結果 解析対象者の73.2%が500床以上の医療圏に居住し,200床未満の医療圏居住者は2.1%であった。居住医療圏の一般病床規模が小さいほど,移動距離・時間が長かった。200床未満の医療圏居住者の約半数が200床未満の病院に入院し,400~499床規模の医療圏では約20%が500床規模の病院に入院していた。居住医療圏の規模が大きいほど流出割合は低下するが,規模にかかわらず80%以上が500床規模の医療圏に移動していた。ロジスティック回帰分析の結果,500床規模医療圏移動のオッズは居住医療圏の一般病床規模が大きいほど,移動時間が長いほど低下した。しかし200床未満の規模の医療圏では,90分以上の移動が必要な場合でも30%が500床規模の医療圏に移動していた。
結論 患者が他医療圏へ移動する主な理由は,大規模医療圏で高度な医療を受けるためであることが示唆された。全入院患者の約20%が500床規模の病院での治療が必要で,近隣にそのような病院がない場合,長距離移動して受診する。500床規模の病院がなければ二次医療圏内での医療完結は困難で,「500床規模の病院」は,今後医療機関の連携,再編,集約化を検討する際の指標になると考える。
キーワード 二次医療圏,医療資源,患者移動,医療アクセス,医療提供体制,地域医療






