論文
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第73巻第3号 2026年3月 介護施設職員の私的自己意識と自己調整学習,
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目的 介護職者等の対人援助職者は,その対人業務において,不安や悲しみなどネガティブな感情を経験しやすく,反すう傾向が強い場合,抑うつやネガティブな影響をもたらされやすい。一方で,介護職者は,日々研鑽を積み,提供するサービスの資質向上が求められることから,忙しい中でも心身の健康を保持し,仕事に対して能動的に学習(以下,自己調整学習)し,省察していく必要がある。本研究では,介護職者の精神的健康の向上を目的として,私的自己意識と自己調整学習方略,ワーク・ライフ・バランスを測定し,それらの関連を調査した。
方法 九州地方の北部にある6つの高齢者介護施設の職員に,2024年7月から8月にかけて,無記名質問紙調査を実施した。質問紙には,Rumination-Reflection Questionnaire日本語版尺度,自己調整学習方略尺度,日本語版ワーク・ライフ・バランス尺度を用いた。
結果 回答に不備がなく,高齢者への直接支援がある116名を分析対象者とした。性別は,女性72名(62.1%),男性43名(37.1%),無回答1名(0.9%)であった。所属組織は,特別養護老人ホームが75名(64.7%)と最も多く,勤務形態は,常勤が93名(80.2%)であった。私的自己意識と自己調整学習,ワーク・ライフ・バランスの関連について,共分散構造分析を行った結果,「反すう」から「仕事→家庭ネガティブ流出」への正のパス(β=0.40),「反すう」から「家庭→仕事ネガティブ流出」へ正のパス(β=0.20)がみられた。また,「省察」から「仕事→家庭ポジティブ流出」へ正のパス(β=0.23),「省察」から「家庭→仕事ポジティブ流出」へ正のパス(β=0.25)がみられた。さらに,仮説モデル⑵の検討の結果,「省察」から「自己調整学習方略」へ正のパス(β=0.47),「自己調整学習方略」から「仕事→家庭ネガティブ流出」へ負のパス(β=-0.19),「自己調整学習方略」から「家庭→仕事ネガティブ流出」へ負のパス(β=-0.30),「自己調整学習方略」から「仕事→家庭ポジティブ流出」へ正のパス(β=0.50),「自己調整学習方略」から「家庭→仕事ポジティブ流出」へ正のパス(β=0.54)がみられた。
結論 介護職者の反すう傾向は,仕事と家庭の相互に悪影響を及ぼし,省察傾向は,自己調整学習を介して,ワーク・ライフ・バランスに良い影響を与えていた。このことから,介護職者が健康に働くためには,反すう傾向を弱め,省察傾向を強化する私的自己意識を育んでいく必要があることが示唆された。
キーワード 介護職,私的自己意識,反すう,省察,自己調整学習,ワーク・ライフ・バランス






