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第73巻第5号 2026年5月 都道府県別肝がん死亡率の時系列変化と将来予測-クラスター分析および年齢・時代・出生コホートモデルによる疫学的検討-吉永 弥生(ヨシナガ ヤヨイ) 今田 寛人(イマダ ヒロヒト) 秋田 智之(アキタ トモユキ) |
目的 肝がんは依然として日本の主要な死亡原因の1つであり,その死亡率には地域差と世代差が存在する。本研究の目的は,都道府県別の肝がん死亡率の長期的推移と地域パターンを可視化し,その背景にある要因を明らかにすることである。とくに年齢・時代・出生コホートの三要因を統合的に評価し,将来の死亡率の予測および高リスク地域の同定を通じて,今後の公衆衛生政策および医療資源配分の最適化に資する知見を提供することを目的とした。
方法 厚生労働省の人口動態統計および総務省の人口推計を用い,1995~2021年の死亡数および人口データを基に解析を行った。1995~2021年の年齢調整死亡率(40~74歳)に対して階層的クラスター分析を実施し,地域別の死亡率推移パターンを分類した。さらに,2000~2021年のデータにAge-Period-Cohort(APC)モデルを適用し,それぞれの要因の効果を評価するとともに,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を用いて2030年までの死亡率予測を行い,将来の高リスク地域を抽出した。
結果 クラスター分析により,都道府県は死亡率水準および減少速度に基づき5つのクラスターに分類された。一部の地域では1995年以降の死亡率の著しい低下が確認され,早期からのウイルス性肝炎対策の影響が示唆された。APCモデルでは,70歳以上で急激にリスクが上昇する年齢効果,2000年代以降の軽度な低下を示す時代効果,および1930~1950年代生まれでピークを示し,それ以降の出生コホートで顕著に低下するコホート効果が認められた。
結論 本研究は,肝がん死亡率の構造的な地域間・世代間格差を可視化し,疫学的および政策的意義を有する包括的解析を提供した。異なる手法を組み合わせたことで,死亡率低下状況の評価および将来的なリスク予測が可能となり,今後の肝がん対策において,地域・世代特性を踏まえた戦略的なアプローチが求められることが明らかとなった。
キーワード 肝がん,死亡率,クラスター分析,年齢・時代・出生コホートモデル,地域差






