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論文記事:都市部におけるセーフスクール推進に向けた学童の傷害とリスク要因の検討 201510-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第12号 2015年10月

都市部におけるセーフスクール推進に向けた
学童の傷害とリスク要因の検討

臺 有桂(ダイ ユカ) 田髙 悦子(タダカ エツコ)田口 理恵(タグチ リエ)
有本 梓(アリモト アズサ) 今松 友紀(イママツ ユキ)
塩田 藍(シオタ アイ) 山辺 智子(ヤマベ トモコ)

目的 今日の都市部において,成長発達の過程にある学童の心身の健康や生活上の安心・安全を脅かす主要な事象として「傷害(injury)」があげられ,その発生は障害や死など重大な結果を招く恐れがある。そこで,本研究では,都市部在住の学童における,主要な傷害の実態およびリスク要因を把握・検討した。

方法 首都圏A市a行政区内4中学校に在籍する2年生全数459名に対して,無記名自記式アンケートを用いたクラス単位の集合調査法を実施した。 調査項目は①基本属性,傷害リスク要因として②環境要因,③個人要因(認知的ソーシャルキャピタル,ストレス対処能力,ライフスキル,生活習慣),④主要傷害である「スポーツ・運動中のけが」「転倒・転落」「溺水」「犯罪」「暴力・虐待」「交通事故」の過去1年間の受傷経験(ヒヤリハットを含む)の有無である。分析は,ロジスティック回帰分析を用いて,傷害とリスク要因の関連について検討した。

結果 対象者459名のうち有効回答450名(98.0%)であった。対象者は,男子232名(51.6%),女子218名(48.4%)であった。対象者における過去1年間の受傷経験では,「スポーツ・運動中のけが」263名(58.4%)が最も多く,次いで「転倒・転落」138名(30.7%),「犯罪」71名(15.8%)であった。傷害とリスク要因間では,スポーツ・運動中のけがで「性別」(オッズ比(OR)=2.07),溺水で「生活習慣:就寝時間」(オッズ比(OR)=2.77)「生活習慣:平均睡眠時間」(OR=2.48),犯罪で「地域環境の満足度」(OR=0.78),暴力・虐待で「性別」(OR=3.91)「認知的ソーシャルキャピタル(SC)」(OR=0.91)「ストレス対処能力(SOC)」(OR=0.95)が有意であった。

考察 傷害の受傷経験に「地域環境の満足度」「認知的SC」「SOC」の低さ,生活習慣の睡眠が関連していることが示唆された。学童を傷害から守るには,心身の健康の保持や危険を回避するスキル習得のための教育をはじめ,セーフスクールの理念に基づき,傷害の発生防止に向けた他分野と協働したコミュニティ・ネットワークの構築が必須であるといえる。

キーワード 傷害,リスク要因,セーフスクール,セーフコミュニティ,学校,学童

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