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論文記事:東日本大震災が市町村の要介護認定率に与えた影響  201503-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第62巻第3号 2015年3月

東日本大震災が市町村の要介護認定率に与えた影響

大澤 理沙(オオサワ リサ)

目的 本稿の目的は,東日本大震災が高齢者の健康状態に与えた影響を,要介護認定率の変化に着目して明らかにすることである。要介護認定率には地域差があることが知られているため,要介護認定率に影響を与える要因をコントロールしたうえで,震災による影響があるのか,あるとしたらどの程度であるのかを定量的に分析した。

方法 東日本大震災が要介護認定率に与えた影響を測定するために,DID推定量を用いて分析を行った。震災によるショックを処置と考え,被災地域を処置群,非被災地域を対照群として,震災が要介護認定率に与えた影響を明らかにするため重回帰分析を行った。使用したデータは,市町村単位で集計された2009年度と2011年度の要介護認定率,介護施設定員数,病床数,高齢化率,人口密度,所得である。

結果 65歳以上要介護認定率を被説明変数,説明変数に震災ダミー,被災地ダミーのほかコントロール変数を用いた推計を行った。その結果,DID推定量は0.61となり(p<0.05),65歳以上の要介護認定率の震災前後の変化が,非被災地に比べて被災地で平均0.61ポイント高いことがわかった。また,年齢階級別では,65~74歳要介護認定率では統計的に有意な値は得られなかったが,75歳以上要介護認定率では有意に正の値が得られている。そして要介護度別の推定では,中度要介護度では統計的に有意な正の値が得られている一方で,軽度要介護度,重度要介護度では正の値が得られているものの統計的に有意な値ではなかった。

結論 本稿では,東日本大震災が市町村の要介護認定率に与えた影響を明らかにするため,DID推定量を用いた分析を行った。分析の結果,震災以外の地域的な要因をコントロールしたうえでも,震災後被災地では要介護認定率が高くなっていることが明らかになった。特に年齢階級別では,震災によって75歳以上要介護認定率が平均1.1ポイント高くなっていること,また,要介護度別では,震災によって中度要介護認定率が上昇していることが示された。

キーワード 東日本大震災,高齢者,要介護認定率,市町村,DID推定量

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