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論文記事:地域で生活している精神障害者の居場所感と主観的Quality of Lifeとの関連 201410-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第61巻第12号 2014年10月

地域で生活している精神障害者の居場所感と
主観的Quality of Lifeとの関連

大場 禮子(オオバ レイコ) 米山 奈奈子(ヨネヤマ ナナコ)

目的 本研究は,地域で生活している精神障害者の居場所感と主観的QOLの関連を明らかにすることを目的とした。

方法 A県内の病院デイケアや作業所などの通所施設31カ所の利用者を対象に自記式質問紙調査を実施した。調査内容は対象者の属性,居場所感尺度,主観的QOL(WHO/QOL26),ソーシャルサポート,偏見・差別を感じたこと(認知)の有無とした。まず,QOL26全体の得点の四分位値から4群にカテゴリー化し,各群間で基本属性,居場所感尺度得点,心理・社会的要因に関連する項目の比較を行った。カテゴリー変数はχ 検定,数量変数は一元配置分散分析および多重比較を用いた。次に,居場所感の主観的QOLに対する効果を明らかにするために,QOL26の全体得点および下位尺度別の得点それぞれを従属変数,居場所感尺度得点を独立変数,主観的QOLとの間に有意な関連がみとめられたソーシャルサポート,偏見・差別の認知を統制変数とし,重回帰分析を行った。

結果 居場所感尺度得点とQOL26全体得点との間には有意な正の相関がみとめられた(r=0.38,p<0.01)。また,居場所感尺度得点とQOL26下位尺度との相関係数は,身体的領域(r=0.19,p<0.01),心理的領域(r=0.39,p<0.01),社会的関係(r=0.31,p<0.01),環境領域(r=0.31,p<0.01)と,いずれも有意な正の相関がみとめられた。重回帰分析を行った結果,QOL26の全体得点および下位尺度別の得点を従属変数としたモデルすべてにおいて,居場所感尺度得点は有意な正の関連を示したことから,ソーシャルサポートの有無や偏見の認知といった変数の影響を除去しても,居場所感が高いほど主観的QOLが高い正の相関関係が明らかとなった。「自分の病気について偏見を感じたことがある」は,QOL26の全体得点および下位尺度別のいずれにおいても有意な負の相関が示されたことから,障害者が偏見や差別を感じることは主観的QOLを低下させる要因である。

結論 精神障害があっても居場所感が高ければ,地域においてQOLが高く,いきいきとした生活を送ることができることが明らかとなった。また,精神障害者の地域生活移行の推進には,地域住民の理解を得るための普及啓発や偏見・差別のない社会・地域づくりが重要である。

キーワード 精神障害,居場所感,QOL,偏見,差別

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