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論文記事:がん診療連携拠点病院における緩和ケア提供体制と実績評価 201405-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第61巻第5号 2014年5月

がん診療連携拠点病院における緩和ケア提供体制と実績評価

田中 宏和(タナカ ヒロカズ) 片野田 耕太(カタノダ コウタ) 東 尚弘(ヒガシ タカヒロ)
中村 文明(ナカムラ フミアキ) 小林 廉毅(コバヤシ ヤスキ)

目的 わが国ではがん対策基本法に基づいてがん対策が推進されており,その1つの施策として,がん診療連携拠点病院(以下,拠点病院)が整備されている。拠点病院では指定要件に緩和ケアチームの設置が規定されているが,緩和ケアチームの定義があいまいなため現実の緩和ケアの実績や体制等には格差が懸念されている。本研究では,拠点病院における緩和ケアの提供体制と実績のばらつきを公表されているデータから観察し,緩和ケアの提供体制と実績を検討することを目的とした。

方法 国立がん研究センターのがん情報サービスウェブサイトに掲載されている,2010年9月時点の全拠点病院377病院の個別データから,緩和ケア診療加算,緩和ケア病棟入院料,がん性疼痛緩和指導管理料の算定実績件数(2010年9月から2011年8月の集計)を解析した。全拠点病院377病院で解析し,都道府県拠点病院と地域拠点病院,拠点病院の初回指定日が2005年以前の病院と2006年以降の病院で層別解析を行った。

結果 緩和ケア診療加算の1件以上の実績があった病院の割合は,34.0%(377病院中128病院),緩和ケア病棟入院料の実績があった病院の割合は17.6%(376病院中66病院),がん性疼痛緩和指導管理料の実績があった病院の割合は87.3%(377病院中329病院)だった。緩和ケア診療加算と緩和ケア病棟入院料の両方に実績がなかった病院の割合は,56.4%(376病院中212病院)だった。都道府県拠点病院では,地域拠点病院より緩和ケア診療加算の実績がある病院の割合が多い傾向にあった(54.9% vs 30.7%)が,初回指定日が2005年以前の病院と2006年以降の病院では実績のある病院の割合は差(35.3% vs 33.3%)が小さかった。

結論 緩和ケア診療加算を算定するためには,拠点病院の指定要件となっている緩和ケアチームより医師が専従であるなど厳しい人員配置が求められる。このことから拠点病院の緩和ケアチームといってもその内容には,緩和ケア提供体制と実績に差があることが観察された。各種診療報酬算定では明確な施設基準が示されているため,漠然とした緩和ケア提供体制の有無ではなく,一定の基準を満たした体制があることを客観的に判断可能である。現状では拠点病院でも診療報酬で規定される緩和ケア提供体制を満たしていない施設が多数あることから,これらを継続的に調査することで緩和ケアの整備状況を評価管理することにつながると考えられる。

キーワード がん診療連携拠点病院,均てん化,緩和ケア,緩和ケアチーム,緩和ケア診療加算,専従

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