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論文記事:高齢者のセルフ・ネグレクト事例の類型化と孤立死との関連 201603-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第63巻第3号 2016年3月

高齢者のセルフ・ネグレクト事例の類型化と孤立死との関連

-地域包括支援センターへの全国調査の二次分析-
斉藤 雅茂(サイトウ マサシゲ) 岸 恵美子(キシ エミコ) 野村 祥平(ノムラ ショウヘイ)

目的 セルフ・ネグレクトと判断された高齢者について,その主要な状態像を類型化し,基本属性および孤立死を含むセルフ・ネグレクト状態の深刻度との関連を分析した。

方法 2014年10~11月にかけて全国の地域包括支援センターを対象に行われた調査データを使用した(回収数1,731事業所,回収率38.9%)。本調査では,セルフ・ネグレクト事例として「相談受付時に高齢者自身の生命・身体・生活に影響がある」事例から「孤立死」事例まで4段階の深刻度別に該当者がいる場合に直近の1事例を収集している。ここでは,性別とセルフ・ネグレクトの状況について欠損のない1,355事例について分析した。セルフ・ネグレクトの状況は「不衛生な家屋に居住」「衣類や身体の不衛生の放置」「不十分な住環境に居住」「必要な介護・福祉サービスの拒否」「必要な受診・治療の拒否」「地域からの孤立」「近隣住民の生命・身体・生活・財産に影響」で把握しており,クラスター分析によってその主要な組み合わせを析出した。

結果 分析の結果,「不衛生型(16.5%)」「不衛生・住環境劣悪型(12.8%)」「サービス拒否型(17.4%)」「不衛生・住環境劣悪・拒否型(9.4%)」「拒否・孤立型(13.0%)」「複合問題・近隣影響なし型(12.3%)」「複合問題・近隣影響あり型(18.7%)」と命名できる7クラスターが析出され,各クラスターで認知症高齢者の日常生活自立度,障害高齢者の日常生活自立度,精神疾患の有無,住居形態,世帯構成,セルフ・ネグレクト状態のきっかけに相違がみられた。また,セルフ・ネグレクト事例のなかでも,「不衛生型」よりも「不衛生・住環境劣悪・拒否型」「拒否・孤立型」「複合問題型(近隣影響あり・なし)」のほうがより深刻な状態に該当しやすく,孤立死との間では「拒否・孤立型」のみで有意な関連が認められた(オッズ比=2.68:95%信頼区間:1.35-5.34)。

考察 高齢者のセルフ・ネグレクト状態にはいくつかの異なるパターンがあり,とくに孤立死対策という意味では複合問題型の事例だけではなく,サービス拒否や近隣関係から孤立しがちな人々へのアウトリーチが必要であることが示唆された。

キーワード 高齢者,セルフ・ネグレクト,孤立死,地域包括支援センター,複合問題,類型化

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