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論文記事:東日本大震災前後での自覚症状有訴者率の変化 201311-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第60巻第13号 2013年11月

東日本大震災前後での自覚症状有訴者率の変化

-被災者健康診査と国民生活基礎調査の比較-
渡邉 崇(ワタナベ タカシ ) 鈴木 寿則(スズキ ヨシノリ ) 坪谷 透 (ツボヤ トオル )
遠又 靖丈 (トオマタ ヤスタケ) 菅原 由美 (スガワラ ユミ ) 金村 政輝 (カネムラ セイキ )
柿崎 真沙子(カキザキ マサコ ) 辻 一郎(ツジ イチロウ)

目的 災害後に様々な疾患が増加することが報告されているが,過去の報告は受療行動に基づいており,より頻度の多い軽症で潜在的な自覚症状の推移を把握できていない。本研究では被災から6~11カ月経過した時点での東日本大震災被災者を対象として多様な自覚症状の有訴者率を調査し,震災前の一般集団における自覚症状有訴者率と比較することを目的とした。

方法 東日本大震災の被災地域である宮城県内4地区の20歳以上の住民を対象に,平成23年9月から平成24年2月にかけて国民生活基礎調査で集計されている自覚症状の有無を自記式質問紙および対面聞き取りにより調査した。性・年齢階級別の有訴者率をもとに,平成22年国勢調査における20歳以上全国人口をモデル人口として1,000人当たりの有訴者率を直接法により推定した。平時の一般集団の有訴者率として平成22年国民生活基礎調査の全国値を用い,比較検討した。

結果 20歳以上の回答者1,583人(平均64.8歳,女性56.9%)から研究同意を得た。平時の一般集団と比較して有訴者率の差が大きかった自覚症状としては(括弧内の数字は順に,被災地におけるモデル人口1,000人当たりの有訴者率;相対有訴者率比;絶対有訴者率差),「いらいらしやすい(138.4;4.2倍;+105.3)」「月経不順・月経痛(147.5;3.5倍;+105.2)」「頭痛(150.4;3.2倍;+104.0)」「腰痛(204.2;1.7倍;+80.8)」「手足の関節が痛む(127.3;1.9倍;+60.8)」「便秘(104.0;2.3倍;+59.8)」「腹痛・胃痛(70.4;3.1倍;+47.4)」等が挙げられた。

結論 東日本大震災被災者を対象とした自覚症状有訴者率の調査により,全身症状(いらいら,頭痛)・消化器系症状・筋骨格系症状・月経関連症状などが平時の一般集団と比較して被災地域住民に多く認められた。より軽微な自覚症状を網羅的に調査した本研究の結果は被災地域の保健・医療ニーズをより的確に反映していると考えられ,災害後の公衆衛生活動の道標となることが期待される。今後,経時的推移を観察するため,同地区での調査を継続中である。

キーワード 東日本大震災,自覚症状,国民生活基礎調査,公的統計,災害公衆衛生

 

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