論文
第57巻第13号 2010年11月 障害児を養育する家族のエンパワメント測定尺度
涌水 理恵(ワキミズ リエ) 藤岡 寛(フジオカ ヒロシ) 古谷 佳由理(フルヤ カユリ) |
目的 情緒障害を抱えた子どもを地域で養育する家族のエンパワメントを測定する尺度であるFamily Empowerment Scale(以下,FES)日本語版を作成し,その信頼性と妥当性の検証を行うことである。
方法 都市部と郊外の施設(計3施設)に外来通院中である5~18歳の情緒・発達障害児を養育している保護者を対象に自記式質問紙調査を実施した。回答結果から,FES日本語版の内的一貫性・再テスト信頼性・収束妥当性・弁別妥当性・因子妥当性・自己効力感尺度および自尊感情尺度との併存的妥当性・社会参加活動状況の異なる2群での既知集団妥当性について統計学的に検証した。
結果 十分な内的一貫性(Cronbach’s α:0.81-0.87)と再テスト信頼性(級内相関係数:0.79-0.82)が示され,尺度の信頼性が確認された。また収束妥当性,弁別妥当性の検討では,尺度化成功率は90%以上であった。併存的妥当性の検討では自己効力感尺度および自尊感情尺度との有意な正の相関がみられ,既知集団妥当性の検討ではFES全下位尺度得点において社会参加活動「あり」の群が「なし」の群を上回った(p<0.0001)。
結論 本研究より,FES日本語版の高い信頼性と妥当性が示され,わが国における情緒障害児の養育者を対象とした調査や研究,あるいは看護介入や長期フォローアップの評価指標として使用可能であることが示唆された。
キーワード 障害児,家族,エンパワメント,尺度,信頼性,妥当性