論文
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第72巻第12号 2025年10月 隣接する病児保育施設間の距離について－地方別・市区町村規模別の解析－江原 朗（エハラ アキラ） |
目的 感染症を疑う症状を有する子どもの登園を一般の保育所は認めていない。このため，感染症などの疾患にかかった乳幼児の保育を行う病児保育施設が全国的に整備されてきた。しかし，その定員は一般の保育所利用者数の500分の１に過ぎず，感染症の流行期には満室になる可能性が高い。したがって，近くに代替となる病児保育施設があるか否かは，保護者にとって重要な情報となる。また，近隣の施設間では競合が生じるため，これらの施設の経営者にとっても他の施設との地理的関係は有用な情報となる。このため，病児保育施設間の地理的な関係を明らかにすることが求められる。
方法 全国病児保育協議会のホームページから加盟808施設の所在地（令和7年2月4日現在値）を引用した。これらの施設の緯度・経度の差から施設間距離を計算し，各施設から他の施設までの最短距離を特定した。また，参考値としてこども家庭庁提供の令和3年度病児保育施設のリストに掲載された1,816施設についても同様な解析を行った。
結果 令和7年2月現在の全国病児保育協議会加盟施設808施設の所在市区町村の規模別分布は，「政令指定都市・東京特別区」209，「中核市」135，「その他の市」399，「町村」65であった。また，地方別には，北海道15，東北40，関東230，中部146，近畿99，中国69，四国47，九州沖縄162であった。隣接する施設までの距離が1㎞，3㎞，5㎞未満である全国の病児保育施設の割合は，令和7年値ではそれぞれ11.1％，45.9％，63.9％であった。令和3年度の参考値でも，11.4％，50.8％，68.7％と大きな差異は認めなかった。また，市区町村の規模別にみると，3㎞，5㎞圏内に隣接する施設がある病児保育施設の割合は，令和7年値，3年度値ともに「政令指定都市・東京特別区」＞「中核市」＞「その他の市」＞「町村」の順で高かった。
結論 病児保育施設間の距離を計算すると，全国の半数の病児保育施設において，その5㎞圏内に他の施設が存在していた。市区町村の規模別にみると，近隣に代替となる病児保育施設がある割合が都市部では高く，小さな市町村では低い傾向がみられた。
キーワード 病児保育施設，施設間距離，地理情報システム，ジオコーディング，全国病児保育協議会
