一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供 - 論文記事:ICD-11適用によるがん罹患集計への影響 20260904

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第73巻第11号 2026年9月

ICD-11適用によるがん罹患集計への影響

 

奥山 絢子(オクヤマ アヤコ) 寺本 典弘(テラモト ノリヒロ) 林 玲子(ハヤシ レイコ)

目的 疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)第11版は,脳又は中枢神経系腫瘍と造血器腫瘍は良性新生物を含めた分類となった。本研究では,ICD-11対応死因分類に準拠したがん罹患集計を行った場合に,従来のICD-10に準拠したがん罹患集計と比較し,どの程度集計値に変動があるのかを明らかにすることを目的とした。

方法 全国がん登録の2020年診断例を用いた。国立がん研究センターで国際疾病分類腫瘍学第3版(ICD-O-3)から変換されたICD-10を,2025年1月公表の世界保健機構のICD-10からICD-11への対応表(1対1対応表,1対多対応表)を用いてICD-11へと変換し集計を行った。1対多対応表でICD-11対応死因分類が2項目以上をまたぐがんは,ICD-O-3の情報を用いて分類を試みた。ICD-11対応死因分類に沿ったがん罹患集計分類による集計値と既存の全国がん登録基本分類による集計値を比較した。

結果 登録されていたICD-10の4桁分類の478項目のうち,ICD-11対応死因分類が2項目以上をまたぐものは12項目であった。うち7項目のがんはICD-O-3の情報を用いて分類することができた。ICD-11対応死因分類に沿った「脳又は中枢神経系の新生物」の集計値と造血器腫瘍の集計値は,「髄膜の良性新生物〈腫瘍〉D32」の9,795件や「脳及び中枢神経系のその他の部位の良性新生物〈腫瘍〉D33」の3,626件等の良性新生物等が加わったことで,それぞれ既存の集計値の約4倍と1.2倍に増加した。これを受け従来の「全部位C00-96」の悪性新生物と比べ,「悪性新生物(脳又は中枢神経系と造血器腫瘍の新生物含)」は1対1対応表で2.9%,1対多対応表で3.0%増加した。一方で「腎・尿路(膀胱除く)の悪性新生物C64-66,68」と比較し「腎又は腎盂の悪性新生物」は15.2%減少した。「大腸,肛門又は肛門管の悪性新生物」は従来の「大腸の悪性新生物C18-20」と集計範囲が異なるものの0.2%の減少であった。

結論 ICD-11対応死因分類に沿った集計では「脳又は中枢神経系の新生物」や造血器腫瘍の集計値が大きく変動することが分かった。今後,ICD-11対応死因分類に準拠したがん罹患集計を公表する場合には,国民に誤解を与えないように情報を伝える必要がある。

キーワード ICD-11,がん罹患数,がん登録

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