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論文記事 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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論文

第49巻第10号 2002年9月

障害者-健常者間の就業機会の格差:評価指標の検討

遠山 真世(トオヤマ マサヨ)

目的 障害者-健常者間の就業機会の格差を評価するための指標について検討するとともに,例示的に実際のデータを分析し,わが国における格差の実態を明らかにする。
方法 障害者の就業機会に関する多くの先行研究では,就業率・労働力率・失業率の差または比を指標として,障害者-健常者間での比較が行われている。このように複数の指標が存在する状況においては,採用する指標の種類によって結果が大きく異なり,算出された格差iこ対する評価も困難になる。そこで本稿では,<成功>の比率と<失敗>の比率から2グループ間の格差を求めるという設定で,まず<比率の差>および<比率の比>のもつ問題点を検討した。次にそれらの問題を解決する指標として<オヅズ比>を取り上げ,その特徴を他の指標と比較した。また,労働力化の段階での格差と,実際の就業達成の段階での格差とを区別することで,障害者の就業問題の内実が明確にされると考えた。
結果 比率の差および比率の比は,比率の大ささや成功率と失敗率どちらを採用するかによって,その値のもつ重要性が変化するため,格差指標として安定性に欠ける。また,比率の比を指標とすると,特定の場合において格差に対する評価が安定しなくなる可能性がある。これに対してオッズ比は,比率の値や採用する比率の種類にかかわらず広範囲で適用でき,より有効な指標であることが示された。このオヅズ比を用いて実際のデータを分析したところ,わが国では,障害者の方がやや労働力化しやすい一方で,労働力化した中での就業機会に関しては大きな格差があるという結果が得られた。
結論 われわれが多用している指標も,詳細に検討するといくつかの問題点を有していることがわかる。より有効な指標を用いて多面的に機会の格差を分析することによって,これまで指摘されてこをかった新たな問題が描出されうるのである。
キーワード 障害者,就業機会,格差指標,オッズ比,比率の比

 

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第49巻第11号 2002年10月

北海道における離婚の疫学的検討

山口 洋志(ヤマグチ ヒロシ) 西 基(ニシ モトイ)

目的 北海道は全国的にも顕著に離婚率の高い地域であるが,市町村レベルでの詳細な分析はされておらず,また,近年の離婚状況に対する統計学的な研究も十分には行われていない。そのため近年の北海道における離婚に間して,人口,人口動態指標,経済状況等との関係を市町村レベルで詳細に分析し,離婚の背景要因について考察した。
方法 1983年から 1997年までの15年間の北海道の各市町村の人口,人口動態指標を北海道衛生統計年報から求め,同期間の全道の倒産件数を北海道経済白書から求めた。統計学的検討にはピアゾンの相関分析を用いた。
結果 1.道内全212市町村の人口と離婚率との関係について検討すると,人口の常用対数値と離婚率には正の相関があり,相関係数は0.694(P<0.01)であった。 2.上記15年間を5年ずつ3期間に分け,種々の人口動態指標に関する各市町村の道内順位を求めた。婚姻件数に対する離婚件数の割合の高さに注目すると,2期間以上上位15位以内に入る8市町を選び出すことができた。これらの市町は死亡率順位の顕著な違いによって,旧産炭地からなる市町群(歌志内,三笠,上砂川,赤平,夕張,芦別)と札幌市ののベッドタウンからなる市町群(石狩,北広島)に分けられた。3.上記15年間の全道の倒産件数と全道の離婚率の年次雄移は見かけ上よく連動し,統計学的にも有意の高い正の相関関係が認められた(相関係数:0.803,P<0.001)。
結論 北海道における離婚の市町村レベルでの詳細な分析により,都市化と離婚率上昇の関係が直接的に推定された。また,婚姻件数に対する離婚件数の高い割合から選び出された8市町は,旧産炭地と札幌市のベッドタウンという著しく特性の異なる2地域に分けられ,離婚の背景要因を探る上で一助になると考えられた。経済的基盤が脆弱とされる北海道において,離婚率は倒産件数と強く連動することがわかり,経済状況と離結率の間には何らかの関係があるものと考えられ,これからの解明が期待される。
キーワード 離婚,北海道,疫学,人口動態,経済

 

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第49巻第11号 2002年10月

高齢者入浴サービスの方法とその現状

早坂 信哉(ハヤサカ シンヤ) 岡山 雅信(オカヤマ マサノブ) 石川 鎮清(イシカワ シズキヨ)
中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 梶井 英治(カジイ エイジ)

目的 全国の市区町村社会福祉協議会(以下,社協)が福祉サービスの一環として提供している高齢者入浴サービスの方法とその現状を明らかにする。
方法 全国の市区町村社協名簿より25%の系統抽出した828か所の市区町村社協の高齢者入浴サーピ担当者を対象に1999年に郵送自記式調査を行った。主な調査項目は回答者の年齢,性別,職種,実施している入浴サーピスの種類とその1998年度1年間の延べ件数,入浴時間,湯温,入浴前の血圧,体温測定実施状況,入治可否判断の基準値の有無と,基準値がある場合はその値も調査した。回答者が入浴可否判断をしている場合は,その職種について解析した。
結果 調査票の回収率は83%(回答数683)であった。入浴サーピス担当者である回答者の年齢は平均41.6歳で女が56%であった。職種は事務職30%,看護師23%,ヘルパ-18%であった。65%の社協で何らかの入浴サービスを実施しており,その1998年度1年間の延べ件数の平均は訪問入浴が570.8件,施設内入浴が2299.3件であった。入浴方法は90%が浴槽を使用しており,入浴時間は中央値8.0分湯温は同40.0℃であった。入浴前の血圧測定は94%,体温測定は95%の社協で実施しており,入浴可否判断の基準値を設けている社協は血圧については35%,体温については44%であったが,顔色や全身状態などその他の項目も参考にして入浴可否判断をしていた。入浴可否判断をしている者は看護師が53%と最も多く,次いで,介護福祉士が12%,ヘルパーが12%であった。
結論 市区町村社協が提供する高齢者入浴サービスは,浴槽を使用し40.0℃前後の湯に8分前後入浴させるとう方法で行われていることが分かった。多くの社協で入浴前の血圧測定,体温測定などのチェックが行われ,それぞれ入浴可否判断基準を設けたり,その他の状況を参考に入浴可否判断をしていたが,可否判断を行うのは看護師からヘルパーまでその職種は多岐にわたり,その医学的知識にはばらつきがあることが示唆された。
キーワード 高齢者,入浴,福祉サーピス,社会福祉協議会

 

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第49巻第11号 2002年10月

ソーシャルサポートが介護負担度に及ぼす影響

-若年の高次脳機能障害者家族の場合-
赤松 昭(アカマツ アキラ) 小澤 温(オザワ アツシ) 白澤 政和(シラサワ マサカズ)

目的 Zaritらが開発した介護負担度測定尺度を用いて若年の高次脳機能障害者家族の介護負担の構造を明らかにすることと,その介護負担と介護家族に関わるソーシャルサポートの関係を検討することを目的とする。
方法 脇損傷者介護家族会の会員499人を調査対象として,1999年9月上旬に自記式調査票を発送。有効回答数は311人で,有効回答率は62.3%となった。このうち,「遅延性意識障害者」を介護する家族からの回答を除いた229人を分析対象とした。調査項目は本人及び介護者の基本属性。介護者に関わるソーシャルサポートとして,「いつでも相談できる専門職の有無」,「いつでも相談できる親戚・知人の多少」,及び「介護を手伝う親戚・知人の多少」「介護を手伝う家族の有無」を設定した。介議負担度測定尺度は「The Burden Interview」(Zarit :1980:以下「BI尺度」)を用いた。分析方法は BT尺度の信頼性を検討し,同時に介護負担の構造を明らかにするために,因子分析を行って因子の抽出を行う。さらに,介護負担度とソーシャルサポートの関連を探るため,各ソーシャルサポートの程度を独立変数とし,BI尺度の各因子を従属変教とするT検定,または一元配置の分散分析を行う。
結果 因子分析の結果,高次脳機能障害者家嫉の介護負担の構造は,「本人への否定的な感情」「日常生活への支障感」「本人から受ける情緒的圧迫感」の3つの側面で構成きれていることが明らかになった。また,各因子の信頼性係数(クロンパックのα)はいずれも高い値を示し,また,全体的負担度を尋ねる質問項目の得点と負担度の合計得点との間にも強い相関が示された。さらに,介護負担度とソーシャルサポートとの関連について,「いつでも相談できる専門職の有無」は「本人への否定的感情」との間にで,「いつでも相談できる親戚・知人の多少」は3つの負担すべてとの間で,「介護を手伝う家族の有無」と「介護を手伝う親戚・知人の多少」は「日常生活への支障感」との間で有意な関連がみられ,いずれの場合も関わりがある場合の方が介護負担度が低くなった。
結論 本研究において修正したBI尺度は,脳損傷後の高次脳機能陣害者家族の介護負担度を測定するにあたって ,信頼性と妥当性を有していることが示された。さらに,ソーシャルサポートと介護負担度との間に関連がみられ,ソーシャルサポートの提供主体の違い,及び提供内容の違いによって介護負担の各側面に与える影響が異なってくることが示唆された。福祉・保健に関わる援助専門職はこうした各ソーシャルサポートの特性に留意しつつ,手段的サポートの提供とともに,情報,情緒的サポートの提供にも十分配慮した援助活動を行っていくことが求められる。
キーワード 高次脳機能障害,ソーシャルサポート,介護負担度,The Burden Interview

 

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第49巻第11号 2002年10月

岡山県下における診療科目別医療施設の分布と年次推移

関 明彦(セキ アキヒコ) 伊藤 武彦(イトウ タケヒコ) 吉良 尚平(キラ ショウヘイ)

目的 医療施設の分布を診療科目別に検討し,中山間地域における各診療科の医療供給状況を把握すること。同時に,人口分布との関係についても分析し,容易に医療施設を利用することができない地域,人口を診療科目ごとに検討することを目的とした。
方法 岡山県を対象地域とし,医師会会員名簿などをもとに県内の医療施設の所在地と診療科目の情報を収集した。住所の情報はアドレスマッチングにより緯度,経度情報に変換し,既報の地理情報システム用のソフトウェアを用いて,診療科目別医療施設の分布状況を地図上に表示した。また,医療施設からの距離を図示した上に,国勢調査地域メッシュ統計を用いた人口分布地図を重ね合わせて表示することにより,最寄りの医療施設から遠距離にある地域と人口の同定を行った。さらに,産科については過去30年間の分析状況の推移についても検討した。
結果 岡山県ドでは,人口の8割が集中している県南部に,医療施設の分布も集中しており,無医地区,へき地診療所の大半は,県中北部の中山間地域に認められた。内科以外の診療科についてみると,全医療施設で検討した場合と比べて,近隣に医療施設がない地域が大幅に増加し,中山間地域への施設の分布が希薄となっていることが確認できた。この傾向は特に産科,精神科で顕著であり,中心地機能をもった市町の一部にもこれらの施設が存在しないものが認められた。30年前には産科の施設も中山間地域に仏く分布していたが,その後の施設数の急減の結果,現状のようになったものであった。
結論 今回の結果から,診療科目別にみると,容易に医療施設を利用することができない地域が多数あることが確認できた。もっとも,診療科目ごとに受療率や受診頻度などが異なっているため,無医地区の定義をそのまま診療科目別の検討に用いるべきか,ぞれとは別の基準で判断すべきかは今後の検討課題であると考えらた。これまでのへき地保健医療計画などにより,中山間地域における医療基盤の整備は確実に進んでいるものの,これからもへき地医療の状況を注視し,診療科目ごとの対策なども講じていく必要があるものと考えられた。
キーワード へき地保健医療計画,医療施設分布,人口分布,統計地図,地理情報システム

 

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第49巻第11号 2002年10月

身体活動量の国際標準化

-IPAQ日本語版の信頼性,妥当性の評価-
村瀬 訓生(ムラセ ノリオ) 勝村 俊仁(カツムラ トシヒト) 上田 千穂子(ウエダ チホコ)
井上 茂(イノウエ シゲル) 下光 輝一(シモミツ テルイチ)

自的 WHOワーキンググループでは,世界各国における身体活動量の現状を把撮し国際比較をするために,国際標準化身体活動質問表(IPAQ)を開発した。本研究は,IPAQ日本語版の信頼性,妥当性を検証することを目的とする。
方法 対象は‘東京に在勤または在住する男性62人(年齢36.8土10.6歳),女性63人(年齢32.0土9.2歳)である。IPAQは,平均的な1週間における高強度および中等度の身体活動を行う日数および時間を質問するものである。仕事中,移動中,家庭内,レジャータイムなどの生活場面別に質問するLong Version(LV)と,強度別のみで質問するShort Version(SV)の2種類がある。日本語版IPAQの作成に際しては,原本を日本語に翻訳した後,英語への逆翻訳を行い,翻訳が正確であることを確認した。質問紙の回答はLVとSVの順番をランダムにして 1,8,11日目に実施し,同時に2~8日目には毎日の生活活動記録(Log)及び2種類の加速度計(CSA,ライフコーダ(LC))により身体活動量の評価を行った。CSA,LCは垂直方向の加速度を感知するものである。CSAは活動量をカウント数に換算し,LCは体重を加味して歩教と消費エネルギーに換算する。LV,SV,Log,CSA,LCの情報を基に,身体活動量を算出した。LV及及びSVにおける3回の回答より信頼性を評価し,1日目のIPAQとLog,CSA,LCのデータを比較することにより妥当性の評価を行った。
結果 LV及びSVにおける3回の回答の相関係数は,LVでは0.87~0.96(p<0.001),SVでは0.72~0.93(pく0.001)であり高い信頼性があることが示された。LV,SVとLog,CSA,LCとの相関は,LVでは0.66,0.35,0.30(pく0.001)であり,SVでは0.63,0.39,0.37(pく0.001)であり,これまでの質問表と同等以上の相関が得られた。計3回の調査において,LVより算出された消費エネルギーは, SVと比較すると約100kcal/day.程度多い傾向であった。しかし,両者の相関係数は0.80~0.88であり,非常に高い相関であった。
結論 IPAQは従来の質問表と比較して,信頼性,妥当性の面で同等以上であることが示され,身体活動量の国際比較に活用できることが示された。
キーワード IP1AQ,国際標準化,身体活動質問表,加速度計,信頼性,妥当性

 

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第49巻第13号 2002年11月

中高年者の生活状況と老後の生活に対する意識

谷垣 靜子(タニガキ シズコ) 佐藤 卓利(サトウ タカトシ) 小松 光代(コマツ ミツヨ)
岡山 寧子(オカヤマ ヤスコ) 大西 早百合(オオニシ サユリ) 阿部 登茂子(アベ トモコ)
福間 和美(フクマ カズミ)

目的 本研究の目的は,中高年者を対象に現在の生活感や健康感,さらに老後に向けての意識を明らかにすることである。
方法 533人の中高年者を対象に,健康状態,生活行動,生活満足度,対人交流,社会参加,介護経験,老後の生活に対する意識(向老意識)等に関する質問紙調査を行った。
結果 中高年者の生活満足度の特徴として,経済的な満足度が50%を切っていたことがあげられる。家族関係や近隣との関係は満足度が高かった。老後に向けての意識では,自助努力できるものに関しては,肯定的な考え方であったが,社会保障・福祉の充実などに関しては,否定的な捉え方であった。肯定的な捉え方に関連するものは,地域社会との関係や介護経験,老後に対するよいイメージであった。生活満足度や健康感に影響を及はすものは,家族関係,友人関係,食生活であつた。
結論 中高年者は経済的な満足度は少ないが,人間関係に満足し,食事に気をつけながら,老後に向けて自助努力により自立した老後を迎えようとしていることが推測された。
キーワード 中高年者,サクセスフルエイジング,生活満足度,健康感,向老意識

 

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第49巻第13号 2002年11月

交替制勤務の日常の生活習慣への影響について

-アンケート調査よリ-
金子 信也(カネコ シンヤ) 尾崎 良太(オザキ リョウタ) 前田 享史(マエダ タカフミ)
田中 かづ子(タナカ カヅコ) 佐々木 昭彦(ササキ アキヒコ) 佐藤 喜三郎(サトウ キサブロウ)
田中 正敏(タナカ マサトシ)  

目的 交替制勤務が生活習慣に及ぽす影響についての基礎資料を得るために,一工場の勤務者を対象に生活習慣の状況を調査し日勤の定時勤務者と勤務時間の不規則な交代制勤務者とを比較し,交替制勤務が生活習慣に及ぼす影響について検討した。
方法 某電子部品工場の勤務者565人を対象として,健康診断時に生活習慣調査を実施した。この工場では生産工程の必要上から,いくつかの異なる勤務体制(定時・連操・2交響・昼間連操,夜勤)を実施している。健康診断受診者565人のうち,調査に回答を得たのは542人(男性318人,女性224人)で,回収率は95.9%であった。回答者数の内訳は,定時勤務者が367人,交替制勤務者が175人であった。アンケート内容は食事,喫煙,飲酒・睡眠,運動などに関する項目とした。健康診断日前にアンケート調査票を各自に配布し,当日回収した。また,L.Breslowら,が提唱する7つの健康習慣を参考にスコア化(健康習慣スコア)し,健康度の指標とした。
結果 交替制勤務者は定時勤務者に比べて,朝食,昼食,夕食の摂取が低く,食事習慣への影響がみられ,日常の喫煙本数の増加,飲酒量の増加,休日の活動の低下,平日の平均睡眠時間の短縮が認められた。また,健康習慣をスコア化した健康度については,交替制勤務者が定時勤務者より低かった。
結論 交替制勤務者の健康度スコア値や睡眠状態などの生活習慣には勤務体制による生活時間,生体リズムの乱れが関与するものと考えられた。長時間勤務の場合には勤務時刻についても配慮が行われる必要があり,早勤と遅勤の組み合わせの場合には,勤務時刻の変更を短期間で行わず,条件によっては月単位など長期間での変更.を考慮すべきである。夜勤時間については個人の生体リズムの乱れ,生体機能の負担を考慮し,実働勤務時闘を短縮するなどの配慮が必要である。
キーワード 交替制勤務,アンケート調査,Breslowの健康習慣,食事,喫煙,睡眠状態

 

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第49巻第13号 2002年11月

都道府県保健所の市町村支援機能
に対する市町村の評価の変化

武村 真治(タケムラ シンジ) 大井田 隆(オオイダ タカシ) 杉浦 裕子(スギウラ ヒロコ)
曽根 智史(ソネ トモフミ) 石井 敏弘(イシイ トシヒロ)

目的 地機保健法施行後の,都道府県保健所の市町村支援機能に対する市町村の評価の変化を把握し,市町村支援の機能強化の推進状況と今後般の課題を明らかにする。
方法 指定都市,中核市,政令市,特別区を除く全国の3,169市町村を対象に,平成11年度と平成13年度の2回の郵送調査を実施し市町村会議における保健所職員の参加頻度・参加態度,市町村計画策定への参加・支援,市町村への情報提供,市町村が提供したデータの分析・活用に関して,4段階で評価してもらった。2回の調査から回答の得られた1,285市町村(回収率40.5%)を分析対象として,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて,平成11年度と平成13年度の評価の変化を検討した。
結果 市町村会議において,保健所職員がほとんど,またはおおむね参加していると評価した市町村は約7割で,年度間の差はみられなかった。一方,保健所職員の参加態度が積極的であると評価した市町村は,平成11年度では,62.6%,平成13年度では68.4%で,平成13年度の方が評価が高かった。保健所が市町村計画策定に参加・支援していると評価した市町村は,平成11年では33.5%,平成13年度では43.5%で,平成13年度の方が評価が高かった。保健所が情報提供していると評価した市町村は約6割,保健所が市町村の提供したデータを分析・活用していると評価した市町村は約5割,保健所にデータを提供していると「自己評価」した市町村は約8割で,いずれも年度間の差はみられなかった。
結論 保健所職員が市町村会議に積極的に参加するようになったことは保健所と市町村との共通理解のために望ましい傾向であること,市町村計計画策定への参加・支援に対する評価は改善されていたものの,他の項目と比較して低いため,より積極的な参加支援が必要であること,保健所から市町村への情報提供,市町村が提供したデータの分析・活用といった情報機能に対する評価は改善されていないため,保健所は情報機能の強化を最優先課題とする必要があることが示唆された。
キーワード 保健所機能,市町村支援,地域保雄法,情報,保健計画

 

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第49巻第13号 2002年11月

岐阜県における自殺死亡の特徴

田中 耕(タナカ タガヤス) 森 洋陸(モリ ヒロタカ) 重村 克巳(シゲムラ カツミ)
日置 淳巳(ヒオキ アツシ)

自的 岐阜県内における自殺死亡の推移および地域差を明らかにし,自殺死亡に関連する.社会生活指標との関連性を考察する。
方法 岐阜県内における自殺死亡の推移を人口動態統計(昭和40年から平成12年)により観察するとともに,地域の社会生活指標を用いて重回帰分析,主成分分析を行った。
結果 男女とも自殺死亡には明瞭な県内地域格差がみられ,二次医療圏が西から東に,南から北に移るにつれて自殺死亡率が高くなる傾向にあった。自殺死亡率の最も高い医療圏の標準化死亡比(SMR)は最も低い医療圏に対し,男性では2.1倍,女性では1.7倍であった。自殺死亡に対する社会生活指標(18項目)についての重回帰分析の結果,男女に共通して完全失業率が負,医療施設数(人口10万対)が正め相関を示した。また,主成分分析における第一主成分は都市化の程度と解釈された。
結論 自殺死亡の発生には男女とも都市化の程度が強く影響することが示唆され,経済問題よりむしろ農山村での居住が自殺死亡に関係深いことが推察された。
キーワード 自殺,標準化死亡比,社会生活指標,重回帰分析,主成分分析,地域特性

 

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第49巻第13号 2002年11月

高齢者福祉施設入所者のサービス満足度

神部 智司(カンベ サトシ) 島村 直子(シマムラ ナオコ) 岡田 進一(オカダ シンイチ)

目的 本研究の目的は,社会福祉施設に入所している高齢者(以下「入所者」とする)の施設に対する領域別満足度(『施設職員の態度の適切さ』『入所効果の実感』『食事・入浴の適切さ』『施設での快適性』の4領域からなる満足度)が,それぞれどのように関連しているのかを明らかにすることである。また,領域別満足度と入所者の施設に対する全般的な評価である総合的満足度との関連についても明らかにする。
方法 調査対象者は,近畿地方の特別養護老人ホーム(6か所)及び軽費老人ホーム(3か所)の入所者121人である。調査方法は,質問紙を用いた個人面接による横断的調査法である。調査の実施期間は1999年11月7日から12月8日までの約1か月間であった。分析方法は,まず,領域別i満足度と総合的満足度の各質問項目の回答選択肢(「ほとんどそう思わない」~「とてもそう思う」)に1~5点を付与し,満足度得点を算出した。次に,領域別満足度の相互関連について,スピアマンの相関係数を用いた分析を行った。さらに,領域別満定度と総合的満足度との関連についても同様の分析を行った。
結果 質問項目別の満足度得点は,おおむね4点以上(5点満点)と高いことが示されたが,「入所効果の実感」領域の満足度は2~3点台と他領域と比較して低い傾向にあった。領域別満足度の相互関連では,各領域間で正の有意な関連が見られた。特に「施設職員の態度の適切さ」「食事・入浴の適切さ」の2領域は,地領域と強く関連していた。領域別満足度と総合的満足度の関連では,4つすべての領域別満定度が総合的満足度と正の有意な関連を示し,特に「施設職員の態度の適切さ」「食事・入浴の適切さ」の2領域で強い関連が示された。
結論 本研究の結果,入所者の領域別満足度の相互関連が示され,また領域別満足度と総合的満足度との間で有意な関連が示された。特に「施設職員の態度の適切さ」「食事・入浴の適切さ」の2領域に関しては,他の領域別満足度や総合的満足度との間で高い関連が示された。以上の結果から,入所者のサービス満足度を高めていくためには,特に「施設職員の態度の適切き」に表される入所者への人間関係的な側面を重視するとともに,「食事・入浴の適切さ」に表される入所者への直接的な生活支援サービスに対する柔軟な対応が求められるといえる。
キーワード 高齢者福祉施設,施設入所者,領域別満足度,総合的満足度

 

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第49巻第13号 2002年11月

日本語版SF-36 を用いた地域住民のHRQOLの測定

森 克美(モリ カツミ) 川久保 清(カワクボ キヨシ) 李 廷秀(リ チョンス)

目的 健康日本21に示されているように,質を重視した健康政策を求めていくためには地域住民のQOL(Quality of Life)をモニタりングする必要がある。地域一般住民の健康関連QOL(Health Related QOL,以下「HRQOL」)を把握し,その向上に資するための情報を得ることを目的とし,米国を中心に広く利用されているHRQOL評価価尺度であるSF-36の利用可能性について検
討した。
方法 人口約10万人の東北地方T市において,20歳以上80歳未満の市民を対象として,健康意識・行動とともにSF-36の質問項目を含むアンケート調査を実施した。T市をその地理的特性から「市街地」「農村部」「海岸部」の3地域に分け,地域・性・年齢で層化無作為抽出した,対象人口の7.1%にあたる5,287人に調査票を郵送した。回収された調査票からSF-36のプロトコルに従い8つの下位尺度スコアを算出し,地域・性・年齢,それに調査票の他の設問からBMI(体重[kg]/身長[m]2)と健康行動をとり上げ,これらの要因による平均スコアの違いを検討した。
結果 地域聞で大きな差は見られなかったが,海岸部が他の地域よりも平均スコアがやや高い傾向があった。また,8つの下位尺度のうち「全体的健康観」を除く7つの下位尺度において男性よりも女性の平均スコアが低かった。年齢は,身体的健康を表す下位尺度では正の,精神的健康を表す下位尺度では負の関連が平均スコアとの間にみられた。また,BMIの低い者(<l8.5)は適正あるいはそれ以上の者よりも平均スコアが依く,健康行動の結果に期待しない者は期待する者よりも平均スコアが低かった。
考察 SF-36はQOLを多次元的に捉えるもので,各下位尺度の意味付けが明確である。下位尺度の平均スコアを様々な要因別に検討することによって政策的に重点を置くべき対象と領域が特定できる。健康政策における質の指標としてSF-36は充分検討に値する尺度である。
キーワード SF-36, QOL,BMI,健康行動,政築評価

 

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第49巻第15号 2002年12月

在宅要援護高齢者の主観的健康感に影響を及ぼす因子

早坂 信哉(ハヤサカ シンヤ) 多治見 守泰(タジミ モリヒロ) 大木 いずみ(オオキ イズミ)
尾島 俊之(オジマ トシユキ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ)

目的 在宅要援護高齢者の主観的健康感に影響を及ぼす因子を明らかにする。
方法 全国18の市町村で,65歳以上の在宅で暮らす痴呆を有さをい要援護高齢者528人を任意に抽出し,2000年9月~11月に面接聞き取り調査を行った。調査項目のうち,目的変教として主観的健康感を用い。説明変数としては,性,年齢,要介護度,通院や社会活動への参加状況などの背景因子,16の項目に対する生きがいの感じ方,18の項目に対する重要性の捉え方,喜びや怒りの表現方法,主観的QOLの16項目を評価した。主観的健康感によって対象を「健康群」「非鍵康群」の2群に分け,x2検定を用いて各説明変教について単変量解析を行い,非健康群に対する健康群のオッズ比と95%信頼区間を求めた。さらに単変量解析で有意な項目については,ロジスティック回帰モデルを用いて各説明変数ごとの非健康群に対する健康群のオッズ比とその95%信頼区間を求めた。
結果 対象者528人のうち健康群は32.4%,非健康群は66.9%だった。単変量解析で,高いオッズ比が観察されたのは,定期的な通院がまいこと,親しい友人が「いない」に対して「何人もいること」,社会参加活動に「不参加」に対して「楽しいから参加」,「その他の理由で参加」すること,好みの過ごす場所は自宅以外であること,「運動,散歩,スポーツ」などの活動に生きがいを感じること,「身体を動かす」ことに重要性を感じること,主観的QOLのポジティブな項目に当てはまる場合などでもあった。逆に抵いオッズ比が観察きされたのは,年齢85歳以上に対して65~74歳,75~84歳,適度な運動に気をつけていないこと,ストレスをためないように気をつけていないこと,主観的QOLのネガティブな項目に当てはまる場合などであった。多変量解析では,有意な項目(オッズ比:95%信頼区間)は85歳以上に対して75~84歳(0.50:0.26-0.95),定期的な通院がない(6.31 : 2.73-14.59)だった。
結論 社会参加活動への参加やその他の能動的な活動に,生きがいや,その重要性を感じる場合,主観的健康感が高い傾向にあることが示唆された。これらのことを考慮したうえ,在宅要援護高齢者の介護を行えば,夜宅要援護高齢者の主観的健康感の向上,あるいは維持につながると思われた。
キーワード 在宅要援護高齢者,主観的健康感,主観的生活の質

 

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第49巻第15号 2002年12月

自殺者の疫学

-一般住民を対象としたコホート研究のデータより-
石川 鎮清(イシカワ シズキヨ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 萱場 一則(カヤバ カズノリ)
後藤 忠雄(ゴトウ タダオ) 名郷 直樹(ナゴウ ナオキ) 梶井 英治(カジイ エイジ)

背景・目的 近年,日本人においても自殺が急増している。自殺の疫学研究は海外では数多くなされているが日本での前向きの観察研究は少ない。今回,一般性民を用いたコホート集団を対象とした前向きデータを用いて自殺者の背景因子を検討した。
方法 Jichi Medical School (JMS)コホート研究のデータを用いた前向き研究である。対象者は全国8県12地区の一般住民12,490人である。ベースラインデータとして収集した項目は,生活習慣に関するアンケ-ト調査,血液検査,身長,体重,血圧である 対象者の死亡は死亡個票により確認し,死因から自殺者を特定した。
結果 平均追跡期間は7.4年で,対象者の死亡は524人で,そのうち自殺者は19人(男性13人,女性6人)であった。自殺者の方がやせている傾向にあったが有意差はなかった(P=0.14)喫煙では,吸っている割合が自殺者で多く,飲酒では,飲んでいる割合が自殺者で多かった。職業では,自殺者で農業の割合が多かった(自殺者52.6%,それ以外26.0%)。中性脂肪は自殺者の方が低かった(P =0.05)が,総コレステロール,HLDコレステロールは有意な差はなかった。Physical activity index (PAI)およびタイプA行動様式はどちらも有意な差はなかった。Cox比例ハザードモデルで,性,年齢,職業,HDLコレステロール,総コレステロール.喫煙,飲酒,拡張期血圧をモデルに投入したところ,職業で農業(ハザード比3.17:95%信頼区間1.18-8.52)でりスクが上昇しており,抵張期血圧でリスクが上昇していた区分があった(<90mmHgに対し90-99mmHgのハザード比3.57:95%信頼区間l.20-10.58)。性では,男性に対し女性でリスクが低下していたが有意ではなかった(ハザード比0.55:95%信頼区間0.12-2.63)
結論 一般住民を対象とした前向きなコホート研究で,自殺者は,性別では男性が約2倍多く,職業では農業が多かった。また,自殺者は,喫煙者,飲酒者の割合が多かった。
キーワード 自殺,日本人,コホート研究,住民対象研究,前向き研究,危険因子

 

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第49巻第15号 2002年12月

飲酒,喫煙,運動習慣及び肥満の
都道府県格差とその推移に関する研究

神田 晃(カンダ アキラ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ) 三浦 宜彦(ミウラ ヨシヒコ)
小栗 重統(オグリ シゲノリ) 岡山 明(オカヤマ アキラ) 松村 康弘(マツムラ ヤスヒロ)
柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

自的 わが国における運動,喫煙,飲酒習慣,肥満の都道府県格差及びその推移を検討し,実態を明らかにするとともに,健康日本21到達目標及び今後の達成度評価の一助とする。
方法 過去12年間の国民栄養調査結果における,運動,喫煙,飲酒習慣及び肥満を取り上げ,各々について20歳以上の都道府県別出現割合のデータを4年次区切りで作成し,出現割合及び都道府県格差の推移を,平均,標準偏差,範囲,変動係数,ジニ係数を指標に用いて分析,検討した。
結果 飲酒習慣の格差は増大する傾向にあったが,運動習慣の格差は逆に縮小する傾向が見られた。各都道府県では喫煙習慣増加方向への格差増大は東日本の5県で,飲酒習慣増加方向への格差増大は東北から関東の一部で集積して見られた。
結論 生活習慣,肥満出現の地域格差及びその推移は,健康日本21に関する今後の都道府県レペルの保健計画において,健康状態のモニタリング,格差是正の対策に有用であると思われる。
キーワード 都道府県格差,国民栄養調査,標準偏差,変動係数,ジニ係数

 

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第49巻第15号 2002年12月

保健所でのHIV抗体検査受診者の
検査項目追加による動向の変化の観察

渡辺 晃紀(ワタナベ テルキ) 岡本 その子(オカモト ソノコ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ)

目的 栃木県内の保健所におけるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)抗体検査受診者の動向が,クラミジア抗体およびC型肝炎ウイルス(HCV}抗体の項目追加により受けた影響を観察する。
方法 対象は,1999年4月~2002年3月の3年間に,栃木県内の保健所に来所し,HIV抗体検査を受診した2,534人である。調査対象期間を以下の4段階に区分し,対象者の希望する検査項目の組み合わせを自己申告による性,年齢により解析した。
・期間Ⅰ(1999年4月~2000年7月の16か月) HIVのみ
・期間Ⅱ(2000年8月~2001年4月の9か月) HIVに加えてクラミジアも選択可能
・期限Ⅲ(2001年5月~2001年10月の6か月) HIV,クラミジアに加えてHCVも選択可能

・期間Ⅳ(2001年11月~2002年3月の5か月) HCVは有料での取り扱いとなる
結果 各期間の月平均検査受診者数は,期間Ⅰ(56.5人)→期間Ⅱ(73.6人)→期間Ⅲ(107.8人)→期間Ⅳ(64.2人)であった性別では男(55.3%(期間Ⅲ)~61.6% (期間Ⅰ)),年齢では20歳代(男(32.1%~39.5%),女(38.8%~64.6%))が最多だった。クラミジア抗体の項目追加(Ⅰ→Ⅱ)により,男女とも若年齢層を中心として検査受診者が増加した。受信者の多くはHIVとともにタラミジアの検査を希望した。また, HCV抗体の項目追加により,男女とも高年齢層を中心としてHIV抗体検査受診者が増加し,HCV抗体の有料化とともに受診者が減少した。増加した分の受診者は,多くがクラミジアを含むHIVの検査をともに希望した。 HCV抗体の有料化(Ⅲ→Ⅳ)により,検査受診者は追加前(Ⅱ)の水準に戻った。
結論 クラミジアなど他の性感染症の検査項目を追加する二とは, HIV検査受診者の増加に有効であった。 HGV抗体の項目追加による増加分は,性感染症検査目的の受診者ではなく,HCV抗体検査目的の受診者である可能性が高いことが示唆された。
キーワード保健所, HIV抗体,クラミジア抗体, HCV抗体,検査,性行為感染症

 

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第48巻第1号 2001年1月

未婚女性の結婚・出産・育児・介護
および就業に関する意識

-とくに女性の家庭内役割と結婚意識の関連-
彭 潤希(ホウ ジュンキ) 佐藤 龍三郎(サトウ リュウザプロウ) 福渡 靖(フクワタリ ヤスシ)

目的 最近のわが国こおける未婚率上昇の要因を探るとともに,保健・福祉の観点から問題点を探る。特に今回は未婚女性の結婚・出産・育児・介護及び就業に関する意識を同時に把掘し,女性の家庭内役割に関する意識と結婚への意欲との関連を明らかにする。
方法 束京都内に所在する事業所5カ所と大学・専修学校5校に在籍する18~35歳の未婚女性859人を対象に意識調査を実施した(回収率77.5%)。調査内容は.基本属性,親との同居状況,結婚への意欲,家庭内役割(家事,出産,育児,介護)に対する意識,就業への意欲,育児・介護に関する社会的支援体制へのニーズなど95項目からなる。各項目について.年齢階級別,勤労者・学生別に意識を比較した。本研究で特に焦点を当てた家庭内役割と結婚意欲の関連については,仮定された結婚後の5つの状況・条件(家事,結婚退職,出産退職,夫の親との同居,夫の親の介護)と結婚への障害の程度との関連をみた。
結果(1)本調査対象となった東京圏の未婚女性の結婚・出産に対する意欲は高く,生涯独身や子どもを持たないことを望む者はきわめてわずかであった。しかし多数が要請として子供を持つという観念には抵抗感を示しており,結婚・出産に関して自発的かつ多様な考えを尊重する傾向がうかがえる。(2)勤労者,学生のいずれも、家庭・子供を重視する者が多く,結婚後主に家事を担うことに肯定的な者が多かった。しかし「男は仕事,女は家庭」という伝統的性役割規範に対しては否定的な者が多かった。また夫の親との同居及び夫の親の介護の意欲は低かった。(3)結婚退職,出産退職,結婚後の家事が大いに結婚への障害になると感じる者は比較的少数であり(各34.6%,16.0%,30.4%),さほど結婚への阻害要因とはならないことを示した。対照的に,未の親との間際,夫の親の介護が大いに結婚への阻害になると感じている者は多数にのぼり(各40.6%,49.2%),女性への負担感から,結婚への阻害要因の一つとなっている現状を示唆している。
結論 未婚女性にとって結婚後の家庭内役割の中でも介護の負担感がとりわけ大きく,未婚率上昇の一因ともなっている可能性が示唆された。少子化問題の見地からも,家庭内で女性のみ負担を負うことがないよう,家庭や社会のあり方が見直されるべきであろう。
キーワード 未婚女性, 結婚,出産,育児,介護,就業

 

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第48巻第1号 2001年1月

精度指標からみた東京都における乳がん検診の評価

若松 弘之(ワカマツ ヒロユキ) 土井 徹(ドイ トオル) 林 謙治(ハヤシ ケンジ)

目的 東京都においで,乳がんは年齢調整死亡率が平成7年度で12.8(入口10万対)と全国1位である。全国に先駆けて乳がん検診を導入した東京都がこのような状況から抜け出せない理由を明らかにするためには,まず,乳がん検診の精度指標を検討し.評価を試みる必要があると考えた。そこで,本研究では東京都を対象地域として厚生統計を活用し,乳がん検診の問題点を挙げ.その対策について提案することを目的とした。
方法 老人保健事業報告と市町村入口をデータベース化して,がん検診の精度指標(要精検率,精検結果把握率,陽性的中産,がん発見率)を5歳階級別と二次医療圏別に算出した。分析した指標を,厚生省の研究班が作成した「がん検診の精度指標に関する手引き」のチェックリストに基づいて検証した。
結果 ① 年齢階級別に精度指標をみると,30~40歳代では,特に要精検率が高いが陽性的中度は低く,検診効率が低い。二次医療圏別にみると,要精検率が2.5%から18.7%(区市町村別で0.4%から55.1%),精検結果把握率が33.2%から92.4%(区市町村別では0%から100%),陽性的中度が0.4%から7.1%,がん発見率が0.04%から0.23%とパラツキが大きい。
② 要精検率の高さは,推定される高有病率だけでなく,突出した高い要精検率圏域の存在も影響しており,後者の要因として精検基準の緩さが推測された。
③ 年齢調整死亡率が高く,従って有病率が高いと推測されるにも、かかわらず,陽性的中産が全国平均を下回る原因として,要精検率が全国平均よりも高いことや精検結果把握率が全回平均よりも低いことが影響を与えていると推測された。
④ 精検結果把握率は検診システムの効果を評価する,上で重要な指標であるが,二次医療圏別データでは33.2%から92.4%と大きなバラツキがあった。
結論 精度指標の二次医療圏格差が大きいことが判明した。がん検診の精度評価をする上で,精検結果把握率の改善がなければ,その正確な評価は困難と思われた。精検結果が把握された受診者の陽性的中度が高いにもかかわらず要精検率結果把握率の低い圏域をモデルとして,精検結果把握率向上を目指す介入施策が必要と思われる。
キーワード がん検診,評価,二次医療圏,精度指標

 

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第48巻第1号 2001年1月

子どもの事故防止プログラムの開発

石井 博子(イシイ ヒロコ) 田中 哲郎(タナカ テツロウ)

日的 子どもの事故は1~14歳の小児期における死因順位の第1位を占め,その防止は子どもの健全育成上重要である。そこで具体的な事故防止の指導法として,健康診査時に安全チェックリストを利用した指導が考えられている。今回このチェック項目をより実践的な項目へ変更することと,事故防止指導のポイントの明確化を行うと共に,保育園を基点とした事故防止プログラムの開発とその評価を行い,子どもの事故防止方法の確立を目指した。
方法 平成9年に全国で実施した乳幼児の事故調査の症例14,612例を分析し,新たに健康診査時のチェックリストの項目変更及び,保育園を基点とした事故防止プログラムの作成を行い,同時に福岡県などの保育園でプログラムを実施しその効果の検討を行った。
結果 (1)子どもの事故防止プ七グラムの開発
1)健診用安全チェックリスト項目の変更と指導のポイントの作成
主な健診月齢・年齢に合わせて使用できるように,1か月児,3~4か月児,6か月児,9か月児,1歳児,1歳6か月児,3歳児健診用の7種類のチェック項目の変更を行った。また,事故の専門家でなくても容易に指導が行えるよう指導のポイントを明らかにした。
2)保育園用事故防止プログラム
保育園にて個々の子どもの発育・発達に合わせて,その時点に多い事故とその防止方法を啓発する11部構成のパンフレットを保護者に配布することにより,園児の家噂での事故防止指導のプログラムを考案した。
(2)子どもの事故防止プログラムの評価
安全チェックリストの項目は実態調査に基づいて作成し,指導のポイントを明確化したことより,より実践的で効果的なプログラムとなった。
保育園用事故防止プログラムの実施効果は,パンフレットで読んで新たに事故に注意するように行動変容した者が40%にみられ,また,パンフレットにより事故防止につながったと答えているものが3割にのぼっていた。
結論 健診の際に安全チェックリストを使用して行う事故防止指導および,保育園を基点として子どもの発達段階ごとに保護者に事故防止を指導するこれらのプログラムは有効な方法と結論づけられた。
子どもの事故は健全育成を阻害する最大の障害因子であり,今後,少子化対策,子育て支援の立場からも,保健医僚関係者はこれらの方法により早期に取り組むべきである。
キーワード 子ども・事故・事故防止・健診・発達・保育園

 

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第48巻第1号 2001年1月

禁煙による医療費削減効果の推定について

廣岡 康雄(ヒロオカ ヤスオ)

目的 たばこは種々の疾患の罹患率や死亡率を高める危険因子字であるが,喫煙者が禁煙することにより,たばこに関連する疾患のリスクは著しく低下することが報告されている。本研究では,喫煙者が禁煙することにより,将来的に.顕在化してくる医療費の削減効果を,年齢・性別毎に推定する方法について検討することを目的とした。
方法 医療費,受療率,死亡率,喫煙率に関する統計データと喫煙関連疾患に関する疫学的データを利用して,禁煙によろ医療費削減効果を推計する方法を提案した。推計の枠組みは,喫煙者と非喫煙者の医療費を推定する過程と禁煙後のリスクの低下に伴う医療費の低下をシミュレーションする過程により構成される。
結果 平成8年時点の統計データを適用して試算を行った。試算によると,禁煙による医療費の削減額は禁煙後の15年間の累計で,男性30歳では1人当たり79千円,40歳では171千円,50歳では320千円,60歳では456千円,年率3%で割り引いた現在価値では,それぞれ60千円、128千円,242千円,352千円と推定された。女性では,15年間の累計で,30歳では1人当たり88千円,40歳では178千円,50歳では312千円,60歳では498千円,年率3%で割り引いた現在価値では,それぞれ66千円,134千円,237千円,380千円と推定された。喫煙者の医療費からの低減率では,15年間累計の比較で,男性で5.5~8.2%,女性で5.1~8.2%の削減が期待できるという結果が得られた。
結論 提案した方法を用いることにより,集団の年齢・性別の親戚に応じて禁煙による医療費削減効果を推定することができる。このような禁煙による効果の経済的な側面を示す報告が,企業などの民間における禁煙指導や禁煙サポートなどのたばこ対策推進の一助になることを期待したい。
キーワード たばこ.喫煙,禁煙,医療費

 

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第48巻第2号 2001年2月

死因別乳児死亡率の出生体重による違い

-1995~1998年の人口動態調査データを用いて-
藤田 利治(フジタ トシハル)

目的 1995年からの死亡診断書(死体検案書)の書式の変更に伴って,病死した乳児については出生時の基本的属性との関連について検討することが可能となった。本報告では,乳児死亡に最も強く関連する出生体重との関係から,病死した乳児についての死因別・生存期間別の死亡状況を明らかにする。
方法 1995-1998年の入口動態調査死亡票及び出生票を用い,病死した乳児の内で出生体意が判明している16,327人の乳児死亡について集計した。出生体重ごとの死国別の死亡状況について,出生から各生存期間の終りの時点までの期間についての「累積死亡率」と各生存期間の平均的な「死亡率」とを指標として整理した。
成績 乳児死亡において死亡順位が第一位である「先天奇形,変形及び染色体異常」による乳児死亡率は,出生体重2000gを境として極めて大きな差異がみられた。つまり,出生1000人当たりの乳児死亡率は,1000g未満が39.8,1000~1499gが35.8,1500~1999gが21.9と高頻度であったのに対して,2000~2499gでは4.5と低下し,2500g以上では0.6に過ぎなかった。一方,「周産期に発生した病態」については,出生体重と単調な極めて強い関連が認められた。呼吸窮迫症候群などの「周盛期に特異的な呼吸障害及び心血管障害」は依然として大きな問題であるとともに,出生体重1000g未満では出生後1年近く経過してもかなりの頻度の死亡が発生していた。出生体重2500g以上での「乳幼児突然死症候群」は,新生児期後の乳児期において「先天奇形,変形及び染色体異常」に匹敵する死因となっていたが,さらに,出生体重が軽い児ほど死亡リスクが増大するとともに,低出生体重児ではその発生時期が遅い方向にずれていた。
結論 出生体重ごとの乳児死亡状況を死因別・生存期間別に整理することを通して,1995年からの死亡診断書(死体検案書)の書式の変更によって,これまで困難であった乳児死亡にかかわる詳細な検討が可能になったことを示した。
キーワード 乳児死亡,新生児死亡,出生体重,死因,保健統計

 

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第48巻第2号 2001年2月

喫煙が聴力障害に及ぼす影響:
壮年期男子勤務者における検討

中西 範幸(ナカニシ ノリユキ) 岡本 光明(オカモト ミツハル) 吉田 寛(ヨシダ ヒロシ)
   牧野 香映(マキノ カエ) 長野 聖(ナガノ キヨシ) 中村 幸二(ナカムラ コウジ)
   宇都 エリ子(ウト エリコ) 下長 牧子(シモナガ マキコ)
  金子 隆一(カネコ リュウイチ) 多田羅 浩三(タタラ コウゾウ)

目的 喫煙が聴力障害に及ぼす影響を明らかにするため,定期健康診断で実施した聴力検査をもとに喫煙と聴力障害との関連について検討を行った。
方法 1994年5月に定期健康診断を受診し,聴力に影響する耳鼻科疾患を持たない30~59歳の男子事務系勤務者1,796人を対象として喫煙と聴力障害との関連を調査した。また,聴力障害を持たない1,554人を観察コーホートに設定し,1999年5月までの5年間における聴力障害の発症を調査した。聴力障害はオージオメーターによる純音聴力検査を開いて判定し,1000Hz(30dB),あるいは4000Hz(40dB)で聴力の損失をみとめた者を聴力障害とした。
結果 年齢,Bodymassindex,アルコール,平均血圧,血清総コレステロール,高比童リポ蛋白コレステロール,トリグリセライド,空腹時血糖,ヘマトクリットを調整した1000Hz(30dB),および400Hz(40dB)の聴力障害のオッズ比は,いずれの聴力障害においても「吸ったことがない」者に比べて「以前は吸っていた」者,「現在吸っている」者では有意ではないが高値を示した。5年間における4000Hz(40dB)の聴力障害発症の多変最調整ハザード比は,1日当たりの喫煙本数と喫煙箱年(喫煙本数/日×喫煙年数/20)の増加にともない有意に高値を示した(Testfortrend:それぞれp==0.025,p=0.011)。「吸ったことがない」者を1.0とする「31本以上/日」の喫煙者の多変景調整ハザード比は2.2n[95%信頼区間(CI):1.09-4.42]であり,喫煙箱年が「20.0-29.9箱年」の者,「40.0箱年以上」の者のハザード比はそれぞれ2.27(95%CI:1.01-5.11),2.45(95%CI:1.28-4.70)であった。一万,1000Hz(30dB)の聴力障音の発症をみると,喫煙状況,喫煙箱年との間には有意を関係をみとめなかったが.「31本以上/日」の喫煙者,喫煙箱年が「40.0箱年以上」の者の多変量調整ハザード比はそれぞれ1.82(95%CI:0.98-3.38),1.58(95%CI:0.87-2.87)と高値の傾向を示した。
結論 喫煙は聴力障害の危険因子となること,とくに高音域の聴力障害と密接な関連を有することが示された。
キーワード 喫煙,聴力障害,壮年期,男子勤務者

 

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第48巻第2号 2001年2月

都道府県格差及びその推移の健康指標としての有効性

   神田 晃(カンダ アキラ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

日的 1965年から1995年の主要疾患の年齢調整死亡率・平均余命の都道府県格差,その推移,将釆推計を,標準偏差、変動係数,範囲を指標に用いて行い,都道府県格差が,今後の保健計画における日標指標となりうるかどうかを検討した。
方法 1965~1995年における5年毎の厚生省人口動態統計及び都道府県別生命表を用いて,全死因,悪性新生物,脳血管疾患,心疾患,結核,肺炎,老衰の年齢調整死亡率,及び平均余命の男女別47都道府県データより、都道府県格差指標として範囲,標準偏差,変動係数を求め,各々について過去30年間の傾向を比較するとともに,格差指標の将来推計を試みた。
結果 Ⅰ,格差指標の推移
1.死因別死亡率:a.平均は,がん憫性),肺炎(男性)を除いて概ね減少傾向を示した。b.範囲,c.標準偏差は全て減少傾向を示した。d.変動係数は全死因(女性),結核(男性.女性),老衰(男性,女性)は上昇傾向を示したが,それ以外は,減少傾向が認められた。
2.平均余命:a.平均は,0歳,65歳,85歳平均余命のいずれも上昇傾向を示した。b.範囲は0歳平均余命(男性)を除いて上昇傾向を示した。C.標準偏差は65歳平均余命(女性),85歳平均余命(女性)は上昇傾向,85歳平均余命(男性)はほぼ変動なし.0歳平均余命(男性,女性),65歳平均余命(男性)は減少傾向を示した。d.変動係数は全てにおいて減少傾向が認められた。
Ⅱ,格差指標の将来推計
一次直線回帰によって,2010年までデータを外挿したところ,回帰直線のあてはまり度合いは,脳血管疾患,結核,老衰(男性,女性),結核(女性),肺炎(女性)において良好であったが、脳血管疾患,結核,老衰は,2010年までに死亡率の外挿値は負に転じた。格差指標間比較では,標準偏差は範岡,変動係数よりもよいあてはまり度合いを示した。平均余命の回帰直線へのあてはまり度合いは,死因別死亡率より低かったが,2010年までに外挿値が負に転じた指標はなかった。脳血管疾患(男性)と老衰(男性)は,1965年の死亡率の範囲及び標準偏差を1とすると30年後に0.15~0.17に減少したが,平均の減少率は脳血管疾患0.27,老衰0.09であったため,変動係数は,脳血管疾患が0.6に減少し,老衰は1.85に上昇した。
緒論 主要死因別死亡率及び平均余命の都道府県格差指標としては,平均の変動や疾病構造の変化に注意した上で,標準偏差の将来推計値が利用可能と考えられた。標準偏差及びその推移は,地域格差を表す指標として,健康日本21に関連する今後の保健計画においてのモニタリング,目標設定のために有用であると思われる。
キーワード 都道府県格差.健康指標,健康日本21,年齢調整死亡率,平均余命,直線回帰

 

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第48巻第2号 2001年2月

Healthに関する国際比較

-プライマリー・ケアを中心に-
府川 哲夫(フカワ テツオ) 武村 真治(タケムラ シンジ)

目的 プライマリー・ケアを中心にHealthに関する国際比較を行い, その中で日本の相対的位置づけを明らかにすることを目的としている。
方法 国民のHealth水準を示す指標としては,これまで一般的に用いられている平均余命や乳児死亡率の他に傷害調整平均寿命(WHO発表)を加えた。医療サービスの供給や消費量に関する指標には,可能な限りプライマリー・ケアに関係するものを加えた。各指標はそれぞれの国の医療制度を考慮してみていく必要があるため,社会保険方式の代表としてフランスとドイツ,公的サービス方式の代表としてスウェーデンとイギリスをとりあげ,この4か国の医療制度の特徴を日本との対比を念頭にまとめた。
結果および結論 プライマリー・ケアを中心にHealthに関する国際比較を行った結果,先進諸国の中で次のような点が日本の特徴として浮かび上がってきた。
・日本は医療費が少ないにもかかわらず,国民のHealthは良い。ただし,これで日本の医療システムが効率的であるとは必ずしもいえない。
・日本は病床数が際だって多く,平均在院日数が顕著に長い。入院サービスを利用する人は他の国より少ないが,入院した人はより長く入院している。
・日本の医療は医療費の上で外来の比重が高いが,このことか日本でプライマリー・ケアを重視した医療が行われていることを意味するわけではない。
・日本の医療制度は社会保険方式のフランスやドイツと類似しているが,専門医の位置づけや診療報酬支払制度でこれらの国と異なっている。また,政府のコントロールが強いために医療費が低い水準で収まっている点でイギリスと類似しているが,プライマート・ケアを重視して様々をイノベーションを行っているイギリスのNHSとは大いに異なっている。
・日本の高齢者のHealthも悪くない。施設入所者の割合も平均的であるが,今後の介護サービスの需要動向によってはコストの大幅な増加が懸念される。
キーワード Health,プライマリー・ケア,保健・医環指標,医療制度.高齢者のHealth

 

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第48巻第3号 2001年3月

福井県のA中学校生徒会が実施した喫煙状況調査について

長谷川 さかえ(ハセガワ サカエ) 長谷川 まゆみ(ハセガワ マユミ)
佐竹 直子(サタケ ナオコ) 大井田 隆(オオイダ タカシ)

目的 学校保健において禁煙教育が強く求められでいる中で,今回,福井県A中学校の生徒会が生徒自身の喫煙問題に関しての調査を実施し,その結果を得たのでここに報告する。
方法 平成10年12月に,全生徒(男子280人,女子291人)に対し,全クラス一斉に担任から生徒に調査票を配布し,自己記入式無記名で記入,その直後回収した。回収率は男女とも93%であった。 結果学年別試喫煙率では,3年生が最も高く,男子34%,女子11%で,全学年では15% (82/532) であった。喫煙経験のある生徒のたばこの入手方法は,誰かからもらったが32%と最も多,喫煙場所は家の外で吸うが35%と最も多かった。たばこのからだへの害の認識と,未成年者の喫煙禁止は当然であると思っているか否かについては,喫煙経験の有無によって有意差があり,喫煙経験のある生徒ではたばこの害についての認識が低く,未成年者の喫煙禁止が当然である と回答した者の割合が低かった。家族の喫煙状況と生徒の試喫煙率比では,母親の喫煙の影響では男子は2.8倍、女子では1.2倍,兄の喫煙の影響では男子は2.1倍,女子では3.0倍,男子の 喫煙経験のある生徒と母親や兄の喫煙の影響との関係,女子においても兄の喫煙の影響との関係で有意な差がみられた。
結論 今回の調査は,生徒会が主体的に取り組んで実施したものであり,十分に評価できるものと考えている。喫煙経験のない生徒に「未成年者の喫煙禁止は当然だ」 と思うことが多かったことや,喫煙経験のある生徒は兄や姉などの家族による喫煙の影響が大きかったことから,家族の喫煙防止対策,早期からの禁煙教育等が必要と考えられる。
キーワード 中学校,喫煙,生徒会,学校保健

 

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第48巻第3号 2001年3月

全国保健所におけるたばこ対策実施状況調査の
結果と分析 平成7~9年(第2報)

-保健所内での分煙・禁煙状況,たばこ対策担当者の
研修状況,保健所事業計画および日常業務とたばこ対策-
谷畑 健生(タニハタ タケオ) 尾崎 米厚(オサキ ヨネアツ) 青山 旬(アヨヤマ ヒトシ)
川南 勝彦(カワナミ カツヒコ) 黒沢 洋一(クロザワ ヨウイチ) 蓑輪 真澄(ミノワ マスミ)

目的 本稿第1報においてたばこ対策を行っていない保健所が少なからずあることを示した。本稿第2報では保健所の分煙・禁煙状況,たばこ対策担当者の研修状況の調査結果を県型以外の保健所と県型保健所を比較しながら,保健所のたばこ対策の方向を考える。
方法 調査対象は全国657全保健所および神戸市区保健部9か所(平成10年8月現在)とし,平成10年12月に調査票を所長宛に送付し,自記式郵送法によリ実施した。回収率は88.4% (666か所中589か所)であった。
結果 ①たばこ対策としてポスター,パネルおよびパンフレットを使用したところは全体で94%であり,ポスターおよび,パンフレットは約80%が既製品であった。②回答があった保健所内の分煙・禁煙を行っていないと答えたところは県型以外の7%,県型の4%であった。外来者への分煙・禁煙を行っていないところは県型以外の1%,県型の2%であった。③所内のたばこ対策担当者数は「2人」の23%が最も多かった。職種としては保健婦の80%が最も多く,医師の54%で,栄養士の51%であった。研修状況は「自学自習」が全国の61%が最も多かった。④保健所の事業計画にたばこ対策を取り入れたところは県型以外の59%,県型の66%であった。また日常業務では県型以外の56%,県型の47%であった。⑤予算を組んでたばこ対策を行ったところは県型以外の33%,県型の40%であった。
結論 ①ポスター,パネルおよびパンフレットは保健所独自でつくられていなかったこと,②保健所での分煙・禁煙化が進んでいなかったこと,③たばこ対策の担当者の研修が十分ではなかったこと,④たばこ対策の事業計画や日常業務の取り入れや予算化があまり行われていなかったこと,が明らかになった。
キーワード 喫煙,たばこ対策,保健所,研修方法,事業計画,分煙

 

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第48巻第3号 2001年3月

子どもの障害に関する親への情報の公開

佐藤 秀紀(サトウ ヒデキ) 鈴木 幸雄(スズキ ユキオ)

目的 本研究は障害児とその家族への効果的支援を行うための資料を得ることをねらいとして,知的障害児の親に対する障害の説明状況とその説明に対しての親の満足状況との関連性を検討した。
方法 調査対象は,北海道十勝支庁に居住する精神薄弱養護学校と高等養護学校の在学生の親,および20歳以下の高等養護学校卒業生の親251入とした。調査票は,多肢選択方式および自由記述方式で回想法により回答を求めた。なお,調査対象者251人のうち,回収ができた107人(回収率42.6 %)の資料を分析した。分析方法は,まず各調査項目の記述統計を行った。次いで,知的障害児の親に対する障害の説明状況の各項目と「親の満足状況」の関係をx2検定を用いて分析した。
結果 親にとってより満足しうる障害についての説明のあり方として,1)親が自発的に相談できるような相談窓口の設置と障害についての情報提供,2)障害について説明している報告書の整備,3)親の気持ちへの共感と配慮,4)親から十分質問できるような状況や時間の設定が重要であることが示唆された。
結論 親に対しての子どもの障害についての説明は,使用可能な情報源についての情報提供を含め,対象となる個々の家族のもつ状況を十分把握したうえで,適切な援助と積極的な支援を提供されることが求められている。今後,専門職は障害児と親の生活を支援する者として,親が求めている援助を適切に捉え,きめこまやかな対応と提供する知識や技術を発揮できる能力を養っていくことが肝要であろう。
キーワード 障害,情報,公開

 

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第48巻第3号 2001年3月

市町村における地域保健サービスの費用関数と効率性の推定

武村 真治(タケムラ シンジ) 大井田 隆(オオイダ タカシ) 曽根 智史(ソネ トモフミ)
石井 敏弘(イシイ トシヒロ) 福田 敬(フクダ タカシ)
  中原 俊隆(ナカハラ トシタカ) 近藤 健文(コンドウ タケフミ)

目的 公的に供給される地域保健サービスの効率性を検討するために,ミクロ経済学における企業行動理論を応用して,老人・母子保健事業の費用関数を推定し,効率的な生産主体の規模を明らかにする。
方法 対象は,指定都市,中核市,政令市を除く全国の市町村とした。平成9年10月,3,197の対象に郵送により調査票を配布・回収し,平成8年度における老入保健事業(健康相談,健康教育, 機能訓練,訪問指導,基本健康診査),及び母子保健事業(乳幼児健診,1歳6か月児健診,3歳児健診)の実施の有無,利用者数,事業費総額などを設問した。各保健事業の生産量を利用者数,総費用を事業費総額として,総費用を生産量の3次関数で説明する費用関数モデルを設定し,パラメータを推定した。生産貴が0以上の範囲で総費用と限界費用が0以上であることを条件にモデルを採択した。そして生産量1単位当たり費用(平均費用)が最も低い生産量の規模(最適規模)を算出した。
結果 調査票の回収率は36.0%であった。利用者数の最適規模は,健康相談で約21,000人,健康教育で約60,000人または約65,000人,3歳児健診で約3,200人であった。基本健康診査,1歳6か月児健診では,利用者数が0以上の範囲で最適規模は存在せず,平均費用は利用者数の増加にしたがらて増加していた。機能訓練,訪問指導,乳幼児健診は設定したモデルに適合しなかった。
結論 老人・母子保健事業の実施主体である市町村の規模は,サービス供給の効率性の観点からみると,健康相談,健康教育,3歳児健診では小さ過ぎ,基本健康診査,1歳6 か月児健診では大き過ぎる。したがって,個々の保健事業の効率性に応じた規模で実施できるように,実施主体を市町村とする現在の供給合体制を見直す必要がある。
キーワード 費用,経済的評価,規模の経済性,老人保健事業,母子保健事業

 

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第48巻第4号 2001年4月

施設高齢者の生きがい感とQOLとの関連について

山下 昭美(ヤマシタ テルミ) 近藤 亨子(コンドウ キョウコ) 田中 隆(タナカ タカシ)
門奈 丈之(モンナ タケユキ) 揖場 和子(イバ カズコ) 木下 迪男(キノシタ ミチオ)

日給 高齢化が進むなか,高齢者が生きがいをもつことやQOLを高め保持することが重要な課題である。本研究では,高齢者を対象に生きがいの自覚とQOLを面接および質問票を用いて調査し,両者の関連を検討した。
方法 施設高齢者262人中,自立歩行が可能で,本調査に同意が得られた81人(男性32人,女性49人)を対象とした。生きがい感については.回答を「現在あり」,「以前あり(以前はあったが現在はない)」,「なし(以前も現在もない)」の3群に分類した。QOLの調査には3種類の質問票(①WHO/QOL26,②Short Form 36 Health SurVey,③European Foundation for Osteoporosis“Qualeff0-41”:共通名称を含めて計19領域,103質問項目)を用いた。生きがい感とQOLの関連を調べるため,3群間で領域別,質問項目別にQOLスコアを比較した。QOLスコアの差の検定はKruskal-Wallis rank testおよびBonferroniの方法による多重比較を行った。
結果 1.対象者81人中,生きがい感についての回答は「現在あり」65%.「以前あり」22%,「なし」12%であった。これら3群間で年齢,在所期間に有意差を認めなかった。
2.領域別比較で3群間に有意差を認めたのは19領域中5つであり,そのうち3つが心理的または精神的領城であった。質問項目別の比較で有意差を認めたのは身体的領域項目7,心理的・精神的領域項10,環境・社会的活動領域項目5であった。
3.生きがいが「現在あり」と答えた者では心理的・構神的領域や環境・社食的活動領域のQOLスコアがすべての項目で高く,一方,身体的領域で高いスコアを示したのは「生活をおくる活力がある」という項目だけであった。「以前あり」と答えた者では一部を除いてすべての領域と項目においてQOLスコアは低かった。「なし」と答えた者では一部例外を除いてどの領域に属する項目のQOLスコアも高かったが,娯楽・社会的活動領域のQOLは低い傾向を示した。
4.「現在あり」と答えた者の生きがいは,『家族・友人』,次いで『趣味』であった。しかし,「以前あり」と答えた者がなくした生きがい第1位は『家族・友人』であるものの,第2位は『仕事』であった。
結論 施設高齢者においては、生きがい感は身体的領域,心理的・精神的領域,環境・社会的活動領域のQOLが高いことと関連を認めた。特に生きがいを以前になくしたことは心理的・精神的領域のQOLが低いことと強い関連を示した。
キーワード 施設高齢者,生きがい感,QOL,WH0/QOL-26,ShortForm-36,Qualeffo-41

 

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第48巻第3号 2001年3月

生殖補助医療技術に対する一般国民の意識

山縣 然太朗(ヤマガタ ゼンタロウ) 武田 康久(タケダ ヤスヒサ) 北島 智子(キタジマ トモコ)
  小田 清一(オダ セイイチ) 矢内原 巧(ヤナイハラ タクミ)

目的 生殖補助医療技術は急速に普及しているが,患者の精神的,経済的負担が大きく,また、第三者の精子や卵子提供などの治療法について,倫理面での問題が提起されている。これらの諸問題について国民の意識を知ることを目的とした。
対象と方法 対象者は一般国民から層化二段階無作為抽出法を用いて抽出した4,000人に対して,留め置き法(訪問配布,後日同収)で実施した。
結果 対象から転居などにより,本人に配付できなかったものを除いた3,646人の内,2,568人から回答を得た。回収率は70.4%となった。生殖補助医療技術の利用については7割以上の者が「配偶者が望んでも利用しない」と回答した。利用しない理由として「親子関係が不自然になる」 が多く,「妊娠は自然になされるべき」が次いで多かった。各技術の是非については,一般論として,第三者の受精卵を用いた胚移植と代理母を除く技術について「認めてよい」または「条件付きで認めてよい」とするものが約60%であった。認められない理由として,「妊娠はあくまで自然になされるべき」,「親子関係が不自然になる」が多かった。
結論 本研究は回答率が70%を超え,対象者の母集団を代表する結果であると評価でき,有用な資料である。第三者の配偶子を用いた生殖補助医療について自分は利用しないが、一般論としては認めてよいという意見であった。一方で,性,年齢,性別役割に対する考え方,知識など,回答者の背景により,生殖補助医療技術の是非に対する考え方が異なっていた。
キーワード 生殖補助医療技術,全国調査,国民の意識,第三者の配偶子,ジェンダー

 

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第48巻第4号 2001年4月

栃木県民の生活習慣と全国との比較

小林 雅与(コバヤシ マサヨ)

目的 生活週間病の要因とされているいくつかの生活習慣について,栃木県と全国との差異を明らかにし,栃木県として生活習慣改善の中でも特にどの項目に力点をおくべきなのか検討した。
方法 平成10年度に栃木県が国民栄養調査に準じて実施した栃木県民食生活実態調査の結果と国民栄養調査の結果とを比較検討した。調査地区は,各保健所の人口規模に応じた地区数を無作為に選定し,一調査対象は選定された地区に居住する20歳以上の者とした。調査項目は,質問調査(運動習慣.喫煙習慣,飲酒習慣),身体計測,血圧測定,血液検査(空腹時血糖)である。
結果 1)栃木県の男女は20歳以上において,全国と比べて,運動習慣の不足が特徴的であった。
2)栃木県の男で70歳以上は,全国と比べて血圧値の高い傾向が認められた。しかも,この年代の栃木県の男は,血圧降下剤使用者が少ないといった傾向も認められた。
3)今回の検討では,喫煙習慣および飲酒習慣については,栃木県と全国との特徴的な差異は認められなかった。
結論 今回の生活習慣に関する栃木県と全国との比較検討の結果,以下のような点に力点をおいた対策が必要であると考える。
1)栃木県の30歳以上の男女は,血糖値が全国を上回る傾向がみられ 栄養の摂取状況を考慮に入れると,特に40歳代,50歳代の男女に対しては,運動習慣を強力に普及する必要があると考える。
2)栃木県の70歳以上の男は,血圧値が高い傾向を示しながら,服薬治療を受ける割合が低い傾向にあり,医療機関受診を勧奨し,高血庄管理を徹底する必要がある。
キーワード 栃木県.生活習慣病,運動習慣,空腹時血糖

 

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第48巻第4号 2001年4月

高齢者の生活活動度を評価するための
体力測定のあり方およびやり方

桜井 礼子(サクライ レイコ) 八代 利香(ヤツシロ リカ) 平井 仁(ヒライ マサシ)
加藤 さゆり(カトウ サユリ) 稲垣 敦(イナガキ アツシ) 平野 亙(ヒラノ ワタル)
洪 麗信(ホシ ヨウシン) 草間 朋子(クサマ トモコ)

目的 高齢者か健康で自立した日常生活を送るには体力が必要であり.高齢者が自分自身の体力を知り,日常生活の中で体力の保持,増進に努めることが重要である。そのためには,高齢者にあった体力の指標を用いて継続的に個々の体力を測定・評価する取り組みが必要である。本研究では,老人保健法に基づく基本健康診査(以下健診)の受診者を対象に体力測定を実施し,その結果から高齢者の体力水準を評価するための体力測定項目の検討およびその測定項目の評価基準の検討を行った。
方法 対象は大分県N町で平成11年4月に実施された健診を受診した60歳以上の住民で,体力測定に関する同意が得られ,問診の結果体力測定ができると判断された者(男性172人、女性252人)である。測定項目は,体脂肪率,握力,脚伸展力,長座体前屈,最大酸素摂取量,重心動揺,ステッピングである。
成績 実施率は,体脂肪率が男女とも90%以上ともっとも高く,長座体前屈,掘力,重心動揺,ステッピングも70%以上と比較的高い実施率を示した。年齢に伴い体力の低下が認められた項目は,握力 脚伸展力,ステッピング,重心動揺であり,体脂肪率,長座体前属は年齢との関連が認められなかった。
高齢者の体力を定期的に測定し評価するために望ましい項目を,妥当性,安全性,実用性(経済性,簡便性)の観点から検討した。その結果,健診時に体力を測定するという前提で考えた場合,今回の測定項目の中では,体脂肪率,握力,長座体前屈が適当と考えられた。
高齢者の体力の評価尺度について,健常者のみでなく計測に支障のない軽度の身体的訴えのある者も含め,5段階評価による基準値の試算を行った。
結語 健診で体力測定を行うことにより,多くの対象に体力測定を行う機会を提供することができることになり,健診で定期的に体力測定を行うことの意義は大きい。しかし,体力測定を行う場合には,高齢者にあった体力測定の項目と標準値の作成,高齢者の体力の水準と実際の生活の活動状況との関連性、その後の事後措置等を含めて解決すべき課題が残されている。今後,対象者数を増やし,基準としての精度をあげる必要がある。
キーワード 高齢者,体力,健診,老人保健法,体脂肪率,握力

 

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第48巻第4号 2001年4月

市町村における健康診断の受診・要望状況

-老人保健事業報告と健康・福祉関連サービス需要実態調査に基づく-
橋本 修二(ハシモト シュウジ)川戸 美由紀(カワド ミユキ) 小栗 重統(オグリ シゲノリ)
岡山 明(オカヤマ アキラ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

目的 老人保健事業報告の年度間および健康・福祉関連サービス需要実態調査との間で市町村単位にレコードリンケージし,老人保健法による健康診断受診率の市町村単位の年次変化,および.その受診率と健康診断全体(老人保健法以外を含む)の受診嘉要望状況との関連性を検絆した。
方法 上記の2つの統計(1991,1994,1997年)を資料とし,その市町村区分を統一した(市町村数3,255)。老人保健法による基本健康診断と胃がん検診について,1991年度の年齢調整受診率比の低・中・高地域ごとに,1994・1997年度の年齢調整受診率比の市町村分布を比較した。その低・中・高地城に居住する者の間で,健康診断全体の年齢調整受診・要望率比を比較した。なお,要望率は対象者中の要望者(受診者を除く)の割合とした。
成績 老人保健法による健使診断の年齢調整受診率比は,1991年度受診率の低地域で1994・1997年度とも低く,高地域で高い傾向であった。健康診断全体の年齢調整受診率比は,老人保健法による1991年度受診率の低地城で低く,高地域で高い傾向であった。健康診断全体の年齢調整要望率比は,一般健康診窓では老人保健法による1991年度受診率の低地域で高く,高地城で低い傾向であったが.胃がん検診では低・中・高地域間で大きな差かなかった。
結論 老人保健法による健康診断受診率の市町村単位の年次変化を示した。老人保健法による受診率の高低は健康診断全体の受診率の高低と関連し,要望率の高低とは一般健康診断で逆の関連,胃がん検診で関連の小さいことが承唆された。同一統計の年次間と異なる統計間での市町村単位のレコードリンケージ事例を示した。
キーワード 健康診断.受診率,要望状況,レコードリンケージ

 

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第48巻第5号 2001年5月

老親からの子どもの距離と交流頻度

-居住地の都市規模による差-
古谷野 亘(コヤノ ワタル) 西村 昌記(ニシムラ マサノリ)
石橋 智昭(イシバシ トモアキ) 山田 ゆかり(ヤマダ ユカリ)

日的 子どもの老親からの距離および老親との交流頻度について,高齢者の居住地の都市規模による差に注目しつつ検討した。
方法 無作為に抽出した全国の65歳以上の男女を対象に面接調査を行い,2,335人から回答を得た(回答率77.8%)。調査対象者には,すべての子どもについて,それぞれの居住地までの距離と基本属性, 交流頻度をたずね,子どもとの距離に関する情報に欠測のない2,311人を分析対象とした。
結果 分析対象者の子どもは合計5,497人であり,その26.8%は同居(同一敷地内を含む),22.0%が片道30分以内の距離に居住していた。高齢者を単位としてみると,子どもと同居している者が58.1%,30分以内に住む別居子を有する者が38.4%であり,あわせて73.6%の高齢者が30分以内で往き来できる子どもをもっていた。この割合には都市規模による叢があり,政令指定都
市の高齢者で少なかった。
別居子の50.1%は1か月に1回以上老親と食っており,68.8%は1か月に1回以上電話・手紙等での交流をもっていた。これらの頻度は距離の影響を強く受けていたが,都雛の差は大きくなかった。多重ロジスティック分析により老親と子どもの属性をコントロールしたところ,政令指定都市に住む高齢者の別居子は,他と比べて,老親との頻繁な交流をもっていることが明らかになった。
結論 大都市では,子どもと同居する高齢者が少なく,さらに近くに住む別居子をもつ高齢者も少なかったが,都市規模の影響は老親子間の交流頻度には逆の方向に作用し,都市部の高齢者で子どもとの交流頻度を高めていた。そのため、交流頻度における都雛の差は見かけ上小さくなっていたものと考えられる。
キーワード 高齢者,老親子関係,別居子,距離,都市規模

 

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第48巻第5号 2001年5月

HIV/AIDS感染経路不明者の追跡調査と届け出の問題点

中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 渡辺 晃紀(ワタナべ テルキ)
谷原 真一(タニハラ シンイチ) 橋本 修二(ハシモト シュウジ)

目的 HIV/AIDS届出において,感染経路不明を減らすために,「診断から一定の時間をおいて,再度診断した医師を対象に感染経路に関する情報収集を行えば,ある程度の部分が判明する」という仮説を検証する。併せて,現行の届出制度の問題点を議論する。
方法 某県の協力を得て,感染経路不明で届出がなされたHIV/AIDSについて,届出を行った医師に対して感染経路に関する再調査を実施した。1997年4月から1999年3月までの2年間で,感染経路不明として届け出られた本研究の対象者は12人であった。これらについて,1999年7月に県庁より再調査を行った。
結果 調査を行っていく過程で,1人は感染経路が判明しているとして届出がなされた別人と同一人物であることが判明した。残りの対象者11人のうち,1人においてのみ新たに感染経路が判明(日本国籍男,海外における異性間性的接触)した。このデータをもとに,重複届けの問題や,診断から届出までの期間が短いこと,さらにまた,届出漏れの可能性があることについて,議論した。
結論 現行のHIV/AIDS届出制度について,問題点があり,感染経路不明者の存在も届出制度の問題点に起囲すると考えられた。
キーワード エイズ,HIV感染,届出,サーベイランス,感染経路,感染症発生動向調

 

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第48巻第5号 2001年5月

日本における人工妊中絶の近年の動向

後藤 あや(ゴトウ アヤ) 郡山 千早(コオリヤマ チハヤ) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ)
Michael R.Reich(マイケル ライヒ) 深尾 彰(フカオ アキラ)

日的 計画外外妊娠の予防は,女性の性と生殖に関する健康を維持・向上するために,重要な課題の一つである。本研究では,計画外妊娠の転帰の一つである人工妊娠中絶(中絶)の近年の動向について既存資料を用いて分析した。
方法 母体保護統計報告の主に1978年から1998年のデータを使用した。指標としては中絶の発生頻度を示す中絶率(女性1,000人の年間中絶数)と,妊娠した場合の中絶への至りやすさを示す中絶比(出生1,000に対する中絶数)を5歳年齢階級別(15~19,20~24,25~29,30~34.35~39,40~44歳)に検討した。
結果 1)中絶率は20歳未満に上昇が認められた。2)中絶比は25歳以上の低下に対して,24歳以下の上昇が特徴的であった。1819年から1995年まで一貫して,40~44歳の中絶比が最も高い値を示した。3)出生コホート別では1950年代後半以降生まれの24歳以下の中絶比が上昇した。4)全中絶数に24歳以下の占める割合が上昇した。5)中期中絶が占める割合は,1980年から1995年まで一貫して20歳未満が最も高かった。
考察 若年層における中絶のさらなる増加を予防する必要性が示された。また,若年層のみならず,40代の妊娠は中絶に至りやすく,中絶の予防対策は幅広い年齢層を対象とすべきである。今後は各年齢層に適切な近代的避妊法の普及が望まれる。中絶を予防するために効果的な対策立案のためには,中絶につながるような計画外妊娠に関する現状及びその関連要因の解明が必要であるが,この分野におけるわが国の授学的研究の蓄積は乏しい。計画外妊娠に関するなお一層の基礎資料収集も重要な課題である。
キーワード 人工妊娠中絶,計画外妊娠

 

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第48巻第5号 2001年5月

中高等学校の保健体育教師における
喫煙と喫煙防止教育

大井田 隆(オオイダ タカシ) 尾崎 米厚(オサキ ヨネアツ) 丸山 美知子(マルヤマ ミワコ)
武村 真治(タケムラ シンジ) 城戸 尚治(キド ナオハル) 簑輪 眞澄(ミノワ マスミ)

目的 三重県の公立小中高校及び幼稚園における全教師の喫煙実態調査から,各教科を担当する中高等学校の教師を選んで,どのような教科を担当する数師が喫煙防止教育を実践し,その喫煙行動はいかなるものであるのかといった分析を行った。
対象と方法 調査は,1995年11月から12月にかけて実施され.その対象者は三重県内の公立の幼稚園,小中高校及び教育事務所の全職員であった。調査手順は三重県の教職員組合、教育委員会及び学校長会の了解を得た後,三重県健康福祉部を通して、三重県内のすべての公立幼稚園及び小中高校等に調査の依頼を行い,各職場に依頼していた調査担当者より職員全員に調査票を配布してもらった。学校種別の回収率は,中学校98.3%(174/177)、高等学校80.0%(52/65)であった。調査票は全部で14,151通回収され,記入の不備な調査襲153通を除いた13,998通が解析可能であったが,本研究では解析の対象を中高等学校の校長・教漁,教諭,養護教諭5,358人から調査年度に生徒に数える機会のなかった384人(校長143人,養護教諭152人,教諭89人)を除いた4,974人とした。勤務先別の教師総数(拒否校も含む)に対する本研究の解析可能薯の割合は,中学校81.69%,高等学校62.3%であった。
結果 本研究の対象である担当教科を持つ中高等学校教師の喫煙率は男性45.4%,女性4.0%であった。担当教科別の喫煙率は,男性で芸術と保健体育の教師に有意に高く,理科に有意に低く,女性では保健体育に有意に高かった。また,喫煙防止教育実施率は保健体育の教師では男性79%, 女性77%と保健体帝以外の教師に比べ,2倍以上にもなり統計学的に有意であった。保健体育教師とそれ以外の教師別に喫煙に対する考え方を示すと,男女とも「学校を禁煙にすべきか?」という質問への回答に有意な差が認められた。
結論 今まで、わが国では教師の喫煙に関する調査はいくつか実施されているが,教科ごとに教師の喫煙行動の調査はまだなかった。そのような意味から,今回の保健体育の教師における喫煙率は高いという結果は十分価値があると考えられ,また英国の報告では保健を教える教師の喫煙率が特に高くはないことからも,わが国の保健体育教師における喫煙行動の変容が期待される。
キーワード 喫煙行動、喫煙防止教育,教師,保健体育,学校保健

 

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第48巻第5号 2001年5月

日本人中年男女の健康習慣と死亡

-群馬県9町村コホート研究-
川田 智之(カワダ トモユキ)

日的 保健行動や健康状態が,死亡に及ぼす影響を知る。
方法 保健婦による健康習慣に関する面接,および群馬県内9町村の健康診断データを使用したコホート研究を行った。対象自治体住民課および保健課には,調査の趣旨を文章および口頭で説明し同意を得た。健康診断に参加した8,410人の中で,7,694人(91.5%)が回答した。これら9町村住民の死亡小票は,総務庁への正規申請(人口動態調査調査票の目的外使用)によって閲覧した。対象集団の健康診断日からの平均追跡期間は,1999年3月31日現在で2,034日だった。81人が死亡し(男性46人,女性35人),130人が転出した。癌による死亡は,男性18人,女性20人であった。
結果 男性における死亡群のBMIと中性脂肪(P<0.05),およびクレアチエンとGPT(p<0.01)の平均値は,生存群のそれらよりも有意に低値であった。一方,健康診断時年齢は死亡群で有意に高値であった(p<0.01)。女性では,死亡群の健康診断時年齢,GOT,尿蛋白陽性率(p<0.01)、収縮期血圧,拡張期血圧,GPT,γ-GTP(p<0.05)は,生存辞のそれらよりも有意に高かった。
ステップワイズ法によるCoxの比例ハザード回帰分析を行った結束,男性では健康診断時年齢(ハザード此(HR)1.07,95%信頼区間(CI)1.02-1/13,p<0.01),尿蜜白(HR1.65,95%CI 1.08-2.52,p<0.05),クレアチエン(HR=0.07,95%CI 0.01-0.54,p<0.05)が有意に死亡に寄与していた。女性では,健康診断時年齢(HR=1.13,95%CI=1.06-1.21,pく0.01),BMHHR=1.13,95%CI=1.03-1.25.p<0.05),尿蛋白(HR=1.97,95%CI=1.19-3.28,p<0.01),クレアチニン(HR=0.01,95%CI=0.00-0.21,p<0.01),GOT(HR=1.04,95%CI=1.03-1.06,p<0.01),r-GTP(HR=1.01,95%CI=1.00-1.02,p<0.01)が死亡に有意に寄与していた。
7つの健康習慣と健康診断時年齢を共変量にとると,男性では健康診断時年齢(HR=1.07,95%CI=1.02-1.13,p<0.01),女性では健康診断時年齢(HR=1.14,95%CI=1.07-1.22,P<0.01),喫煙しない(HR=0.37,95%CI=0.15-0.90,p<0.01),運動(HR=2.12,95%CI=1.06-4.22,p<0.05),およびBMI(HR=1.11,95%CI=1.00-1.22,p<0.05)が死亡に寄与していた。
結論 男女とも健康診断時年齢と尿蛋白,加えて女性では肥満,肝機能障害などが解釈可能な死亡への寄与要因であった。
キーワード 健康習慣,生命予後,コックス回帰,肥満,地域疫学調査,健康診断

 

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第48巻第6号 2001年6月

生活習慣と医療費との関連に関する研究

-ヘルスアセスメント項目と医療費との関連-
神山 吉輝(カミヤマ ヨシキ) 松尾 光一(マツオ コウイチ)
神田 晃(カンダ アキラ) 川口 毅(カワグチ タケシ)

白的 医療経済的に効果のある予防事業を行うために,日常生活における生活習慣・健康行動と医僚費との関係を検討した。
方法 都道府県の異なる3市の国民健康保険加入者から無作為に抽出した3,400人に対し,調査薬を郵送して各個人の集活習慣情報を把握した。国民健康保険診療報酬明細書による人院外医療費とそれらの生活習慣とを個別にリンケージし,生活習慣と医療費との関係を分析した。
結果 調査薬の有効回収率は全体で49.5%であった「医師から通院が必要と言われている病気がありますか」という質問に対して,「ある」と答えた者の群と「ない」と答えた者の群に分けて分析を行った。その結果,食習慣や飲酒,及び総合的に評価した生活習慣については,通院の必要な疾病がない者の群の間では、より良い習慣の者の方がより1人当たりの医療費が低い傾向にあった。しかし,通院の必要な疾病がある者の群の間では,より良い習慣の者の方が逆に医療費が高くなっていた。また,喫煙の習慣を持つ者は,通院の必要な疾病の有無に関わり無く,そうでない者より1人当たりの医療費が高かった。
結論 生活習慣の改善が医僚費の削減につながる可能性が示唆された。また,今後,生活習慣と医療費との関係を調べるにあたっては,通院の必要な疾病の有無で対象者を切り分けて分析すべきであることが示された。
キーワード 生活習慣,食習慣,喫健,1人当たり医療費,1件当たり医療費,国民健康保険

 

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第48巻第6号 2001年6月

全国都道府県保健所における
地域保健法施行後の保健所機能強化の実態

-情報機能,調査研究機能を中心に-
武村 真治(タケムラ シンジ) 大井田 隆(オオイダ タカシ) 曽根 智史(ソネ トモフミ)
石井 敏弘(イシイ トシヒロ) 藤崎 清道(フジサキ キヨミチ)

目的 全国都道府県保健所における地域保健法施行後の保健所機能,特に情報機能,調査研究機能の基盤・システムの繁備状況を把握し,今後の保健所機能の強化・推進の方向を検討する。
方法 全国都道府県の474保健所を対象に,平成11年11月,郵送により調査票を配布し,309保健所から回答を得た。調査項目として,情報機能・企画調整機能の担当部門の有無,コンピューターの台数,統計解析ソフト・ホームページの有無,年報・業務報告の作成,調査研究数,調査研究の結果からの施策提言の有無などを設問した。
結果 65%の保健所は情報機能の担当部門を,78%の保健所は企画調整機能の担当部門を設置しており,規模の大きい保健所の方が機能強化のための組織体制が整備されていた。
保健所が保有するコンピューターの総数は平均15.5台で,95%の保健所は外部データベースやインターネットと接続していた。しかし統計解析ソフトを保有している保健所は24%,ホームページを開設している保健所は20%と少なかった。
92%の保健所は年報・業務報告を僅成していたが,18%の保健所はそれを次年度事業に反映しておらず,年報・業務報告の形で整理された情報が十分に活用されていなかった。
平成10年度に保健所が関与した調査研究数は平均3.2で,そのほとんどは保健所が実施主体であり,保健所以外の実施主体に協力した調査研究は少なかった。
33%の保健所は調査研究の結果から施策提言が得られておらず,調査研究が地域の行政施策に十分に活用されていなかった。
コンピューターや統計解析ソフトなどの基盤整備と情報・調査研究の活用との関連はみられなかった。
結論 保健所自身が調査研究を実施するために,また地域における調査研究を促進するためにも,大学などの研究教育機関との連携が必要である。また情報機能,調査研究機能を強化するためには,情報の基盤整備だけでなく,それを効果的に運用するための研修などのシステムを整備する必要がある。今後は,情報機能,調査研究機能を含めた保健所機能全体を網羅的に把握し,その関係性を明らかにすること,保健所機能の基盤,システム,実績,効果の指標を開発すること,それらの指標を継続的に把握できる体制を確立すること,によって保健所機能を総合的に評価する必要がある。
キーワード 保健所機能,地域保健法,情報,調査研究,企画調整,保健所

 

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第48巻第6号 2001年6月

高齢者介護サテライト勘定整備の枠組みと推計結果

長倉 真寿美(ナガクラ マスミ)

目的 介確保険の財源について様々な議論がある中で,公私の役割分担や費用負担が明確になる制度運用の体制を整えるためには,受益と負担の関係,制度が与える影響等を客観的かつ綿密に分析することができるデータを登場する必要がある。そこで本稿は,高齢者介護に関する生産,消費,資本形成等の状況を「介護サテライト勘定」として整備する試みについて,方法,推計結果の概略を示した上で,今後の活用に関する若干の提言を行うことを目的とした。
方法 65歳以上の要介護高齢者(「寝たきり」「非寝たきりで要介護の痴呆」及び「虚弱の高齢者」)に支出されている介護費用を推計の対象とした。推計手順は次のとおり。1)介礫分野に特有と考えられる財・サービスを特定,2)特定した介護分野に特有と考えられる財・サービスについて支出を確定,3)資金供給者または年産活動を行う主体を列挙し分類.4)金額表示,物量表示の二通りのデータを作成。
結果(成果) 介護のための国民支出は,3兆2409億円であった。そのうち市場介護サービスが2兆8101億円,介護関連サービスが119億円,介護のための資本形成額が4189億円となっている。介護サービスの生産者については,入所サービスは産出額が多い輝に,産業1兆708億円,対家計民間非営利団体7131億円,政府5544億円となっている。在宅サービスについては,各サービスごとの生産主体が明確になるデータが現存せず,把握できない。家族による介護サービスの額は1兆6814億円となっている。介護サービス提供にかかる資金については,市場介護サービスの総消費額2兆8101億円のうち,政府が55%にあたる1兆5482億円,社会保障基金が37%にあたる1兆377億円を負担している。家計が負担しているのは,8%にあたる2243億円である。
結論 介護サテライト勘定整備は,介護の担い手、費用負担などを包括的かつ整合的に把握し、「国民支出」「生産者ごとの生産額」「資金負担者別負担金額」といった視点から,介護費用を社会経済構造の中に位置づける試みとしての成果があったと考えられる。今後は,介護保険の特別会計報告のデータを使い,介護保険制度下における介護サテライト勘定に発展させれば,財源の問題について客観的データに基づいた判断が可能になると考えられる。
キーワード 高齢者介護,介護サテライト勘定 マクロ経済統計,介護のための国民支出,介護サービス生産者,介護費金負担

 

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第48巻第6号 2001年6月

国勢調査メッシュ統計データの表示・分析システムの構築

関 明彦(セキ アキヒコ) 伊藤 武彦(イトウ タケヒコ) 松田 咲子(マツダ サクコ)
吉田 秋子(ヨシダ アキコ) 井上 康二郎(イノウエ コウジロウ) 関 英一(セキ エイイチ)
中林 圭一(ナカバヤシ ケイイチ) 吉良 尚平(キラ ショウヘイ)

目的 市区町村より小さい小地区を単位とし,各種の保健福祉情報を地図表示,分析することができ,しかも保健所等に容易に導入し得る,統計情報地図表示・分析システムを構築すること。
方法 基準地域メッシュ別に編成された統計情報や,位置情報を伴った各種の情報を,Mircosoft Windows98上で稼働する表計算ソフトウエアMicrosoft Excel 2000(以下Excelと略す)の中で保管,処理,地図表示、および分析までし得るように,Visual Basic for Applicationsを用いてプログラムを組むことを試みた。また,国勢調査地域メッシュ統計,岡山県医療施設名簿を用いて,試作したシステム機能の確認を行なった。
結果 基準地域メッシュを基本区画として,Excel上で様勧する統計情報地図表示・分析システムを構築し得た。機能としては,各メッシュごとの統計量の段彩表示,統計量の移動平均による表示,点情報のポイント表示と点情報までの距離の表示,およびこれらの重ね合わせ表示などである。本システムを用いて国勢調査統計,医療機関情報を地図表示してみたところ,地域性を容易に把握し得るようになったのみならず,複数の情報を組み合わせて表示することにより,新たな知見を得ることができる可能性も示唆された。なお,統計地図の作成は項目を選択するだけで可能となるようにしており,容易に操作し得るシステムとした。また,Excelはほとんどの施設で使用されているものと思われ,本システムは保健所等へ容易に導入し得るものと考えられた。
結論 保健所等の現場へも容易に導入し得る,統計情報地図表示・分析システムを構築した。保健所等において本システムが用いられ,地域情報の把捉,分析活動が一層向上することを望んでいる。
キーワード 保健福祉情報,地理情報システム.地域診断,国勢調査,基準地域メッシュ,統計地図

 

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第48巻第7号 2001年7月

新潟県の高齢者施設におけるインフルエンザワクチン接種
の現状とその効果に関する研究

関 奈緒(セキ ナオ)押谷 仁(オシタニ ヒトシ) 斉藤 玲子(サイトウ レイコ)  
田辺 直仁(タナベ ナオヒト) 林 千冶(ハヤシ センジ) 鈴木 宏(スズキ ヒロシ)

目的 高齢者施設におけるインフルエンザワクチン(以下ワクチン)接種の現状および高齢者,職員のワクチン接種率とインフルエンザ様疾患(以下ILI)罷患,流行発生に対する効果について検討する。
方法 対象は,新潟県内の特別養護老人ホームと老人保健施設(平成9年度140施設,平成10,11年度149施設)である。施設へのアンケート調査と,新潟県および新潟市によるILIサーベイランスのデータを用いた。
結果 平成9年度から平成11年度で,施設内高齢者(以下入所者)への接種を実施した施設は19.8%から96.6%,職員への接種も同様に18.2%から86.3%と増加していた。なお,各施設内の入所者接種率と職員接種率は強い相関を示した。
ILI羅患率は,入所者接種率が上昇するに伴い有意に抑制され,「1週間に施設収容者の10%以上が罹患した場合」とした流行も入所者接種率の増加により有意に阻止された。また入所者接種率が高い施設において,職員接種率が70%以上の場合,70%未満に比べ有意にILI羅患率が低下していた。
ワクチン接種実施上の問題点として「費用」を挙げる施設が6割あり,インフォームドコンセントのあり方とともに今後の接種推進対策上重要と考えられた。
結論 高齢者施設におけるインフルエンザの罹患率抑制,流行阻止には,入所者接種率向上が有効であり,更には職員接種率向上が重要であると考えられた。
キーワード インフルエンザワクチン,高齢者施設,入所者接種率,職員接種率,流行阻止

 

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第48巻第7号 2001年7月

市販弁当類の細菌汚染状況

北瀬 照代(キタセ テルヨ) 長谷 篤(ハセ アツシ)
春木 孝祐(ハルキ ユウスケ) 杉田 隆博(スギタ タカヒロ)

目的 弁当類は私たちの食生活に身近な食品であるが,,加熱等の処理をすることなくそのまま摂食される食品であり,これまでの事例をみても細菌性食中毒の原因食品となることが多い。そこで今回食中毒予防の一助として市販弁当類の細菌汚染状況を調査すると共に保存試験を実施したので報告する。
方法 1997年から1999年にかけて大阪市内で市販されている弁当169件(給食弁当,折詰弁当,店頭調製弁当)を対象として生菌数,大腸菌群,糞便性大腸菌群,大腸菌,黄色ブドウ球菌,セレウス菌,サルモネラ,腸管出血性大腸菌Ο157について検査を実施した。弁当全体を滅菌ストマッカー袋に取りよく混合したものを1検体とし,各細菌検査については食品衛生検査楷針に準拠して実施した。保存試験については給食弁当のごはんん及び2硬類のおかずについて5℃,25℃に保存し,4,8,22時間後の生菌数,大腸菌群推定数,セレウス菌数,黄色ブドウ球菌数の変化を調べた。
結果 調査した弁当類全体の細菌汚染状況をみてみると.生菌数では1g当たり104未満が77検体(45.6%),104台が43検体(25.4%),105台が27検体(16.0%),108以上が22検体(13.0%)であった。大腸菌群は114検体(67.5%),糞便性大腸菌群は43検体(25.4%),大腸菌は6検体(3.6%)が陽性であった。黄色ブドウ球菌は40検体(23.7%)が陽性であった。セレウス菌は43検体(25.4%)から1g当たり102以上検出された。サルモネラおよび腸管出血性大腸菌Ο157は検出しなかった。保存試験では5℃保存では22時間経過後も生菌数はほとんど変化しないか,やや減少した。25℃保存では4時間経過後まではあまり変化がなかったが,その後急速に増殖した。
考察 弁当の衛生規範では「サラダや生野菜などの未加熱処理の製品については1g当たり106以下のものを使用及び製造することが望ましい」としているが,今回の調査結果では22検体(13.0%)について生菌数が1g当たり106以上であり,指針が生かされているとは言い難い結果であった。また.すべてのおかずが加熱調理されていると考えられる製品からも大腸菌群が検出されており,詞理後の二次汚染等製造過程の衛生管理が不十分であると考えられる。また,保存試験の結果からも特に夏場など摂食まで長時間放置されることのないよう注意が必要である。

 

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第48巻第7号 2001年7月

壮年期男子勤務者における飲酒と
高LDLコレステロール血症との関連についての検討

中西 範幸(ナカニシ ノリユキ) 岡本 光明(オカモト ミツアキ) 仁科 一江(ニシナ カズエ)
松尾 吉郎(マツオ ヨシオ) 吉田 寛(ヨシダ ヒロシ)
白井 こころ(シライ ココロ) 多田羅 浩三(タタラ コウゾウ)

目的 飲酒が低比重リボ蛋白(LDL)コレステロールに及ぼす影響を明らかにするため,飲酒状況と高LDLコレステロール血症との関連について検討した。
方法 1994年5月の定期健康診断において高血圧,肝疾患, 糖尿病,高尿酸血症の治績歴を有しない者で,空腹時のトリグリセライド値が400mg/dl未満を示した30-59歳の男子事務系勤務者1,368人を対象として高LDLコレステロール血症(LDLコレステロナル値140mg/dl以上,および動腋硬化用薬服用)の頻度を調査した。さらに,高LDLコレステロール血症を有しない1,054人を観察コーホートに設定し,2000年5月までの6年間における高LDLコレステロール血症の発症を調査した。LDLコレステロール値は血清総コレステロール値,高比重リボ蜜白(HDL)コレステロール値,トリグリセライド値を用いて,Friedewaldの式により算出した。
結果 年齢,Body Mass Index(BMI),拡張期血圧,HDLコレステロール,トリグリセライド,尿酸、空腹時血糖,喫煙,野菜の摂取,コーヒーの飲用,運動を調整したアルコールを「飲まない」者を1.0とする高コレステロール血症のオッズ比は,アルコール摂取が「23.0g未満/日」,「23.0~45.9g/日」,「46.0-68.9g/日」「69.0g以上/日」の飲酒者では,それぞれ0.76[95%信額区間(CI):0.49-1.17〕,0.61(95%CI:0.41-0.92),0.52(95%CI:0.35-0.79),0.52(95%Cl:0.33-0.82)であった(Test for trend:p<0.001)。コーホート設定時の年齢,BMI,拡張期血圧,LDLコレステロール,HDLコレステロール,トリグ・リセライド,尿酸,空腹時血糖,喫煙,野菜の摂取,コーヒーの飲用,運動を調整した高LDLコレステロール血症発症のハザード比は,アルコール摂取が「23.0g未満/日」,「23.0~45.9g/日」,「46.0~68.9g/日」,「69.0g以上/日」の飲酒者では,それぞれ0.73(95%CI:0.52-1.02),0.68(95%CI:0.49-0.94),0.63(95%CI:0.46-0.86),0.54(95%CI:0.38-0.78)であった(Test for trend:p<0.001)。
結論 本研究の成績は,飲酒と高LDLコレステロール血症との間には負の関連を有することを示しており,アルコールは高LDLコレステロール血症の負の危険因子となることを示唆するものである。
キーワード 飲酒,高LDLコレステロール血症,壮年期,男子勤務者

 

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第48巻第7号 2001年7月

メタ・アナリシスの手法を用いた肺がん検診の有効性評価

中山 富雄(ナカヤマ トミオ) 楠 洋子(クスノキ ヨウコ) 鈴木 隆一郎(スズキ タカイチロウ)

目的 現行の肺がん検診の有効性に関しては,否定的な意見が多く,わが国以外では公的資源を投入しての肺がん検診は行われていない。本論文では,国内外の研究成績をレビューし,メタ・アナリシスの手法を用いて解析することで,肺がん検診に関する総合的な評価を行う。
方法 肺がん検診の死亡率について検討した14の研究のうち,1970年代に行われた4つのランダム化比較試験と70年代以降に行われた8つの症例対照研究の成績を用いた。解析には固定効果モデルを用い,評価測定指標としてランダム化比較試験は累積死亡率を,症例対照研究ではオッズ比をそれぞれ用いた。
結果 すべての研究を含めたsummarized relative risk(SRR)は0.789(95%信頼区間0.71-0.857)であったが,同質性が棄却された(p=0.003)。新潟・宮城の研究を除くと,SRR=0.859(0.776-0.952)となり,同質性は保たれた。検診と無検診を比較した9つの研究に限ると, SRR=0.701(0.626-0.784)となり,肺がん検診に約30%の死亡率減少効果があることが示唆された。
緒論 研究として偏りが少ないときれるランダム化比較試験と,偏りが混入しやすいとされる症例対照研究の間で結果が異なることに関しては,議論が必要である。しかし,日本で現在行われている肺がん検診に30%程度の死亡率減少効果があることに関しては,かなり信頼性が高いものと考えられる。ただし,この効果の大きさは,他のがん検診に比べると満足すべきものではなく,費用効果分析等の検討も必要である。
キーワード 肺がん検診,メタ・アナリシス,死亡率減少効果

 

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第48巻第7号 2001年7月

難病患者の地域ベース・コホート研究

-ベースライン調査結果(QOLと保健福祉サービス)-
川南 勝彦(カワミナミ カツヒコ) 箕輪 眞澄(ミノワ マスミ) 新城 正紀(シンジョウ マサキ)
坂田 清美(サカタ キヨミ) 永井 正規(ナガイ マサキ)

目的 本研究では,永井らにより検討された特定疾患情報システムを基本とし,全国レベルで難病患者個人の臨床情報,疫学・保健・福祉情報,予後情報を収集しデータベース化及びコーホート研究を行っている。今回は,平成11年に実施したベースライン調査結果を基に,今後の保健福祉サービスの在り方について検討するための基礎資料を得るとともに,QOL評価指標としてShort Form 36 Health Survey(SF-36)と,難病患者に共通の主観的QOL尺度(主観的QOL尺度)を使用して,各難病疾患別比較及び国民標準値(地域社食で通常の生活を送っている国民の平均値)との比較を行うことを目的とした。
対象 全国の保健所のうち,本研究に調査協力可能であった35保健所管内における新規・継親特定疾患医療受給者(平成11年7月1日時点において受給資格を得ている者)とした。
方法 特定疾患治療研究事業医療受給申請書,臨床調査個人票,疫学・福祉情報調査,QOL(主観的QOL尺度.SF-36),保健福祉サービスへのディマンドを対象者に対して詞査し,共分散分析を使って,性別,年齢階級,日常生活動作(または重症度),医療機関への受診状況,保健福祉(公的)サービス利用状況,疾患分類を調整したQOL(主観的QOL尺度,SF-36各サブスケール:日常役割機能・身体,社食生活機能)得点を各疾患別に比較するとともに,国民標準値とのSF-36各サブスケールスコアについて比較を行った。
結果1.調査データを得られたのは30保健所であり,回収率は57.7%(=2,059人:調査実施数/3,571人:調査予定者数)であった。そのうち,疫学・福祉情報調査,QOLと保健福祉サービスへのディマンド調査に協力を同意しなかった者または回答拒否者497人(24.1%)であった。
2.主観的QOL尺度得点では,筋萎縮性側索硬化症,脊髄小脳変性症,パーキンソン病が,他の疾患と比較して有意に低く,SF-36尺度各サブスケールにおける国民標準値との比較においても同疾患及び重症筋無力症において,各サブスケールで有意に国民標準値より低く,その中で最も低いサブスケールは社会生活機能であり,筋萎縮性側索硬化症で顕著な結果であった。
考察及び結論 神経・筋疾患といわれる重症筋無力症,筋萎縮性側索硬化症,脊髄小脳変性症,パーキンソン病において,症状としてのADL低下や寝たきり等の身体問題により,仕事や普段の活動の制限や家族・友人・他人とのつきあいが制限され,病気の受容及び志気にも影響したと考えられた。さらに,これら疾患患者の保健福祉(公的)サービス利用割合が高いにもかかわらず,現在受けているサービスへの満足度は,ほとんどの疾患で約4割で,寝たきり患者においても同様で変化がみられないことから,保健福祉サービスの在り方を検討する必要性があると考えられた。
キーワード 難病,保健福祉(公的)サービス.QOL,比較

 

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第48巻第8号 2001年8月

死因別の乳児死亡率と出生時要因との関連:1995年~1998年

藤田 利治(フジタ トシハル)

目的 1995年から病死した乳児については,出生体重,単胎・多胎の別,妊娠週数,母の年齢,出生児数および死産経験などの追加事項が死亡診断書に記載されるようになった。本報告では,人口動態統計を用いて,死因別乳児死亡に関連するリスク要因を明らかにする。
方法 1995年から1998年までの4 年間の人口動態調査死亡票および出生票を用い,出生体重が判明 している4,787,537人の出生児と16,327人の病死乳児を対象とした。単産・複産別に,人口動態調査により把握された出生体重などの出生時要因と死因別乳児死亡との関連を,単変量解析とともにボアソン回帰分析による多変量解析を用いて検討した。
成績 1995年から1998年にかけての4 年間での病死による乳児死亡率(出生1000人当たり) は,単産で3.2,複産で17.7であったが,出生体重の影響を調整した相対リスクは0.74倍と複産の方が低くなっていた。ポアソン回帰分析による多変量解析の結果,単産において「先天異常」による乳児死亡リスクの高い特性は,低出生体重,古い年次,「住所地」が関東や東海・北陸など, 男児,「世帯主の主な仕事」が無職・不詳,母が高年齢,短い妊娠期間,遅い出生順位,母に「死産経験』ありであった。「周産期に発生した病態J」での乳児死亡では,出生体重が極めて強く関連し,その次に古い年次、「住所地」が東海・北陸など,「世帯主の主な仕事」が無職・不詳, 遅い出生順位,母に「死産経験」ありであり,母の年齢は有意な関連を示さなかった。また,「乳幼児突然死症候群」については,低出生体重,10代の母,遅い出生順位,男児,「世帯主の主な仕事」が無職・不詳,「死産経験」ありが死亡リスク増大と関連していた。さらに,「心疾患」,「肺炎」ないし,「敗血症」による乳児死亡と出生時要因との関連についても報告した。
結論 死因別乳児死亡と出生時要因の関連について,わが国で初めて全国レベルで定量的に検討した成績を報告した。病死による乳児死亡にかかわるリスク要因の解明が人口動態統計によって格段に詳細に行いえる状況になったことから,乳児死亡率の一層の改善のための効率的対策が推進されることが期待される。
キーワード 乳児死亡率,出生体重,リスク要因,先天異常,周産期に発生した病態,乳幼児突然死症候群

 

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第48巻第8号 2001年8月

基本健康診査受診者を対象としたQOL調査

-EuroQol EQ-5Dを用いて-
藤田 麻里(フジタ マリ) 林 恭平(ハヤシ キョウヘイ) 小笹 晃太郎(オザサ コウタロウ)
渡邊 能行(ワタナベ ヨシユキ) 濱島 ちさと(ハマシマ チサト)

目的 健診受診者の健康関連QOLを明らかにすることを目的に,EuroQol EQ-SDの5項目と,5項目より得られる効用値および視覚評価法(Visual Analogue Scale : VAS) について性,年齢別の分布を検討した。
方法 平成11年6月から10月にかけて京都府下での2町において健診受診者2,314人を対象に質問紙による既往歴,ADL調査,QOL調査,食事等の調査を行った。QOL調査にはEQ-SD臨床版を用いた。EQ-5Dは「移動の程度」,「身の回りの管理」,「ふだんの活動」,「痛み/不快感」,「不 安/ふさぎ込み」の5項目と視覚評価法(VAS),およぴ個人属性により構成されている。5項目での回答はそれぞれ,「問題ない」,「いくらか問題がある」,「問題がある」の3 段階の選択肢によって評価される。5項目の回答の組み合わせから日本版の効用値換算表を用いて,0~1,000の数値で表される効用値に換算した。
結果 回答者は男性656人,女性11,234人の計1,890人であり,回収率は81.7%であった。高血庄,糖尿病,脳卒中に既往歴ありと回答したのはそれぞれ29.1%, 3.0%, 2.5%であった。EQ-5Dにおける5項目の各項目への回答に性差はみとめられず,「不安/ふさぎ込み」を除く4項目で加齢にともない「問題ない」の割合が減少する傾向がみられた(χ2検定でいずれもp<0.01)。効用値,VASの分布に性差はみとめられなかったが,ほぽ加齢にともなってそれらの数値の大きい者の割合が減少する傾向がみられた(いずれもp<0.01)。効用値とVASの相関係数は 0.406 (P<0.01)であった。
結論 加齢にともなって健康関連QOLの低下がみられた。また,効用値とVASは,それぞれが異なった面からの健康状態についての評価をしているものと考えられた。地域における実態を知るためには,今後,健診非受診者も含めた検討を行う必要がある。
キーワード 健診受診者,QOL調査,健康関連QOL, EuroQol, EQ-5D,効用値

 

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第48巻第8号 2001年8月

3歳時の生活習慣と小学4年時の肥満に関する6年間の追跡研究

-富山出生コホート研究の結果より-
関根 道和(セキネ ミチカズ) 山上 孝司(ヤマガミ コウジ) 沼田 直子(ヌマタ ナオコ)
濱西 島子(ハマニシ シマコ) 陳 暁莉(チン ショウリ) 飯田 恭子(ハンダ キョウコ)
齋藤 友博(サイトウ トモヒロ) 川南 勝彦(カワミナミ カツヒコ) 簑輪 眞澄(ミノワ マスミ)
徳井 教孝(トクイ ノリタカ) 吉村 健清(ヨシムラ タケスミ) 徳村 光昭(トクムラ ミツアキ)
南里 清一郎(ナンリ セイイチロウ) 杉森 裕樹(スギモリ ヒロキ)
吉田 勝美(ヨシダ カツミ) 鏡森 定信(カガミモリ サダノブ)

目的 3歳時の児童・両親の肥満や生活習慣の,小学4年時の肥満への影響を評価する事を目的と した。
方法 対象は,1989年度生まれで,3歳児健診時に富山県在住の児童10,177人。初回調査は,1992 年4月から1994年3月に,対象児童の3歳児健診時に実施した。両親の体格,児童の生活習慣に関する質問票に両親が回答し,県内の保健所にて児童の体格測定を行った。追跡調査は,1999 年6月の対象児童が小学4年時に実施した。県内の小学校を介して質問票を配布し,児童の体格を両親が回答した。初回調査時に児童・両親の体格,生活習慣に関する完全な情報が得られた8,743人(総対象者の85.9%)のうち,追跡調査で児童の体格の回答が得られた6,762人(男児3,405人、女児3,357人:追跡率77.3%)を解析対象者とした。3歳児健診時の平均年齢は3.4歳,平均追跡期間は6.3年であった。児童の肥満の有無は,体格指数(BMI:体重kg/身長㎡) で過体重に相当する年齢・性別毎のカットオフ値を用いて判定した。両親の肥満は,BMIで25 kg/㎡以上とした。ロジスティック回帰分析を用いて,3歳児健診時の要因の,小学4年時の肥満への寄与を評価した。
結果 3歳児健診時に児童・父親・母親が肥満の場合、小学4年時の児童の肥満のオッズ比(95% 信頼区問)は,それぞれ,5.70 (4.72-6.88), 2.02(1.74-2.36), 2.69 (2.18-3.32)と有意に高値であった。食事では,卵類・インスタント麺類,ファーストフード類の摂取頻度が高いほど,野菜の摂取頻度が低い群で肥満のオッズ比は高値であった。生活習慣では,朝食を「毎日食べる」に対して,「時々食べない」は1.19 (1.02-1.40),間食時間を「決めている」に対し て,「だいたいJ」で1.51 (1.12-2.02),「決めていない」で1.75 (1.29-2.37) と,食事摂取の不規則性と肥満が関連した。また就寝時刻が遅く,睡眠時間が短いほど」肥満と関連した。睡眠時間が「11時間以上」に対して,「10~ll時間」では1.08 (0.82-1.42),「9~10時間」で1.19 (0.90 -1.57), 「9時間未満」で1.50 (1,00-2.24)と量反応関係を認めた。運動習慣は「活発」に対 して「ふつう」でオッズ比が低値であったが,運動時間では関連性がなく,結果に一致性がな かった。
結論 3歳時の児童・両親の肥満や生活習慣が,その後の肥満と関連する。したがって,小児肥満 の予防対策は,少なくとも3歳からの対策が必要である。
キーワード 小児肥満,食習慣,運動習慣,睡眠習慣,コホート研究,富山スタディ

 

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第48巻第10号 2001年9月

「精神障害者社会適応訓練事業」の現状

-全国調査から-
立石 宏昭(タテイシ ヒロアキ)

目的 本研究では,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」五十条の四にある精神障害者社会適応訓練事業(以下,社会適応訓練事業と略す)の現状を社会資源指数・稼働率・就労率・未就労率をもとめることにより明らかにすることである。
方法 47都道府県および12指定都市の精神保健福祉担当課にたいし,過去5年間の事業状況を郵送にて回答を求めた。主な調査項目は,登録事業所数,協力事業所数,訓練終了後の雇用契約者数,再入院者数,在宅者数,他の施設への入所者数などである。
結果 回収率は,79.7% (36都道府県および11指定都市)であった。
・27都道府県(指定都市を含む)における登録事業所数を通院公費負担患者数で割った指標を社会資源指数としたときの平均値は1.12であった。
・26都道府県および6指定都市における協力事業所数を登録事業所数で割った指標を稼働率としたときの平均値は23.6%であった。
・21都道府県および5指定都市の訓練終了後もしくは訓練中止後に雇用契約(パート・アルバイトを含む)を結んだ平均の就労率は25.3%であり,内訳として協力事業所との雇用契約者数 (72.8%),他の事業所との雇用契約者数(27.2%)であった。また,未就労率は74.7%であり, 内訳として再入院者数(15.4%),在宅者数(46.7%),死亡者数(1.4%),他の施設への入所者数(1.6%),その他(32,4%),不明(2.5%)であった。
結論 社会資源指数・稼働率・就労率・未就労率のいずれも都道府県および指定都市での地域格差があることが示された。
キーワード 精神障害者社会適応訓練事業,全国調査,社会資源指数,稼働率,就労率,未就労率

 

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第48巻第10号 2001年9月

都道府県別観察による喫煙率と疾患別死亡率の関連

旭 伸一(アサヒ シンイチ) 大木 いずみ(オオキ イズミ) 谷原 真一(タニハラ シンイチ)
尾島 俊之(オジマ トシユキ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 岡山 明(オカヤマ アキラ)
松村 康弘(マツムラ ヤスヒロ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

目的 わが国における喫煙率と疾患別死亡率の地域差を観察することにより,喫煙の健康影響を探る。
方法 本研究では都道府県別喫煙率と死因別疾患別死亡率の相関係数を男女別に観察した。都道府県別喫煙率は1986年から1995年までの10年間の国民栄養調査の結果を用いた。都道府県別に喫煙率の年齢調整を行った上で,人口動態統計特殊報告(1995年)の疾患別年齢調整死亡率との相関係数を男女別に観察した。
結果 男では膵の悪性新生物,老衰,不慮の事故,交通事故の死因に有意な正の相関が観察され, 女では,結核,気管・気管支及び肺の悪性新生物,乳房の悪性新生物,卵巣の悪性新生物,心疾患,虚血性心疾患,心筋梗塞,肺炎,慢性閉塞性肺疾患,慢性気管支炎及び肺気腫,肝疾患,腎不全の死因で正の相関が観察された。
結論 喫煙率と疾患別死亡率の相関係数から女の肺癌,虚血性心疾患など一部の疾患で喫煙の健康影響と矛盾しない結果が得られた。
キーワード 都道府県別喫煙者指数,死因別年齢調整死亡率,相関係数

 

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第48巻第10号 2001年9月

GHQ-12項目質問紙を用いた
精神医学的傷害のスクリーニング

本田 純久(ホンダ スミヒサ) 柴田 義貞(シバタ ヨシサダ) 中根 允文(ナカネ ヨシブミ)

目的 精神医学的障害をスクリーニングする尺度としてのGeneral Health Questionnaire (GHQ) - 12項目の有効性を評価し,さらに,精神医学的障害の判定に及ぽすGHQ-12各項目の寄与の違いを調べることを目的とした。
方法 1991年3月から8月までに長崎市内にある2病院の内科外来を受診した1,555人を対象にGHQ-12項目質問紙による1次調査を実施した。GHQ-12項目得点別に,低得点(0-1),中得点 (2-3),高得点(4-12) の3得点群に分け,層別抽出により2次調査の対象者を選んだ。2次調査は長崎大学医学部精神神経科の医師がlCD-10に基づく精神医学的障害の診断を行った。最終的な解析対象者は336人(男158人,女178人)であった。精神医学的障害の判別に及ぽすGHQ-12項目の寄与の違いを調べるために,精神医学的障害の有無を従属変数,GHQ-12項目の各得点を独立変数とするロジスティック回帰分析を行った。またロジスティック回帰分析から得られた偏回帰係数をもとに,各項目の寄与に応じて重みを付けた,重み付きGHQ-12項目得点を計算した。精神医学的障害のスクリーニング尺度としてのGHQ-12項目質問紙の有効性はGHQ-12項目得点及び重み付きGHQ-12項目得点のさまざまなカットオフ値に対する感度と特異度を求めることにより検討し,さらにROC (receiver operating characteristic)解析を行うことにより,両者のスクリーニング尺度としての有効性の違いを比較した。
結果と結論 対象者336人のうち127人((37.8%)にlCD-10による精神医学的な診断がつけられた。GHQ-12項目得点の得点群別では,低得点群(81人)では6 人(7.4%)に,中得点群(66人)では22 人(33.3%)に,高得点群(189人)では99人(52.4%)に,それぞれ診断がつけられた。GHQ -12項目質問紙を精神医学的障害のスクリーニングに用いた場合のカットオフ値は4点が最適 であると考えられ,そのときの感度は78.0%,特異度は56.9%であった。また各項目の得点に重みを付けない通常のGHQ-12項目得点と,重みを付けたGHQ-12項目得点の感度と特異度を ROC解析により比較した結果,重み付きGHQ-12項目得点の方が感度と特異度は高かった。
キーワード 精神医学的障害,スクリーニング,感度,特異度,ROC解析,General Health Questionnaire質間紙

 

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第48巻第10号 2001年9月

スギ花粉症における暴露と感作、発症の量反応関係

寺西 秀豊(テラニシ ヒデトヨ) 内田 満夫(ウチダ ミツオ) 加藤 輝隆(カトウ テルタカ)
加須屋 實(カスヤ ミノル) 小笹 晃太郎(オザサ コウタロウ)

目的 空中花粉飛散量を暴露指標とした場合,暴露量とスギ花粉症の感作および発症に量反応関係が存在するか否かを疫学的に検討する。
方法 富山県で花粉症情報システムの一環として耳鼻科医と眼科医を受診した花粉症患者調査が実施されている。ここでは1996年から2000年までの5年間のスギ花粉総飛散数と花粉症患者数の関連性について検討した。
京都府では1町において小中学校の学童を対象にスギ花粉症疫学調査が実施さ れている。1997年には学童458人の血清スギIgE抗体が測定された。ここでは出生月とスギIgE抗体価に関する研究成果に基づき10月から次年の1月までに生まれた学童における血清スギIgE抗体と出生早期スギ花粉暴露量との関連性について検討した。
結果 富山県における花粉症患者数とスギ花粉総飛散数の関連性を検討すると,花粉数の多い年には,花粉症患者の発症も多く,スギ花粉総飛散数(対数変換値)と花粉症患者数の間には相関係数r=0.99 (p<0.01)と男女ともに高い相関関係が認められた。このことはスギ花粉総飛散数が多いと患者の発症も多いという量反応関係の存在することを示している。
また京都府における調査では,出生早期暴露の指標として,京都府立医科大学における各年のスギ花粉総飛散数を使用したが,10月から1 月までに生まれた学童におけるスコア4 以上の IgE抗体保有率との間にスピアマンの順位相関係数でr =0.73(p <0.05)と有意の相関が認められた。このことはスギ花粉暴露と感作との間にも量反応関係の存在することを示唆している。
結論 空中花粉飛散量を暴露指標とした場合,スギ花粉症の感作および発症に量反応関係が存在することが示された。さらに研究をすすめ,環境中スギ花粉量を闘値あるいは環境基準値等として設定できないか検討したい。
キーワード スギ花粉症,疫学,空中花粉,発症,闘値,量反応関係

 

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第48巻第11号 2001年10月

既婚子同居世帯における世代間の生活の共同・分離

西村 昌紀(ニシムラ マサノリ) 古谷野 亘(コヤノ ワタル)
石橋 智昭(イシバシ トモアキ) 山田 ゆかり(ヤマダ ユカリ)

目的 全国規模調査のデータに基づき,高齢者と既婚子の同居世帯における生活の共同・分離と,それに関連する要因について検討した。
方法 全国65歳以上男女の無作為標本を対象に訪問面接調査を行い,2 ,335人から回答を得た(回収率77.8%)。回答者のうち,「典型的な既婚子同居」と考えられる「1 人の既婚子およびその核家族と同居している者」732人を分析対象とした。生活の共同・分離に関する項目として,(1) 住宅設備の共有(空間の共同),(2)タ食をともにする頻度(食事の共同),(3)家計管理の方法(家計の共同)を取り上げた。
結果 空間,食事,家計のいずれについても,共同にしている者が多かったが,全領域を共同にし ている者は全体の半数強にとどまった。共同・分離の分布には都市規模による有意な差が認め られ,子どもとの同居率が低い大都市においては,既婚子と同居している場合でも,世代間の生活分離の程度が高かった。また,共同・分離のパターンは,大都市でより多様であった。多重ロジスティック分析の結果も,都市規模が空間,食事,家計の共同に有意もしくは有意に近い影響を及ぽしていることを示した。配偶者の有無と年収は,空間および家計の共同と有意な関連を示した。学歴と子ども夫婦の就労状況は空間の共同と,生活機能は家計の共同と有意な関連を示した。
結論 個々の領域における共同度が高い半面,全領域を共同にしている者が比較的少なかったことは,必要に応じて,あるいは必要に迫られて,部分的な生活の共同が選択されていることを示唆している。そのため領域ごとの関連要因には差異が認められ,共同・分離のパターンにも多様性をもたらしていると考えられる。
キーワード 高齢者,既婚子同居,生活の共同・分離,世代間関係,都市規模

 

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第48巻第11号 2001年10月

がん(成人病)専門医療施設に勤務する看護婦の禁煙指導の現況

田中 英夫(タナカ ヒデオ) 木下 洋子(キノシタ ヨウコ) 蓮尾 聖子(ハスオ セイコ)
増居 志津子(マスイ シヅコ) 木下 朋子(キノシタ トモコ) 中村 正和(ナカムラ マサカズ)
林田 美香(ハヤシダ ミカ) 友成 久美子(トモナリ クミコ)
大島 明(オオシマ アキラ) 近本 洋介(チカモト ヨウスケ)

目的 がん(成人病)専門医療施設に勤務する着護婦の日常診療における禁煙指導に関する意識と行動を明らかにする。
方法 大阪府立成人病センターに勤務する看護婦全員を対象に,無記名自記式の調査票を詰所(勤務部署)単位で2週間留め置き,回収した。調査票の質問項目は,同センターの看護婦31人を対象に行った禁煙支援をテーマとしたフォーカスグループインタピューの分析結果を元に作成 した。367人(有効回答率93%)から回答を得た。
結果 初診時または新規入院患者に対して喫煙状況の確認をしていた者は対象者の91%であった。患者への禁煙指導方法はタバコの害を伝えるものが中心で,1 回の指導時間は5 分以内の者が 71%を占めた。禁煙指導に関する自己効力感が高い看護婦ほど1回の禁煙指導時間が長く,また,禁煙に関心のある患者に対して禁煙方法を助言する頻度が高かった。禁煙指導に関する自己効力感の高さは,過去の禁煙指導に対する手応えや満足感,禁煙指導方法の教育歴と有意な関連を示し,看護婦の年齢や勤務場所,自己の喫煙習慣とは有意な関連がみられなかった。禁煙指導の阻害要因は「時間がないこと」とする者が最も多く(46%),促進要因は「患者向け禁煙教材」(64%),「健康上のメリットを示す疫学データ」(52%)とする者が多かった。 結論がん(成人病)専門医療施設に従事する看護婦の禁煙指導方法は,タバコの害を伝えるものが中心であった。今回みられた禁煙指導行動と自己効力感との関連,および自己効力感と看護婦の属性との関連の検討から,禁煙指導方法の研修などを通じて,禁煙指導を提供することに関する自己効力感を高めることが、看護婦の禁煙指導の改善につながると推察した。
キーワード 看護婦,禁煙指導、自己効力感

 

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第48巻第11号 2001年10月

地域在宅高齢者の社会活動に関する要因

佐藤 秀紀(サトウ ヒデキ) 佐藤 秀一(サトウ シュウイチ) 山下 弘二(ヤマシタ コウジ)
山中 朋子(ヤマナカ トモコ) 柴田 ミチ(シバタ ミチ)
鈴木 幸雄(スズキ ユキオ) 松川 敏道(マツカワ トシミチ)

目的 本研究は,青森県内に在住する在宅高齢者を対象に,今後の高齢者に対する社会活動の活性 化の指針を得ることをねらいとして,彼らの社会活動(社会的活動領域,学習的活動領域,個人的活動領域)に着目し,その活動と個人の基本的属性との関連性について検討した。
方法 調査地域は,青森県内67市町村とし,調査対象は層化多段無作為抽出法により65歳以上の高齢者3,000人を抽出した。調査は食生活改善委員による配票留置法によって実施した。配布した調査票は,原則として本人あるいは同居家族の自記入とした。なお,調査対象者の98.3%にあたる2,948人より回答が得られた。
結果 1)社会的活動領域の関連要因は,年齢,配偶者の有無,家族形態,健康度自己評価,体力自 己評価について認められた。2)学習的活動領域の関連要因は,性別,年齢,配偶者の有無,家族形態,健康度自己評価,体力自己評価について認められた。3)個人的活動領域の関連要因は, 性別,年齢,配偶者の有無,家族形態,健康度自己評価,体力自己評価について認められた。
結論 高齢期に身体機能が低下してきている場合においても,できるだけ自発的に参加することができるよう,高齢者の利用にできるだけ配慮した公的施設整備を行うとともに,高齢者の活動範囲全体をカバーするよう高齢者に配慮したまちづくりを総合的に推進することが必要である。また,施設といったハード面の整備だけでなく,高齢になっても活動しやすい道路や公共交通 手段や社会活動支援のための情報提供・相談,多様な活動メニューの実施等,高齢者の社会参加を支援する地域社会づくりが重要であるものと示唆される。
キーワード 高齢者,社会活動

 

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第48巻第11号 2001年10月

地域集団の健康関連QOL

井手 宏明(イデ ヒロアキ) 平尾 智広(ヒラオ トモヒロ) 橋本 眞澄(ハシモト マスミ)
安原 智江(ヤスハラ トモエ) 星川 洋一(ホシカワ ヨウイチ) 直島 淳太(ナオシマ ジュンタ)
福永 一郎(フクナガ イチロウ) 實成 文彦(ジツナリ フミヒコ)

目的 本研究の目的は,EuroQol (EQ-5D) 5項目法の自治体レベルにおける有用性と限界について知見を得ることである。
方法 A県在住の20歳以上の男女3,000人を対象に,EuroQol (EQ-5D) 5項目法を含む自記式質問票による調査を行い1,519人から回答を得た。このうち5項目すべてに回答した1,479人を分析 対象とし,換算表Basic Tariff A1を用いて,死亡が0 ,完全な健康を1 とした場合の効用値, HRQOLスコアを算出した。
結果 全体の回収率は50.6%であるが,回収者のうち(EQ-5D) 5項目のすべてに回答した人は97.4 %と良好であった。求めた健康関連QOL (HRQOL) スコアは,年齢階級が高くなるにつれて低値となり,最近1か月の健康状態や日常生活の質への満足度の程度に応じて変化した。 Euro-Qol (EQ-5D) 5項目のうち,「痛み/不快感」,「不安/ふさぎ込み」では,他の項目に比べて若年者でも問題を持つ人が多かった。
結論 EuroQo (EQ-5D) 5項目法は,その簡便性から郵送による調査や他の調査との併用も容易で,住民の健康状態を測定するツールとして有用である。算出したHRQOLスコアは、政策レべ ルにおけるベンチマーク指標として用いられるが,具体的な施策,執行計画につなげるためには,有病や障害の種類に関するデータとリンクさせた分析を行い,健康度を低下させている要因を明らかにする必要がある。
キーワード 健康関運QOL, EuroQol (EQ-SD) 5項目法,地域集団

 

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第48巻第11号 2001年10月

保健統計におけるレコードリンケージの実施可能性

橋本 修二(ハシモト シュウジ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 松村 康弘(マツムラ ヤスヒロ)
小栗 重統(オグリ シゲノリ) 岡山 明(オカヤマ アキラ)
中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

目的 保健統計における個人単位のレコードリンケージの実施可能性を整理するとともに,国民生活基礎調査と国民栄養調査の間でその実施可能性を確認した。
方法 個人を調査客体とする24の保健統計を対象とした。調査対象と調査法に基づいて,同一統計の年次間,異なる複数の統計間における個人単位レコードりンケージの実施可能性を整理した。 1995年の国民生活基礎調査と国民栄養調査を,都道府県・地区・単位地区・世帯・性・出生年月をキー項目として,個人単位でレコードリンケージした。
成績 個人単位レコードリンケージの実施可能性を有する保健統計としては,同一統計の年次間では,医師・歯科医師・薬剤師調査,老人保健施設調査,訪問看護統計調査が挙げられた。異なる複数の統計間は,国民生活基礎調査とその調査対象世帯1比帯の一部を調査対象とする13の統計の間,および,患者調査と受療行動調査の間が挙げられた。国民栄養調査の調査世帯員の中で,国民生活基礎調査とリンクできた者は93.2%であった。全キー項日の一致したリンク候補が複数あるためにリンクできなかった者は0,3%で,ほとんどが29歳以下であった。リンク候補がないためにリンクできなか-。た-者は6.5%で,リンクできた者と比べて29歳以下と70歳以上の割合が大きかった。
結論 個人単位レコードリンケージの実施可能性を有する保健統計を示した。国民栄養調査のほとんどの調査世帯員は,国民生活基礎調査と個人単位でレコードリンケージ可能であった。
キーワード 保健統計,レコードリンケージ,国民生活基礎調査,国民栄養調査

 

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第48巻第13号 2001年11月

全国の市町村における疫学研究と個人情報保護に関する検討の現状

尾島 俊之(オジマ トシユキ) 多治見 守泰(タジミ モリヒロ) 大木 いずみ(オオキ イズミ)
中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

目的 全国の市町村における疫学研究の実施状況および個人情報保護に関する検討の現状を明らかにすることを目的とした。
方法 全国の3,251全市町村を対象として自記式郵送調査を実施した。
結果 全国の88.0%の市町村は何らかの調査を行っていた。それらの市町村での個人情報保護に関する検討の方法は,担当者内での検討67.9%,文書の決裁28.8%. ,住民代表の入らない協議会 2.1%,住民代表の入った協議会8.5%,市町村の条例に基づく審議会等2.6%,研究機関等の倫理審査委員会0.7%,その他の方法2.0%,いずれも実施したことがない20.2%であった。
結論 市町村において調査研究を行う際,今後は,最低限,文書の決裁を行うこと,また,住民代表の入った協議会,市町村の条例に基づく審議会等,また,倫理審査委員会等の場での検討を行う市町村が増加する必要が有ると考えられる。
キーワード 市町村,疫学研究,調査研究,個人情報保護,倫理審査,情報

 

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第48巻第13号 2001年11月

集団健康教育の評価

-糖尿病予防教室を事例として-
藤村 貴枝(フジムラ タカエ) 西村 洋子(ニシムラ ヨウコ)
中本 稔(ナカモト ミノル) 原田 規章(ハラダ ノリアキ)

目的 従来行われてきた集団健康教育は,十分な動機づけや対象者の選定がなされないまま,保健所及び市町村において試行錯誤を繰り返しながら実施してきた。そのため対象者の特性に合った指導が必ずしも容易ではなく,教育効果も明らかになりにくいと指摘されてきた。実際,日常業務の中で行われている評価活動の多くは,教室参加者の感想を聞くアンケート調査や,参加者の検査値の変化,行動変容の有無等を調査したものが多い。本稿では,集団健康教育としての糖尿病予防教室について,予防教育の効果の有無を日常の健診結果の変化を評価指標とし,コントロール群を設定して検討した。
方法 Y県のA町とB市における基本健康診査受診者の中から,糖尿病予防教室受講者24人(受講群)と,受講しなかった者48人(コントロール群)を1対2のマッチング法で抽出し,糖尿病予防教室の効果を受講前と受講後の健診結果で比較検討した。統計学的検定は,対応のあるt 検定を行い,5%の危険率で有意と判定した。
結果 2市町とも受講群は,受講前に比べ受講後のHbA1cの平均値が有意に低ドし,A町ではコントロール群においても有意な低下がみられた(pくO.O5)。 A町ではさらに,受講群のみに体重,BMIも有意に低下していた(p <0.05)ことから,教育効果があったと考えられた。A町において,受講群,コントロール群ともにHbA1cの平均値が有意に下がっていたことは,予防教室受講の有無に関わらずに血糖値を下げる保健行動を住民自らが取っていたと考えられ,その要因は,健診結果の通知方法の差異と推測された。
結論 保健活動の実践場面において,集団健康教育の効果を厳密に評価するには多くの困難を伴い,このことが実践の中に評価活動が位置づかない理由となっている。基本的属性やHbA1c値をマ ッチングしたコントロール群を健診受診者から抽出し,その結果を両群で比較検討することは, 日常業務の中で実施可能な集団健康教育の評価方法であると考えた。
キーワード 健康診断,糖尿病予防教室,教育効果,HbA1c,マッチング

 

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第48巻第13号 2001年11月

在宅療養高齢者の看取り場所の希望と
「介護者の満足度」に関連する要因の検討

-終末期に向けてのケアマネジメントに関する全国訪問看護ステーション調査から-
樋口 京子(ヒグチ キョウコ) 近藤 克則(コンドウ カツノリ) 牧野 忠康(マキノ タダヤス)
宮田 和明(ミヤタ カズアキ) 杉本 浩章(スギモト ヒロアキ)

目的 高齢者一人ひとりの「死の迎え方」(肴取り方)の希望を尊重するケアが求められている。「介護者の満足度」でターミナルケアの質を評価した場合,自宅で死亡することは常に質が高いと言えるのか,どのようなケアが質を高めるのかを1り1らかにする目的で, 介護者の「死の看取り方」の希望やケアマネジメントに着目して実際の死亡場所と「介護者の満足度」に関連する要因を検討した。
方法 1998年8月現在の全国の訪問看護ステーション全数2,935のうち,「調査に協力する」とした 856ステーション(29.2%)に質問紙を郵送した。 高齢者や介護者の「死の迎え方」(看取り方) の希望や実際の死亡場所,ケア過程,看護者が推定した「介護者の満足度」(5段階)等を含む 調査票への記載を訪問担当看護者に依頼した。427ステーションから回答が得られ(回収率49.9 %),訪問看護を受けた後1999年9月から11月の3 か月間に死亡した65歳以上の高齢者1,305人 を分析対象とした。
結果 在宅療養高齢者の平均年齢は82.8歳,在宅死亡割合(在宅死亡人数/総死亡入数)は,50.4 %(658人/1,305人)であった。た。入院理由は,呼吸困難や急変などの医学的理由が73%であっ た。「介護者の満足度(5段階)」の平均±標準偏差は3.7±1.2で,「自宅で死にたい」かどうかについての「本入の希望」より「介護者の希望」により強く関連していた。自宅死亡で常に介護者の満足度が高いとは限らず,介護者が病院を希望していたが「自宅で死亡」した場合には,「介護者の満足度 は2.8±1.2で,病院に入院して死亡した群よりも低かった(p= 0.03)。 また,丁寧なケアマネジメントの実施が「介護者の満足度」に影響を及ぽすことが推察された。 たとえば,自宅を希望し「病院で死亡した人で見ると,満足度が4~5段階と高かった群で, 在宅療養を希望した理由の実現度(5段階)が高かったこと(4.1 vs 3.2, p<0.01),段階的な死の教育を行い(77.4% vs 45.5%, p=0.O4),看取リ場所の希望の再確認(93.8% vs 63.6 %, p=0.02) をしていた人が有意に多かった。
結論 高齢で介護力があリ,訪間看護者が在宅で看取ることに積極的である場合,①訪問看護を受 けていた在宅療養高齢者が終末期前後に入院する最大の理由は医学的理由であり,自宅で死亡 するとむしろ「介護者の満足度」が低い場合も見られ,自宅死亡は病院死亡よりも質が高いと一概には言えないことが占された。②「介護者の満足度」は,高齢者本人および介護者をアセ スメントし,「死の迎え方(看取り方)」の希望に基づきゴールを設定すること,終末期から臨死期の経過を予測し,家族への段階的な死の教育や「看取り方」の,再確認など,ケアマネジメ ントを丁寧に実施することで,高められる可能性が示唆された。
キーワード 在宅高齢者,訪問看護,ターミナルケア,ケアマネジメント,介護者,満足度

 

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第48巻第13号 2001年11月

白血球数が糖尿病の発症に及ぼす影響

-壮年期男子勤労者における検討-
中西 範幸(ナカニシ ノリユキ) 岡本 光明(オカモト ミツハル) 仁科 一江(ニシナ カズエ)
李 文娟(リ ブンケン) 中島 和江(ナカジマ カズエ) 福田 英輝(フクダ ヒデキ)
村上 茂樹(ムラカミ シゲキ) 高鳥毛 敏雄(タカトリゲ トシオ) 多田羅 浩三(タタラ コウゾウ)

目的 白血球数が糖尿病の発症に及ぽす影響を明らかにするため,定期健康診断で測定された白血球数を用いて白血球数と糖尿病の発症との関連について検討した。
方法 1994年5 月に定期健康診断を受診し,空腹時血糖値が1O9mg/dl以ドを示した者で糖尿病と高血圧の治療歴を持たない35~59歳男子事務系勤務者1,300人を観察コーホートに設定し,2000年5月までの6年間における糖尿病の発症を調査した。糖尿病の診断は空腹時血糖値が110~125 mg/dlをIFG(impaired fasting glucose),空腹時血糖値が126mg/dl以上,あるいは糖尿病用剤服薬を2型(インスリンり非依存性)糖尿病とした。
結果 6年間におけるIFG,および2型糖尿病の発症率は25.7/1,000人年であり,2型糖尿病の発症率は10,5/1,000人年であったた。コーホート設定時の年齢,Body mass index,糖尿病の家族歴, 飲酒,運動,収縮期血圧,高比重リポ蛋白コレステロール,トリグリセライド.尿酸,ヘマトクリット,空腹時血糖値を調整したI FG,および2型糖尿病発症のハザード比は,白血球数の増加にともない有意に高値を示したが,喫煙を追加し調整すると白血球数とIFG,および2型糖尿病発症との間には有意な関連をみとめなかった。2型糖尿病発症と白血球数との関連においても同様の結果であった。喫煙状況別にみると,非喫煙者では白血球数の増加にともないIFG,および2型糖尿病発症のハザード比は高値を示し,白血球数が「-~5.39 10^3/mm^3」を1. 0とする 「 5,40~6.19 1O^3/mm^3」, 「6.2~7.39 10^3/mm^3」, 「7,40~ 10^3/mm^3』の調整ハザード比はそれぞれ1.16 [95%信頼区間(CI):0.56-2.41」, 1.68 (95%CI :0,84-3.37)、 2.39 (95%C1:1.14 -5.02)であった(Test for trend:p = 0.015)。一方,喫煙者においては白血球数とIFG,および2型糖尿病発症との間に有意な関連をみとめなかった。
結論 白血球数の増加はIFG,および2型糖尿病の発症と密接な関連を有しており,とくに非喫煙者ではその傾向が顕著であった。
キーワード 白血球数,impaired fasting glucose, 2型糖尿病,壮年期,男子勤労者,コーホート研究

 

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第48巻第15号 2001年12月

東京都の離島における中高生の飲酒行動に関する調査

小林 冬子(コバヤシ フユコ) 大井田 隆(オオイダ タカシ)

目的 東京都の離島、A島において,平成10年度に子どもの飲酒に関する実態調査が養護教諭らによってて行われた。その調査では,A島は飲酒に寛容であり,その飲酒環境による弊害が子ども たちにも影響を及ぽしている可能性があると推測している。しかし,その実態調査の結果は, A島特有のものであるのかは不明である。そこで今回,A島の状況を客観的に判断するために, 全国調査と1同様のアンケート調査を実施し,更に,中学校と高等学校の養護教諭へのインタビ ュー調査とあわせて,A島における未成年者の飲酒行動や保健室から見た現状を客観的に検討し,A島におけるアルコール依存症の一次予防に役立てることを目的とした。
方法 1. 養護教諭へのインタビュー調査 今回「未成年の飲酒行動に関するアンケート調査」 に協力 してもらった中学校全4校と,高等学校全1校の養護教諭5人に行った。調査期間は平成13年1月11日から平成13年1月12日であった。
2. 未成年の飲酒行動に関するアンケート調査 東京都A島にある全ての中学校及び高等学校の生徒を対象とした。調査期間は,平成12年11月1日~平成12年11月30日であった。
結果 アンケート調査の結果から,①A島の中高生の飲酒率は,全国調査と比較して大きな差はな かった,②飲酒頻度と飲酒量との関連において,飲酒頻度が高く飲酒量も多い,リスクの高い飲酒をしているものが24.5%であった,③飲酒を親に見つかっても叱られたことのないものが 81.4%であった,④初めて飲酒した年齢について,「8歳以下」と回答したものの割合が,全国調査より高かった,ということがわかった。また,インタビュー調査の結果から,①飲酒問題を指導する上で,親の意識を問題視しており,その背景には,A島の飲酒に寛容な環境がある と考えている,②飲酒教育を行うには,養護教諭自身の意識の持ち方が影響する,③飲酒問題に関して,関係機関のネットワークの必要性を感じている,ということがわかった。
結論 A島が特にアルコールに対して寛容な環境であると断言はできないが,親は子ども達の飲酒に対して寛容であると推1則される。今後,親自身が子どもの飲酒に対してどのように考えているか意識調査が必要といえる。また,リスクの高い飲酒をしている中高生に対し,具体的にどのような指導や支援を行っていくのか,更なる調査及び検討が必要である。そして,地域全体でアルコール関連問題に対応していくための,ネットワークづくりが重要な課題といえる。
キーワード 飲酒問題,未成年,離島,ー次予防

 

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第48巻第15号 2001年12月

都道府県別にみた飲酒率と疾患別年齢調整死亡率の相関

旭 伸一(アサヒ シンイチ) 多治見 守泰(タジミ モリヒロ) 大木 いずみ(オオキ イズミ)
尾島 俊之(オジマ トシユキ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 岡山 明(オカヤマ アキラ)
松村 康弘(マツムラ ヤスヒロ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

目的 わが国における飲酒率の地域差,および飲酒率と疾患別死亡率の地域差を観察することにより,飲酒の健康影響を明らかにする。
方法 都道府県別飲酒率は1986年から1995年までの10年聞の国民栄養調査の結果を用いた。都道府県別に飲酒率の年齢調整を間接法で行い,飲酒者指数(観察数/期待数)を用いて,地域特性 を観察した。また人口動態統計特殊報告(1995年)を用いて,飲酒者指数と疾患年齢調整死亡率との相関係数を性別に観察した。
結果 男の飲酒者指数は秋田,宮崎,青森で高く,徳島,沖縄,埼玉で低かった。男の飲酒者指数 の分布範囲は0.87(徳島)から1.26(秋田)であった。女の飲酒者指数は,東京,北海道,大阪で高く,鳥取,香川,三重で低かった。女の飲酒者指数の分布範囲は0.18(鳥取)から1.60(東京) であった。飲酒者指数と疾患別年齢調整死亡率の間に強い正の相関が見られた死因は,男では脳血管疾患,脳梗塞,不慮の事故,不慮の溺死及び溺水,自殺であり,女では結核,悪性新生物,気管・気管支及び肺の悪性新生物,虚血性心疾患,肺炎,肝疾患であった。飲酒者指数と 疾患別年齢調整死亡率の間に強い負の相関が見られた死因は,男では虚血性心疾患であり,女では老衰,不慮の事故,交通事故,不慮の弱死及び弱水であった。
結論 女の飲酒者指数の傾向は喫煙者指数の傾向にほぼ一致し,北海道と大都市に高かった。飲酒者指数と各疾患別死亡率の相関から,脳血管疾患死亡率,虚血性心疾患死亡率,一部の悪性新生物死亡率,および外因死死亡率への影響が存在すると推定された。
キーワード 都道府県別飲酒者指数,死因別年齢調整死亡率,相関係数

 

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第50巻第1号 2003年1月

高齢者施設における日常生活援助サービスの質の評価

中嶋 和夫(ナカジマ カズオ) 矢嶋 裕樹(ヤジマ ユウキ)
嚴 基郁(オム キウク) 岡田 節子(オカダ セツコ)

目的 本調査研究は,高齢者施設が利用者に提供している日常生活援肋サービスの質を,施設関係者が自己評価するための尺度開発を目的とした。
方法 調査対象はS県全域の高齢者関連施設175か所のうち,協力が得られた120施設各3人(施設経営者,生活指導員,寮母主任)の計360人とした。調査期間は平成13年1月から同年3月までの2か月間であった。尺度開発にあたっては、まず調査項目の内部一貫件の吟味を行ったのち,内容的妥当性を探索的因子分析で,また構成概念妥当件を確証的因子分析で検討した。また,開発できた尺度の総合得点と対象者の属性(性,年齢,職層,勤務年数)との関連性は共分散分析により検討した。
結果 欠損値を有きない290人のデータから,解析に貢献する内部一貫性の高い36項目を選定した。その探索的因子分析の結果,施設サービスの質の評価内容として,「バス・トイレ」「自立促進」「選択の自由」「レクリエーション」「痴呆性高齢者への対応」「食事」の6因子が抽出された。次いで,確証的因子分析の結果,前記6因子がより高次の「日常生活援助サービス」因子に集約される二次因子モデルが,データに十分適合することを明らかにした。前記6因子に所属する18項目のα信頼性係数は0.864であった。なお,共分散分析の結果,本尺度の総合得点は年齢とのみ有意を関連性を有していたものの,その寄与率はわずか9.1%であった。
結論 前記解析の結果,妥当性と信頼性を十分に兼ね備えた「日常生活援助サービス自己評価尺度」が開発できた。また,本尺度の評価結果は評価者の属性による影響,すなわち評価者バイアスを最小限にとどめうるものと推察された。本尺度は自主的に施設サービスの向上を図っていく上で,また利用者と施設間のコミュニケーションを密なものにしていく上で,有用な情報を提供するものと期待される。
キーワード 高齢者施設,日常生活援肋サービス,自己評価,妥当性,信頼性

 

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第50巻第1号 2003年1月

OECD A System of Health Accounts準拠の
国民保健計算に関する研究

坂巻 弘之(サカマキ ヒロユキ) 石井 聡(イシイ サトシ) 久保田 健(クボタ ケン)

目的 経済開発協力機構(OECD)により作成された「国民保健計算NationalHealth Account(NHA)」の推計方法である「国民保健計算の体系A System of Health Accounts(SHA)」に準拠したわが国の1998年度(平成10年度)の保健医療支出の推計を行うとともに,国際的にみたわが国の保健医療支出推計における課題を検討した。
方法 SHAマニュアルに基づき,平成10年度版「国民医療費」および各種衛生関係公表資料を用い,推計を行った。
結果 1998年度の「総保健医療支出Total Heath Expenditure」の推計値は,約36兆6580億円であった。このうち,「設備投資分」2兆2171億円を除いた「総経常保健医療支出」は約34兆4409億円であった。この値を1998年度の国民医療費との比較でみると,国民医療費は約29兆8000億円であり.総保健医療支出では約23%,総経常保健医療支出で約15%多い金額であった。
結論 国際基準に基づく国民保健計算の推計手法を確立したことにより国際比較の質についての改善が図られ,多次元テーブルでの推計値は医療行政の政策利用の可能性をより高めることができた。今後も,保健医療皆支出の多岐にわたる分析を踏まえた医療制度改革の方向性を検討することが重要であり,継続的な研究が必要と考えられた。
キーワード 保健医療支出,国民保健計算,国民医療費,OECD,A System of Health Accounts(SHA)

 

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第50巻第1号 2003年1月

地域保健事業報告における特定疾患医療受給者情報の利用

太田 晶子(オオタ アキコ) 仁科 基子(ニシナ モトコ) 柴崎 智美(シバザキ サトミ)
渕上 博司(フチガミ ヒロシ) 永井 正規(ナガイ マサキ)

目的 地域保健事業報告の特定疾患医療受給者の情報を用いて,受給者数,その性差,地域差などの記述疫学的特徴を観察するとともに、地域保健事業報告をもとにした情報がこれまでの受給者調査から得られた情報をどこまで代用できるかを考察する。
方法 資料として,1997~99年度の地域保健事業報告の受給者の情報と1997年度受給者調査報告を用いた。地域保健事業報告における1997-99年度の全受給者数,性別,都道府県別,疾患別などの受給者数,及びその年次推移を観察し,その記述疫学的特徴について,1997年度受給者調査報告におけるそれと比較した。
結果 地域保健事業報告における1997年度末現在の特定疾患医療受給者総数は393,417人,男性155.957人,女性237,460人,性比(男/女)0.66であった。受給者は同年度未から1999年度未までの2年間で44,920人(1.11倍)増加した。都道府県別には,人口10万対の受給者数は,北海道,岡山県,高知県などで高く,岐阜県 山梨県,茨城県などで低かった。1997年度に報告された受給者数が最も多い疾患は,潰瘍性大腸炎51,618人で,ついでパーキンソン病45,304人,全身性エリテマトーデス44,699人であった。1999/1997年度受給者数比は,混合性結合組織病1.29が最も大きく,難治性の肝炎のうちの劇症肝炎0.48,重症急性膵炎0.65などが小さかった。1997年度の地域保健事業報告における記述疫学的特徴は1997年度受給者調査のそれとほほ同様であった。
結論 地域保健事業報告は,受給者について,性別,年齢別,都道府県別,疾患別あるいは疾患ごとの基本的な実態を経年的に簡便に観察できる有用な資料であると考える。
キーワード 難病,医療受給者,地域保健事業報告,受給者調査,記述疫学

 

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第50巻第1号 2003年1月

糖尿病患者における生活習慣,健康行動と医療費との関連

佐藤 満(サトウ ミツル) 服部 幸應(ハットリ ユキオ)
神田 晃(カンダ アキラ) 川口 毅(カワグチ タケシ)

目的 糖尿病患者における生活習慣,健康行動と医療費との関連を明らかにするため,コンピュータドック((財)全国保健福祉情報システム開発協会)ならびにレセプトを用いて分析した。
方法 対象者は,M県ほか2県の政府管掌健康保険及び国民健康保険加入者12,725人のうち,40歳から69歳の者で,そのうち糖尿病あり92人,糖尿病その他の疾患のない者1,802人,計1,894人を分析対象とした。
結果 糖尿病群で肥満ありの率は26,1%と対照群の18.9%に比較して肥満者が多い傾向が認められた。肥満あり群の医療費が肥満なし群の医療費に比較して高い傾向が認められたのは,糖尿病群の60歳代と対照群の40歳代で,ほかはいずれも肥満なし群の医療費は肥満あり群に比較して低い傾向がみられたが有意差は認められなかった。
検診と医療費との関連については,全体では検診受診ありが,検診なしに比較して医療費が低い傾向が認められた。これを年齢別にみると,糖尿病群の40歳代においては有意差が認められた(P<0.05)。
喫煙ありの率は.糖尿病群では44.6%と対照群の36.1%に比較して高い傾向が認められた。また,煙草をやめた率も,糖尿病群は26.1%と対照群の16.4%よりも有意に高かった(P<0.05)。糖尿病群ではすべての年齢階層において,喫煙ありがなしに比較して医療賓が高い傾向が認められたが,いずれも有意差は認められなかった。
運動習慣については,40歳代で運動ありがなしよりも医療費が有意に低かった(P<0.05)。食習慣については,糖尿病群では乳製品,卵,主食ならびに海藻類について,毎日,または週2回以上と食べる頻度の高い方が,ほとんどとらない群に比較して医療費が高い傾向が認められた。逆に,食べる頻度が少ない方の医療費が高い傾向が認められたのは,肉魚,淡色野菜,果物,芋類であった。
対照群においては,毎日または週2回以上と食べる頻度の高い群が低い群に比較して医療費が高い傾向が認められたのは,乳製品のほか大豆製品,淡色野菜,緑黄色野菜,果物であった。逆に,頻度の少ない群において医療費が高い傾向が認められたのは,卵および肉魚であった。なお,有意差が認められたのは糖尿病群の40歳代の主食だけであった(P<0.05)。
医療費を目的変数とした数量化理論Ⅰ類による分析の結果,糖尿病群,対照群のいずれにおいても,検診受診の有無のアイテムレンジが大きかった。カテゴリースコアについては,検診受診なしは医鰊費の正の方向を,検診受診ありは負の方向を示した。また,糖尿病群においては,煙草をやめた者が医療費の正の方向を,果物を「ほとんどとらない」は正の方向を,「週2回以上とる」は負の方向を示した。逆に油脂類や海藻類については.「ほとんどとらない」が医療費の負の方向を示した。対照群においては,淡色野菜や緑黄色野菜を「ほとんどとらない」が,医療費の負の方向を示した。
結論 生活習慣,健康行動と医僚費の間に様々な関連が認められ,特に検診受診の影響が大きかった。
キーワード 糖尿病,医療費,レセプト,生活習慣,健康行動

 

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第50巻第1号 2003年1月

都道府県別喫煙率,飲酒率と疾患別死亡率の関係

-偏相関係数を用いた解析-
旭 伸一(アサヒ シンイチ) 渡邊 至(ワタナベ マコト) 多治見 守泰(タジミ モリヒロ)
大木 いずみ(オオキ イズミ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ)
小栗 重統(オグリ シゲノリ) 岡山 明(オカヤマ アキラ)
松村康弘(マツムラ ヤスヒロ) 柳川 洋(ヤナガワ ヒロシ)

目的 わが国における都道府県別喫煙率,飲酒率と疾患別年齢調整死亡率の関係を喫煙率,飲酒率相互の交絡を調整して観察する。
方法 都道府県別喫煙率と飲酒率は1986年から1995年までの10年間の国民栄養調査の結果を用いた。都道府県別に喫煙率と飲酒率の年齢調整を間接法で行い.指数(観察数/期待数)として求めた。喫煙者指数と飲酒者指数の相関を男女別に観察した。また,人口動態統計特殊報告(1995年)を用いて,喫煙者指数および飲酒者指数と疾患別年齢調整死亡率との偏相関係数を男女別に観察した。
結果 飲酒の影響を除いた喫煙者指数と疾患別死亡率の関係は,男の膵の悪性新年物,老衰,交通事故死亡率で有意を正の相関を示し,白血病,慢性リウマチ性心疾患及び慢性非リウマチ性心内膜炎,脳内出血,胃潰瘍及び十二指腸潰瘍で有意な負の偏相関を示した。喫煙の影響を除いた飲酒者指数と疾患別死亡率の関係は,男の食道の悪性新年物,白血病,慢性リウマチ性心疾患及び慢性非リウマチ性心内膜炎,脳血管疾患,脳内山血,脳梗塞,不慮の事故,不慮の溺死及び溺水,自殺,女の大腸の悪性新生物,結腸の悪性新生物,肝疾患で有意な正の偏相関を示し,男の虚血性心疾患,女の交通事故,不慮の事故で有意な負の偏相関を示した。女の喫煙で有意な項目は観察されなかった。
結論 偏相関係数の観察結果から,女では喫煙の影響を除いた飲酒率と大腸癌,肝疾患死亡率は有意な正の相関を示した。また,男では飲酒が虚血性心疾患死亡率に予防的効果を示し,脳血管疾患死亡率に悪影響を示すと推測され.今後の検討が必要である。
キーワード 喫煙率,飲酒率,死因別年齢調整死亡率,偏相関係数,国民栄養調査

 

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第50巻第2号 2003年2月

過疎地域における老人保健福祉サービスと社会経済的要因との関係

佐藤 秀紀(サトウ ヒデキ)

目的 本研究は,ホームヘルプ・デイサービス・ショートステイの供給量である年間利用実人数の3指標を用いて,全国すべての市町村における老人保健福祉サービスの実績についての総合的な評価方法を検討し,あわせてそのサービス事業実績と全国3,255市町村における自治体格差の社会経済的な成因との関連性,過疎地域特性との関連性について検討することを目的とした。
方法 まず,ホームヘルプ・デイサービス・ショートステイの事業実績と人口統計,経済状況,医療供給実態に関する17指標との関連性について,増減法による重回帰分析を用いて検討した。次いで,過疎地域分類群と,「在宅サービス総合指棟」との関連性についてt検定で検許した。
結果 その結果,「在宅サービス総合指標」における市町村格差は,「財政力指数」,「年齢別人口構成比(65歳以上)」,「年齢別人口構成比(15-29歳)」,「産業3部門別就業人口比(第2次産業)」が関連していることが認められた。
また,65歳以上人口100人当たりホームヘルプ年間利用日数,同デイサービス年間利用日数,同ショートステイ年間利用日数及び「在宅サービス総合指標」は過疎地域分類群によって有意な違いが認められた。
結論 老人保健福祉サービスの市町村間格差は,過疎化の進行状況のみならず,高齢化,財政事情,産業構造などの相違によって生じていることが示唆された。このことは.地域によって問題の現れ方が全く異なり,必要な対策も異なることを意味しているものと思われる。
キーワード 過疎地域,老人保健福祉サービス,市町村格差,社会経済的要因行った。

 

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第50巻第2号 2003年2月

1976-1994年の太陽活動が
日本人の自殺死亡率に及ぼした影響

大津 暁子(オオツ アキコ) Stephan Morgenthaler 
因 正信(チナミ マサノブ) 白川 太郎(シラカワ タロウ)

目的 1976-1994年において太陽活動が日本人の自殺死亡率に及ぼした影響を明らかにする。
方法 1976-1994年の日本の月別男女別年齢調整自殺死亡率および自殺死亡率に影響を及ぼすと仮定した社会・環境因子として相対黒点数.FlO.7cm flux(太陽から放射され地上で観測された電磁波),日本の完全失業率,日本の企業倒産件数を用い,全変数に自己回帰和分移動平均分析を行い系列と残差を求めた。これらの全変数のすべての組み合わせについて,原系列,系列,残差のそれぞれにおけるピアソンの積率相関係数を算出した。
結果 原系列の相関分析の結果,相対黒点数と男女の年齢調整自殺死亡率ないし経済変数(完全失業率,企業倒産件数)の間に有意な負の相関がみられた。経済変数(完全失業率,企業倒産件数)と男子の年齢調整自殺死亡率の間および企業倒産件数と女子の年齢調整自殺死亡率の間に有意な正の相関がみられた。更にFlO.7cm fluxと男女の自殺死亡率との問にも有意な負の相関がみられた。系列の相関分析では女子の死亡率と相対黒点数の相関以外は有意を相関が残存し,残差においては相関がほとんど消失した。
結論 太陽黒点活動は経済変数や自殺死亡率の短期の変軌に関連しなかった。
キーワード 男女別年齢調整自殺死亡率,太陽黒点数,失業率,企業倒産件数,FlO.7cm flux

 

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第50巻第2号 2003年2月

難病患者における保健福祉サービスの
利用状況とその在り方に関する検討

新城 正紀(シンジョウ マサキ) 川南 勝彦(カワミナミ カツヒコ) 簑輪 眞澄(ミノワ マスミ)
坂田 清美(サカタ キヨミ) 永井 正規(ナガイ マサキ)

目的 著者らは,全国レベルで難病患者個人の臨床情報,疫学・保健・福祉情報,予後情報を収集しデータベース化およびコーホート研究を行っている。今回は,1999年に実施したベースライン調査結果を基に,今後の保健福祉サービス(以下,公的サービス)の在り方について検討するため,公的サービス(ホームヘルパー,看護師,保健帥)の利用状況.医療機関への受診状況,サービスおよび現在の生活への満足度,病気への受容度,今後必要とするサービスについて,疾患別および日常生活動作別に把握することを目的とした。
方法 対象者は.全国の保健所のうち,本研究に調査協力可能であった35保健所管内における新規・継続の特定疾患医療受給者(1999年4月l日時点において受給資格を得ている者および,それ以降に受給資格を得る者)とした。
調査項目は,基礎情報一特定疾患治療研究事業医療受給申請書,疫学・福祉情報調査,日常生活動作,公的サービスへのニーズおよびディマンド調査をもとに,公的サービス(ホ-ムヘルパー,看護師,保健師)の利用状況,医療機関への受診状況,現在受けているサービスおよび現在の生活への満足度,今後必要とするサービス,病気への受容度とした。
調査方法は,各協力保健所が調査対象とした難病患者に対して,新規・更新の申請時に調査項目に関する面接調査を行った。ただし.面接調査が不可能な場合にのみ郵送調査を行った。
解析は,収集できた調査数の最も多かった6疾患(パーキンソン病,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,重症筋無力症,潰瘍性大腸炎,全身性エリテマトーデス)について,口常生活動作別に各調査項目の実態を明らかにすることとした。
結果および考察 調査データが得られたのは30保健所(北海道から沖縄まで21都道府県)であり,回収率は57・7%(=2,059人:調査実施数/3,571人:調査予定者数)であった。そのうち,疫学・福祉情報調査,公的サービスへのニーズおよびディマンド調査への協力に同意しなかった者または回答拒否者496人(24.1%)を除いた全疾患の合計は1,563人(男:687人,女:876人)であった。このうち,解析対象とした6疾患の合計は1,211人(男:543人,女:668人)であった。
疾患別に公的サービスの利用割合をみると筋萎縮件側索硬化症が最も高く,ついでパーキンソン病,脊髄小脳変性症,重症筋無力症、全身性エリテマトーデス,潰癌性大腸炎の順であり,疾患の重症度に応じた公的サービスが提供されていると推察できるが,疾患ごとに公的サービスのニーズやディマンドが異なると考えられるので,詳細な分析が必要である。特に.筋萎縮性側索硬化症では往診・入院の割合も高かったことから,公的サービスおよび医療によるケアを必要とする疾患であると思われる。

 

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第50巻第2号 2003年2月

ケアマネジメント業務における介護支援専門員の
課題実施度に関する研究

綾部 貴子(アヤベ タカコ) 岡田 進一(オカダ シンイチ)
白澤 政和(シラサワ マサカズ) 岡田 直人(オカダ ナオト)

目的 本研究の第1の目的は,介護支援専門員がケアマネジメント業務における課題をどの程度実施しているのかを明らかにすることである。第2の目的は,ケアマネジメント業務における課題実施度を向上させる要因に,どのような要因が存在するのかを明らかにすることである。
方法 調査対象者は,大阪市に登録(平成13年1月現存)されている居宅介護支援事業者に所属している介護支援専門員810人である。調査方法は,自記式質問紙を用いた横断的調査で,質問紙の配布・回収は郵送で行われた。調査期間は,平成13年2月7日~3月9日で,有効回収率は,約46.0%(373人)であった。主な調査項目は,『介護支援専門員の基本属性』(7項目),『介護支援専門員のケアマジメント業務における課題実施度』(7領域・50項目)である。その『介護支援専門員のケアマジメント業務における課題実施度』尺度は,妥当性(内容的妥当性)および信頼性(内的一貫性)の検討がなされ,尺度としての使用は可能であることが確認された。
結果 F介護支援専門員のケアマネジメント業務における課題実施度』で,介護支援専門員が全般的にあまり行っていない領域は,「利用者や家族との居宅サービス計画の作成」鶴城および「評価」領域であった。課題実施度向上要因に関する分析では.「エントリー」領域での向上要岡は,「在宅介護支援センター勤務経験の有無」と「雇用形態」であり,「アセスメント」領域での向上要因は,「ケアマネジメント研修受給の有無」であった。さらに,「利用者や家族との居宅サービス計画の作成」領域での向上要因には,「専門領域」と「ケアマネジメント研修受誅の有無」とがあり,「居宅サービス計画作成での連続調整等」織機での向上要因には,「ケアマネジメント研修受講の有無」があった。
結論 このような結果を踏まえて,介護支援専門員が提供するサービスの質を向上させる方策に,以下のようなことが考えられる。介護保険制度の理念である利用者本位の考え方を推進していくためには,要介護高齢者やその家族とのコミュニケーションが十分に図れ,居宅サービス計画を高齢者や家族とともに作成できるように,介護支援専門員が時間的余裕を持てるような環境整備が求められる。また,本研究でケアマネジメント研修の有効性が確認されたことから,今後,重視されていくケアマネジメント評価についても,ケアマネジメント研修等において,具体的な方法を介讃支援専門員に教えられることが望まれる。
キーワード 介護支援専門員,課題実施度.ケアマネジメント,ケアマネジメント過程

 

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第50巻第2号 2003年2月

日本人習慣飲酒のコウホート分析

-国民栄養調査による-
那須 郁夫(ナス イクオ) 渡邊 寿子(ワタナベ ヒサコ)
中村 隆(ナカムラ タカシ) 堀内 俊孝(ホリウチ トシタカ)

目的 国民栄養調査資料を利用して,飲酒習慣データをコウホート分析し,国民レベルでの飲酒実態を俯瞰的に把握することを目的とする。
方法 資料は,昭利61年から平成12年までの,国民栄養調査報告における飲酒の習慣がある者の割合である。男女別に,6年齢階級(20-29歳から70歳以上まで)×15回の調査時点の配列からなるコウホート表を作成し,3次元グラフと等計量線図による視覚化と,中村のペイズ型コウホートモデルによる時代・年齢・コウホートの3効果への分離により検討を加えた。
結果 男件の習慣飲酒は,年齢に依存して変化する伝統的な様相が示された。昭和20年代以降に生まれた男性では世代が新しく若いほど習慣飲酒率が低下していた。女性では,時代が進むにつれて全年齢において上昇していた。特に男性とは逆に,昭和30年代以降生まれの世代では習慣飲洒率が一貫して上昇していた。
結論 男性の習慣飲酒はほぼ上限に達しており,今後のアルコール離れさえ予測される。現在のわが国の飲酒は「規制緩和」の結果,酒類の販売形態がスーパーマーケットにシフトしたこと,発泡酒ブーム,ワインの安売りブーム,ジュース感覚の焼酎カクテルの広がりなどにより,むしろ女性主導で進んでいる感がある。特に女性の最も新しい世代における,とどまるところを知らない「変貌」は飲酒と健康について考える上で放念できない。
キーワード 習慣飲酒,世代差分析,愚民栄養調査,生活習慣

 

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第50巻第3号 2003年3月

インターネット・E-メールによる感染症情報
メーリングリストへの地区医師会員の参加状況

大熊 和行(オオクマ カズユキ) 寺本 佳宏(テラモト ヨシヒロ)
福田 美和(フクタ ミワ) 中山 治(ナカヤマ オサム)

目的 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づく感染症発生動向調査情報を速やかに医療現場に配信するとともに,医療現場の医師に情報交換の場を提供することにより,感染症の予防やまん延防止はもとより,患者に対する医療に役立てるため,インターネット・E一メールを用いた感染症情報受発信システム(感染症情報メーリングリスト)を構築し,地区医師会員の同システムへの参加状況等の検討を行った。
方法 厚生労働省の地域医療情報化推進事業への取組状況を勘案し,三重県内の地区医師会から選定した6地区医師会に所属する全会員(1,150人)を対象として,郵送法により感染症情報メーリングリスト(感染症情報ML)への参加意向調査を行った。参加希望のあった医師会員をメンバーとしてメーリングリストを構築・運用するとともに,地区医師会員の参加状況等の検討を行った。
結果 感染症情報MLへの参加意向調査の回収数は347人(回収率30.2%)であった。回答者のうち263人(75.8%)がインターネット接続コンピュータ(ItPC)を使用し,感染症情報MLに参加すると回答した医師は203人(ItPC使用者の77.2%)であった。感染症情報MLに参加すると回答した医師の主たる標榜科をみると,内科または小児科の医師が100人(49.3%)を占め,これに胃腸科または消化器科の20人(9.9%),整形外科または外科の17人(8.4%)が続いた。また,感染症情報MLへの参加率は,地区医師会における開業医割合に関連する傾向が認められた。
結論 感染症発生動向調査事業の充実と健康危機発生時の情報共有を図るためのツールとして感染症情報MLを真に機能させるためには,病院勤務医をはじめ,感染症発生動向調査事業に関連の深い診療科を標榜する地区医師会員を対象として重点的に周知し,感染症情報MLへの参加率を向上させる必要がある。また,医療の現場から真に有用と評価される情報を相互交換できるシステムに継続的に改善するために,より重症の患者を診療する機会が多く,専門性の高い病院勤務医は,医療情報の提供者としての役割が期待され,感染症情報MLへの積極的な参加が望まれる。
キーワード 感染症,E-メール,メーリングリスト,標榜科

 

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第50巻第3号 2003年3月

既存資料を利用した2歳児歯科健診事業の効果評価

越田 美穂子(コシダ ミホコ) 青山 旬(アオヤマ ヒトシ)

日的 N町で行われていた,2歳児歯科健診事業の効果の有無を,既存の統計資料から分析を行い明確にすること,またN町のう蝕リスク要因(地域特性)を明らかにすることを目的とした。
方法 対象は,1歳6か月児健診・3歳児健診を両方とも受診した児650人のうち,1歳6か月児健診時にう蝕のなかった624人である。既存資料の母子管理登録票から,抽出可能な項目のうち,幼児う蝕のリスク要因を検討し,分析項目を設定した。2歳児歯科健診の効果評価には,3歳児健診時のう蝕の有無・う蝕罹患型・う蝕本数・歯磨き習慣・おやつ回数を用いた。3歳児う蝕に関連するリスク要因は,出生順位・出生時体重・乳児期の栄養方法(母乳・混合・人工)・1歳6か月児の哺乳ぴん使用・1歳6か月児の飲み物内容・2歳児母乳の有無・3歳児日中の保育者(母親・祖母・その他)・3歳児健診時おやつ回数(2回以下・3回以上)について分析を行った。さらに,3歳児のう蝕の有無を従属変数とし,関連する要因について多重ロジスティック回帰分析を行い,事業の効果評価とした。
結果 2歳児歯科健診の効果評価こ関しては,受診群では,3歳児のう蝕有が有意に少なかった。う蝕罹患型・う蝕本数と,保健行動の要因である,歯磨き習慣・おやつ回数との間には有意な関連はなかった。3歳児う蝕に関連する要因としては,出生順位では第2子以降が,1歳6か月児飲み物内容ではジュース・イオン飲料等が,2歳児母乳に関しては飲んでいる場合が,そして,おやつ回数が3回以上の場合がう蝕有が有意に多かった。また,3歳児のう蝕の有無こ寄与している要因として2歳児歯科健診受診・出生順位(第2子以降)と1歳6か月児飲み物内容のオッズ比が高かった。
結論 上記の結果から,2歳児歯科健診の受診はその他のリスク要因から独立して,3歳児のう蝕減少に寄与している可能性が示された。
キーワード 歯科健診,効果評価,2歳児

 

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第50巻第3号 2003年3月

「平成12年度老人保健事業報告」からみた
わが国におけるがん検診の問題点

大島 明(オオシマ アキラ) 松下 博江(マツシタ ヒロエ) 赤田 由子(アカダ ヨシコ)
三木 信夫(ミキ ノブオ) 河島 輝明(カワシマ テルアキ) 山崎 秀男(ヤマザキ ヒデオ)

目的 わが国において公衆衛生サービスとして広く実施されているがん検診事業が所期のがん死亡減少という成果をあげうるかどうか検証することを目的とした。
方法 がん検診の効能に関しては「新たながん検診手法の有効性評価報告書」の評価結果を引用し,がん検診の実態については,「平成12年度老人保健事業報告」に掲載されているデータにより,分析した。
結果 効能がないとされるがん検診(視触診による乳がん検診)が広く実施されていること,効能があることが確立しているがん検診(胃がん検診,子宮頸がん検診,肺がん検診,大腸がん検診)においては,検診受診率が低くとどまっていること,個別検診方式の精検受診率が低いこと,中でも大腸がん検診の精検受診率が特に低いことなどの問題点が明らかにされた。
結論 公衆衛生サービスとしてのがん検診が成果をあげるためには,効能があることが確立しているがん検診(胃がん検診,子宮頸がん検診,肺がん検診,大腸がん検診とマンモグラフィーによる乳がん検診)に限ること,個別検診方式の精検受診率を高める工夫をした上で,この方式による検診を普及して検診受診率を高めること,organized screeningに向けて実施主体の市町村がさらに工夫することが,必須であると考える。
キーワード がん検診,効能,効果,個別検診,集団検診

 

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第50巻第4号 2003年4月

市町村母子保健活動への保健所の支援に
関する保健所と市町村の認識比較

福島 富士子(フクシマ フジコ) 守田 孝恵(モリタ タカエ) 尾崎 米厚(オザキ ヨネアツ)
藤内 修二(トウナイ シュウジ) 柴田 真理子(シバタ マリコ) 宮里 和子(ミヤサト カズコ)

目的 都道府県型保健所の市町村支援のあり方について検討することを目的とし,母子保健活動を例にとり,市町村支援に対する保健所側と管轄市町村側の認識について比較を行った。
方法 1999年度に,都道府県型保健所474を対象に郵送調査を実施し,回答のあった270保健所管内(回答率57.0%)の全市町村1,793を対象とした郵送調査を実施し,回答数982(回答率54.7%)を得た。市町村の回答と保健所の回答の一致度をみるためにκ係数を用いた解析を実施した。
結果 保健所が市町村支援をしていると回答した母子保健事業は,「健診等の精度管理」「乳幼児訪問指導」「母子保健推進員活動」等であったが,一部の市町村を支援も含めると「乳幼児健診」の支援保健所割合が高かった。一方,市町村が保健所の支援を受けていると回答した割合は低く,保健所の回答と異なり「未熟児訪問指導」「母子愛育班活動の支援」を受けていると回答した割合が高かった。保健所回答と市町村回答の一致係数は低く,中でも比較的高いのは「母子愛育班活動」「性・エイズ教育」等であった。保健所の機能別にみると,両者の回答の一致度も比較的高いのか,「母子保健計画の策定支援」「策定時の情報提供」「評価支援」「心身障害児療育システム作り」であった。保健所の母子保健活動の課題についての認識をみると,多くの項目で保健所,市町村とも課題があると回答していた。先駆的母子保健活動のニーズの認識,実施希望,実施可能性,保健所からの支援希望についてみると、保健所回答では,「こころの問題対策」「虐待対策」「活動の評価」「母子保健情報・精度管理」等へのニーズ認識が高かったが,市町村回答では,「活動評価」「小児期からの生活習慣病対策」「こころの問題対策」等にニーズが高かった。保健所回答でも市町村回答でも実施希望,実施可能性いずれも高い事業は「活動の評価」であった。
結論 保健所が支援していると回答している割合ほど市町村は支援してもらっていると認識していない場合が多く,しかも認識のズレも大きかったが,保健所の支援に対する市町村の要望は強く,計画の策定や活動の評価,今後の母子保健課題に対する専門的事業などを企画からいっしょに取り組むことで保健所と市町村の協働関係が深まっていくと考えられる。
キーワード 母子保健,保健所,市町村支援

 

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第50巻第4号 2003年4月

地域における高齢者の
転倒予防プログラムの実践と評価

芳賀 博(ハガ ヒロシ) 植木 章三(ウエキ ショウゾウ) 島貫 秀樹(シマヌキ ヒデキ)
伊藤 常久(イトウ ツネヒサ) 河西 敏幸(カサイ トシユキ) 高戸 仁郎(タカト ジンロウ)
坂本 譲(サカモト ユズル) 安村 誠司(ヤスムラ セイジ)
新野 直明(ニイノ ナオアキラ) 中川 由紀代(ナカガワ ユキヨ)

目的 在宅の高齢者を対象とした運動指導を中心とする地域に根ざした介入プログラム(Community based intervention programme)を実施し,転倒率や体力及び主観的QOLの維持・向上に及ぼす影響の程度を検討することを目的としている。本報告はその一環としてまとめたものであり,プログラムの開始後1年間の経過を評価したものである。
方法 宮城県三本木町に居住する75歳以上の自立者551人を対象とした。これらの対象が居住する地域のまとまりを考慮して「介入地区」と「非介入地区」に2区分した。
プログラムは介入前の調査,介入の実施,介入後の調査から成る。介入前後の調査は,体力測定(握力,長座位体前屈,最大歩行速度,開眼片足立ち,The timed Up and Go tests〈Up&Goと略〉)と面接調査(QOL指標:老研式活動能力指標,生活体力.自己効力感.生活満足度)によった。介入前調査への協力者は507人(92%)であり.1年後の介入後調査への協力者は450人であった。
介入プログラムは,①転倒ハイリスク者に対する転倒予防教室の開催,②それを通じた町独自の体操の開発(SUN体操)と普及,③介入プログラムの中核的な推進役である高齢ボランティアの養成と強化,④介入地区に村するSUN体操やウォーキングの普及、行政区単位の健康学習および転倒予防に関する情報提供を目的とした毎月のミニコミ紙の発行などから成る。なお,非介入地区に対しては従来どおりの保健活動を継続した。
結果 過去1年間の転倒率は,介入の実施前後で有意差はないものの介入地区では26.5%から23.9%へと低下,非介入地区のそれは23.2%から25.4%へと上昇傾向がみられた。体力レベルの変化においては,握力,長座位体前屈,最大歩行速度では,介入地区の低下幅は非介入地区と比べて少ないか,あるいはUp&Goではむしろ改善傾向にある様子が示された。しかし,QOL指標値においては介入地区,非介入地区に介入プログラムの効果と思われるような変化は認められなかった。
結論 地域の後期高齢者全体への介入の試みが高齢者の体力レベルの維持や転倒率の改善に有効であることが示唆された。しかし,本研究の介入期間は,1年足らずと短いものであり,統計的にも安定した結論を得るためには今後の継続的な介入プログラムの実施と評価が必要である。
キーワード 地域高齢者,転倒予防,体操,地域全体への介入、高齢ボランティア

 

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第50巻第4号 2003年4月

テレビドラマに見られる喫煙関連シーンに関する調査

坂口 早苗(サカグチ サナエ) 坂口 武洋(サカグチ タケヒロ)

目的 日本では1998(平成10)年4月1日になって,ようやく日本たばこ協会は,テレビやラジオで,たばこ個別銘柄のCMを中止した。われわれは,銘柄CMの中止前後に制作・放送された,ワーストスモーカーの1人にあげられた人気俳優が出演した,視聴率の高いドラマに見られる喫煙関連シーンについて調査した。
調査方法 調査対象ドラマの収録ビデオから放送時間を計測し.その中から喫煙に関連したシーンの解析を行った。喫煙関連シーンは喫煙に関するすべてのシーンであり,喫煙シーンとセットの道具などの場面の合計である。喫煙シーンとは,実際の喫煙(出演者の誰かが喫煙している場面),たばこに火をつける.たばこの火を消す,副流煙,置きたばこ,銘柄描写シーンおよびセリフなどの場面である。セットの道具とは,火無したばこ,たばこ箱からたばこを出す,吸い殻,たばこ箱(銘柄不明),灰皿などの場面である。規制前では,「番組A」「番組B」「番組C」のドラマを,規制後では,「番組D」「番組E」「番組F」のドラマを調査した。
結果 喫煙関連シーンの回数は,規制前156.3回(1時間当たりの回数;18.2),規制後344.3回(37.3)であった。そのうち,喫煙シーンは,規制前93.3回(10.8),規制後167.7回(17.9),実際の喫煙は,規制前53,3回(6.1),規制後98.0回(10.5)であった。銘柄描写シーンの回数は,規制前5.0回(0.6)であったのが,規制後15.3回(1.6)であり,1ドラマ当たりの平均描写時間はそれぞれ45秒と1分36秒であった。
結論 今回調査したドラマにおいて,実際の喫煙,喫煙シーンや喫煙関連シーンが.規制前と比較して大幅に増加していることが判明した。また,明らかに判別できる銘柄を出演者が喫煙するシーンや銘柄が容易に判読できるたばこ箱のシーンが急増していた。未成年者の喫煙防止をねらい,銘柄CMが自主規制されたことをドラマの制作側は再認識し,喫煙関連シーンのないテレビ番組の制作を期待するとともに,社会全体で若者の行動に多大な影響を与えるテレビなどの媒体にも注意を向け,未成年者が喫煙行動をしにくい社会環境をつくらなければならない。
キーワード たばこ,喫煙シーン,ドラマ,広告,社会的環境

 

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第50巻第4号 2003年4月

入院医療に対する患者の満足度とその関連要図

-がん(成人病)専門施設での分析-
田中 英夫(タナカ ヒデオ) 佐治 文隆(サジ フミタカ) 沼浪 勢津子(ヌマナミ セツコ)
蓮尾 聖子(ハスオ セイコ) 兒玉 憲(コダマ ケン)
黒田 知純(クロダ チカズミ) 今岡 真義(イマオカ シンギ)

目的 がん(成人病)専門施設で入院治療を受けた患者の満足度を把握し,満足度に関連する要因を分析する。
方法 2001年10月1日から同年12月末日までの大阪府立成人病センター退院予定患者を調査対象として,退院の前日に無記名自記式の調査票をベッドサイドで手渡し,各病棟の詰所前に設置した回収箱により回収した。調査項目(数)は.①当施設で入院中に受けた医療全般に関するもの(5),②健康状態・不安からの回復に関するもの(2),③主治医に対するもの(6),④看護師に対するもの(4),⑤社会的評価およびコスト面に関するもの(4),⑥入院のアメニティに関するもの(7)の合計28項目とし,各々5段階で満足度を評価した。
結果 ①調査期間中の退院患者1,441人中,死亡退院などを除く1,202人に調査票を配布した。このうち,1,136人(95%)から回収し,その中で記載内容が不明の者等を除く1,041人が集計対象となった。調査票配布患者数に占める集計対象者数の割命(有効回答率)は87%(1,041/1,202)であった。②入院中に受けた医療に対する全体的な満足度は,最高位と第2位を合わせると,全体の96%が満足であると答えた。主治医,看護師に対する満足度は概ね高く,アメニティに関する満足度は相対的に低かった。③入院中に受けた医療に対する全体的な満足度と有意な関連を示した患者側の要因は,年齢,過去の入院歴.調査時点での自覚的健康状態であった。性,主病名(がん/非がん),在院日数,入院病室の種類は満足度と有意な関連を示さなかった。④入院中に受けた医療の全体的な滴足度と,その他の事項に関する満足度との相関をみたところ,健康の回復度,不安の除去,主治医の処置の技術に対する満足度との相関性が相対的に高かった(相関係数(R)=0.44-0.45,いずれもp<0.01)。
結論 がん(成人病)専門施設で.入院治蝶を受けた患者の満足度とその関連要因について上記の結果を得た。今回のような調査方法によって患者の満足度に関連する個々の医療サービスを詳しく分析することで,他の施設においても患者の総合的満足度を効果的に高める方策を見出すことができると思われる。
キーワード 入院患者,満足度,がん(成人病)専門施設

 

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第50巻第5号 2003年5月

都道府県別生命表死亡率のワイプル分布へのあてはめ

石井 太(イシイ フトシ)

目的 低年齢死亡率のワイプル分布への適合状況に関して完全生命表を用いて評価を行い,次に,都道府県別生命表作成の観点から,実際のデータを用いてワイプル分布のパラメータを得る方法について検討する。
方法 完全生命表のデータを用いて,年齢の対数値と死力の対数値か,いかなる年齢範囲において線形関係にあるか観察し,その後.パラメータ推定を行ったワイプル分布関数値を用いた死亡率とオリジナルの死亡率を比較する。次に.人口規模の異なる幾つかの県について,この方法を用いて実際に死亡率推定を行い,死亡率の動きについて検討する。
結果 完全生命表のデータを用いて,年齢の対数値と死力の対数値が,いかなる年齢範囲において線形関係にあるか観察したところ,おおむね10歳程度までについて,両者の間に線形関係が認められた。また,パラメータ推定を行ったワイブル分布関数値による死亡率とオリジナルの死亡率を比較したところ,10歳までの範囲においてほぼオリジナルの死亡率を再現することができていることが確認された。人口規模の異なる幾つかの県について,この方法を用いて実際に死亡率推定を行ったところ,ワイプル分布によるあてはめを行った場合の方が,より安定した死亡率の動きを示すことが確認された。
結論 都道肝胆別生命表作成における低年齢死亡率推定については,従来の方法と比較して,ワイプル分布関数を用いたパラメータ推定による方法がより安定件が高く,好ましいものであることが結論づけられる。
キーワード 生命表,都道府県,死亡率,ワイプル分布,パラメータ推定

 

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第50巻第5号 2003年5月

死亡分布からみた都道府県別生命表

村木 幸広(ムラキ ユキヒロ)

目的 平均寿命は死亡分布の平均値という,分布の特徴を表す代表値の一つと考えることができるが,その死亡分布のばらつきをあわせて比較することで,平均寿命だけではとらえられない都道府県の死亡状況の違いを分析することを目的とする。
方法 平成12年都道府県別生命表の結果を分析対象とし,死亡分布の標準偏差(以下「寿命偏差」)を算出した。その上で,男について、平均寿命と寿命偏差に開しクラスター分析を行い,都道府県を二分した。そして,平均寿命が同程度である都道府県を取り上げ.寿命偏差の違いが生じる要図を分析した。また,平均寿命の地域差が生じる要因についても寿命偏差という側面から検討した。
結果 男については平均寿命と寿命偏差に負の相関がみられたが,女については相関関係は認められなかった。男について,クラスター分析により都道府県を二分した結果,おおむね平均寿命の高低により区別されたが,平均寿命が全国値よりやや低い付近で,平均寿命はほぼ同程度であるにもかかわらず,寿命偏差の高低により別のクラスターに分かれている都道府県もみられた。
結論 平均寿命の地域差が生じる要因は,主に中年層の死亡状況の違いと高年齢層の死亡状況の違いであり,男については前者が,女については後者が大きく影響していること等が示された。
キーワード 都道府県別生命表,死亡数,分布,平均寿命,寿命偏差

 

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第50巻第5号 2003年5月

各種社会指標と都道府県別生命表の関係

鈴木 健二(スズキ ケンジ)

目的 都道府県別平均寿命とその都道府県における各種社会指標との関係を分析し,平均寿命の地域差と関連が深いと考えられる要因を考察する。
方法 都道府県別平均寿命と各種社会指標(特に飲酒・喫煙)について回帰分析を行い,さらに各種社会指標の主成分分析を行って平均寿命との関連を調べた。
結果 飲酒・喫煙状況については,男性において平均寿命とある程度の相関関係がみられたが,女性についてはあまり相関関係はみられなかった。また複数の社会指標を用いた重回帰分析では,男性では県民所得・飲酒状況・医療施設数と,女性では特別養護老人ホーム定員数と一定の相関を示した。各種社会指標の主成分分析の結果では,第1主成分は男女とも「都市-郊外」度指標を示すものと解釈されたが,その平均寿命との関係は男女で異なることが明らかとなった。
結論 飲酒・喫煙状況は男性の平均寿命と一定の関係があると考えられる。また,「都市-郊外」度指標で説明されるような状況の変化と平均寿命との関係は.男女でかなり異なっていることが推察された。

 

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第50巻第5号 2003年5月

都道府県別生命表の年齢別・死国別寄与分析

村木 幸広(ムラキ ユキヒロ)

目的 各都道府県の平成7年から12年の平均寿命の延びに対し,年齢別・死因別に寄与分解を試みることで,平均寿命の延びに違いが生じた要因を明らかにすることを目的とする。
方法 平均寿命の延びに対する年齢別の寄与は,平成7年の死亡率を0歳から順次,平成12年の死亡率に置き換えたときの平均寿命の差として算出した。死因別の寄与は各年齢に対し,死亡率を死因別に分解することで同様に死因別寄与を求め,全年齢で足し上げた。これらをもとにして.主に平均寿命の延びの上位・下位3県ずつ(兵庫県を除く)に対して分析を行った。
結果 年齢別では高年齢層の平均寿命の延びに対する寄与が大きく,男では60歳以上における寄与は,上位3県では0.75~1.03年であったのに対して,下位3県では0.52~0.58年であり,女では75歳以上における寄与は,上位3県は1.08~1.25年であったのに対して,下位3県は0.46~0.59年であった。死因別では3大死因(悪性新生物・心疾患・脳血管疾患)の平均寿命の延びに対する寄与が大きく,男の上位3県では0.75~0.77年であったのに対して,下位3県では0.27~0.52年であり,女の上位3県は0.95~1.07年であったのに対して,下位3県は0.43~0.60年であった。女では,3大死因の中でも特に脳血管疾患の寄与の違いが大きかった。
結論 各都道府県の平均寿命の延びの違いは,高年齢層による寄与の違い,3大死因による寄与の違いが大きい。
キーワード 都道府県別生命表,平均寿命の延び,死因,寄与

 

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第50巻第6号 2003年6月

食中毒事件あたり患者数の年次推移に関する一考察

谷原 真一(タニハラ シンイチ) 山部 清子(ヤマベ セイコ) 大津 忠弘(オオツ タダヒロ)
津田 敏秀(ツダ トシヒデ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) 藤田 委由(フジタ ヤスユキ)

目的 近年認められる食中毒事件あたり患者数の減少は特定の自治体に限定的に生じているのかを検討する。
方法 1981年以降の「食中毒統計」から都道府県別の食中毒事件あたり患者数を求め,各年ごとの順位の変動を検討した。その後,1)上位第1位~第l10位,2)同第11位~第37位,3)同第38位~第47位 の3群に分類し.群別に各年の食中毒事件1件あたり患者を再集計して年次推移を検討した。
結果 食中毒事件あたり患者数は1981年から1992年までは増加傾向を示したが,1992年以降は減少傾向に転じた。食中毒事件あたり患者数の順位が大きく変動する都道府県と変動の小さい都連府県が認められた。食中毒事件あたり患者数が上位第11位~第37位に属する都道府県に限定しても,1992年以降の食中毒事件あたり患者数は減少傾向を示していた。
結論 食中毒事件あたり患者数の減少は特定の自治体に限定して生じたものではないと考えられた
キーワード 食中毒,届け出,サーベイランス,散発事例

 

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第50巻第6号 2003年6月

山形県の産業従事者の血中脂質異常
および肥満の有所見率に関する検討

-性,年取地観生活習慣との関連性-
若林 一郎(ワカバヤシ イチロウ)

目的 全国の労働局の統計によると,山形県では毎年産業保健における健康診断での血中脂質異常の有所見率が全国平均を大きく上回っている。そこで本研究では山形県内での血中脂質異常の実態を明らかにし,さらにその原因について考察した。
方法 県内の健診機関が実施した産業事業所での定期健康診断結果を性,年齢.地域別に分析し,比較検討した。また,血中脂質異常の原因となりうる生活習慣について,国民栄養調査および県民栄養調査結果を用いて検討した。
結果 定期健康診断における血中脂質検査の項目の中で最も異常の頻度が高い項目は中性脂肪で,次いで総コレステロール,HDLコレステロールの順であった。これらの項目の有所見率は性と年齢の影響を強く受けた。すなわち,男性では30~40歳代で有所見率がピークを形成するのに対して,女性では年齢とともに上昇し,20歳代ではいずれの項目においても有所見率に大きな男女差がみられたが,その差は年齢とともに縮小した。総コレステロールの有所見率は50歳以降では女性の方が男性より著明に高かった。県内の地区別では,肥満と中性脂肪の有所見率が男女とも,またいずれの年齢においても最上地区において高かった。栄養調査から,山形県では男性で飲酒と喫煙習慣を有する者の割合が多く,また男女とも運動習慣を有する者の割合が少なかった。
結論 男性では若年から,女性では中年以降に血中脂質異常と肥満が増加するため,その予防対策が必要である。栄養調査結果から,l山形県での産業従事者の血中脂質異常の高有所見率の原因として運動不足や飲酒過多が関与している可能性が考えられる。
キーワード 血中脂質異常,肥満,産業保健,加齢,動脈硬化生活習慣病

 

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第50巻第6号 2003年6月

自殺の地域集積とその要因に関する研究

野原 勝利(ノハラ マサル) 小野田 敏行(オノダ トシユキ) 岡山 明(オカヤマ アキラ)

目的 自殺の地域集積性について都道府県間で解析を行い,さらに保健医療圏間では社会生活要因との関連を検討する。
方法 1981年から2000年の47都道府県および岩手県の9保健医療圏と青森県4保健医療圏について,性別自殺死亡率と観察期間における全国の男女の自殺率を基準とした標準化死亡此(SMR)を算出した。人口,自殺数は,国勢調査,岩手県保健福祉年報,青森県保健統計年報,人口動態統計報告から求めた。社会要因として岩手県の保健医療圏ごとに人口密度,人口増減率,老年人口割合,完全失業率,平均所得,人口当たり病床数,人日当たり医師数,第1次産業就業者率.第2次産業就業者率,第3次産業就業者率、成人1人当たり酒類年間消費量を求め,自殺SMRとの関連を検討した。
結果(1)自殺SMRの上位3県は秋田県(男性1.53,女性1.53),新潟県(男性1.31,女性1.51),岩手県(男性1.45,女性1.39)で,男女とも他県と比較して有意に高かった。沖縄県は男性が女性より高く差が大きかった。自殺率の高い都道府県に隣接した都道府県でSMRに差が観察された(秋田・新潟県と山形県,岩手県と宮城県)。(2)保健医療圏の検討では岩手県内で自殺率の地域差が有意であり,県北部(久慈・二戸保健医療圏)に地理的な自殺の集積性を認めた。青森県の4保健医療圏でも岩手県と隣接した三戸保健医療圏で高い自殺率を認めた。観察期間を10年ごとの2期に分けても自殺率の地域差は同様であった。(3)保健医療園の社会生活指標と自殺SMRの関連をみると,男性では完全失業率で有意の正の相関を認め(r=0.70,p<0.05),女性では総病床数(r=-0.75,p<0.05),医師数(r=-0.73,p<0.05),第3次産業就業者率で有意の負の相関を認めた(r=-0.68,p<0.05)。
結論 都道府県間ならびに保健医療圏間で自殺率に持続的な地域差を認めた。経済・文化的に同一の背景を有し,人口規模が確保できる保健医寮圏間で検討した結果,自殺率と一部社会生活指標に関連が認められた。
キーワード 自殺地域差,標準化死亡比,保健医療圏,社会要因,予防対策

 

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第50巻第6号 2003年6月

わが国における看護学生,保健婦学生,
助産婦学生の喫煙実態調査

桜井 愛子(サクライ アイコ) 大井田 隆(オオイダ タカシ) 武村 真治(タケムラ シンジ)
曽根 智文(ソネ トモフミ) 鈴木 健修(スズキ ケンシュウ) 原野 悟(ハラノ サトル)

目的 本研究は,全国における看護学生,保健婦学生,肋産婦学生の喫煙率および喫煙状況と,職務経験,学業意欲,喫煙に対する考え方などとの関連性を明らかにすることを目的とした。
方法 全国の看護学校,保健婦学校,助産婦学校を無作為に抽出し,看護学校27校,保健婦学校17校.助産婦学校16校に在学する学生を対象者としたが.調査拒否の保健婦学校1校,助産婦学校1校を除く58校で調査を実施した。調査票は各学校の調査担当者から対象者に配布し,対象者が記入後,回収した。
結果 女子学生の喫煙率は看護学校24.6%,保健婦学校13.0%,助産婦学校22.1%であり.看護学校,助産婦学校,保健婦学校の順で喫煙率が高く,特に看護学校の3年生の喫煙率は30%を超えており,一般成人女性の20歳代に比べて高い値であった。保健婦学校では職務経験と喫煙状況とに関連はみられなかったが,助産婦学校では職務経験があるほど有意に高い現喫煙率がみられた。
看護学校,保健婦学校,助産婦学校とも学業意欲および友人や勉強の悩みについては喫煙状況との関連性はなかったが,喫煙に対する考え方(自分の学校や将来勤務する職場を禁煙にすること)や意見(女性や医療関係者としての喫煙についての意見),禁煙指導に対する考え方(禁煙指導は保健医療関係従事者の仕事)に関して,非喫煙者に比べて,現喫煙者には喫煙に肯定的な意見が有意に多くみられた。また,家族(父親,母親等)や学校の教師の喫煙状況と学生の喫煙状況では,看護学校,保健婦学校,助産婦学校とも周囲の喫煙率が高いほど学年の現喫煙率は有意に高かった。
結論 看護学校学生の現喫煙率は学年が上がるにつれて上昇しており,在学期間の喫煙防止教育は不十分なものと予測される。今後は喫建行動に影響を与えるような効果的な教育方法が必要である。
キーワード 喫煙率,看護学生,保健婦学生,助産婦学生,禁煙支援

 

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第50巻第6号 2003年6月

飲酒と糖尿病:壮年期男子勤労者における検討

中西 範幸(ナカニシ ノリユキ) 吉田 寛(ヨシダ ヒロシ) 仁科 一江(ニシナ カズエ)
岡本 光明(オカモト ミツハル) 李 文絹(リ ブンケン)
         松尾 吾郎(マツオ ヨシオ) 多田羅 浩三(タタラ コサゾウ)

目的 飲酒が糖尿病の発症に及ぼす影響を明らかにするため,飲酒と糖尿病発症との関連性について検討した。
方法 1994年5月に定期健康診断を受診し,空腹時血糖値が109mg/dl以下を示した者で糖尿病と高血圧の治療歴がなく,循環器疾患の既往を有しない35-59歳男子事務系勤務者2,953人を観察コーホートに設定し,2001年5月までの7年間における糖尿病の発症を調査した。糖尿病の診断は空腹時血糖値が110-125mg/dlをIFG(impaired fasting glucose),空腹時血糖借が126mg/dl以上,あるいは糖尿病用剤服薬を2型糖尿病とした。
結果 飲酒状況別にlFG,2型糖尿病の発症率をみると,アルコール摂取が「23~45g/日」の飲酒者で発症率は最も低く,飲酒と発症率との間にはU型の関連がみられた。アルコール摂取が「23~45g/日」の飲酒者を1.0とする年齢,糖尿病の家族歴,body mass index,喫煙,定期的運動,アラニンアミノトランスフェラーゼを調整したIFG,2型糖尿病発症のハザード比をみると,非飲酒者,アルコール摂取が「23g未満/日」「46-68g/日」「69g以上/日」の飲酒者のハザード比はそれぞれ1.46(95%信頼区間(CI):1.03-2.07),1.30(95%CI:0.93-1.83),1.17(95%CI:0.86-1.59),1.40(95%CI:0.99-1.99)であった(2次の曲線性の検定:p=0.026)。2型糖尿病発症と飲酒との関連においても同様の傾向がみられたが,多変量解析においては2次の曲線性は有意ではなかった(p=0.105)。糖尿病の危険因子の有無別に飲酒状況とlFG,2型糖尿病発症との関連をみると,糖尿病の家族歴「あり」の者,喫煙者を除くいずれの危険因子の群においてもIFG,2型糖尿病発症の多変量調整ハザード比は「23-45g/日」のアルコール摂取者で最も低く,飲酒とIFG,2型糖尿病発症との間にはU型の関連がみられた。
結論 アルコール摂取が「23~45g/日」の中等度飲酒者の糖尿病の発症リスクは最も低く,飲酒と糖尿病発症との間にはU型の関連性を有することが示された。
キーワード 飲酒,impaired fasting glucose,2型糖尿病,男子勤務者,コーホート研究

 

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第50巻第7号 2003年7月

人口動態調査にみる茨城県古河保健所管内の自殺の時間的分布

緒方 剛(オガタ ツヨシ) 設楽 恵利(シタラ エリ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ)

目的 自殺予防のために効果的な介入時期を予測するために,自殺の時間的分布を明らかにする。
方法 茨城県古河保健所管内における1997年から2001年の5年間の自殺を原因とする人口動態調査死亡小票を対象として,自殺実行時刻の時間変動について分析した。
結果 自殺者は男173人,女75人,計248人であった。自殺の季節変動については,5月~6月と9月にピークがみられた。自殺の週内変動については,月曜から木曜に多く,土曜,日曜に少ない傾向がみられた。自殺の実行時刻の日内変動については,時刻が不明の者を除く227人について1円を12分割して集計した結果,朝(午前5時~午前9時)と午後から夕方(午後3時一午後5時)にピークのある2峰性の分布がみられ,変動は統計学的に有意であった。
結論 自殺の季節変軌 週内変動については,従来の報告と同様の傾向であった。日内変変動こついては,地域の全自殺死亡についてデータはわが国ではわれわれの知る限りこれまで報告されていないが,本調査では2峰性のピークが認められた。
キーワード 自殺,人口動態統計,時間的分布,日内変動,週内変動,季節変動

 

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第50巻第7号 2003年7月

保健所管内市町における高血圧既往の実態

小林 雅与(コバヤシ マサヨ)

目的 市町村単位で脳卒中対策を進めるために,最大の危険因子である高血圧既往者が全国に比べて多いのか否か検討する。
方法 保健所管内の2市町各々で,30歳以上を対象に約1,500人を無作為抽出し,高血圧既往の有無,高血圧初発年齢,健康診査時の血圧測定有無について質問調査を行った。
結果 調査対象の2市町とも,脳卒中死亡率は全国に比べて有意に高く,高血圧既往者は全国に比べて少ない傾向をみせた。高血圧の初発は,2市町とも,男女では40歳代と50歳代が多く,女では50歳代が最も多く,次いで60歳代,40歳代が多い傾向にあった。次に,高血圧初発の多い年代での健康診断時血圧測定状況をみると,全国に比べて2市町とも全国を下回る測定状況を示す傾向にあった。
結論 市町村単位で脳卒中対策を進める際,高血圧既往の実態を調査した結果,調香対象とした2市町とも,実際には高血圧既往者が全国に比べて少ないのではなく,健康診断での高血圧発見が全国に比べて少ないために,高血圧者が発見されていないことが考えられた。
キーワード 脳卒中,高血圧既往,初発年齢,健康診断

 

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第50巻第7号 2003年7月

連続携行式自己腹膜潅流(CAPD)療養者のADL
と家族の介護力および家族関係調整・統合能力との関係

人見 裕江(ヒトミ ヒロエ) 松田 明子(マツダ アキコ) 畝 博(ウネ ヒロシ)
中村 陽子(ナカムラ ヨウコ) 小河 孝則(オガワ タカノリ)
寺田 准子(テラダ ジュンコ) 三村 洋美(ミムラ ナダミ)

目的 本研究は,連統携行式自己腹膜灌流(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis,以下CAPD)療養者のADLとCAPD療養者家族が健康課題に対処する力量との関係を明らかにし,CAPD療養者のADL状態をアセスメントする際の課題を明確にすることを目的とした。
方法 血液透析(Hemodialysis,HD)とCAPDの両方の治城を実施している全国の1,292施設(1998年全国透析医学会施設会員名簿)に研究依頼をした。本研究への了解が得られ紹介された141施設のCAPD療養者とその家族700組に質問紙を郵送した。回答は522組(74.6%)から返送された。そのうち,身近に家族のいない15組を除き,療養者のADLと家族の療養者の生活に関する理解度および生活力量(Assessment Scale of Family Power,以下ASFP)が明らかであった371組(53.0%)を本研究の分析対象とした。調査期間は1998年6月から10月である。分析は続計パッケージWindows版SPSSl0.0を用いて行った。療養者371人(男性204人,女性167人,平均年齢は56.0±13.3歳)のADLを「自立群」「非自立群」の2群に分けた。2群に分けたADLとASFP各項目などとの関係を.χ2検定およびt検定を用いて比較した。
結果 非自立群の方が平均年齢は高く,CAPDを開始した平均年齢も高かった。また,非自立群の方が主介護者の平均年齢は高く,体調も悪かった。検査結果の見方,かゆみ・むくみ・ふらふら感について,非自立群の主介護者ではより多く理解している者が多かった。一方,介護の具体的手順をだいたい知っており,適切に介護していた。
結論 療養者のADL低下に合わせた家族の介護力として,療養者の検査結果,合併しやすい症状に関心を持つなど療養生活を理解しようとしていた。そして,適切な介護の具体的手順を知って積極的に介護していることが推察し得る。非自立群の家族では,家族員の自立性や自由を尊重できるような家族関係を調整したり,家族関係を統合したりする力が低下していることが明らかにされた。
キーワード 連続携行式自己腹膜灌流(CAPD),家族生活力量,日常生活自立度(ADL),介護力,家族関係調整・統合能力

 

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第50巻第7号 2003年7月

要介護度別の介護サービス利用特性に関する研究

-生活場所(在宅,施設)の選択志向にかかわる要因-
後藤 真澄(ゴトウ マスミ) 若松 利昭(ワカマツ トシアキ)

目的 要介護認定調香結果と認定審査会の情報を手かかりとして,要介護者の生活場所と介護サービスの利用状況を明らかにし,生活場所の違いによる利用者の特性の違いを評価する。それらをもとに,在宅か施設(入院を含む)かの選択志向について考察し,適切な介護サービスを提供するための判断枠組みの一つを提示する。
方法 岐阜県のA市の認定審査会調査結果と審査会の情報(1年間の認定者数1、600人)に関して,利用者の生活場所(在宅と施設),要介護度別に,確定調査項目に基づく個別項目得点,分類別平均得点,領域別平均得点の違いを調べ,要介護度別の違い(水準)と生活場所による違い(格差)とを検討した。
結果 生活の場所は,施設利用者が全体の1/4を占めていた。要介護度別の在宅生活者の割合は,要介護Ⅲに向かって減少し,要介護度Ⅲで在宅生活者割合と施設利用者割合が拮抗し,要介簡Ⅳでは施設利用者割合が上回っていた。生活場所の選択は,要介護Ⅲが一つの大きな転換点となっていた。
認定調査項目についての領域別平均得点は,要介護度の上昇に伴う水準の上昇と,施設と在宅による格差とがみられた。格差が大きかったのは排泄と痴呆の領域であった。
結論 今後入所志向が強まる要介護Ⅲへの対応を検討し,マネジメントのための判断論理を根拠に基づき,明確に示すことが必要である。
キーワード 要介護認定,認定調査項目,支援特性,入所要図,ケアマネジメント

 

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第50巻第7号 2003年7月

スギ花粉症QOL指標作成の試み

小笹 晃太郎(オザサ コウタロウ) 藤田 麻里(フジタ マリ) 奈倉 淳子(ナグラ ジュンコ)
林 恭平(ハヤシ キョウヘイ) 渡邊 能行(ワタナベ ヨシユキ) 出島 健司(デジマ ケンジ)
竹中 洋 (タケナカ ヒロシ) 中村 裕之(ナカムラ ヒロユキ) 烏帽子田 彰(エボシダ アキラ)

目的 スギ花粉症の予防や治療の効果を患者の日常生活に沿って評価することを目的として試作されたQOL指標について妥当性,信頼性の検討などを行った。
方法 京都府内のある町の小中学生を対象として2001年5月に質問票およびスギ花粉特異的IgE抗体価測定による調査を行った。QOLに関する質問は,鼻閉,鼻汁,くしゃみ,目のかゆみ,流涙,ティッシュ等携帯の必要性,疲労感,不眠,家の手伝い・勉強・外出への障害,親しい人・あらたまった席などでの対人関係への障書,いらいら感,日常生活全体への障害(計15項目)で,各質問に4段階の回答を求め,それぞれ1~4点を割り付けて単純加算した値をQOL総合スコアとした。各項目の関連に関しては,因子分析および各項目への回答の包含関係の解析を行った。また,スギ花粉症に対して行った予防・治療の方法とその効果について5段階の回答を求めた。
結果 在籍465人中QOL質問票への回答者が378人,そのうち15項目すべてに有効回答を得たのは304人,さらにそのうち271人が血清抗体価測定者であった。QOL総合スコアとスギ花粉特異的IgE抗体価とはよく関連していた。因子分析では.主成分分析で抽出した固有値8.49(スギ花粉症全体の強弱を表現)と1.37(症状とそれによる影響とを弁別)の2成分が、パリマックス回転によって症状主体の因子と症状による影響主体の因子に集約された。15項目のChronbachのαは0.93であった。回答の包含関係からみると,ティッシュペーパーやハンカチの必要性,鼻水,くしゃみ,鼻づまりが最も先に出現し,目のかゆみ,けん怠感,いらいら感が次いで出現,不眠,勉強への影響,親しい人の集まりでの影響,流涙などは後で出現すると考えられた。QOL総合スコアと各予防・治療効果との関連はみられず,各処置が各人の判断によって選択的に行われるためであると考えられた。
結論 本質開票はスギ花粉症全体の強弱を表現する傾向が強く,下部構造はあまり明瞭ではない。したがって,質問項目数を減らせる可能性があるが,実際に予防や治療を行ったときのQOL指標の差を測定しで改良する必要があると考えられる。
キーワード スギ花粉症,QOL,血清IgE抗体,疫学,妥当性

 

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第50巻第8号 2003年8月

中山間地域における保健所の難病患者支援についての検討

足立 敬子(アダチ ケイコ) 梅藤 薫(バイトウ カオル) 犬賀 辰子(イヌガ タツコ)

目的 中山間地域における保健所の難病患者支援の方策を明らかにする。
方法 静岡県北遠保健所管内の国指定特定疾患医療受給者のうち,平成14年1月未現在で受給資格を得ている患者を対象として,記名自記式の調査票を用いた郵送法による調査を行い,34疾患227人中186人(81.9%)から有効回答を得た。調査項目は,生活の場・介護者の有無・日常生活動作・医療処置・サービス利用・難病患者に共通の主観的QOL・困っていること・災害時の対応とした。
結果 北遠圏域はその面積の90%を森林・原野が占める中山間地であり,県下で最も高齢化の進んだ地域である。圏域内には高度専門医療機関がなく,訪問看護や訪問リハビリ等のサービスも限られた地域でしか行われていない。患者の9割は在宅生活をしており,7割は日常生活動作も自立していた。しかし,北遠圏域においては複数の医療処置を要したり,介護度が高くなったりすると在宅生活を継続していくことが困難であることが示唆された。また,サービスを利用しているものは約2割であり,日常生活に介助を要するものの割合に比べサービスを利用しているものの割合が低かった。さらに.口常生活の自立度が難病患者に共通の主観的QOLに影響していた。患者のニーズとしては.疾患やサービスに関する情報提供や患者同士の交流を希望するものの割合が高かった。また,災害時への備えでは,近隣に避難時の協力を依頼しているものは1割であったのに対し,患者の情報を市町村防災担当者に知らせておくことを希望するものは3割と高かった。
結論 保健所は,患者の状況把握とニーズに応じた疾患やサービスに関する情報の掟供,より身近なところでの医療相談会や患者・家族交流会を開催していく必要がある。また,市町村および介護保険関係機関職員への研修と情報提供等が必要と考えられた。さらに,今後,市町村を始め介護保険関係機関,医療機関等との連携を図り,サービスのあり方や災害時における支援体制作りについて検討していく必要がある。高度専門医療機関がなく社会資源が限られている中山間地域においては,難病患者支援は今後も保健所として積極的に取り組むべき事業である。
キーワード 中山間地,保健所,難病,災害対策

 

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第50巻第8号 2003年8月

自殺と社会背景としての失業

谷畑 健生(タニハタ タケオ) 藤田 利治(フジタ トシハル) 尾崎 米厚(オザキ ヨネアツ)
黒沢 洋一(クロサワ ヨウイチ) 箕輪 眞澄(ミノワ マスミ) 畑 栄一(ハタ エイイチ)

はじめに わが国の自殺死亡は,1997年に突如急峻な増加を示し,年間3万人を超えた。自殺死亡の原図として経済状況の悪化によるものといわれているが,十分な検討がなされていない。われわれは経済状況と社会状況を示すマクロ指標として完全失業率を取り上げ,完全失業率が自殺死亡率とどのような関連を示すかを性・年齢層ごとに明らかにする目的で分析した。
方法 完全失業率は総務庁(省)統計局「労働力調査報告」から年次別,性別,年齢5歳階級別の完全失業率データを得た。自殺死亡数については厚生労働省の人口動態調査死亡票の磁気化データを目的外使用で得た。自殺死亡率は日本人人口を分母とし,自殺死亡数を分子として算出した。完全失業率および自殺死亡率の相関係数の算出にPearsonの方法、また時間的前後関係を明らかにするための時系列データ解析に交差相関を使用した。交差相関で示されるラグ値0の相関係数はPearsonの方法による相関係数にあたる。
結果 自殺死亡率は男が女よりも高い値を示した。男は1972年からなだらかに増加し,1982-9年に小山がみられ,その後一時減少した後,緩やかを増加がみられたが,1997年から急峻な増加がみられた。女は1982-9年に小山がみられるが,1972年から減少傾向にあり,1994年から増加がみられた。完全失業率は男女とも1972年から1986年までなだらかに増加,1990年まで減少し,1991年以降増加がみられた。完全失業率と自殺死亡率の相関関係は男にみられ,女たみられないことが多かった。交差相関は、男30-49歳で完全失業率と自殺死亡率の変化がタイムラグなしに同じ方向にみられるが、女は完全失業率の変化に比べて自殺死亡率が遅れて逆方向にみられた。
結論 男の30-49歳の年齢層において,マクロ経済指標の1つである失業の増加が自殺死亡の増加に直接影響を与えていると考えられる。また男女の50-64歳の年齢層においては,失業の増加が自殺死亡の増加に影響を与えることは確かであるが,失業以外にも自殺死亡に強い影響を与える要因があることが示唆された。その他の性・年齢層では,失業は自殺死亡に関連が少ないと思われる。
キーワード 自殺死亡,完全失業率,失業,経済状況,社会状況,マクロ経済

 

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第50巻第8号 2003年8月

三重県における感染症発生動向調査事業への新たな取り組み

大熊 和行(オオクマ カズユキ) 寺本 佳宏(テラモト ヨシヒロ) 福田 美和(フクダ ミワ)
中山 治(ナカヤマ オサム) 田畑 好基(タバタ ヨシキ)

日的 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づく感染症発生動向調査事業を効果的・効率的に実施し,感染症の予防とまん延防止の推進に質するため,三重県における同事業の新たな取り組みを検討する。
方法 2001年に三重県内の指定届出機関(定点医療機関)等から提供されたコメント情報を分析するとともに,全国の地方感染症情報センターを対象とした感染症発生動向調査事業の実施状況に関するアンケート調査と,県内の小児科定点およびインフルエンザ定点を対象としたアンケート調査を行い,これらの調査結果をもとに三重県感染症発生動向調査企画委員会の意見を聴いて新たな取り組みを検討した。
結果 2001年のコメント情報を分析したところ,①小児科定点把握対象の四類感染症(法定12疾患)に加え,新たに追加して収集・分析・提供することが望ましいと考えられる疾患が認められたこと,②インフルエンザ定点からの患者報告数は症状・所見に基づくものと迅速診断キット測定結果に基づくものとが混在することの2点が明らかとなった。この結果を踏まえ,全国58の地方感染症情報センターを対象として実施したアンケート調査では,定点把握対象疾患を追加して感染症発生動向調査を実施していたのは6機関で,追加疾患は小児科定点の川崎病,マイコプラズマ肺炎等であった。また,インフルエンザ患者報告数の内容の認識状況について回答のあった26機関のうち三重県も含め23機関が,感染症法に基づく医師から都道府嬉知事等への届出のための基準(届出基準)に基づく症状・所見例と迅速診断キット陽性例とが混在していると認識していた。一方,県内小児科定点45機関を対象としたアンケート調査では,44機関(98%)が法定12疾患のほかに新たにマイコプラズマ肺炎等を追加して発生動向を把握すべきであると回答し,腸内インフルエンザ定点73機関を対象としたアンケート調査では,46機関(63%)が患者数とともに迅速診断キット陽性例数等の報告が必要と回答した。
結論 これらの調査結果と三重県感染症発生動向調査企画委員会の意見に基づき,小児科定点医療機関に対しては,県独自の把握対象疾患として3疾患(マイコプラズマ肺炎,クラミジア肺炎,RSウイルス性細気管支炎)を追加して患者数の報告を,また,インフルエンザ定点医療機関に対しては,迅速診断キットによる病原体診断の実施状況の報告を依頼することとし,2003年1月(第1週)から新たな感染症発生動向調査事業として調査を開始した。
キーワード 感染症,発生動向,小児科定点,インフルエンザ定点,迅速診断キット

 

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