第102回看護師国家試験 午後必修問題
平成25年2月17日(日)に実施された第102回看護師国家試験について、午後問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第102回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 必修問題
▶午後1改題
日本の令和4年(2022年)における女性の平均寿命はどれか。
- 77.09年
- 81.09年
- 87.09年
- 91.09年
③ 87.09年
平均寿命とは0歳の平均余命をいい、令和4年(2022年)の簡易生命表では、男性が81.05年、女性が87.09年となっている。
*第2編3章 生命表 p70~73
▶午後2
炭坑従事者に起こりやすい職業性疾患はどれか。
- 潜函病
- じん肺
- 中皮腫
- 白ろう病
② じん肺
じん肺は、主に粉じん(石綿〈アスベスト〉含む)の発生する環境で仕事をしている労働者が、粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病をいう。石炭の採掘、岩石坑道の掘進作業などにより、炭坑従事者はじん肺を発症しやすい。
*第8編 5.1〕粉じん障害防止対策 p302
▶午後3
介護保険制度における施設サービス費の原則的な利用者負担の割合はどれか。
- 1割
- 2割
- 3割
- 5割
① 1割
介護保険制度のサービスを利用する者は、原則費用の1割(所得により2割または3割)を負担して各種サービスを受ける。
*第5編1章 3.介護給付 p222~225
▶午後4
倫理原則の「善行」はどれか。
- 患者に身体的損傷を与えない。
- 患者に利益をもたらす医療を提供する。
- すべての人々に平等に医療を提供する。
- 患者が自己決定し選択した内容を尊重する。
② 患者に利益をもたらす医療を提供する。
看護実践における倫理原則のうち、「善行の原則」は、患者の症状、感情に合わせた最良の医療・看護提供するなど、患者のために最善を尽くすことをいう。
×① 患者に身体的損傷を与えない。
倫理原則のうち「無危害の原則」に当たる。
×③ すべての人々に平等に医療を提供する。
倫理原則のうち「公正と正義の原則」に当たる。
×④ 患者が自己決定し選択した内容を尊重する。
倫理原則のうち「自律尊重の原則」に当たる。
▶午後5
マズロー, A. H.の基本的欲求階層論で最も低次の欲求はどれか。
- 自己実現の欲求
- 所属と愛の欲求
- 生理的欲求
- 安全の欲求
③ 生理的欲求
マズローの欲求階層説では、低階層から「生理的(食事、排泄、睡眠等)欲求」「安全(危険回避)の欲求」「社会的(所属・愛情)欲求」「自尊(承認)の欲求」「自己実現の欲求」の5段階となっており、人間は低階層の欲求が満たされると高階層の欲求に移っていくことをあらわす。
▶午後6
標準的な発育をしている児において体重が出生時の約2倍になる月齢はどれか。
- 1か月
- 3か月
- 6か月
- 9か月
② 3か月
出生時の平均体重は約3kgで、3か月ごろには約2倍、1年ごろには約3倍となる。なお、出生時の平均身長は約50cmで、1年ごろには約1.5倍、4年ごろには約2倍となる。
*第2編2章 2.出生 p51~55
▶午後7
標準的な発育をしている児において脳重量が成人の約90%に達する年齢はどれか。
- 5〜6歳
- 8〜9歳
- 11〜12歳
- 15〜16歳
① 5〜6歳
脳重量は出生時には成人の4分の1程度であるが、乳幼児期に急速に発達し、乳児期には50%、幼児後期の5〜6歳ころには成人の90%に達する。
▶午後8
乳児期の特徴はどれか。
- 分離不安
- 第一次反抗期
- ギャングエイジ
- 自我同一性の確立
① 分離不安
生後6〜8か月ころの乳児期には、身近な家族等の顔を見分け、応答的な愛着関係がみられるようになり、親から離されることへの分離不安や、知らない相手への人見知りがはじまる。
×② 第一次反抗期
第一次反抗期は、自我が芽生える幼児前期の特徴である。
×③ ギャングエイジ
ギャングエイジとは、親から離れて仲間と集団行動をとることをいい、学童期の特徴である。
×④ 自我同一性の確立
自分は何者であるかという自我同一性〈アイデンティティ〉の確立は、思春期(青年期)の特徴である。
▶午後9改題
令和4年(2022年)国民生活基礎調査で、65歳以上の者のいる世帯の全世帯に占める割合はどれか。
- 30.6%
- 40.6%
- 50.6%
- 60.6%
③ 50.6%
令和4年(2022年)の65歳以上の者のいる世帯の割合は50.6%で、総世帯数の半数近くを占めている。
*第2編1章 2.世帯の動向 p44~48
▶午後10
健常な成人の体重における水分の割合に最も近いのはどれか。
- 20%
- 40%
- 60%
- 80%
③ 60%
成人の体重に占める水分量は約60%(高齢者は50~55%)である。なお、そのうち細胞内液は約40%、細胞外液(間質液・血漿)は約20%とされる。
▶午後11
血中濃度が上昇すると黄疸となるのはどれか。
- グルコース
- ビリルビン
- クレアチニン
- 総コレステロール
② ビリルビン
黄疸は、赤血球が壊れる際にヘモグロビンが分解され、生成されたビリルビンにより皮膚や白眼が黄色くなる状態をいう。
▶午後12
末梢血液中の( )が低下した状態を貧血という。
( )に入るのはどれか。
- 血漿量
- 血小板数
- アルブミン濃度
- ヘモグロビン濃度
④ ヘモグロビン濃度
貧血は、血液中のヘモグロビン濃度が減少している状態と定義される。
▶午後13
表在感覚の受容器が存在する部位はどれか。
- 筋肉
- 皮膚
- 関節
- 骨
② 皮膚
体性感覚として、触覚・温度感覚・痛覚の表在感覚(皮膚感覚)と、体の内部の筋や腱、関節などに起こる深部感覚がある。
▶午後14
Koplik〈コプリック〉斑がみられる疾患はどれか。
- 麻疹
- 手足口病
- 帯状疱疹
- ヘルパンギーナ
① 麻疹
麻疹は、高熱や発症初期に頬粘膜に生じる白色のコプリック斑、その後の耳後部から始まり体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性ウイルス感染疾患である。
*第3編3章 3.5〕風しん・麻しん p138
▶午後15
嚥下障害のある患者の食事介助で適切なのはどれか。
- 水分はとろみをつける。
- 頸部を伸展する。
- 一口量を多くする。
- むせたときには水を飲ませる。
① 水分はとろみをつける。
嚥下障害のある患者の食事介助時には、食事が気管に入る誤嚥に細心の注意を払う必要がある。水分は流れるスピードが速いため誤嚥が生じやすく、適度なとろみをつけて速度を緩めることでその防止を図ることができる。
×② 頸部を伸展する。
頸部を伸展すると咽頭と気管が直線的になり、誤嚥が生じやすくなるため、頸部を前屈して食事の援助を行うことが望ましい。
×③ 一口量を多くする。
嚥下障害は飲み込み機能の低下であり、誤嚥のほか窒息を予防するために一口量を少なくする。
×④ むせたときには水を飲ませる。
むせたときは口内のものを吐き出させて背中をさするなどする。
▶午後16
グリセリン浣腸を実施する際、腸管孔の危険性が最も高い体位はどれか。
- 立位
- 側臥位
- 仰臥位
- シムス位
① 立位
グリセリン浣腸は腸管の蠕動を促進し、排泄を促進させる。直腸穿孔の危険性があるため、立位による浣腸は危険であり、左側臥位による5~6cm程度のチューブ挿入を実施する。
▶午後17
長期臥床によって生じるのはどれか。
- 高血糖
- 筋萎縮
- 食欲増進
- 心拍出量の増加
② 筋萎縮
長期臥床などの活動性の低下により、筋力の低下や筋萎縮、起立性低血圧、食欲低下など、二次的に身体機能が低下する廃用症候群が生じやすくなる。
▶午後18
点滴静脈内注射1,800mL/日を行う。
一般用輸液セット(20滴≒1mL)を使用した場合、1分間の滴下数はどれか。
- 19滴
- 25滴
- 50滴
- 75滴
② 25滴
1分あたりの滴下数は、(総輸液量×1mLあたりの滴下数)÷時間(分)で計算する。時間は1日=24時間=1,440分。(1,800×20)÷1,440=25となる。
▶午後19
温罨法の作用で正しいのはどれか。
- 平滑筋が緊張する。
- 局所の血管が収縮する。
- 知覚神経の興奮を鎮静する。
- 細胞の新陳代謝を抑制する。
③ 知覚神経の興奮を鎮静する。
温罨法(おんあんぽう)は、湯たんぽなどにより身体の一部に温熱刺激を与える方法で、①平滑筋の弛緩、②血管の拡張、③感覚・痛覚神経の興奮の鎮静(疼痛緩和)、④新陳代謝の促進などはその効果である。
▶午後20
AEDの使用方法で正しいのはどれか。
- 電極パッドは水で濡らしてから貼る。
- 電極パッドは心臓をはさむ位置に貼る。
- 通電時は四肢を押さえる。
- 通電直後は患者に触れない。
② 電極パッドは心臓をはさむ位置に貼る。
自動体外式除細動器〈AED〉は、致死性不整脈である心室細動および無脈性心室頻拍を電気ショックによって取り除く(除細動)装置である。電極パッドは、心臓を挟むように右前胸部と左側胸部の位置に貼り付けて使用する。
×① 電極パッドは水で濡らしてから貼る。
貼付部が濡れていると電気が水分を通って心臓を通らない場合があるため濡らさない。また、汗や海水で皮膚が濡れている場合は貼付前に拭き取る必要がある。
×③ 通電時は四肢を押さえる。
×④ 通電直後は患者に触れない。
通電時に傷病者の体に触れると感電するおそれがあるため離れ、通電後は心臓マッサージなど適切な心肺蘇生法を行う。
▶午後21
災害時のトリアージで最優先治療群のトリアージタッグはどれか。
- 赤
- 黄
- 黒
- 緑
① 赤
トリアージ(災害時等の治療優先度の決定)の際にはトリアージタグ(識別票)を利用し、傷病者の緊急度に応じて、優先順に赤(Ⅰ:最優先治療群・重症群)、黄(Ⅱ:待機的治療群・中等症群)、緑(Ⅲ:保留群・軽症群)、黒(0:不処置群・死亡群)と分類する。
▶午後22
McBurney〈マックバーネー〉点の圧痛を特徴とする疾患はどれか。
- 胃潰瘍
- 急性膵炎
- 尿管結石症
- 急性虫垂炎
- 子宮内膜症
④ 急性虫垂炎
圧痛点は、指などで圧迫した際に強い痛みを感じる部分をいい、疾患によって特定の圧痛点があり、診断に用いられる。右下腹部にあるマックバーネー点は急性虫垂炎の圧痛点である。
▶午後23
神経性食欲不振症の症状または所見はどれか。
- 発熱
- 咳嗽
- 徐脈
- 高血圧
- 過多月経
③ 徐脈
神経性食欲不振症(神経性無食欲症)は摂食障害の一つで、青年期の女性におおくみられ、極端な食事制限と過度なやせを示す。栄養不足に起因する症状として、無月経や低血圧、徐脈、低体温、浮腫などがみられる。
▶午後24
長期間の使用によって満月様顔貌〈ムーンフェイス〉になるのはどれか。
- ヘパリン
- インスリン
- テオフィリン
- プレドニゾロン
- インドメタシン
④ プレドニゾロン
副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロンは、炎症の抑制や免疫力の抑制など幅広い疾患で用いられているが、満月様顔貌〈ムーンフェイス〉や高血糖、高血圧、易感染性、骨粗鬆症、食欲増進による体重増加など副作用が多く、注意を要する。
▶午後25
努責やくしゃみをしたときに生じる尿失禁はどれか。
- 溢流性尿失禁
- 機能性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- 反射性尿失禁
- 腹圧性尿失禁
⑤ 腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁は、重い物を持ち上げたときや運動時、せき・くしゃみをしたときなど、腹部に力を加えたときに起こる不随意の尿漏れである。骨盤底筋の衰えにより尿道がコントロールできないことが原因であるため、行動療法として骨盤底筋訓練が効果的である。
×① 溢流性尿失禁
溢流性尿失禁は、前立腺肥大症などに伴う排尿障害により、尿がうまく出せず、少しずつ漏出するして起こる失禁である。
×② 機能性尿失禁
機能性尿失禁とは、泌尿器等の排尿機能に問題はないが、運動機能の低下や認知症により起こる尿失禁である。
×③ 切迫性尿失禁
切迫性尿失禁は、急に我慢できないほどの強い尿意を催す尿意切迫感による失禁である。
×④ 反射性尿失禁
反射性尿失禁は脊椎損傷などにより尿意を感じず不随意に起こる失禁である。
資料 厚生労働省「第99回保健師国家試験、第96回助産師国家試験及び第102回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第102回看護師国家試験
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