第105回保健師国家試験問題・正答-国民衛生の動向対応
平成31年2月15日実施の第105回保健師国家試験の全問題と正答を掲載します。
また、内容に応じて保健師国家試験受験者の必携テキスト「国民衛生の動向2024/2025」の参照章・ページを示します。問題を解きながら本誌を確認することで、より問題の理解を深めることできます。
分野別解説付き問題まとめ
- 国民衛生の動向でみる保健師国家試験の統計問題まとめ
- 国民衛生の動向でみる保健師国家試験の法律問題まとめ
- 国民衛生の動向でみる保健師国家試験の感染症問題まとめ
- 保健師国家試験 疫学・保健統計学問題まとめ
を合わせて活用しながら、合格に近づく過去問対策を進めて頂ければ幸いです。
なお、最新の統計の記載、法律の改正、不適切問題などにより、一部問題を改変、削除しています。
厚生の指標増刊
発売日:2024.8.27 定価:2,970円(税込) 412頁・B5判 雑誌コード:03854-08
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第105回保健師国家試験目次
第105回保健師国家試験・午前(55問)
▶午前1
市町村に勤務する保健師が、業務上知り得た人の秘密を、他に漏らしてはならないことを規定しているのはどれか。
- 医療法
- 地域保健法
- 地方公務員法
- 地域保健対策の推進に関する基本的な指針
▶午前2
日本で、いわゆる公害病が公衆衛生上の問題として認識され始めた時期はどれか。
- 1940年から1950年代
- 1960年から1970年代
- 1980年から1990年代
- 2000年以降
▶午前3
保健師が生後14日の乳児のいる家庭に家庭訪問した。児の体重増加量は1日当たり30gであった。母親は母乳を1日平均10回、2〜3時間間隔で授乳しており、母乳育児を続けたいと希望していた。
児が1か月児健康診査を受診するまでの母親への指導で適切なのはどれか。
- 「赤ちゃんが泣いた時に授乳しましょう」
- 「食事以外にも水分を十分に摂りましょう」
- 「1回の授乳時間は30分以上にしましょう」
- 「乳房が張るまで待ってから飲ませましょう」
▶午前4
Aちゃん(生後5か月、男児)。定期予防接種であるBCG接種を受けた。接種7日後に、母親が保健センターに来所し、地区担当保健師に「接種したところが腫れているが大丈夫か」と相談があった。接種部位の写真を別に示す。
母親に対する地区担当保健師の対応で正しいのはどれか。
- 「入浴は控えましょう」
- 「免疫がついた証拠です」
- 「すぐに小児科を受診してください」
- 「接種後3か月程度で自然に治ります」
▶午前5
双子の育児をしている母親が、1歳6か月児健康診査の受診時に「双子の子育ては大変です。子どもたちが言うことを聞かないと、つい叩いてしまいそうになります。私は、幼少のころ母親から殴られて育ちました。このままでは虐待をしてしまうのではないかと不安です」と保健師に訴えた。
母親に対する保健師の対応で最も適切なのはどれか。
- 双子の親の会を紹介する。
- 保育所の利用を提案する。
- 家庭訪問をして話を聞くことを約束する。
- よくあることだから気にすることはないと言う。
▶午前6
市の保健センターの保健師が受け持ち地区の家庭訪問計画を立てる際に最も優先すべきケースはどれか。
- 出産病院が未定の妊娠36週の妊婦
- 経過の良好な出生時体重2,100gの生後3か月児
- 児の体重増加を心配している生後2か月児の母親
- 忙しいからと新生児訪問を断っている生後1か月児の母親
▶午前7
地域組織への保健師の支援で適切なのはどれか。
- 委員型の住民組織では仲間づくりを行う。
- 健康問題型の当事者組織では仲間づくりを行う。
- ライフステージ型の当事者組織では研修計画を立てる。
- 地縁型の住民組織では活動があるときにメンバー募集をする。
▶午前8
A市は、10年前より各行政区で健康講座を開催し、受講者を健康推進員に任命して市の保健事業の支援を依頼している。
健康推進員の主体性を高めるための保健師の支援で優先度が高いのはどれか。
- 健康推進員による活動実践の報告会の実施
- 保健事業以外の市の事業での役割づくり
- 健康推進員の活動手引きの作成
- 新たな健康推進員の養成
▶午前9
A市では高血圧予防を重点課題として取り組みを進めている。今回、食生活改善を希望している人に対して、減塩料理教室を開催することにした。
この教室のプロセス評価で適切なのはどれか。
- 減塩達成者の割合
- 参加者の募集方法
- 参加者の血圧の低下
- 参加者の食生活の変化
▶午前10
年代と母子保健施策の組合せで正しいのはどれか。
- 昭和17年(1942年)――母子健康手帳の制度化
- 昭和36年(1961年)――1歳6か月児健康診査開始
- 昭和52年(1977年)――3歳児健康診査開始
- 平成9年(1997年)――新生児訪問が市町村へ移管
▶午前11改題
令和4年(2022年)の女性の労働に関する説明で正しいのはどれか。
- 育児休業取得率は90%を超えている。
- 労働力人口比率は60%を超えている。
- 30歳代の就業率は40歳代よりも低い。
- 平均勤続年数は20年前よりも短くなっている。
▶午前12
Aさん(25歳、男性)。1人暮らし。1か月前から、自宅で大声を出したり、独り言を言っている。近隣住民3名が保健所に来所し「Aさんの状況が悪化し住民に危害があったら大変だ。精神科に入院させてほしい」と訴えた。保健師は、Aさんの家族からも相談を受けていた。
近隣住民3名に保健師が伝えることで適切なのはどれか。
- 保健師がAさん宅を訪問する予定であること
- Aさんの家族からも相談を受けていること
- 保健所では入院の相談に応じられないこと
- 保健師が把握しているAさんのこれまでの経緯
▶午前13改題
令和3年(2021年)1月から12月の感染症発生動向調査報告において、国内で発生が報告されているのはどれか。
- エボラ出血熱
- 腸管出血性大腸菌感染症
- 中東呼吸器症候群(MERS)
- 重症急性呼吸器症候群(SARS)
▶午前14
産業保健における作業管理に該当するのはどれか。
- 定期的に健康診断を行う。
- 工場内の騒音を測定する。
- 労働時間内に休憩時間をとる。
- 作業場に排気装置を設置する。
▶午前15改題
法令に定められた有害業務従事者に対する特殊健康診断の令和2年(2020年)と令和3年(2021年)の有所見率を表に示す。
【 A 】の種別はどれか。
- 除染等電離放射線
- 高気圧
- じん肺
- 鉛
▶午前16
災害派遣医療チーム〈DMAT〉で正しいのはどれか。
- 活動の開始は発災時からおおむね48時間以後である。
- 市町村からの要請に応じて活動する。
- 活動先の調整は総務省消防庁が行う。
- 広域医療搬送活動に従事する。
▶午前17
都道府県や市区町村において統括的な役割を担う保健師の活動で最も適切なのはどれか。
- 住民への総合相談を実施する。
- 組織横断的な総合調整及び推進を行う。
- 地区担当制による地区活動を実施する。
- 広域的かつ専門的な保健サービスを行う。
▶午前18
現行の後期高齢者医療制度の運営における医療給付の財源負担で正しいのはどれか。
- 後期高齢者支援金は45歳以上75歳未満の者の医療保険料から拠出される。
- 国、都道府県および市町村による公費が全体の約5割を占めている。
- 高齢者が医療機関を受診した時の自己負担額は無料である。
- 後期高齢者による保険料は全体の約2割を占めている。
▶午前19
公衆衛生行政の制度・対策と法律の組合せで正しいのはどれか。
- 大気汚染の監視――大気汚染防止法
- 労働者の健康診断――労働基準法
- 食品等の収去検査――食品安全基本法
- 小学校における保健学習――学校保健安全法
▶午前20
医療安全対策で正しいのはどれか。
- 産科医療補償制度は医療法に基づき実施されている。
- 医療事故調査は病院の管理者に義務付けられている。
- 都道府県に医療安全支援センターの設置が義務付けられている。
- 都道府県知事は医療事故調査・支援センターを指定することができる。
▶午前21
現行の自殺対策基本法で正しいのはどれか。
- 自殺者の親族等に対する支援が目的に含まれる。
- 事業主の責務に長時間労働の禁止を規定している。
- 保健所に自殺総合対策会議の実施を義務付けている。
- 市町村に自殺予防総合相談窓口の設置を義務付けている。
▶午前22改題
令和2年(2020年)に実施された患者調査のうち高齢者の調査結果で正しいのはどれか。
- 入院患者では65歳以上が約7割を占めている。
- 外来患者では65歳以上が約8割を占めている。
- 年齢階級別外来受療率(人口10万対)では90歳以上が最も高い。
- 年齢階級別入院受療率(人口10万対)では75〜79歳が最も高い。
▶午前23
公衆衛生看護活動で用いるハイリスクアプローチはどれか。
- 母子健康手帳交付時に喫煙防止のリーフレットを渡す。
- 肥満予防のリーフレットを健診結果通知に同封する。
- 小学校と連携して赤ちゃん抱っこ体験学習を行う。
- 自治会と連携して健康セミナーを開催する。
- 血圧が高めの人に減塩方法を指導する。
▶午前24
いわゆる成人病の対策に生活習慣の改善による発症予防の考えを導入した国の施策で、生活習慣病の呼称を最初に用いたのはどれか。
- 第1次国民健康づくり対策
- 第2次国民健康づくり対策
- 健康づくりのための運動指針
- 健康日本21
- 健康づくりのための睡眠指針
▶午前25
市の乳児健康診査において股関節開排制限の有無について確認を行い、片側に異常を認めた児の状況を図に示す。
この時に確認できた児の状況で正しいのはどれか。
- 左側の足の長さが右側より長い。
- 右側の鼠径部の皮膚溝が左側より深い。
- 右側の大腿部のしわの数が左側より多い。
- 左側の股関節の開排が正中より70度以下である。
- 右側の股関節の開排が正中より120度以上である。
▶午前26
健康日本21(第二次)の目標で正しいのはどれか。
- 喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及
- 週労働時間60時間以上の雇用者の割合の減少
- メタボリックシンドロームの認知度の向上
- アルコール依存症の患者数の減少
- 糖尿病治療者数の減少
▶午前27
危険因子に曝露した群の罹患リスクの、曝露していない群の罹患リスクに対する比はどれか。
- 罹患率
- 有病率
- 致命率
- 寄与危険
- 相対危険
▶午前28
コホート研究と比較した症例対照研究の特徴で正しいのはどれか。
- 研究期間が長い。
- 相対危険が直接計算できる。
- まれな疾病の研究に適している。
- 事象の発生順序が明らかである。
- 情報の偏り〈バイアス〉が少ない。
▶午前29
症例対照研究における交絡因子の制御方法はどれか。
- 無作為化
- マッチング
- 単変量解析
- ブラインド法
- 対象者数の増加
▶午前30
散布度に含まれるのはどれか。
- 中央値
- 最頻値
- 相関係数
- 標準偏差
- 平均(算術平均)
▶午前31
地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律〈医療介護総合確保推進法〉において、地域包括ケアシステムとして包括的に確保されるのはどれか。2つ選べ。
- 介護予防
- 年金保険
- 雇用の促進
- 自然とのふれあいの推進
- 自立した日常生活の支援
▶午前32
学校保健の歴史的変遷で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 学制発布によって学校衛生の施策が始まった。
- 痘そうの蔓延によって学校看護婦が置かれた。
- 昭和16年(1941年)に学校看護婦は養護教諭に名称変更された。
- 学校教育法の改正によって養護教諭の保健授業担当が可能になった。
- 学校保健法の改正によって学校保健安全法が制定された。
▶午前33
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉の五類感染症のうち、直ちに届け出る必要があるのはどれか。2つ選べ。
- 麻しん
- 百日咳
- 破傷風
- 侵襲性髄膜炎菌感染症
- Creutzfeldt-Jakob〈クロイツフェルト・ヤコブ〉病
▶午前34
学校保健における組織活動で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 校長は学校保健活動を管理する。
- 学校保健計画は副校長が策定する。
- 保健主事は学校保健活動を総括する。
- 養護教諭は保健室経営計画を立案する。
- 学校保健委員会は地域との連携を推進する。
▶午前35
市では乳幼児健康診査の集団指導において、防災および災害対策についての普及啓発を図ることとした。
集団指導の内容で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 風呂の水をためておく。
- 母子健康手帳を常時携帯する。
- 最低1日分の食料品を備えておく。
- 停電時にはブレーカーを入れておく。
- 非常用の持ち出し品はバッグに入れておく。
▶午前36
予防接種法で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 予防接種を受けることは国民の義務である。
- 定期予防接種の実施責任者は都道府県知事である。
- 定期予防接種は一類疾病と二類疾病に類型化されている。
- 定期予防接種の副反応による健康被害の救済が規定されている。
- 予防接種の総合的な推進を図るための予防接種基本計画が定められている。
▶午前37
市町村保健師における業務管理に該当するのはどれか。2つ選べ。
- 保健事業の質的評価
- 担当する支援対象者の評価
- 計画的人員配置の成果評価
- 地方公務員としての能力評価
- 協働して事業実施をした関係者に及ぼした影響評価
▶午前38
日本の人口に関する指標のうち、平成23年(2011年)以降、増加傾向にあるのはどれか。2つ選べ。
- 総人口
- 老年化指数
- 従属人口指数
- 年少人口割合
- 生産年齢人口割合
▶午前39
地域保健・健康増進事業報告で把握されるのはどれか。2つ選べ。
- 糖尿病の総患者数
- エイズに関する相談件数
- 退院患者の平均在院日数
- 乳児の健康診査の受診率
- 脳血管疾患の年齢調整死亡率
▶午前40
健康増進法に基づき市町村が実施するのはどれか。2つ選べ。
- 栄養指導員の任命
- 健康手帳の交付
- 骨粗鬆症検診
- 特定健康診査
- 妊婦健康診査
次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
A市内にある入所定員100人の介護老人保健施設。ショートステイも実施している。2月3日(月)に入所者と職員の13人が嘔吐と下痢などの症状を発症した。発症した入所者は全員、施設内の厨房で調理された給食を各階の食堂で食べており、食中毒の発生を疑った施設長から、保健所に電話で相談があった。相談を受けた保健所は、医師を含む調査チームを組んで施設に現地調査に向かうことにした。
▶午前41
調査チームのメンバーで適切なのはどれか。2つ選べ。
- 薬剤師
- 保健師
- 管理栄養士
- 環境衛生監視員
- 食品衛生監視員
▶午前42
施設への現地調査の結果、調理従事者の直近の検便結果に異常はなく、冬期のため乳幼児の面会は制限していたことがわかった。また、通常、職員は1階と2階とで担当が分かれているが、2月1日(土)に1階のショートステイで嘔吐・下痢の発症者が増えたため、2階の職員が1階のショートステイ利用者の吐物の処理や介護を行っていた。ショートステイ利用者と入所者、職員等について、発症日と発症者数等を表に示す。
今回の感染経路で「ショートステイ利用者からの感染」のほかに可能性が高いのはどれか。
- 面会者からの感染
- 給食食材からの感染
- 介護職員からの感染
- 調理従事者からの感染
▶午前43
今回の感染症は、ノロウイルスによる感染と判明した。2月10日(月)に、施設から保健所に「8日(土)以降は新たな発症者もなく、患者も快方に向かっている」と報告があり、集団発生の終息の時期について相談があった。
終息時期で適切なのはどれか。
- 初発患者の発生から1年後
- 最後に症状のあった患者の発生から1か月後
- 施設から提出された報告書によって保健所が判断
- 一定期間、新たな患者が発生しないことを確認して保健所が判断
次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
人口10万人のA市では、脳血管疾患の死亡割合が全国と比較して大きいことが明らかになった。そこで、脳血管疾患の予防対策の一環として血圧に注目し、一部の市民を対象とした塩分摂取量の把握のための聞き取りによる食事調査を行うこととした。
▶午前44
調査者の主観が影響しにくい標本を選ぶ方法はどれか。
- 制限
- 応募法
- 無作為抽出
- マッチング
- 無作為化(割付)
▶午前45改題
調査の対象者の塩分摂取量を評価するため、令和元年(2019年)の全国の結果と比較することにした。
比較するのに有用な統計資料はどれか。
- 国勢調査
- 医療施設調査
- 国民生活基礎調査
- 国民健康・栄養調査
▶午前46
調査の結果、全国と比較して塩分摂取量が多く、さらに塩分摂取量が多い対象者の血圧は、塩分摂取量が少ない対象者と比較して高いことが分かった。調査結果を表に示す。
高血圧に関して「塩分摂取量が多い」の「塩分摂取量が少ない」に対するオッズ比を求めよ。
ただし、小数点以下第2位を四捨五入すること。
解答:① . ②
次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
平成26年(2014年)の医療法改正に伴い、A県は平成28年度(2016年度)の第6次医療計画に地域医療構想を追記した。A県および構想区域B、Cについて、厚生労働省の示す地域医療構想策定ガイドラインにより推計された2025年の必要病床数推計値を表に示す。
▶午前47
A県および構想区域B、Cの2025年の必要病床数推計値の説明で正しいのはどれか。
- A県全体での急性期の必要病床数推計値の割合は全国の値より低い。
- 構想区域Cの回復期の必要病床数推計値の割合はA県全体より低い。
- 構想区域B及びCの慢性期の必要病床数推計値の割合は同じである。
- 構想区域Bの高度急性期の必要病床数推計値はA県の5割を占めている。
▶午前48
構想区域Cを所管する保健所では、必要病床数推計値に地域の実情を反映するために、管内の市町村と協働して18歳から64歳までの住民を無作為抽出し、独自に調査票送付によるアンケートを行うことにした。
アンケートの質問項目で優先度が高いのはどれか。
- よく利用する医療機関の所在地
- 利用したい介護保険事業所のサービス
- 地域に不足していると感じる医療機能
- 緊急時に受診したい医療機関の所在地
▶午前49
構想区域Cを所管する保健所の保健師は、地域医療構想に基づく切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築を、実際にどのように行っていくかについて、市町村の保健師と話し合いを行うことにした。
初回に検討する内容で優先度が高いのはどれか。
- A県の第6次医療計画
- 市町村ごとの入院患者の状況
- 2025年の医療機能別の必要病床数推計値(全国ベース)
- 市町村ごとの介護給付における居宅サービスの利用状況
次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aちゃん(3歳1か月、男児)。身長49cm、体重3,100gで出生した。市の3歳児健康診査に母親と来所した。自記式の問診票では、目・耳に関する特記事項はなく、相談したいことの欄には「昼間のおむつは取れたが、時々おしっこは失敗することがある」と記入されていた。生後11か月時に、鼠径ヘルニアによる手術の既往がある。今回の計測の結果は、身長90cm、体重11kgであった。過去の健康診査結果では、4か月児健康診査、1歳6か月児健康診査とも特記すべき事項はなかった。
▶午前50
問診時、Aちゃんに対するアセスメント項目で最も優先度が高いのはどれか。
- 体重
- 排泄
- 聴力
- 外科的疾患の既往
▶午前51
問診の場面で、母親は「Aは友達と活発に遊び、食欲も旺盛でとても元気です」と話した。Aちゃんは机の上に置いてある紙や鉛筆に興味を示し、保健師と母親を交互に見ていた。
Aちゃんの発達を評価するために、保健師がAちゃんに直接行う質問として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 「お口はどこですか」
- 「お名前はなんですか」
- 「この絵の中で犬はどれですか」
- 「昨日は何をして遊びましたか」
- 「2つの丸のうち大きいのはどちらですか」
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
人口8万人のA市。定年が近い世代が多く居住しており、高齢化率は25%、要介護認定率17%、夜間人口が昼間人口に比べて高い。平成28年(2016年)の特定健康診査の実施率は45%、特定保健指導の対象者割合は20%であり、対象者には中性脂肪高値、次いで空腹時血糖高値を示す人が多い。特定保健指導対象者は増加傾向であるが、終了者はむしろ減少している。そこで、次年度から生活習慣病の重症化予防を目標に掲げ、重点的に取り組む計画である。
▶午前52
A市の状況から、生活習慣病の重症化予防対策を行う集団で最も優先度が高いのはどれか。
- 特定健康診査の受診者
- 特定健康診査の未受診者
- 特定健康診査の有所見者
- 特定保健指導の対象者
- 特定保健指導の未終了者
▶午前53
A市では年々医療費が増大傾向にある。そのことを踏まえて、次年度から5か年の目標を設定し、生活習慣病の重症化予防のための事業計画を立案することになった。
目標として設定する指標で最も優先されるのはどれか。
- 人工透析の新規導入者数
- 定期的に運動する人の数
- 特定健康診査受診者数
- がんによる死亡者数
- 要介護認定者数
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
Aさん(62歳、女性)。夫(67歳)と次男夫婦(ともに30代、会社員)の4人暮らしである。起立時にふらつきが見られたため、専門病院を受診したところ、脊髄小脳変性症と診断された。難病の医療費助成の申請書が保健所に届き、保健師は家庭訪問を実施した。Aさんは起立時にふらつくことはあるが、日常生活動作〈ADL〉は自立、専門病院に月1回、一人で受診している。既往歴に特記すべきことはない。脊髄小脳変性症については医師より病名の告知、説明は受けている。Aさんは料理が好きで、食事の準備はAさんが行っている。
▶午前54
現時点で、保健師が行うAさんの支援で適切なのはどれか。
- 嚥下訓練の導入を計画する。
- コミュニケーション手段を確立する。
- 料理が継続できるよう環境を整える。
- 訪問看護を導入し、ケア体制を整える。
▶午前55
保健師が描いたAさん宅1階の見取り図を示す。Aさんと夫は1階で生活をし、日中はリビングで過ごし、夜は和室で布団に寝ている。2階は次男家族が使用している。台所とリビング、浴室は1階のみにあり、大きな段差は廊下から玄関に降りるところのみである。
Aさんの生活環境を改善するために現時点で優先度が高いのはどれか。
- 夜間のポータブルトイレの使用
- 夫婦の寝室を2階に移動
- 玄関にスロープを設置
- ベッドの使用
第105回保健師国家試験・午後(55問)
▶午後1
家族の発達段階と発達課題の組合せで正しいのはどれか。
- 新婚期――生きがいや心身の自立
- 教育期――保育としつけ
- 排出期――夫婦関係・生活の調整
- 向老期――夫婦関係の形成
▶午後2
世界保健機関〈WHO〉の行う活動で正しいのはどれか。
- 開発途上国の保健医療従事者の研修員の受け入れ
- 戦争や内戦で被害を受けている子どもの支援
- 難民に関する国際的な諸規定の監督
- 予防接種拡大計画の推進
▶午後3
A市の保健師活動において、地域住民が支え助け合える関係づくりを最も促進する活動はどれか。
- A市の健康増進計画を策定する。
- 地域の自治会長の意見を聞く場を設ける。
- 住民組織のネットワーク会議を開催する。
- 高齢者虐待防止のキャンペーンを実施する。
▶午後4
平成12年(2000年)の地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の改正内容や施行後の行政の変化で正しいのはどれか。
- 地域の特性に合わせた施策の展開を行いやすくなった。
- 生活保護は機関委任事務制度によって行われるようになった。
- 国民健康保険の給付は法定受託事務によって行われるようになった。
- 平成の市町村合併後の平成22年(2010年)には市町村数が2/3になった。
▶午後5
Aさん(80歳、女性)。認知症。1人暮らしで身寄りはない。認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱa、要介護1。最近、銀行の現金自動預け払い機〈ATM〉で頻回にお金を引き出すAさんを見かけて心配した銀行員から、地域包括支援センターに連絡があった。保健師が家庭訪問すると、家の中に最近購入したと思われる高価な商品が複数置かれていた。
保健師の対応で最も適切なのはどれか。
- 特別養護老人ホームへの入所を勧める。
- 成年後見制度利用支援事業を紹介する。
- 民生委員に訪問してもらう。
- 訪問看護の利用を勧める。
▶午後6
Aさん(54歳、女性)。会社で実施した特定健康診査の結果、特定保健指導の積極的支援の対象者として、保健指導の予約を入れるように会社の健康管理の担当者から連絡を受けた。Aさんは「保健指導を受けると、今までの食事の見直しを指導されるかもしれないが、病気を防いで健康に暮らすことができる」と考えた。
Aさんの考えはヘルス・ビリーフ・モデルにおける構成要素のどれか。
- 疾病の重大さの自覚
- 予防行動の利益の自覚
- 疾病にかかる可能性の自覚
- 必要な行動をうまく実行できる確信の自覚
▶午後7
VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインに基づき、1日4時間以上のデータ入力を行う社員に対する産業保健師の指導で適切なのはどれか。
- 椅子には浅く腰かける。
- ディスプレイからは30cm以内の視距離にする。
- 一連続作業時間が1時間を超えないようにする。
- キーボードの周辺と部屋の明るさの差を大きくする。
▶午後8
労働安全衛生法に基づき、労働者50人未満の事業者に義務付けられているのはどれか。
- 産業医の選任
- 衛生委員会の設置
- ストレスチェックの実施
- 長時間労働者への医師の面接指導
▶午後9
避難行動要支援者で、発災直後に最も優先して安否確認するのはどれか。
- 在宅人工呼吸療法をしている筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉患者
- デイケアに通所している統合失調症患者
- 介護認定で要支援2の認知症高齢者
- 出産予定月の妊婦
▶午後10
A市では、自然災害によって一部の家屋に床上浸水の被害があった。
住民やボランティアが泥のかき出しや片付けを行うにあたり、保健所の感染症担当の保健師が行う保健指導の内容で適切なのはどれか。
- 窓は閉めて行う。
- 次亜塩素酸ナトリウムの消毒液を噴霧する。
- 消毒液は使用する濃度に前日に作り置きしておく。
- 衣類は洗濯する前に80℃のお湯に10分以上つける。
▶午後11
県の保健所に住民から「うつ病で通院中なので、医療費を公費で負担してくれる制度の内容や手続きについて知りたい」という電話相談があった。
保健所保健師の説明で適切なのはどれか。
- 「県の保健所が申請窓口です」
- 「精神保健福祉法に基づく制度です」
- 「世帯の所得に応じて負担上限額があります」
- 「お住まいの市が医療費受給の判定を行います」
▶午後12
公衆衛生看護管理の機能と内容の組合せで正しいのはどれか。
- 人事管理――計画的人員配置
- 事業管理――指示命令系統の形成
- 予算管理――人材育成方針の作成
- 情報管理――地区活動計画の進捗状況の把握
▶午後13
人口〈集団〉寄与危険割合を直接計算するのに必要な情報はどれか。
- 全死亡数
- 累積罹患数
- 平均有病期間
- 対象集団の疾病頻度
▶午後14
大腸がんの危険因子はどれか。
- 肥満
- 熱い飲食物
- アフラトキシン
- ヘリコバクター・ピロリ
▶午後15
2群間の平均の差の検定に用いるのはどれか。
- t検定
- 回帰分析
- χ2〈カイ2乗〉検定
- Fisher〈フィッシャー〉の直接確率法
▶午後16
社会福祉制度において権利擁護を目的として行われているのはどれか。
- 障害者に対する公費負担医療制度
- ニーズに応じた就労支援
- 福祉サービスの利用援助
- 生活資金の貸し付け
▶午後17改題
令和4年(2022年)の歯科疾患実態調査において80歳で20本以上の自分の歯を有する者の割合に最も近いのはどれか。
- 20%
- 30%
- 40%
- 50%
▶午後18
A事業所の保健師は禁煙を希望する職員に対し、グループ活動を通して支援を行うことにした。
初回のグループワークにおける保健師の支援で最も適切なのはどれか。
- グループの支援計画を作成する。
- グループメンバー同士の助け合いを推奨していく。
- グループ支援において生じる問題や障害を予測する。
- グループ活動に関連する関係者とネットワークをつくる。
- グループワークの目標についてグループメンバー間で合意を得る。
▶午後19
市では、希望者による生活習慣病予防の運動教室を実施している。事業担当の保健師は、運動教室の終了後に自主的に活動するグループづくりを目指している。
グループづくりのため、運動教室開催中に保健師が取り組む内容で優先度が高いのはどれか。
- 問題意識の共有
- メンバーの社会化
- ロールモデルの設定
- 情緒的サポートを受ける機会
- 権利擁護〈アドボカシー〉の自覚
▶午後20
系統誤差の原因はどれか。
- マッチング
- 高い追跡率
- 低い抽出率
- 無作為化(割付)
- 検者間の測定差
▶午後21
国際疾病分類〈ICD〉に基づいた統計が含まれるのはどれか。
- 国勢調査
- 人口動態調査
- 医療施設動態調査
- 国民生活基礎調査
- 国民健康・栄養調査
▶午後22
職場の健康診断で肥満傾向であった者から、体重を減らしたいと産業保健師に相談があった。
保健師がコーチングの手法を用いて支援しているのはどれか。2つ選べ。
- 必要な1日の食事量を伝える。
- 運動のプログラムを作成し提示する。
- 本人が実施すると決めたことを認める。
- ウォーキング教室へ参加するよう勧める。
- 体重を減少させるために本人に何ができるか聞く。
▶午後23
市町村保健師が行う地区活動の展開で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 実践とモニタリングは別に行う。
- 住民との契約に基づいて実施する。
- 日頃の活動の中で実態把握をする。
- 関係機関との連携は実践の1つである。
- 地区活動の対象に産業保健は含まれない。
▶午後24
「公助」に該当するのはどれか。2つ選べ。
- 地域包括支援センターにおける高齢者虐待対策
- 婦人会による高齢者を対象とした食事会
- 生活保護制度における医療扶助
- 自治会が主催する育児サークル
- 雇用保険による失業等給付
▶午後25
母子健康手帳に記載されている「保護者の記録【1歳6か月の頃】」で、正しいのはどれか。2つ選べ。
- おしっこをひとりでしますか。
- 友だちと、ごっこ遊びをしますか。
- 自分でコップを持って水を飲めますか。
- 手を使わずにひとりで階段をのぼれますか。
- うしろから名前を呼んだとき、振り向きますか。
▶午後26
要保護児童対策地域協議会の機能で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 被虐待児の里親委託の決定
- 養育支援訪問事業の対象者の選定
- 子育て世代包括支援センターの運営
- 虐待通告を受けた児の支援内容の検討
- 居住実態を把握できない児の情報共有
▶午後27
レセプト情報・特定健診等情報データベース〈NDB〉によって集計できる情報はどれか。2つ選べ。
- がん検診受診率
- 主要死因別死亡数
- 入院外来別医療費
- 年齢階級別出生率
- 都道府県別BMI分布
▶午後28
難病対策で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 医療費助成の患者負担割合は1割である。
- 都道府県は療養生活環境整備事業を実施できる。
- 居住地の都道府県内の医療機関は全て医療費助成の対象である。
- 軽症者でも高額な医療を継続する者は医療費助成の対象となる。
- 都道府県は難病相談支援センターの設置が義務付けられている。
▶午後29
保健所管内の特別養護老人ホームの職員を対象に、結核に関する説明を行うことになった。
説明で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 「高齢の結核患者は定型的な呼吸器症状がでます」
- 「患者が発生した際は施設長が保健所に発生届を提出します」
- 「新登録結核患者のうち70歳以上が占める割合は50%未満です」
- 「排菌していない入所者は特別養護老人ホームへの入所を継続できます」
- 「65歳以上の入所者に対しては、定期健康診断を実施する義務があります」
▶午後30
災害対策基本法に示されている住民の責務はどれか。2つ選べ。
- 過去の災害から得られた教訓の伝承
- 避難行動要支援者名簿の作成
- 生活必需物資の備蓄
- 防災組織の充実
- 防災活動の促進
▶午後31改題
令和3年度(2021年度)学校保健統計調査における主な疾病・異常等で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 肥満傾向児の出現率は、平成23年度(2011年度)以降男女ともに増加している。
- 小学校における疾病・異常の被患率は、裸眼視力1.0未満の者が最も高い。
- むし歯(う歯)の者の割合は、全ての学校段階で前年度より減少している。
- ぜん息の者の年齢別の割合は、小学校で高い傾向がみられる。
- 心電図異常の割合は、高等学校より小学校の方が多い。
▶午後32
人口動態統計の情報を用いて算出を行う指標はどれか。2つ選べ。
- 受療率
- 婚姻率
- 生活影響率
- 年少人口指数
- 合計特殊出生率
▶午後33
保健行政で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 保健行政の都道府県レベルの組織機構は一様である。
- 産業保健行政の根拠法令の1つに労働基準法がある。
- 地域保健行政は地域住民の健康の保持・増進を図る。
- 地域保健、産業保健、学校保健の3分野からなる。
- 学校保健行政の所管は厚生労働省である。
▶午後34
医療法において医療計画に定めるものとされているのはどれか。2つ選べ。
- 緩和医療
- 救急医療
- 歯科医療
- 先進医療
- 災害時における医療
▶午後35
発達障害で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 発達障害者は障害者総合支援法のサービスを利用することができる。
- 発達障害者は精神障害者保健福祉手帳を申請することはできない。
- 発達障害の定義は発達障害者支援法に規定されている。
- 発達障害者に二次障害が出現することはない。
- 発達障害者支援センターは市町村が設置する。
次の文を読み36〜38の問いに答えよ。
Aさん(56歳、女性)。隣接する市に所在する警察署から、B町の保健師に「町に住む無職のAさんが、泥酔して路上で寝ていたところを保護している。先ほど目を覚ましたので事情を聴いたが、本人は『何も覚えていない』と言う。1か月前も同じ状況で保護した。Aさんは、1人暮らしで親族と連絡が取れなかったことから、その時は1人で帰している。今回は、保健師の支援をお願いできないか。B町の保健師に連絡することは本人が同意している」と連絡があった。保健師は、住民基本台帳でAさんがB町に居住し、他県に姉のCさんがいることを確認した。
▶午後36
保健師は上司に報告および相談し、警察署でAさんと面接することになった。
この面接の際に把握する情報で、優先度が高いのはどれか。
- 飲酒歴
- 所持金
- 就労の有無
- 今回の飲酒の理由
▶午後37
面接時、Aさんは保健師に「疲れているので、早く家に帰りたい。話は明日にして欲しい」と言い、保健師とともに家に戻った。その際に、Aさんには手指の振戦がみられていた。保健師は翌日に再度家庭訪問することを伝え、Cさんの連絡先を教えてもらった。保健師はB町役場に戻り、Aさんが直近の3か月間には医療機関の受診がないことを確認し、Aさんに医療機関の受診を勧めることをCさんに連絡して了解を得た。
翌日の保健師の対応で最も適切なのはどれか。
- 複数の保健師による家庭訪問を行う。
- 警察官に家庭訪問時の同席を依頼する。
- 家庭訪問を町役場での面接に変更する。
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づいて保健所に通報を行う。
▶午後38
その後、Aさんは精神科医療機関を保健師が同伴して受診した。診察室で精神保健指定医に「誰と来たか」と問われると、Aさんは「清掃センターの人」と答え、出身地を尋ねられると、答えに詰まった。「今、困っていることはありますか」の問いに対して「若い女性の声が聞こえてくる」、「夜、眠れない」と答えた。医師からAさんに入院による治療が必要であると説明されると、Aさんは理解できていない様子であった。医師からAさんと保健師に「Aさん本人の同意による入院はできない」と説明があり、Cさんに連絡したところ、入院の手続きを進めて欲しいとの意思表示があった。
Aさんの入院に向けた対応で適切なのはどれか。
- 保健師からAさんに入院の必要性を説明する。
- 精神保健指定医が成年後見人の選定を申し立てる。
- 精神科病院の管理者が医療保護入院の手続きを行う。
- 精神科病院の管理者が措置入院に必要な届出を行う。
次の文を読み39、40の問いに答えよ。
Aさん(20歳、専門学校生)。3か月前から咳が続き、市販薬を服用していたが、改善しなかった。そこで内科を受診したところ、胸部エックス線写真で空洞性病変があり、喀痰塗抹陽性、結核菌PCR陽性で結核病床へ入院した。結核の既往歴はない。入院前、Aさんは居住地のB市内にある専門学校に休まず通学していた。
▶午後39
情報収集を踏まえ、B市を管轄する県のC保健所で接触者健康診断の対象者が決定された。対象者は全員18歳以上である。
C保健所保健師が接触者健康診断の対象者に説明する内容で正しいのはどれか。
- 「ツベルクリン反応検査を行います」
- 「2年間にわたり健康診断を行います」
- 「3か月後に初回の健康診断を行います」
- 「B市の保健センターで健康診断を行います」
▶午後40
接触者健康診断の結果、潜在性結核感染症と診断された専門学校生が3名おり、治療を開始することになった。C保健所保健師は、専門学校の教員から「潜在性結核感染症の病気の特徴や対応がよくわからないので教職員に説明して欲しい」と言われた。
保健師の説明で適切なのはどれか。
- 感染者が使用した部屋は消毒する必要がある。
- 感染者にはN95マスクの着用を義務付ける。
- 感染者は入院治療が必要である。
- 他者への感染の恐れはない。
次の文を読み41、42の問いに答えよ。
Aさん(50歳、男性)。父親(75歳)と2人暮らし。Aさんは22歳頃から統合失調症を発症し、精神科病院に入院した。30歳代で退院した後は精神障害者手帳2級を取得し、月1回通院を継続しながら生活できていた。
ある日、父親から保健センターに電話があり「妻が1か月前に急死した。ようやく家は落ち着いてきたが、Aがこの頃落ち着かない様子である。今までは妻がAの世話をしていたので、これからどうすればよいか困っている」との相談があった。
▶午後41
相談の翌朝、保健センターの地区担当保健師が家庭訪問した。Aさんは血色がよく体型は標準的であったが、入浴をしていないような強い臭気がした。また終始イライラした様子で笑顔は少なく、落ち着きなく部屋を歩き回っていた。父親は「Aの薬は妻が管理していた。妻が亡くなってからAの状態は悪くなっていると思う」と話した。Aさんの薬袋を保健師が確認すると、予定残数以上の内服薬が出てきた。
保健師がAさんの状況を確認する内容で、最も優先度が高いのはどれか。
- 服薬
- 清潔
- 睡眠
- 食事
▶午後42
3日後、Aさんと父親の様子を見るために保健師は再度家庭訪問を行った。家庭訪問時、父親がAさんに対して「なんでできないんだ」と叱責している場面がみられた。父親は「Aの病気についてはよく知らない。自分もイライラするし、どうしたらよいのかわからない」と困った様子で保健師に話した。
地区担当保健師がこの時に行う支援で最も適切なのはどれか。
- 父親に息抜きの時間を持つことを勧める。
- Aさんの地域生活支援事業の利用を勧める。
- 父親に精神障害者の家族会への参加を勧める。
- Aさんの受診に父親と保健師が同行することを提案する。
次の文を読み43、44の問いに答えよ。
A町は人口7,000人、高齢化率45%、高齢者のうち独居者の割合35%である。町には急な坂が多く、公共交通機関はバスのみで運行本数は少ない。このため、A町に住む高齢者は食品や日用品など日々の買い物に不便を感じている。
▶午後43
A町の保健師は、独居高齢者の状況について情報収集を行うことにした。
収集する情報で優先度が高いのはどれか。
- 特定健康診査の結果
- A町国民健康保険の医療給付内容
- 要介護認定者の介護サービスの利用状況
- 基本チェックリストによる生活機能の確認の結果
▶午後44
保健師が高齢者を対象に日常生活の不便さと生活に関するアンケートを実施した結果、食事回数が1日2回と回答した割合が、独居高齢者では50%、同居者がいる高齢者では30%であった。
独居高齢者の食事回数が1日2回であることに対する寄与危険はどれか。
- 0.2
- 0.6
- 1.67
- 2.33
次の文を読み45、46の問いに答えよ。
Aちゃん(5歳、男児、第1子)。1歳6か月児健康診査で言葉の遅れ及びこだわりを指摘され、2歳6か月の時に、専門外来にて自閉症スペクトラム障害〈ASD〉と診断された。現在、療育手帳を取得し、保育所へ通いながら児童発達支援センターの療育に週2日通っている。地区担当保健師は1歳6か月児健康診査後から関わっており、母親からの相談に対応している。
▶午後45
母親が保健センターを訪れ、地区担当保健師に「Aの就学先について悩んでいます。児童発達支援センターの先生には特別支援学校を勧められていますが、できれば地域の公立小学校に通わせたいと思っています。どちらがAのために良いのでしょうか」と相談があった。
このときの母親への対応で最も適切なのはどれか。
- 児童発達支援センターの先生と再度話し合うことを勧める。
- 母親が地域の公立小学校に通わせたい理由を確認する。
- 保健師から主治医の意見を確認すると説明する。
- 児童相談所へ相談することを提案する。
▶午後46
Aちゃんは地元の公立小学校に入学し、通常の学級に籍を置きながら通級による指導を受けることになった。入学して半年後、母親から地区担当保健師に電話があり「Aは学校にもだいぶ慣れて楽しそうにやっているようだが、家で過ごす時間が長いことが気になっている」と話した。
保健師が母親に提案することで最も適切なのはどれか。
- 自閉症スペクトラム障害〈ASD〉家族会への参加
- 放課後等デイサービスの利用
- 特別支援学校への転校
- 障害児入所施設の利用
次の文を読み47、48の問いに答えよ。
Aさん(40歳、会社員、初妊婦)。夫(44歳、会社員)と2人暮らし。妊娠9週の時に市の子育て世代包括支援センターに妊娠届の提出のため来所した。市では、妊娠期から切れ目のない支援に取り組んでおり、継続した支援が必要な妊婦に支援プランを作成する母子保健コーディネーターとして、専従のB保健師を配置している。妊娠届出時のAさんのアンケート結果を表に示す。
▶午後47
B保健師が、Aさんをアセスメントするために面接時に追加で確認する情報で、最も優先度が高いのはどれか。
- 勤務状況
- 現在の体重
- 妊娠前の飲酒量
- 里帰り出産の有無
- 妊娠に対する夫の反応
▶午後48
Aさんは、妊娠37週で出生体重2,600gの男児を出産した。産後2週、産婦健康診査を受けたAさんは疲れている様子で、エジンバラ産後うつ病質問票〈EPDS〉の結果は9点だった。Aさんの状況について病院から連絡を受けたB保健師は、産婦健康診査の翌日、Aさん宅を訪問した。児は母乳栄養で、体重増加は良好だった。Aさんは「思っていたより育児は疲れる。夫は仕事が繁忙期で帰りは遅いが、手伝ってくれている。私も夫も睡眠不足です」と話した。
この時のB保健師のAさんへの支援で最も適切なのはどれか。
- 産後ケア事業の利用を勧める。
- 新生児訪問時に状況を再確認する。
- 研修を受けた子育て経験者の訪問を勧める。
- 搾乳した母乳を夫に授乳してもらうよう勧める。
次の文を読み49、50の問いに答えよ。
Aちゃん(5歳、男児)。小学校に入学を予定している。Aちゃんには食物アレルギーがあり、保護者から就学時健康診断の際に、学校での対応を希望する旨の申し出があった。
▶午後49
Aちゃんの入学までに養護教諭が最初に行う対応はどれか。
- 校長に支援計画を提出する。
- 対応委員会の開催を提案する。
- Aちゃんの主治医に電話で意見を聞く。
- 学校栄養職員と給食時の対応を話し合う。
- 保護者に学校生活管理指導表の提出を依頼する。
▶午後50
保護者や主治医からの情報により、Aちゃんは、卵によるアナフィラキシーの既往があり、アドレナリン自己注射薬が処方されていることが分かった。そこで、養護教諭を中心に、学校においてAちゃんに必要な配慮や管理の対応策について、学校内で話し合うことになった。
検討する事項で適切なのはどれか。
- 自己注射を補助する担当者の設定
- Aちゃんの体育活動への参加の仕方
- アナフィラキシーの対応のための職員研修
- 自己注射薬がクラスの児童にも取り出せる保管場所の確保
次の文を読み51、52の問いに答えよ。
人口約30万人の市。午後1時、震度6強の地震が発生し、市は避難所を設置した。家屋の倒壊や火災が確認され、大規模な被害が予測された。県と市に災害対策本部が設置された。
▶午後51
発災直後の緊急対策期における市の保健師の対応で優先度が高いのはどれか。
- 医療救護活動
- 福祉避難所の準備
- 健康調査票の作成
- 家庭訪問による個別健康相談
▶午後52
発災後10日。保健師は、避難所への巡回訪問中に4歳児の母親から「子どもが自分から全く離れなくなり、寝ている間に急に大声をあげて泣き出すようになった。心配だ」と相談を受けた。保健師は子どもの反応の意味を説明し、いつでも相談に乗ることを伝えた。
この時の保健師の母親への助言で適切なのはどれか。
- 子どもが一人で行動できることを経験させるよう勧める。
- できるだけスキンシップを図るよう伝える。
- 別の避難所に移動するように勧める。
- 特に何もしなくてよいと伝える。
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
A市(人口10万人)では高齢化が進み、医療福祉分野の課題が増えている。地域包括支援センターでは、介護支援専門員から「複数の病院で処方された多種類、多量の薬を服用している高齢者が多い。副作用などの問題があるのではないか」との相談を受けることが増えた。そこで今年度から4か所の地域包括支援センターが合同で2か月ごとに、「高齢者の服薬」をテーマに事例検討による地域ケア会議を開催することにした。A市からは介護保険担当課の保健師が参加する予定である。
A市の概況を表に示す。
▶午後53
保健師が会議の前に確認する情報で優先するのはどれか。
- 薬剤師会名簿
- 訪問介護の利用状況
- 要介護認定者数の推移
- 国民健康保険加入者の調剤医療費
▶午後54
A市では、4つの地域包括支援センター合同の地域ケア会議を1年間継続した。A市の訪問介護サービスを利用する高齢者の問題として、多種類、多量の薬剤の不適切な併用による健康障害と、介護支援専門員と主治医との連携の困難さの2つが明らかになった。A市では医療と介護の連携の強化の具体策の検討を目的に「在宅医療推進会議」を立ち上げることになった。この会議に介護支援専門員、医師、歯科医師、薬剤師の代表者が参加することは決まっている。
他に参加を呼びかけるメンバーで最も優先されるのはどれか。
- 民生委員の代表
- 訪問看護師の代表
- 理学療法士の代表
- 医療経済学の学識経験者
次の文を読み55の問いに答えよ。
食品加工業のA社には、60歳の定年後に継続雇用制度があり、65歳まで働くことができる。今後、製造現場の定年退職者と継続雇用労働者が増加することが見込まれている。安全衛生委員会で55歳以上の高年齢労働者の安全な就労に向け過去の労働災害状況を分析したところ、労働災害の発生率は年齢が高くなるほど上昇し、作業場での転倒が多かった。作業場の清掃は1日3回定期的に行い、照明は300ルクスの全体照明である。
▶午後55
A社の製造現場での高年齢労働者に対する労働災害防止対策への取組みで、優先度が高いのはどれか。
- 作業場の照度を高くする。
- 健康づくり用具を作業場に置く。
- 高年齢労働者向けの作業を用意する。
- 転倒が発生しやすい場所に注意喚起の掲示を行う。
資料 厚生労働省「第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験、第108回看護師国家試験の問題および正答について」
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必修問題まとめ
①国民衛生の動向対応/②看護の倫理・対象/③人体の構造と機能・健康障害・薬物/④看護技術
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第113回/第112回/第111回/第110回/第109回/第108回/第107回/第106回/第105回/第104回/第103回/第102回