第112回看護師国家試験 午前必修問題
令和5年2月12日(日)に実施された第112回看護師国家試験について、午前問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第112回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午前 必修問題
▶午前1改題
令和5年(2023年)の人口動態統計における妻の平均初婚年齢はどれか。
- 19.7歳
- 24.7歳
- 29.7歳
- 34.7歳
③ 29.7歳
令和5年(2023年)の平均初婚年齢は、夫が31.1歳、妻が29.7歳である。なお、第一子出生時の母親の平均年齢は30.9歳となっている。
*第2編2章 8.婚姻 p68~69
▶午前2改題
令和4年(2022年)の国民生活基礎調査における女性の有訴者の自覚症状で最も多いのはどれか。
- 頭痛
- 腰痛
- 体がだるい
- 目のかすみ
② 腰痛
令和4年(2022年)の病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)は、人口千人当たり276.5(男性246.7・女性304.2)であり、症状別にみると男女ともに腰痛が最も高い。
*第2編4章 1.1〕有訴者の状況 p74
▶午前3
喫煙指数(Brinkman〈ブリンクマン〉指数)を算出するために、喫煙年数のほかに必要なのはどれか。
- 喫煙開始年齢
- 受動喫煙年数
- 家庭内の喫煙者数
- 1日の平均喫煙本数
④ 1日の平均喫煙本数
喫煙指数(ブリンクマン指数)は喫煙による疾患のリスクを数字で表すもので、1日の喫煙本数×喫煙年数で求められる。
*第3編1章 2.6〕喫煙 p92~94
▶午前4
休憩時間を除いた1週間の労働時間で、超えてはならないと労働基準法で定められているのはどれか。
- 30時間
- 35時間
- 40時間
- 45時間
③ 40時間
労働基準法では、労働時間について、休憩時間を除き1日に8時間、1週間に40時間を超えないように定めている。
*第8編 9.1〕過重労働による健康障害防止対策 p308
▶午前5
介護保険法における要支援および要介護認定の状態区分の数はどれか。
- 4
- 5
- 6
- 7
④ 7
要介護状態は要介護1~5の5段階、要支援状態は要支援1・2の2段階に区分され、合計7区分となっている。なお、その状態を審査・判定するのは介護認定審査会である。
*第5編1章 2.保険給付の手続き p221~222
▶午前6
緩和ケアの目標で正しいのはどれか。
- 疾病の治癒
- 余命の延長
- QOLの向上
- 在院日数の短縮
③ QOLの向上
緩和ケアでは、患者とその家族に対して、終末期だけでなくがんと診断された時から、がん治療と同時に、多職種が連携して身体的症状の緩和や精神心理的な問題を含めた総合的なケアを行うことで、QOL(生活の質)の改善・向上を目指す。
*第3編4章 1.がん対策 p149~152
▶午前7
運動機能の発達で3歳以降に獲得するのはどれか。
- 階段を昇る。
- ひとりで立つ。
- ボールを蹴る。
- けんけん〈片足跳び〉をする。
④ けんけん〈片足跳び〉をする。
DENVERⅡ(デンバー発達判定法)が示す幼児の粗大運動の発達目安では、けんけん〈片足跳び〉は運動バランスの発達する3歳半~4歳とされる。そのほかは2歳までに獲得の目安がある。
▶午前8
ハヴィガースト, R. J.が提唱する成人期の発達課題はどれか。
- 経済的に自立する。
- 身体的衰退を自覚する。
- 正、不正の区別がつく。
- 読み、書き、計算ができる。
① 経済的に自立する。
ハヴィガーストは成長段階ごとに果たすべき課題(発達課題)を示しており、成人期(壮年期・中年期)では職業生活の開始と地位の確保、経済的な自立、配偶者の選択などの課題が挙げられる。
×② 身体的衰退を自覚する。
老年期の発達課題であり、体力と健康の衰退・退職と収入の減少・配偶者の死などに適応する時期である。
×③ 正、不正の区別がつく。
乳幼児期の発達課題であり、歩行、固形食、発話、排泄統御、性差と性の慎み、単純な社会概念、善悪の区別、良心、身近な人間関係などを学習する時期である。
×④ 読み、書き、計算ができる。
児童期の発達課題であり、仲間との人間関係の構築、読み・書き・計算などの基本的な技能、日常生活に必要な概念などを習得する時期である。
▶午前9改題
令和4年(2022年)の衛生行政報告例における看護師の就業場所で、医療機関(病院、診療所)の次に多いのはどれか。
- 事業所
- 市町村
- 保健所
- 訪問看護ステーション
④ 訪問看護ステーション
令和4年(2022年)末の就業看護師数は約131万人で、就業先別では病院が67.8%と最も多く、次いで診療所が13.2%、介護保険施設等が7.7%、訪問看護ステーションが5.4%などとなっている。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午前10
体性感覚はどれか。
- 視覚
- 触覚
- 聴覚
- 平衡覚
② 触覚
体性感覚は、触覚・温度感覚・痛覚の表在感覚(皮膚感覚)と、体の内部の筋や腱、関節などに起こる深部感覚をさす。
▶午前11
健康な成人の白血球の中に占める割合が高いのはどれか。
- 単球
- 好酸球
- 好中球
- リンパ球
③ 好中球
白血球の約半数を占める好中球は、細菌感染や真菌感染から体を守る主要な生体防御機構(免疫)であり、好中球の減少は感染症のリスクを高め、好中球が500/μL未満で重度とされる。
▶午前12
体温変化をとらえ、体温調節の指令を出すのはどれか。
- 橋
- 小脳
- 視床下部
- 大脳皮質
③ 視床下部
視床下部は間脳に位置し、自律神経機能や内分泌機能の調節を行っている中枢で、体温調節や摂食・飲水行動の調節のはたらきなどを持つ。
▶午前13
下血がみられる疾患はどれか。
- 肝囊胞
- 大腸癌
- 子宮体癌
- 腎細胞癌
② 大腸癌
下血は、出血した臓器の血液成分が肛門から排泄されることをいう。大腸癌では、癌の進行に伴い下血や血便などの症状がみられ、大腸癌検診(便潜血検査等)により早期発見が図られている。
▶午前14
糖尿病の急性合併症はどれか。
- 足壊疽
- 脳血管疾患
- 糖尿病網膜症
- ケトアシドーシス昏睡
④ ケトアシドーシス昏睡
糖尿病により糖代謝を調節するインスリン作用が不足すると、グルコース(ブドウ糖)がエネルギー源として利用できず、肝臓が脂肪を多く分解して酸性のケトン体を作るため、血液が酸性に傾く。この糖尿病ケトアシドーシスは糖尿病の急性合併症であり、血糖値の急上昇に伴い昏睡や意識不明の症状を呈する。
▶午前15
メタボリックシンドロームの診断基準において男性の腹囲〈ウエスト周囲径〉で正しいのはどれか。
- 80cm以上
- 85cm以上
- 90cm以上
- 95cm以上
② 85cm以上
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準として必須項目である腹囲〈ウエスト周囲径〉は、男性で85cm以上、女性で90cm以上とされている。
*第3編1章 1.3〕(1)特定健康診査・特定保健指導 p83
▶午前16
炎症マーカーはどれか。
- CA19-9
- 抗核抗体
- C反応性蛋白質〈CRP〉
- リウマトイド因子〈RF〉
③ C反応性蛋白質〈CRP〉
C反応性蛋白質〈CRP〉は炎症疾患の指標である蛋白質で、関節リウマチなどの炎症疾患で炎症マーカーとして用いられる。
▶午前17
薬物動態で肝臓が関与するのはどれか。
- 吸収
- 分布
- 代謝
- 蓄積
③ 代謝
薬物動態は投与された薬物が辿る過程で、「吸収」「分布」「代謝」「排泄」の4過程で説明される。薬物の経口投与では、小腸組織を環流した血液は門脈を通り、全身循環血に移行する前に肝臓を通過し、肝臓内の酵素によって代謝される(初回通過効果)。
▶午前18
胃から食道への逆流を防ぐために、成人が食後30分から1時間程度とるとよい体位はどれか。
- 座位
- 仰臥位
- 右側臥位
- 半側臥位
① 座位
胃食道逆流は胃酸が食道へ逆流することをいい、加齢等による下部食道括約筋の弛緩によって生じる。食後に起こりやすく、食後は上半身を起こした座位や半座位(ファウラー位)をとることが望ましい。
▶午前19
全身清拭時に皮膚に触れるタオルの温度で適切なのはどれか。
- 20〜22℃
- 30〜32℃
- 40〜42℃
- 50〜52℃
③ 40〜42℃
全身清拭時に皮膚に触れるタオルの温度は40℃程度が適している。なお、準備時間やタオルで湯を絞る際に温度が下がるため、洗面器に準備する湯の温度は50〜55℃とされる。
▶午前20
個人防護具の脱衣手順で最初に外すのはどれか。
- 手袋
- ガウン
- サージカルマスク
- フェイスシールド
① 手袋
標準的な感染予防策(スタンダードプリコーション)として用いられる個人防護具の着脱において、汚染の程度が高い手袋は最初に外す(着ける際は最後)。
▶午前21
オートクレーブによる滅菌法はどれか。
- 酸化エチレンガス滅菌
- 高圧蒸気滅菌
- 放射線滅菌
- 乾熱滅菌
② 高圧蒸気滅菌
オートクレーブを用いた滅菌を高圧蒸気滅菌といい、乾熱滅菌等に比べて低温・短時間での滅菌ができる。
*第4編1章 3.11〕院内感染対策 p180~181
▶午前22
薬物の吸収速度が最も速いのはどれか。
- 経口投与
- 筋肉内注射
- 静脈内注射
- 直腸内投与
③ 静脈内注射
静脈内注射は、直接薬剤を血管内に投与し、全身に循環されるため、薬剤の吸収速度、血中濃度の上昇は最も速い。
▶午前23
室内空気下での呼吸で、成人の一般的な酸素療法の適応の基準はどれか。
- 動脈血酸素分圧〈PaO2〉 60Torr以上
- 動脈血酸素分圧〈PaO2〉 60Torr未満
- 動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉 60Torr以上
- 動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉 60Torr未満
▶午前24
CO2ナルコーシスの症状で正しいのはどれか。
- 咳嗽
- 徐脈
- 浮腫
- 意識障害
④ 意識障害
CO2ナルコーシスは、呼吸不全患者のうち動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉が45mmHgを超えるⅡ型呼吸不全患者に起こりやすい合併症で、著明な二酸化炭素〈CO2〉の蓄積により呼吸性アシドーシスとなり、意識障害や頭痛、羽ばたき振戦などの中枢神経症状を引き起こす。
▶午前25
母乳栄養の児に不足しやすいのはどれか。
- ビタミンA
- ビタミンB
- ビタミンC
- ビタミンE
- ビタミンK
⑤ ビタミンK
母乳中には血液凝固作用を持つビタミンKが少なく、新生児のビタミンK欠乏性出血症を予防するため、出生後にビタミンKの内服が行われている。
資料 厚生労働省「第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験、第112回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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