第107回看護師国家試験 午前必修問題
平成30年2月18日(日)に実施された第107回看護師国家試験について、午前問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第107回看護師国家試験
|
|
厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
ご注文は書店、または下記ネット書店、電子書籍をご利用下さい。
|
ネット書店

電子書籍

▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午前 必修問題
▶午前1
平均寿命で正しいのはどれか。
- 0歳の平均余命である。
- 20歳の平均余命である。
- 60歳の平均余命である。
- 死亡者の平均年齢である。
① 0歳の平均余命である。
平均寿命とは0歳の平均余命をいい、令和4年(2022年)の簡易生命表では、男性が81.05年、女性が87.09年となっている。
*第2編3章 生命表 p70~73
▶午前3
シックハウス症候群に関係する物質はどれか。
- アスベスト
- ダイオキシン類
- 放射性セシウム
- ホルムアルデヒド
④ ホルムアルデヒド
シックハウス(室内空気汚染)症候群とは、建材や調度品から発生する化学物質などによる室内空気汚染やその健康影響をいい、ホルムアルデヒドなど13物質について室内濃度指針値を設定している。
*第7編3章 7.室内空気汚染対策 p295
▶午前4
介護保険法に基づき設置されるのはどれか。
- 老人福祉センター
- 精神保健福祉センター
- 地域包括支援センター
- 都道府県福祉人材センター
③ 地域包括支援センター
介護保険法に定められる地域包括支援センターは、住民の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行うもので、市町村に設置される。
*第5編1章 7.地域包括ケアシステム p227
▶午前5
QOLを評価する項目で最も重要なのはどれか。
- 高度医療の受療
- 本人の満足感
- 乳児死亡率
- 生存期間
② 本人の満足感
QOL(Quality of Life)は生活の質と訳され、本人の満足感が重要な尺度である。
▶午前6
原始反射はどれか。
- 手掌把握反射
- 視性立ち直り反射
- パラシュート反射
- Landau〈ランドー〉反射
① 手掌把握反射
手掌把握反射は新生児にみられる原始反射で、手に刺激を与えた際に握ろうとする現象をいう。出生後すぐから反応が見られ、生後3~4か月ころには消失する。
×② 視性立ち直り反射
視性立ち直り反射は、姿勢の傾きを視覚が捉え、直立姿勢を保とうとする姿勢反射の一つで、生後半年ころから見られ、生涯続く。
×③ パラシュート反射
パラシュート反射は姿勢反射の一つで、ふいに前方へ頭を傾けた際に手を前に出す現象をいい、生後半年ころから見られ、生涯続く。
×④ Landau〈ランドー〉反射
ランドー反射は生後半年から2歳ころまでみられる姿勢反射で、腹ばいの状態で頭の動きに合わせて背中と足が動く反応をいう。
▶午前7
思春期にみられる感情の特徴はどれか。
- 情緒的に安定し穏やかになる。
- 思い通りにならないと泣き叫ぶ。
- 親に対して強い愛情表現を示す。
- 依存と独立のアンビバレント〈両価的〉な感情をもつ。
④ 依存と独立のアンビバレント〈両価的〉な感情をもつ。
思春期には、依存と独立のアンビバレント〈両価的〉な感情を持ちながらも、自我同一性(アイデンティティ)の確立の過程で、親からの心理的離乳、年長者の価値観への拒絶、同世代の仲間との価値観の共有がみられる(第2反抗期)。
▶午前8
老年期の身体的な特徴はどれか。
- 総水分量が増加する。
- 胸腺の重量が増加する。
- 嗅覚の閾値が低下する。
- 高音域における聴力が低下する。
④ 高音域における聴力が低下する。
加齢により、蝸牛など感音系の器官が障害され、特に高音域が聞こえづらくなる(加齢性難聴)。
×① 総水分量が増加する。
成人の体重に占める水分量は約60%で、高齢者は減少し約50~55%となる。
×② 胸腺の重量が増加する。
胸腺は年齢とともに萎縮する。そのため、胸腺が産出する獲得免疫系のT細胞が減少し、感染抵抗力が低下する。
×③ 嗅覚の閾値が低下する。
嗅覚機能は加齢により低下(反応下限値=閾値が上昇)する。
▶午前10
嚥下に関わる脳神経はどれか。
- 嗅神経
- 外転神経
- 滑車神経
- 迷走神経
④ 迷走神経
迷走神経は副交感神経を含み、咽頭や食道の運動など嚥下(反射)に関わる。
▶午前12
頻回の嘔吐で生じやすいのはどれか。
- 血尿
- 低体温
- 体重増加
- アルカローシス
④ アルカローシス
頻回の嘔吐により大量の胃液(pH1~2の強酸性の胃酸)や水分が失われると、血液のアルカリ性度が上昇する代謝性アルカローシスや脱水が生じやすい。
▶午前13
関節や神経叢の周辺に限局して起こる感覚障害の原因はどれか。
- 脊髄障害
- 物理的圧迫
- 脳血管障害
- 糖尿病の合併症
② 物理的圧迫
末梢神経系が外部から物理的に圧迫されると、関節や神経叢の周辺に限局して麻痺等の感覚障害が生じる(橈骨神経麻痺・腓骨神経麻痺等)。
▶午前14
良性腫瘍と比較して悪性腫瘍でみられる特徴はどれか。
- 被膜がある。
- 遠隔転移する。
- 周囲組織に浸潤しない。
- 増殖速度が緩やかである。
② 遠隔転移する。
悪性腫瘍は良性腫瘍と比べて、増殖が速く、周囲の組織にしみ出すように広がり(浸潤)、最初に発生した臓器(原発部位)から血液やリンパを通じて離れた場所にも転移する特徴がある。
▶午前15
肝障害の指標となる血液生化学検査の項目はどれか。
- CRP
- 尿素窒素
- アミラーゼ
- ALT〈GPT〉
④ ALT〈GPT〉
肝機能の働きを調べる血液検査では、ALT〈GPT〉やAST〈GOT〉が主な項目として挙げられる。
×① CRP
炎症や感染症の状態を調べる検査項目である。
×② 尿素窒素
腎機能の状態を調べる検査項目である。
×③ アミラーゼ
膵機能などの状態を調べる検査項目である。
▶午前16
排便を促す目的のために浣腸液として使用されるのはどれか。
- バリウム
- ヒマシ油
- グリセリン
- エタノール
③ グリセリン
グリセリン浣腸は腸管の蠕動を促し、排便を促進させる。なお、直腸穿孔の危険性があるため、立位によるグリセリン浣腸は危険であり、左側臥位による5~6cm程度のチューブ挿入を実施する。
▶午前17
他の医薬品と区別して貯蔵し、鍵をかけた堅固な設備内に保管することが法律で定められているのはどれか。
- ヘパリン
- インスリン
- リドカイン
- フェンタニル
④ フェンタニル
麻酔や疼痛緩和に、注射剤、貼付剤として用いられるフェンタニルは、麻薬及び向精神薬取締法により規定され、麻薬診療施設内に設けた鍵をかけた堅固な設備内に保管しなければならない。
*第6編3章 2.2〕医療用麻薬 p270~271
▶午前18
面接時の質問方法でopen-ended question〈開かれた質問〉はどれか。
- 「頭痛はありますか」
- 「昨晩は眠れましたか」
- 「朝食は何を食べましたか」
- 「退院後はどのように過ごしたいですか」
④ 「退院後はどのように過ごしたいですか」
Open-ended question〈開かれた質問〉は、質問者があらかじめ知っている情報を確認する質問や、暗に方向付けることを避け、相手自身の言葉で語ってもらう質問の進め方をいう。①~③のように「はい」や「いいえ」、限られた項目から答えられる質問はclosed question〈閉じた質問〉という。
▶午前19
異常な呼吸音のうち高調性連続性副雑音はどれか。
- 笛のような音〈笛音〉
- いびきのような音〈類鼾音〉
- 耳元で髪をねじるような音〈捻髪音〉
- ストローで水に空気を吹き込むような音〈水泡音〉
① 笛のような音〈笛音〉
異常呼吸音(副雑音)のうち、笛音は高調性連続性副雑音で、気道の狭窄が疑われる。
×② いびきのような音〈類鼾音〉
類鼾音は低調性連続性副雑音であり、気道の狭窄や分泌物の貯留が疑われる。
×③ 耳元で髪をねじるような音〈捻髪音〉
捻髪音は細かい断続性副雑音であり、肺胞の伸展性の低下などが疑われる。
×④ ストローで水に空気を吹き込むような音〈水泡音〉
水泡音は粗い断続性副雑音であり、痰の貯留が疑われる。
▶午前20
患者をベッドから車椅子へ移乗介助するときの車椅子の配置を図に示す。
左片麻痺のある患者の介助で最も適切なのはどれか。

③
左片麻痺のある患者の車椅子への移乗時は、麻痺のない右側に車椅子を約15~30度の角度で近づけ、車椅子の外側の肘掛け部分に右手を置いて立ち上がり、右足を軸に体を回転して腰を下ろす。
▶午前21
経腸栄養剤の副作用〈有害事象〉はどれか。
- 咳嗽
- 脱毛
- 下痢
- 血尿
③ 下痢
経腸栄養法は、口からの食事が十分でない者に対して消化管機能を活用するもので、投与のルートやチューブの留置箇所により経鼻経管栄養法や胃瘻などがある。不適切な経腸栄養剤の浸透圧、投与量・速度、または栄養剤の細菌感染等により、下痢症状が生じることがある。
▶午前22
静脈内注射を行う際に、必ず希釈して用いる注射液はどれか。
- 5%ブドウ糖
- 15%塩化カリウム
- 0.9%塩化ナトリウム
- 7%炭酸水素ナトリウム
② 15%塩化カリウム
15%塩化カリウムの原液投与は、高カリウム血症による不整脈や心停止を起こす危険があり、必ず希釈して用いる。希釈には、血漿と浸透圧がほぼ等しい等張液である5%ブドウ糖液(①)や0.9%塩化ナトリウム(生理食塩水、③)、注射用蒸留水を用いる。
▶午前23
充塡された酸素ボンベの保管方法で正しいのはどれか。
- 横に倒して保管する。
- 保管場所は火気厳禁とする。
- バルブを開放して保管する。
- 日当たりの良い場所で保管する。
② 保管場所は火気厳禁とする。
酸素は燃焼を助ける性質が強いガスであり、酸素濃縮装置や液化酸素、酸素ボンベの保管場所は火気厳禁で、日当たりを避ける。
▶午前24
褥瘡発生の予測に用いるのはどれか。
- ブリストルスケール
- Borg〈ボルグ〉スケール
- Braden〈ブレーデン〉スケール
- グラスゴー・コーマ・スケール
③ Braden〈ブレーデン〉スケール
ブレーデンスケールは褥瘡発生の予測に用いるもので、「知覚の認知」「湿潤」「活動性」「可動性」「栄養状態」「摩擦とずれ」の6項目を評価項目とする。
×① ブリストルスケール
大便の性状を評価するスケールである。
×② Borg〈ボルグ〉スケール
主観的運動強度を評価するスケールである。
×④ グラスゴー・コーマ・スケール
意識レベルの評価をするスケールである。
▶午前25改題
令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査において、運動習慣のある女性の割合が最も高い年齢階級はどれか。
- 30~39歳
- 40~49歳
- 50~59歳
- 60~69歳
- 70歳以上
⑤ 70歳以上
令和5年(2023年)の運動習慣のある割合は男女ともに70歳以上が最も多い(男性46.5%・女性36.5%)。
*第3編1章 2.3〕身体活動・運動 p90~91
資料 厚生労働省「第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験、第107回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第107回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 保健師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 助産師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 医師国家試験に出る国民衛生の動向
▶ 薬剤師国家試験に出る国民衛生の動向