第110回看護師国家試験 午前必修問題
令和3年2月14日(日)に実施された第110回看護師国家試験について、午前問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第110回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午前 必修問題
▶午前1改題
令和5年(2023年)の日本の総人口に最も近いのはどれか。
- 1億人
- 1億400万人
- 1億2,400万人
- 1億4,400万人
③ 1億2,400万人
令和5年(2023年)の総人口は1億2435万人で減少傾向が続いており、将来推計人口(令和5年推計)によると、令和52年(2070年)には8700万人で1億人を切るとされる。
*第2編1章 1.人口の動向 p41~44
▶午前2改題
令和2年(2020年)の患者調査における外来受療率(人口10万対)で最も多い傷病はどれか。
- 新生物〈腫瘍〉
- 呼吸器系の疾患
- 消化器系の疾患
- 内分泌、栄養及び代謝疾患
③ 消化器系の疾患
受療率とは人口10万人に対する推計患者数をいい、令和2年(2020年)の患者調査によると、入院では「精神及び行動の障害」(188)が、外来では「消化器系の疾患」(1007)が最も多い。
*第2編4章 2.2〕受療率 p77~78
▶午前3
大気汚染物質はどれか。
- フロン
- カドミウム
- メチル水銀
- 微小粒子状物質(PM2.5)
④ 微小粒子状物質(PM2.5)
微小粒子状物質(PM2.5)は、浮遊粒子状物質(SPM)の中でも特に粒径が小さい有害大気汚染物質で、呼吸器や循環器への影響が懸念され、環境基本法に基づく大気汚染に係る環境基準が設定されている。
×① フロン
フロンはフッ素と炭素の化合物の総称で、人体への影響は少ないが温室効果ガスとして地球温暖化の原因となっている。
×② カドミウム
カドミウムは自然環境中に広く存在する元素で、四大公害病の一つであるイタイイタイ病の原因となった。
×③ メチル水銀
メチル水銀は有機水銀の一つで、四大公害病の一つである水俣病の原因となった。
*第9編2章 1.大気汚染対策の動向 p320~324
▶午前4
要介護認定の申請先はどれか。
- 市町村
- 診療所
- 都道府県
- 介護保険審査会
① 市町村
市町村は被保険者からの申請を受けて調査を行い、市町村に設置された介護認定審査会が要介護状態の区分の審査・判定を行う。
*第5編1章 1.3〕保険者 p220
▶午前5
看護師免許の付与における欠格事由として保健師助産師看護師法に規定されているのはどれか。
- 20歳未満の者
- 海外に居住している者
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 伝染性の疾病にかかっている者
③ 罰金以上の刑に処せられた者
保健師助産師看護師法に基づき、看護師免許付与における相対的欠格事由として以下を定め、いずれかに該当した場合は免許を与えないことがあり、看護師が該当した場合は厚生労働大臣が免許の取消し等の処分をすることができる。
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 医事に関し犯罪または不正の行為のあった者
- 心身の障害により看護師の業務を適正に行うことができない者
- 麻薬、大麻またはあへんの中毒者
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午前6
出生時からみられ、生後4か月ころに消失する反射はどれか。
- 手掌把握反射
- 足底把握反射
- パラシュート反射
- Babinski〈バビンスキー〉反射
① 手掌把握反射
手掌把握反射は手に刺激を与えた際に握ろうとする現象をいい、出生後すぐの新生児にみられる原始反射で、生後3~4か月ころには消失する。
×② 足底把握反射
足底把握反射は原始反射の一つで、足の親指の付け根(拇指球)を圧迫すると足の指を含めて内側に曲がる現象をいい、生後10か月ころには消失する。
×③ パラシュート反射
パラシュート反射は姿勢反射の一つで、ふいに前方へ頭を傾けた際に手を前に出す現象をいい、生後半年ころから見られ、生涯続く。
×④ Babinski〈バビンスキー〉反射
バビンスキー反射は原始反射の一つで、足底の外縁に刺激を与えた際に母指が甲側に曲がる現象をいい、出生後すぐから反応が見られ、1歳ころには消失する。
▶午前7改題
令和4年(2022年)の学校保健統計調査における学童期の異常被患率で最も高いのはどれか。
- 高血圧
- 摂食障害
- 心電図異常
- 裸眼視力1.0未満の者
④ 裸眼視力1.0未満の者
令和4年(2022年)の学校における主な疾病・異常の状況をみると、幼稚園・小学校・中学校・高等学校のいずれも「裸眼視力1.0未満の者」が最も高く、次いで改善傾向にある「むし歯(う歯)」となっている。
*第10編 4.学齢期の健康状況 p347~349
▶午前8
ハヴィガースト, R. J.が提唱する老年期の発達課題はどれか。
- 子どもを育てる。
- 退職と収入の減少に適応する。
- 社会的責任をともなう行動を望んでなしとげる。
- 男性あるいは女性としての社会的役割を獲得する。
② 退職と収入の減少に適応する。
ハヴィガーストは成長段階ごとに果たすべき発達課題を示しており、老年期(60歳以降)は体力と健康の衰退・退職と収入の減少・配偶者の死などに適応する時期である。
×① 子どもを育てる。
壮年期(20代~30代前半)の発達課題であり、職業生活の開始、配偶者の選択、子どもの養育などが挙げられる。
×③ 社会的責任をともなう行動を望んでなしとげる。
中年期(30代後半~60歳)の発達課題であり、社会的責任の達成、経済力の確保・維持、老親の世話・適応などが挙げられる。
×④ 男性あるいは女性としての社会的役割を獲得する。
青年期(12~18歳)の発達課題であり、男性・女性としての社会的役割の獲得、親からの心理的離乳、身体的変化への適応などが挙げられる。
▶午前9改題
令和4年(2022年)の国民生活基礎調査で65歳以上の者のいる世帯の割合に最も近いのはどれか。
- 10%
- 30%
- 50%
- 70%
③ 50%
令和4年(2022年)の65歳以上の者のいる世帯の割合は50.6%と、総世帯数の半数近くを占めている。
*第2編1章 2.世帯の動向 p44~48
▶午前10
地域保健法に基づき設置されているのはどれか。
- 診療所
- 保健所
- 地域包括支援センター
- 訪問看護ステーション
② 保健所
保健所は地域保健法に基づき、地域における公衆衛生の向上と増進を図るため一般的に都道府県が設置する。
×① 診療所
診療所は医療法に基づき設置され、患者を入院させるための施設を有しないもの、または19人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
×③ 地域包括支援センター
地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村に設置され、住民の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行う。
×④ 訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、介護保険法に基づき都道府県知事から事業者の指定を受けて設置され、医師の訪問看護指示書の下に訪問看護サービスを提供する。
*第1編2章 2.衛生行政の組織 p22~24
▶午前11
後頭葉にあるのはどれか。
- 嗅覚野
- 視覚野
- 聴覚野
- 体性感覚野
② 視覚野
視覚野は大脳皮質の後頭葉にあり、視覚に直接関係する領域である。
▶午前12
胃から分泌される消化管ホルモンはどれか。
- ガストリン
- セクレチン
- 胃抑制ペプチド
- コレシストキニン
① ガストリン
ガストリンは、主に胃の幽門部の粘膜で産出されるホルモンで、胃酸の分泌を促す。
▶午前13
キューブラー・ロス, E.による死にゆく人の心理過程で第5段階はどれか。
- 怒り
- 否認
- 死の受容
- 取り引き
③ 死の受容
キューブラー・ロスは、死にゆく人の心理の変化を、「否認と孤立」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階で捉え、自己防衛的態度から死の受容までのモデルを示した。
▶午前14
肝性脳症の直接的原因はどれか。
- 尿酸
- アンモニア
- グルコース
- ビリルビン
② アンモニア
肝性脳症は、重度の肝疾患により肝臓の有害物質(アンモニア等)の解毒・分解機能が低下し、血液中に蓄積された有害物質が脳に達して起こる脳機能の低下をいう。
▶午前15
喀血の特徴はどれか。
- 酸性である。
- 泡沫状である。
- 食物残渣を含む。
- コーヒー残渣様である。
② 泡沫状である。
喀血は、主に気道や肺胞などの呼吸器の出血により、咳とともに血液が吐き出されるもので、泡沫状の喀痰や鮮紅色の血液を特徴とする。①、③、④は食道・胃・十二指腸等の出血による吐血の特徴である。
▶午前16
緩和ケアの説明で適切なのはどれか。
- 入院が原則である。
- 家族もケアの対象である。
- 創の治癒を目的としている。
- 患者の意識が混濁した時点から開始する。
② 家族もケアの対象である。
緩和ケアでは、患者とその家族に対して、終末期だけでなくがんと診断された時から、がん治療と同時に、多職種が連携して身体的症状の緩和や精神心理的な問題を含めた総合的なケアを行うことで、QOL(生活の質)の改善・向上を目指す。
*第3編4章 1.がん対策 p149~152
▶午前17
カルシウム拮抗薬の血中濃度を上げる食品はどれか。
- 牛乳
- 納豆
- ブロッコリー
- グレープフルーツ
④ グレープフルーツ
カルシウム拮抗薬は血管を拡張し、血圧を下げる降圧薬である。グレープフルーツに含まれる成分はカルシウム拮抗薬を代謝する酵素の働きを弱めるため、薬物服用時の摂取により血中濃度が高まり、血圧の異常な低下などの相互作用が起きることがある。
▶午前18
患者の主観的情報はどれか。
- 苦悶様の顔貌
- 息苦しさの訴え
- 飲水量
- 脈拍数
② 息苦しさの訴え
主観的情報は患者の話や訴えから得られた情報で、観察や測定で得られる客観的情報と区別して、患者の状態を把握する。息苦しさの訴えは主観的情報から評価される呼吸困難の症状である。
▶午前19
健康な成人における1日の平均尿量はどれか。
- 100mL
- 500mL
- 1,500mL
- 2,500mL
③ 1,500mL
成人の1日平均尿量は1,000mL~1,500mLとされる。なお、100mL未満を無尿、400mL未満を乏尿という。
▶午前20
足浴に使用する湯の温度で最も適切なのはどれか。
- 26〜28℃
- 32〜34℃
- 38〜40℃
- 44〜46℃
③ 38〜40℃
足浴に用いる湯の適温は体温より少し高い38〜40℃程度で、全身浴と比べて心臓への負担が少なく、血行や睡眠の促進効果が認められる。
▶午前21
感染予防のための手指衛生で正しいのはどれか。
- 石けんは十分に泡立てる。
- 洗面器に溜めた水で洗う。
- 水分を拭きとるタオルを共用にする。
- 塗布したアルコール消毒液は紙で拭き取る。
① 石けんは十分に泡立てる。
感染源の有無にかかわらず、血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜を介する微生物の伝播リスクを減らすために、すべての患者に対して標準的な感染予防策(スタンダードプリコーション)を行う。そのうち手洗い(手指衛生)は、普通石けん(非抗菌性)と流水による。
*第4編1章 3.11〕院内感染対策 p180~181
▶午前22
経鼻胃管の先端が胃内に留置されていることを確認する方法で正しいのはどれか。
- 腹部を打診する。
- 肺音の聴取を行う。
- 胃管に水を注入する。
- 胃管からの吸引物が胃内容物であることを確認する。
④ 胃管からの吸引物が胃内容物であることを確認する。
経鼻胃管による栄養注入などを実施する際、先端が胃内にない場合、誤嚥等の事故につながるおそれがある。注入前に胃内容物を吸引し、胃液等を確認することで、胃内に胃管の先端が留置されていることを確認する必要がある。
▶午前23
輸液ポンプを使用する目的はどれか。
- 感染の防止
- 薬液の温度管理
- 薬物の効果判定
- 薬液の注入速度の調整
④ 薬液の注入速度の調整
輸液ポンプは、輸液や薬剤を一定の速度・正確な量で投与するための医療機器で、輸液の流量と予定量を設定する。
▶午前24
1回の鼻腔内吸引時間の目安で適切なのはどれか。
- 10〜15秒
- 20〜25秒
- 30〜35秒
- 40〜45秒
① 10〜15秒
鼻腔内吸引は、吸引カテーテルを用いて鼻腔内の喀痰を体外に吸い出すものである。長時間の吸引は低酸素血症をきたすおそれがあるため、1回の吸引時間は10~15秒を目安し、できるだけ短時間とする。
▶午前25
成人の心肺蘇生時の胸骨圧迫の深さの目安はどれか。
- 2cm
- 5cm
- 8cm
- 11cm
② 5cm
一次救命処置(BLS)において、呼吸がない場合または死戦期呼吸の場合、胸骨圧迫30回(約5cm沈み込む強さ、100~120回/分の速さ)と人工呼吸2回の組み合わせによる処置を行う。
資料 厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験、第110回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第110回看護師国家試験
▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
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