第106回看護師国家試験 午前必修問題
平成29年2月19日(日)に実施された第106回看護師国家試験について、午前問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第106回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午前 必修問題
▶午前1改題
令和4年(2022年)の国民生活基礎調査による有訴者率(人口千対)で正しいのはどれか。
- 6.5
- 76.5
- 276.5
- 476.5
③ 276.5
令和4年(2022年)の病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)は、人口千人当たり276.5(男性246.7・女性304.2)であり、症状別にみると男女ともに腰痛が最も高い。
*第2編4章 1.1〕有訴者の状況 p74
▶午前2改題
令和4年(2022年)の感染症発生動向調査による年間の性感染症〈STD〉報告数で最も多いのはどれか。
- 性器クラミジア感染症
- 尖圭コンジローマ
- 性器ヘルペス
- 淋菌感染症
① 性器クラミジア感染症
令和4年(2022年)では、性器クラミジア感染症が30,136人と最も多く、次いで淋菌感染症9,993人、性器ヘルペスウイルス感染症8,705人、尖圭コンジローマ5,979人の順となっている。
*第3編3章 3.6〕性感染症 p138~139
▶午前3改題
令和3年(2021年)の国民医療費はどれか。
- 約450億円
- 約4,500億円
- 約4兆5000億円
- 約45兆円
④ 約45兆円
国民医療費は医療機関等における傷病の治療に要する費用を推計したものであり、令和3年(2021年)は45兆359億円、人口1人当たり35.9万円である。
*第4編2章 6.国民医療費 p216~219
▶午前4
介護保険法で第1号被保険者と規定されているのはどれか。
- 45歳以上
- 55歳以上
- 65歳以上
- 75歳以上
③ 65歳以上
介護保険の第1号被保険者は65歳以上の者、第2号被保険者は40~64歳の医療保険加入者である。
*第5編1章 1.介護保険制度の概要 p220~221
▶午前5
看護師の業務従事者届の届出の間隔として規定されているのはどれか。
- 1年
- 2年
- 5年
- 10年
② 2年
保健師助産師看護師法に基づき、業務に従事する看護師は、2年ごとに就業地の都道府県知事に氏名や住所などを届け出なければならない。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午前6
標準的な発育をしている乳児の体重が出生時の体重の約2倍になる時期はどれか。
- 生後3か月
- 生後6か月
- 生後9か月
- 生後12か月
① 生後3か月
出生時の平均体重は約3kgで、3か月ごろには約2倍、1年ごろには約3倍となる。なお、出生時の平均身長は約50cmで、1年ごろには約1.5倍、4年ごろには約2倍となる。
*第2編2章 2.出生 p51~55
▶午前7
第二次性徴による身体の変化で正しいのはどれか。
- 精通
- 体重減少
- 内臓脂肪の増加
- 第1大臼歯の萌出
① 精通
思春期に起こる第二次性徴では、男子で精通(初めての射精)がみられ、中学3年生ころには半数以上が経験するとされる。
▶午前8
老年期の身体的な特徴で正しいのはどれか。
- 尿量の増加
- 味覚の感度の向上
- 体温調節能の低下
- 外来抗原に対する抗体産生の亢進
③ 体温調節能の低下
老化により暑さを感じて皮膚血液量や発汗量を増やす自律性体温調節反応が低下するため、熱放散能力が低下し、熱中症を引き起こしやすくなる。
*第9編2章 4.1〕熱中症対策 p329
▶午前9
医療法で「地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わせる能力を有すること」と定められているのはどれか。
- 助産所
- 診療所
- 特定機能病院
- 地域医療支援病院
④ 地域医療支援病院
地域医療支援病院は、地域医療の確保を図る病院としての構造設備を有する病院として都道府県知事が承認する。
×① 助産所
助産所は、助産師がその業務(病院又は診療所において行うものを除く)を行う場所をいう。なお、妊婦、産婦、またはじょく婦10人以上の入所施設を有してはならない。
×② 診療所
診療所は、医師・歯科医師が医業・歯科医業を行う場所で、患者を入院させるための施設を有しないもの(無床診療所)または19人以下の患者を入院させるための施設を有するもの(有床診療所)をいう。
×③ 特定機能病院
特定機能病院は、高度の医療の提供や研修を実施する能力を有する病院として、厚生労働大臣が承認する。
*第4編1章 5.医療施設 p199~204
▶午前11
大動脈に血液を送り出す部位はどれか。
- 左心室
- 右心室
- 左心房
- 右心房
① 左心室
左心室は大動脈を通じて全身に血液を送り、大静脈を通じて右心房に至る(体循環)。右心房から右心室に送り出された血液は、肺動脈を通じて肺に送られ、肺静脈を通じて左心房に至る(肺循環)。
▶午前12
喀血が起こる出血部位で正しいのはどれか。
- 頭蓋内
- 気道
- 食道
- 胆道
② 気道
喀血は咳とともに血液が吐き出されるもので、主に気道や肺胞などの呼吸器の出血による。食道や胃、十二指腸等の出血による吐血とは区別される。
▶午前13
胸痛を訴えるのはどれか。
- 髄膜炎
- 腎結石
- 急性心筋梗塞
- Ménière〈メニエール〉病
③ 急性心筋梗塞
急性心筋梗塞は虚血性心疾患の一つであり、急激に冠動脈が完全に詰まることで血流が阻害される。主な症状としては、突然胸が締め付けられる強い痛みが挙げられる。
▶午前14
小脳失調でみられるのはどれか。
- 下肢の麻痺が認められる。
- 姿勢保持が困難になる。
- 血圧が不安定になる。
- 体がこわばる。
② 姿勢保持が困難になる。
小脳は姿勢や運動の制御など、運動調節機能をつかさどっている。そのため、小脳の機能障害である小脳失調では、姿勢保持の困難(体幹バランスの崩れ)や運動失調がみられる。
▶午前16
目的とする効果が安定して発現するまでに最も時間がかかる薬はどれか。
- 睡眠薬
- 鎮痛薬
- 抗うつ薬
- 抗血栓薬
③ 抗うつ薬
うつ病に対する抗うつ薬は、効果が発現したと評価されるまでに、薬の種類、個人差はあるものの数週間の長期間を要する。また、うつ病の改善後も再発を防ぐために投薬を継続する必要がある。
▶午前17
医薬品表示を別に示す。

劇薬の表示で正しいのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
④ ④
医薬品医療機器等法では、厚生労働大臣が指定した毒薬・劇薬について、貯蔵・陳列時の施錠などの取り扱いを定めている。劇薬は容器または被包に、白地・赤枠・赤字で「劇」の文字を記載しなければならない。なお、毒薬は黒地・白枠・白字で「毒」の文字を記載する。
*第6編1章 4.医薬品等の承認・許可制度 p249~250
▶午前18
自力での摂取が困難な臥床患者の食事介助で適切なのはどれか。
- 水分摂取の介助を控える。
- 仰臥位の姿勢を保持するよう介助する。
- 食事内容が見える位置に食器を配置する。
- 患者の下顎が上がるよう上方からスプーンで介助する。
③ 食事内容が見える位置に食器を配置する。
摂食・嚥下の第一段階である認知期をサポートするため、患者に食事内容を見えるように配置することが適している。
×① 水分摂取の介助を控える。
自力での摂取が困難であるため、嚥下しやすいように適度な水分摂取の介助は必要である。
×② 仰臥位の姿勢を保持するよう介助する。
胃食道逆流を防止するために、半坐位(ファウラー位)など上半身を上げた姿勢で介助する。
×④ 患者の下顎が上がるよう上方からスプーンで介助する。
顎を上げる頸部後屈では、食物が気管に入る誤嚥が生じやすいため、顎を下げる頸部前屈が望ましい。
▶午前19
足浴の効果で最も期待されるのはどれか。
- 食欲増進
- 睡眠の促進
- 筋緊張の亢進
- 皮膚温の低下
② 睡眠の促進
足浴は全身浴と比べて心臓への負担が少なく、血行や睡眠の促進効果が認められる。湯の適温は体温より少し高い38〜40℃程度とされる。
▶午前22
点滴静脈内注射中の刺入部位の腫脹を確認したときに、最初に実施するのはどれか。
- 体位を変える。
- 注入を中止する。
- 刺入部位を挙上する。
- 周囲のマッサージを行う。
② 注入を中止する。
点滴静脈内注射の際に、刺入部位の腫脹や疼痛、発赤などが生じた場合、血管外漏出の初期症状である。周辺組織の炎症や壊死につながり、重症化するおそれもあるため、直ちに注入を中止する必要がある。
▶午前20
療養施設、社会福祉施設等が集合して設置されている地域の昼間の騒音について、環境基本法に基づく環境基準で定められているのはどれか。
- 20dB以下
- 50dB以下
- 80dB以下
- 110dB以下
② 50dB以下
環境基本法に基づき、地域の類型、時間の区分ごとに騒音についての環境基準が定められており、療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域では、昼間が50db以下、夜間が40db以下と設定されている。
*第9編2章 3.騒音・振動・悪臭対策の動向 p327~329
▶午前21
オートクレーブによる滅菌法はどれか。
- 乾熱滅菌
- プラズマ滅菌
- 高圧蒸気滅菌
- 酸化エチレンガス滅菌
③ 高圧蒸気滅菌
オートクレーブを用いた滅菌を高圧蒸気滅菌といい、乾熱滅菌等に比べて低温・短時間での滅菌ができる。
▶午前23
成人患者の気管内の一時的吸引における吸引圧で正しいのはどれか。
- -100〜-150mmHg
- -200〜-250mmHg
- -300〜-350mmHg
- -400〜-450mmHg
① -100〜-150mmHg
気管内吸引では、気管の粘膜を傷つけないように吸引圧は-100〜-150mmHgに調整し、低酸素血症や動脈血酸素飽和度〈SaO2〉の低下をきたさないように挿入開始から終了までを15秒以内にする。
▶午前24
包帯法の原則として適切なのはどれか。
- 患部を強く圧迫する。
- 屈伸可能な関節は固定する。
- 中枢から末梢に向けて巻く。
- 使用部位によって包帯を使い分ける。
④ 使用部位によって包帯を使い分ける。
使用部位や創部の程度、用途に応じて、伸縮包帯や弾性包帯などを使い分ける。
×① 患部を強く圧迫する。
血流を阻害しないように患部は強く圧迫しない。
×② 屈伸可能な関節は固定する。
関節の動きを制限することで拘縮が生じないよう、屈伸可能な関節は固定しない。
×③ 中枢から末梢に向けて巻く。
静脈の還流を妨げないよう末梢から中枢に向かって巻く。
▶午前25
経腟分娩の正常な経過で最初に起こるのはどれか。
- 発露
- 排臨
- 胎盤の娩出
- 児頭の娩出
- 子宮口の全開大
⑤ 子宮口の全開大
分娩は第1期から第4期の経過に分かれ、第1期は陣痛開始から子宮口全開大まで、第2期は子宮口全開大から胎児娩出まで(発露、排臨含む)、第3期は胎児の娩出から胎盤の娩出まで、第4期は分娩後2時間をいう。
資料 厚生労働省「第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験、第106回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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