第106回看護師国家試験 午後必修問題
平成29年2月19日(日)に実施された第106回看護師国家試験について、午後問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第106回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 必修問題
▶午後1改題
日本の令和5年(2023年)の死亡数はどれか。
- 約58万人
- 約98万人
- 約158万人
- 約198万人
③ 約158万人
令和5年(2023年)の死亡数は157.6万人である。なお、出生数は72.7万人(過去最低)であり、その差である自然増減数はマイナス84.9万人となっている。
*第2編2章 3.1〕死亡の動向 p55~56
▶午後2改題
令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査による40歳代男性の肥満者の割合に最も近いのはどれか。
- 15%
- 35%
- 55%
- 75%
② 35%
令和5年(2023年)の男性の肥満者(BMI≧25.0)の割合は、60歳代が35.0%と最も多く、次いで50歳代が34.8%、40歳代が34.3%となっている。
*第3編1章 1.2〕(4)肥満とやせ p82
▶午後3
光化学オキシダントの原因物質はどれか。
- ヒ素
- フロン
- 窒素酸化物
- ホルムアルデヒド
③ 窒素酸化物
光化学オキシダントは、窒素酸化物(NOx)と揮発性有機化合物(VOC)とが太陽光の作用により反応(光化学反応)して二次的に生成されるオゾンなどの強い酸化力を持った物質で、光化学スモッグの原因となり、粘膜への刺激や呼吸器への悪影響など人間の健康に悪影響を及ぼす。
*第9編2章 1.1〕(6)光化学オキシダント p321
▶午後4
後期高齢者医療制度が定められているのはどれか。
- 医療法
- 健康保険法
- 高齢社会対策基本法
- 高齢者の医療の確保に関する法律
④ 高齢者の医療の確保に関する法律
後期高齢者医療制度は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき平成20年度に開始した。被保険者は原則75歳以上の後期高齢者で、医療給付の自己負担は1割(一定以上の所得者2割、現役並み所得者3割)である。
*第4編2章 3.3〕後期高齢者医療制度 p211~212
▶午後5
国際看護師協会〈ICN〉による看護師の倫理綱領における看護師の基本的責任はどれか。
- 疾病の回復
- 医師の補助
- 苦痛の緩和
- 薬剤の投与
③ 苦痛の緩和
同綱領では、看護師の基本的な看護の責任として、「健康の増進」「疾病の予防」「健康の回復」「苦痛の緩和と尊厳ある死の推奨」を挙げている。
▶午後6
肺サーファクタントの分泌によって胎児の肺機能が成熟する時期はどれか。
- 在胎10週ころ
- 在胎18週ころ
- 在胎26週ころ
- 在胎34週ころ
④ 在胎34週ころ
在胎26週ころに肺胞などの肺構造が完成し、在胎34週ころに肺表面活性物質(肺サーファクタント)が十分に分泌されることで、胎児の肺機能が成熟する。なお、妊娠34週未満の早産児は肺サーファクタントの生成不足により呼吸窮迫症候群〈RDS〉が起こりやすい。
▶午後7
入院患者の与薬時に誤認を防止するために確認するのは患者の名前とどれか。
- 診察券
- お薬手帳
- 健康保険証
- ネームバンド
④ ネームバンド
患者の誤認を防止するため、名前(フルネーム)の聞き取りや、入院時から付ける患者識別バンド(ネームバンド)により、本人の確認・照合を行う。
▶午後8
基礎代謝量が最も多い時期はどれか。
- 青年期
- 壮年期
- 向老期
- 老年期
① 青年期
日本人の食事摂取基準(2020年版)で推定された基礎代謝量は、男性は15~17歳(1,610kcal/日)、女性は12~14歳(1,410 kcal/日)で最も高く、青年期以降は加齢に伴って低下していく。
▶午後9
介護老人保健施設の設置目的が定められているのはどれか。
- 介護保険法
- 健康保険法
- 地域保健法
- 老人福祉法
① 介護保険法
介護保険法に定める施設サービスの一つである介護老人保健施設は、症状が安定期にある要介護者に対し、居宅での生活が営めるよう支援するため、看護、医学的管理の下における必要な医療や日常生活上の世話を行う。
*第5編1章 3.3〕施設サービス p224~225
▶午後10
病床数300床以上の医療機関で活動する感染制御チームで適切なのはどれか。
- 医師で構成される。
- 各病棟に配置される。
- アウトブレイク時に結成される。
- 感染症に関するサーベイランスを行う。
④ 感染症に関するサーベイランスを行う。
医療機関は平時から感染制御の組織化を行うこととされ、300床以上の病床を有する医療機関では多職種からなる感染制御チームを設置し、定期的な病棟ラウンドや感染症サーベイランス(発生動向調査)を行うことが望ましいとされる。
*第4編1章 3.11〕院内感染対策 p180~181
▶午後11
神経伝達物質はどれか。
- アルブミン
- フィブリン
- アセチルコリン
- エリスロポエチン
③ アセチルコリン
アセチルコリンは副交感神経や運動神経に働く神経伝達物質である。
▶午後12
キューブラー・ロス, E.による死にゆく人の心理過程で第2段階はどれか。
- 死ぬことへの諦め
- 延命のための取り引き
- 死を認めようとしない否認
- 死ななければならないことへの怒り
④ 死ななければならないことへの怒り
キューブラー・ロスは、死にゆく人の心理の変化を、「否認と孤立」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の5段階で捉え、自己防衛的態度から死の受容までのモデルを示した。
▶午後13
下血がみられる疾患はどれか。
- 肝囊胞
- 大腸癌
- 卵巣癌
- 腎盂腎炎
② 大腸癌
下血は、出血した臓器の血液成分が肛門から排泄されることをいう。大腸癌では癌の進行に伴い、下血や血便などの症状がみられ、大腸癌検診(便潜血検査等)により早期発見が図られている。
▶午後14
無尿の定義となる1日の尿量はどれか。
- 0mL
- 100mL未満
- 400mL未満
- 700mL未満
② 100mL未満
成人の1日平均尿量は1,000mL~1,500mLで、②100mL未満は無尿、③400mL未満は乏尿とされる。
▶午後15
飛沫感染するのはどれか。
- 疥癬
- コレラ
- A型肝炎
- インフルエンザ
④ インフルエンザ
インフルエンザの主な感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染である。
×① 疥癬
疥癬はヒゼンダニを介したヒトとヒトとの接触感染が主である。
×② コレラ
コレラは汚染された飲食物の摂取による経口感染が主である。
×③ A型肝炎
A型肝炎は汚染された食品や水などを介した経口感染が主である。
*第3編3章 1.感染症対策 p123~127
▶午後16
水痘の症状はどれか。
- 耳下腺の腫脹
- 両頰部のびまん性紅斑
- 水疱へと進行する紅斑
- 解熱前後の斑状丘疹性発疹
③ 水疱へと進行する紅斑
水痘は水痘帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる感染症で、典型的な症例では、皮膚の表面が赤くなる紅斑から発疹が始まり、水疱、膿疱を経て痂皮(かさぶた)化して治癒するとされている。
*第3編3章 1.感染症対策 p123~127
▶午後17
血漿と等張のブドウ糖溶液の濃度はどれか。
- 5%
- 10%
- 20%
- 50%
① 5%
5%ブドウ糖液や生理食塩液(0.9%塩化ナトリウム)は、血漿と浸透圧がほぼ等しい等張液である。
▶午後18
ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉で「刺激しても覚醒せず痛み刺激に対して払いのけるような動作をする」と定義されるのはどれか。
- Ⅰ-3
- Ⅱ-20
- Ⅲ-100
- Ⅲ-300
③ Ⅲ-100
意識レベルを評価するジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉では、覚醒の程度に応じて、意識清明の0、刺激しなくても覚醒している状態であるⅠ桁(1・2・3)、刺激すると覚醒する状態であるⅡ桁(10・20・30)、刺激しても覚醒しない状態であるⅢ桁(100・200・300)に分類している。Ⅲ- 100は痛み刺激に対して払いのける動作をする、Ⅲ- 300は痛み刺激にも反応しない。
▶午後19
グリセリン浣腸を実施する際、腸管孔の危険性が最も高い体位はどれか。
- 立位
- 仰臥位
- 腹臥位
- 左側臥位
① 立位
グリセリン浣腸は腸管の蠕動を促し、排泄を促進させる。直腸穿孔の危険性があるため、立位による浣腸は危険であり、左側臥位による5~6cm程度のチューブ挿入を実施する。
▶午後20
体位を図に示す。
Sims〈シムス〉位はどれか。

①
Sims〈シムス〉位は、特に妊娠中の安楽体位として用いられる。②は左側臥位、③は半側臥位、④は腹臥位である。
▶午後21
Kaup〈カウプ〉指数の計算式はどれか。
- 体重(g)÷身長(cm)2×10
- 体重(g)÷身長(cm)3×104
- 体重(kg)÷身長(m)2
- (実測体重(kg)-標準体重(kg))÷標準体重(kg)×100
① 体重(g)÷身長(cm)2×10
肥満度を評価する指数として、主に乳幼児に用いるカウプ指数(①)、学童期に用いるローレル指数(②)、成人に用いるBMI(③)がある。また、④は児童・生徒の肥満・痩身傾向児を判定する計算式である。
▶午後22
針刺し事故によって感染するのはどれか。
- RSウイルス
- B型肝炎ウイルス
- ヘルペスウイルス
- サイトメガロウイルス
② B型肝炎ウイルス
B型肝炎ウイルスの感染経路としては血液感染、母子感染(垂直感染)、性行為感染があり、血液感染として医療現場での針刺し事故の可能性も残される。
*第3編3章 3.3〕ウイルス性肝炎 p132~134
▶午後23
氷枕の作り方で適切なのはどれか。
- 氷を隙間なく入れる。
- 濡れたタオルで覆う。
- 内部の空気は残しておく。
- 水漏れがないことを確認する。
④ 水漏れがないことを確認する。
氷枕は冷罨法で用いられ、局所の炎症の抑制や解熱などの効果がある。作成にあたり、①氷は半分程度にする、②乾いたタオルで巻く、③内部の空気は抜く、④水漏れがないことを確認する。
▶午後24
一次救命処置時の成人への胸骨圧迫の深さで適切なのはどれか。
- 2〜3cm
- 5〜6cm
- 8〜9cm
- 11〜12cm
② 5〜6cm
一次救命処置(BLS)における心肺蘇生法では、呼吸を観察し、呼吸がない場合または死戦期呼吸の場合、胸骨圧迫30回(約5cm沈み込む強さ、100~120回/分の速さ)と人工呼吸2回の組み合わせによる処置を行う。なお、小児の場合は胸の厚さの3分の1が沈む強さとされる。
▶午後25
災害時に最も優先して治療を行うのはどれか。
- 脱臼
- 気道熱傷
- 足関節捻挫
- 過換気症候群
② 気道熱傷
トリアージ(災害時等の治療優先度の決定)の際にはトリアージタグ(識別票)を利用し、傷病者の緊急度に応じて、優先順に赤(Ⅰ:重症群)、黄(Ⅱ:中等症群)、緑(Ⅲ:軽症群)、黒(0:死亡群)と分類する。気道熱傷は高温の煙や水蒸気、有毒ガスの吸入により生じる呼吸器系障害の総称で、選択肢のうち最も優先度が高く、赤に分類される。
資料 厚生労働省「第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験、第106回看護師国家試験の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
▼第106回看護師国家試験
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