第103回看護師国家試験 午後必修問題
平成26年2月16日(日)に実施された第103回看護師国家試験について、午後問題のうち必修問題の正答と解説を示します。
「国民衛生の動向2024/2025」で内容を解説している問題に関しては、その参照章・ページを示しているので、同書を併用しながらの利用をおすすめします。
▼第103回看護師国家試験
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厚生の指標増刊
国民衛生の動向 2024/2025
発売日:2024.8.27
定価:2,970円(税込)
412頁・B5判
雑誌コード:03854-08
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▶ 看護師国家試験に出る国民衛生の動向
午後 必修問題
▶午後1改題
日本の令和5年(2023年)における主要死因別にみた死亡率が最も高いのはどれか。
- 肺炎
- 心疾患
- 悪性新生物〈腫瘍〉
- 脳血管疾患
③ 悪性新生物〈腫瘍〉
令和5年(2023年)の死因順位は、1位が悪性新生物〈腫瘍〉、2位が心疾患、3位が老衰、4位が脳血管疾患、5位が肺炎となっている。悪性新生物〈腫瘍〉は昭和56年(1981年)以降わが国の死亡の第一位であり、一貫して増加を続けている。
*第2編2章 3.3〕死因―悪性新生物〈腫瘍〉 p58~59
▶午後2
循環式浴槽の水質汚染によって発生するのはどれか。
- B型肝炎
- マラリア
- レジオネラ肺炎
- 後天性免疫不全症候群〈AIDS〉
③ レジオネラ肺炎
循環式浴槽は、浴槽の湯を濾過器を通して循環させるもので、換水や消毒、清掃を怠ることで、自然界に生息しているレジオネラ属菌の繁殖を招き、レジオネラ肺炎を引き起こす。
×① B型肝炎
B型肝炎は母子感染(垂直感染)や性行為感染、また、医療現場での針刺し事故などでも感染する可能性がある。
×② マラリア
マラリアは熱帯・亜熱帯地域に広く分布する感染症で、マハダラカによって媒介される。
×④ 後天性免疫不全症候群〈AIDS〉
後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、性行為感染、血液または血液製剤の輸注による感染、母子感染(垂直感染)が主な感染経路で、とくに性行為感染が多くを占める。
*第3編3章 1.感染症対策 p123~127
▶午後3
要介護認定の申請先はどれか。
- 都道府県
- 市町村
- 診療所
- 訪問看護ステーション
② 市町村
市町村は被保険者からの要介護認定の申請を受けて調査を行う。その後、市町村に設置された介護認定審査会が要介護状態の区分の審査・判定を行う。
*第5編1章 2.保険給付の手続き p221~222
▶午後4
医師の指示を受けて看護師が行うことのできる業務はどれか。
- 薬剤の処方
- 死亡の判定
- 静脈内注射
- 診断書の交付
③ 静脈内注射
看護師は傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする(保健師助産師看護師法5条)。診療の補助の範囲は厚生労働省通知により解釈がなされ、静脈内注射は医師の指示の下に行うことができる。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後5
思春期に分泌が増加するホルモンはどれか。
- グルカゴン
- オキシトシン
- カルシトニン
- アンドロゲン
④ アンドロゲン
思春期に、視床下部のGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の刺激により、下垂体から黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンが分泌されることで、男子ではアンドロゲン(テストステロン)が、女子ではエストロゲン(卵胞ホルモン)がつくられ、第二次性徴が発現・成熟する。
▶午後6改題
令和4年(2022年)の国民生活基礎調査で、単独世帯の占める割合はどれか。
- 12.9%
- 32.9%
- 52.9%
- 72.9%
② 32.9%
令和4年(2022年)の世帯構造をみると、単独世帯が32.9%、夫婦と未婚の子のみの世帯が25.8%、夫婦のみの世帯が24.5%、ひとり親と未婚の子のみの世帯が6.8%、三世代世帯が3.8%などとなっている。
*第2編1章 2.世帯の動向 p44~48
▶午後7
地域包括支援センターを設置できるのはどれか。
- 国
- 都道府県
- 市町村
- 健康保険組合
③ 市町村
介護保険法に定められる地域包括支援センターは、住民の健康の保持と生活の安定のために必要な援助を行うもので、市町村に設置される。
*第5編1章 7.地域包括ケアシステム p227
▶午後8
保健師助産師看護師法で規定されている看護師の義務はどれか。
- 看護研究
- 記録の保存
- 秘密の保持
- 関係機関との連携
③ 秘密の保持
看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない(保健師助産師看護師法42条2項)。
*第4編1章 4.4〕看護職員等 p193~197
▶午後9
正常な胃液のpHはどれか。
- pH1~2
- pH4~5
- pH7~8
- pH10~11
① pH1~2
胃液はpH1~2の強酸性で、頻回の嘔吐により大量の胃液が失われると、血液のアルカリ性度が上昇する代謝性アルカローシスや脱水が生じやすい。
▶午後10
死の三徴候に含まれるのはどれか。
- 呼名反応の消失
- 対光反射の消失
- 肛門緊張の消失
- 深部腱反射の消失
② 対光反射の消失
死の三徴候は、「呼吸停止」「心拍停止」「瞳孔散大・対光反射消失」である。
*第3編4章 6.臓器移植・組織移植 p161~162
▶午後11
心原性ショックで直ちに現れる徴候はどれか。
- 血圧の上昇
- 体温の上昇
- 尿量の増加
- 脈拍数の増加
④ 脈拍数の増加
心原性ショックは、不整脈や急性心筋梗塞等により心臓のポンプ機能が低下することで急性の循環不全等が起こる状態をいう。1回の心拍で送り出される血液量が減少することで血圧は低下し、脈拍は弱く速くなる(頻脈性不整脈)。
▶午後12
呼吸困難がある患者の安楽な体位はどれか。
- 起坐位
- 仰臥位
- 砕石位
- 骨盤高位
① 起坐位
起坐位では起坐呼吸により呼吸困難が軽減されるため、肺うっ血のため呼吸困難が生じている左心不全患者に多くみられる。
▶午後13
尿の回数が異常に多い状態を表すのはどれか。
- 頻尿
- 乏尿
- 尿閉
- 尿失禁
① 頻尿
頻尿は尿の回数が異常に多い状態をさし、回数が異常に少ない場合は希尿という。
▶午後14
ジゴキシンの主な有害な作用はどれか。
- 振戦
- 不整脈
- 聴覚障害
- 満月様顔貌〈ムーンフェイス〉
② 不整脈
ジゴキシン(ジギタリス)は、心筋細胞内のカルシウム濃度を高め、心筋の収縮力を増強する強心薬として、心不全の治療などに用いられる。副作用としては、不整脈や悪心などがある。
▶午後15
ウイルスが原因で発症するのはどれか。
- 血友病
- 鉄欠乏性貧血
- 再生不良性貧血
- 成人T細胞白血病〈ATL〉
④ 成人T細胞白血病〈ATL〉
成人T細胞白血病〈ATL〉は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型〈HTLV-1〉の感染により発症する可能性があり、発症には主に母乳を介した母子感染が関与している。
*第3編3章 3.11〕HTLV-1対策 p141
▶午後16
医療機関における麻薬の取り扱いについて正しいのはどれか。
- 麻薬と毒薬は一緒に保管する。
- 麻薬注射液は複数の患者に分割して用いる。
- 使用して残った麻薬注射液は病棟で廃棄する。
- 麻薬注射液の使用後のアンプルは麻薬管理責任者に返却する。
④ 麻薬注射液の使用後のアンプルは麻薬管理責任者に返却する。
麻薬注射液の使用後のアンプルは、残液がある場合および空であっても麻薬管理者に返納する。
×① 麻薬と毒薬は一緒に保管する。
麻薬は麻薬診療施設内の鍵をかけた堅固な設備に保管しなければならず、その設備は麻薬専用でなくてはならない。
×② 麻薬注射液は複数の患者に分割して用いる。
麻薬注射液は、管理面、衛生面に問題がある場合、同一患者や複数の患者に分割して使用することは控える。
×③ 使用して残った麻薬注射液は病棟で廃棄する。
使用して残った麻薬注射液は麻薬管理者に返納する。
▶午後17
主観的情報はどれか。
- 呼吸数
- 飲水量
- 苦悶様の顔貌
- 息苦しさの訴え
④ 息苦しさの訴え
主観的情報は患者の話や訴えから得られた情報で、観察や測定で得られる客観的情報と区別して、患者の状態を把握する。息苦しさの訴えは主観的情報から評価される呼吸困難の症状である。
▶午後18
右片麻痺患者の寝衣交換で適切なのはどれか。
- 左から脱がせ、右から着せる。
- 左から脱がせ、左から着せる。
- 右から脱がせ、左から着せる。
- 右から脱がせ、右から着せる。
① 左から脱がせ、右から着せる。
片麻痺等のある者や片腕の持続点滴患者の衣類の着脱介助時には脱健着患が原則で、脱ぐときは健側から、着るときは患側から行う。本問の場合は、麻痺のない左(健側)から脱がせ、麻痺のある右(患側)から着せる。
▶午後19
転倒・転落するリスクの高い薬はどれか。
- 去痰薬
- 降圧薬
- 抗菌薬
- 消化酵素薬
② 降圧薬
降圧薬による血圧の低下により、起立性低血圧などめまいやふらつき、意識障害が起こり、転倒・転落を起こすリスクが高まる。
▶午後20
鎖骨下静脈へ中心静脈カテーテルを挿入する際に起こりやすい合併症はどれか。
- 肺炎
- 気胸
- 嗄声
- 無気肺
② 気胸
気胸は、外傷等により胸膜が損傷し、胸腔内に空気が漏れ出て肺が縮むことをいう。中心静脈カテーテル挿入時に、中心静脈のそばにある肺を誤って穿刺することでも、気胸が起こるおそれがある。
▶午後21
点滴静脈内注射の血管外漏出で注意すべき初期症状はどれか。
- 疼痛
- 水疱
- 潰瘍
- 皮膚壊死
① 疼痛
点滴静脈内注射の際、刺入部位の腫脹や疼痛、発赤が生じた場合、血管外漏出の初期症状である。周辺組織の炎症や壊死につながり、重症化するおそれもあるため、直ちに注入を中止する必要がある。
▶午後22
湿性罨法はどれか。
- 氷枕
- 冷パップ
- 湯たんぽ
- 電気あんか
② 冷パップ
罨法には、乾いた状態で器具を用いる乾性罨法、湿った状態で器具を用いる湿性罨法があり、さらに温熱刺激による温罨法、冷却による冷罨法にわかれる。冷パップは湿布の一つで湿性冷罨法である。①は乾性冷罨法、③と④は乾性温罨法に当たる。
▶午後23
気管内吸引の時間が長いと低下しやすいのはどれか。
- 血圧
- 体温
- 血糖
- 動脈血酸素飽和度〈SaO2〉
④ 動脈血酸素飽和度〈SaO2〉
1回の気管内吸引では、挿入開始から終了までの時間は15秒以内にすることが推奨され、30秒以上実施した場合、動脈血酸素飽和度〈SaO2〉が低下し、低酸素血症をきたすことがある。
▶午後24
思春期に特徴的にみられるのはどれか。
- 愛着行動
- 分離不安
- 自己同一性の確立
- 基本的信頼関係の確立
③ 自己同一性の確立
思春期には、依存と独立のアンビバレント〈両価的〉な感情を持ちながらも、自我同一性(アイデンティティ)の確立の過程で、親からの心理的離乳、年長者の価値観への拒絶、同世代の仲間との価値観の共有がみられる(第2反抗期)。
▶午後25改題
令和5年(2023年)の国民健康・栄養調査において、運動習慣のある女性の割合が最も高いのはどれか。
- 30~39歳
- 40~49歳
- 50~59歳
- 60~69歳
- 70歳以上
⑤ 70歳以上
令和5年(2023年)の運動習慣のある割合は男女ともに70歳以上が最も多い(男性46.5%・女性36.5%)。
*第3編1章 2.3〕身体活動・運動 p90~91
資料 厚生労働省「第100回保健師国家試験、第97回助産師国家試験、第103回看護師国家試験及び第103回看護師国家試験(追加試験)の問題および正答について」
注 当ページに掲載する解説は、看護師国家試験を解く上での理解しやすさを重視しているため、本来はより専門的・学術的な説明や議論がある部分を一部省略しています。正確な情報を掲載するように努めていますが、特に医療・看護行為や疾病、薬剤等の説明において、その正確性を保証するものではありませんので、学習以外での使用はお控え下さい。
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